低コレステロール血症(コレステロールが低いと言われたら)
概要
コレステロールは、体の細胞の膜やホルモン、ビタミンDなどを作るために欠かせない「あぶら(脂質)」の一種です。血液の中を運ばれるコレステロールの値が、一般的な目安より低い状態を「低コレステロール血症(低コレステロールけっしょう)」と呼びます。コレステロールは高すぎると血管の病気が心配されますが、低すぎる場合も、体のどこかに原因が隠れていることがあります。たいていは健康診断の血液検査で見つかります。
重要な事実
- コレステロールは体に必要な成分で、単純に「低ければ良い」というものではありません。
- 多くの人は症状がなく、血液検査の数値で初めて気づきます。
- 食事の量が足りない、やせている、慢性の病気があるなど、さまざまな理由で低くなることがあります。
- まれに生まれつきの体質(遺伝的な原因)で低くなることもあります。
- 原因を調べて対応すれば、多くは改善します。自己判断で食事を増やしたり減らしたりせず、まずは医師に相談しましょう。
健康診断では「コレステロールが高い」ことがよく話題になりますが、「低い」値が見つかることも少なくありません。軽度の低値で特に問題がない場合もありますが、中には体の病気が隠れていることもあるため、数値だけで決めつけずに確認することが大切です。
食事の量が少ない人、やせている人、高齢者、慢性の病気を持つ人、甲状腺(首のところにある、体の代謝を調整する器官)の働きが活発な人、肝臓の病気がある人などに見られます。また、生まれつきコレステロールをうまく作れない体質の人はごくまれにいます。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が弱い。
- けいれんが起きた。
- 呼吸が苦しい、息が荒い。
- けがや鼻血などで出血が止まらない。
- 激しい腹痛で動けない。
- ⚠短期間で急に体重が減った。
- ⚠皮膚や白目が黄色くなってきた(黄疸:おうだん)。
- ⚠何日も続く下痢や、油っぽい便が続く。
- ⚠顔や脚のむくみが強い。
- ⚠ひどいだるさで日常生活が難しい。
一般的な症状
- 多くの場合は無症状で、健康診断の血液検査で見つかります。
- 疲れやすい、なんとなく元気が出ない。
- 食欲がわかない、食べる量が減る。
- 体重が少しずつ減る。
- 風邪など感染症にかかりやすい気がする。
- 気分が落ち込みやすい、やる気が出にくい。
子供の症状
- 体重が増えない、身長の伸びがゆっくりになる。
- 脂肪の多い便(白っぽくて油っぽい便)や、長く続く下痢。
- ビタミン不足に関係して、暗いところで見えにくい、骨が弱い、出血しやすいなどが見られることがあります(いずれもまれです)。
- 機嫌が悪い、元気がないといった様子の変化。
高齢者の症状
- 体重が減る、筋肉が落ちてきた感じがする(フレイル:加齢とともに心身の力が弱った状態)。
- 疲れやすく、外出や家事がおっくうになる。
- 感染症にかかりやすく、治りにくい。
- 食欲低下から水分や栄養が不足しやすい。
原因
主な原因
- 栄養不足・食事の量が少ない(極端なダイエットや偏った食事を含む)。
- やせている、体重が少ない。
- 甲状腺の働きが活発になりすぎている状態(代謝が上がり、コレステロールが使われすぎる)。
- 肝臓の病気(肝臓はコレステロールを作る大切な場所です)。
- 腸からの栄養吸収がうまくいかない状態(吸収不良)。
- 長く続く炎症や感染症、慢性の病気。
- コレステロールを下げる目的の薬など、薬の影響。
- 生まれつきの体質(遺伝的な原因)。ごくまれです。
リスク要因
- 高齢であること。
- やせ・低栄養、食事摂取量の少ない生活。
- 過度な運動や、極端な食事制限を続けている。
- 慢性的なストレスや、食欲が落ちる状況が長く続いている。
- 慢性の病気(肝臓・甲状腺・消化器の病気など)がある。
- 複数の薬を服用している。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急な体重減少、黄疸、長く続く下痢、強いむくみがある。
- 意識がはっきりしない、出血が止まらないなど、いつもと明らかに違う様子がある(この場合は救急要請を)。
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断や病院の血液検査でコレステロールが低いと言われた。
- 疲れやすさや食欲低下、体重減少がなんとなく続いている。
- 食事量が少ない状態が長く続いている、または極端な食事制限をしている。
- コレステロールを下げる目的の薬を使っていて、数値が低くなりすぎている気がする。
診断
まず血液検査で、総コレステロールやLDL・HDLといった脂質の種類ごとの値を確認します。あわせて、食事や体重の変化、これまでの病気、飲んでいる薬について聞き取りをし、低くなっている理由を探します。必要に応じて、甲状腺や肝臓、栄養状態を調べる検査が行われます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(脂質の値、肝臓・甲状腺の働き、栄養状態の目安になるタンパク質など)。
- 体重・身長・食事内容の確認(聞き取り)。
- 尿検査や便検査(吸収不良が疑われる場合)。
- ビタミンなどの栄養素の検査(必要に応じて)。
- 画像検査や遺伝の相談(まれな原因が疑われる場合)。
診察で予想されること
診察は痛みのない検査が中心で、採血のときに少しチクッとする程度です。結果が出るまで数日かかることがあります。原因が見つからないこともあり、その場合は食事や体重の変化を定期的に確認しながら様子を見ていきます。
治療
治疗は「なぜ低くなっているのか」によって変わります。食事量が足りないなら栄養を整えること、病気が隠れていればその治療、薬の影響なら主治医と薬の見直しを相談することが中心になります。数値を上げること自体を目的にするのではなく、体全体の状態を整えることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 3食を規則正しく、主食・たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品)・野菜を組み合わせて食べる。
- 極端なダイエットや、食事を抜く習慣をやめる。
- 体重を定期的に測り、急な減少に気づけるようにする。
- 禁煙を心がける。
- 睡眠と休養を十分にとる。
- 飲んでいる薬やサプリメントは、自己判断でやめずに医師・薬剤師に伝える。
医療治療
治療は原因に合わせて行われます。栄養が足りていない場合は、食事の内容や量について管理栄養士などの専門家と一緒に整えていきます。甲状腺や肝臓、消化管などの病気が見つかった場合は、その病気の治療を優先します。薬が影響していると考えられる場合は、主治医が目的や量のバランスを検討します。薬を自分で中止したり量を変えたりすると危険なことがあるので、必ず医療者に相談してください。
手術が検討される場合
低コレステロール血症そのものに対して手術が必要になることは通常ありません。ただし、原因となっている別の病気に対して手術が検討される場合はあります。
この病気と共に生きる
数値は一度だけで判断せず、定期的な検査で変化を見ていきます。食事・体重・体調を簡単にメモしておくと、診察のときに役立ちます。日常生活で無理のない範囲の運動を続けることも、体全体の調子を整える助けになります。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の食事を、量と内容の両面からバランスよく。
- 適度な運動(ウォーキングなど)を無理のない範囲で続ける。
- 十分な睡眠と、ストレスをためない工夫。
- 禁煙、飲酒はほどほどに。
- 体重の記録をつけ、急な変化に気づく。
- 気になる症状は我慢せず、診察で伝える。
食事と運動
食事は「減らす」より「整える」が合言葉です。極端な脂質制限はかえって栄養不足につながることがあります。主食・たんぱく質・野菜をそろえ、必要な脂質も適度にとりましょう。運動は、会話ができる程度の速さの散歩を1日20〜30分ほどから始めるのがおすすめです。体調がすぐれない日は無理をせず休みましょう。
精神的健康と心の健康
数値のことを気にしすぎると、食事が楽しめなくなったり、不安が続いたりすることがあります。食事は「禁止」ではなく「工夫」と考えるようにしましょう。気分の落ち込みや不安が長く続くときは、一人で抱えずに医師や周りの人に話してください。つらい気持ちが強いときは、地域の相談窓口や医療機関に相談することが大切です。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、極端な食事制限を避け、バランスよく食べて適正な体重を保つことは、低くなりすぎるのを防ぐ助けになります。また、気になる症状を早めに相談することが、隠れた病気の早期発見につながります。
検診プログラム
健康診断の血液検査(脂質の検査)は、低い値に気づく大切な機会です。自治体や勤務先の健診を毎年受けるようにしましょう。過去に低い値を指摘されたことがある人は、結果を保管して診察時に見せると話がスムーズです。
合併症
治療しない場合
- 栄養不足が続き、体力や筋力が落ちる(フレイル)。
- 感染症にかかりやすくなり、治りにくくなることがある。
- ビタミン不足による体の不調(骨が弱る、出血しやすいなど)。
- ホルモンの材料が足りず、体の調子が崩れることがある。
- 原因となっている病気(肝臓・甲状腺など)の発見が遅れる。
長期的な見通し
低コレステロール血症の多くは、食事や生活を整えたり、原因となる病気を治療したりすることで改善します。数値だけでなく、元気に過ごせているかどうかが大切です。気になることがあれば早めに相談し、あせらず一歩ずつ整えていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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