低ホスファターゼ症(ていホスファターゼしょう)を知ろう
概要
低ホスファターゼ症(HPP)は、骨や歯を丈夫にするために必要な「アルカリホスファターゼ(ALP)」という酵素の働きが弱くなる、生まれつきの病気です。ALPは骨にカルシウムなどのミネラルがくっついて固くなる(石灰化)のを助ける酵素で、これがうまく働かないと骨がもろくなったり、形が整いにくくなったりします。症状の重さは人によって大きく異なり、赤ちゃんのころから重い症状が出る場合もあれば、大人になって歯の問題や骨の痛みとして気づかれる軽い場合もあります。
重要な事実
- 生まれつきの体質(遺伝子の変化)が原因の、比較的まれな病気です。
- 血液検査でALPという酵素の値が低いことが、手がかりのひとつになります。
- 症状の重さは幅広く、軽い場合から医療的なサポートが必要な場合までさまざまです。
- 歯が早く抜ける、骨の痛み、歩き方の変化などが気づきのきっかけになることがあります。
低ホスファターゼ症はまれな病気で、正確な人数はまだ十分にわかっていません。日本では難病(指定難病)として医療費の助成の対象になっている場合があり、多くの医師にとっても出会う機会の少ない病気です。
生まれつきの遺伝子の変化が原因のため、年齢を問わず起こります。赤ちゃんの時期に重い症状で気づかれる型、幼少期に歩き方や歯の問題で気づかれる型、大人になってから骨の痛みや歯の早期脱落で見つかる型など、いくつかのタイプがあります。家族の中で同じ変化をもつ人がいる場合もあります。
症状
- 呼吸が苦しそう、息が浅い、顔色が青白い(特に赤ちゃんや小さな子ども)
- けいれんが起きた、意識がぼんやりして呼びかけに反応しにくい
- 転倒や事故のあと、頭や首、背中を強く打って動かせない
- 突然の激しい骨の痛みで立てない、動かせない
- ぐったりして元気がなく、母乳やミルクを飲めない
- ⚠発熱が続く、元気がない
- ⚠骨折したかもしれない強い痛みや腫れ
- ⚠食事や水分がとれず、尿の量が減っている
- ⚠歯ぐきの腫れや痛みが強く、口が開けにくい
一般的な症状
- 骨や関節の痛み、だるさ
- 疲れやすさ、筋肉の力が入りにくい感じ
- 身長が伸びにくい、体型の変化
- 歩き方がぎこちない、ゆらゆらした歩き方になる
- 歯が丈夫でなく、むし歯がなくても抜けやすい
- 骨折しやすい、治りが遅いと感じる
子供の症状
- 乳歯が通常より早く(4〜5歳より前に)抜ける
- 歩き始めが遅い、歩き方がぎこちない
- 身長の伸びがゆっくりで、周りの子より小さい
- 頭の形がいびつに見える、頭の骨のつなぎ目が早く閉じる
- 手足の骨が曲がる、O脚・X脚のように見える
- 筋肉がやわらかく力が入りにくい、運動が苦手
- ミルクを飲みにくい、体重が増えにくい
高齢者の症状
- 足の付け根や太もも、腰などの骨の痛み
- 疲れやすく、長く歩くのがつらい
- 若いころから歯が弱く、入れ歯が必要になることが早い
- ささいなことで骨折しやすい
- 関節の痛みやこわばり
原因
主な原因
- ALPLという遺伝子の変化により、骨をつくる働きを助ける酵素(アルカリホスファターゼ)が十分に働かなくなることが原因です。
- 多くは、両親それぞれから変化した遺伝子を受けつぐことで起こるタイプ(劣性遺伝)ですが、片方の親から受けつぐ軽いタイプもあります。
- 遺伝子の変化の場所や組み合わせによって、症状の重さや現れ方が変わります。
リスク要因
- 家族に低ホスファターゼ症の人がいる
- 血縁関係の近い両親の間に生まれる場合(遺伝的な変化が重なりやすい)
- 乳歯がとても早く抜けるなど、子どものころから特徴的な歯の症状がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 赤ちゃんの呼吸が苦しそう、ぐったりしている
- けいれん、意識がはっきりしない様子がある
- 強い骨の痛みで動けない、骨折が疑われる
- 頭を強く打ったあとに元気がない、嘔吐を繰り返す
定期受診を予約すべき場合:
- 乳歯が4〜5歳より前に抜けた、歯がぐらぐらする
- 歩き方が気になる、運動が極端に苦手
- 身長の伸びが気になる
- 骨や関節の痛みが続いている
- 血液検査でアルカリホスファターゼ(ALP)の値が低いと言われた
- 家族に同じ病気の人がいて、自分の症状が気になる
診断
まず問診と診察で、症状の経過や家族歴、歯の様子などを確認します。そのうえで血液検査を行い、アルカリホスファターゼ(ALP)という酵素の値が低くないかを見ます。必要に応じて遺伝子の検査や画像検査を行い、総合的に判断します。確定診断は専門の医療機関で行われることが多いです。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(アルカリホスファターゼなどの酵素の値、カルシウムやリンの値)
- 尿検査(骨の代謝に関わる物質を調べる)
- レントゲン検査(骨の形や石灰化の様子、骨折の有無)
- 歯科での診察(歯の状態や抜け方の確認)
- 遺伝子検査(ALPL遺伝子の変化を調べる)
- 必要に応じて骨密度検査や超音波検査
診察で予想されること
診断までにいくつかの検査が必要で、結果が出るまで時間がかかることがあります。遺伝子検査は特に時間がかかる場合があります。診断は、症状・検査結果・家族歴などをあわせて総合的に行われます。わからないことがあれば、遠慮なく医師に質問してよいものです。必要なら遺伝カウンセリングを受けられることもあります。
治療
低ホスファターゼ症の治療は、症状の重さや年齢、生活への影響に合わせて組み立てられます。根本的な体質を変える治療はまだありませんが、骨や歯の健康を守り、痛みや骨折を減らし、日常生活を快適に過ごすためのサポートが進んでいます。専門医と定期的に相談しながら、必要なケアを組み合わせていくことが大切です。
自宅でのセルフケア
- 転倒やけがを防ぐため、家の中の段差や滑りやすい場所を整える
- 無理のない範囲で、骨や筋肉にやさしい運動を続ける
- 歯みがきや定期的な歯科受診で、歯の健康を保つ
- 痛みや疲れを我慢しすぎず、休息をとる
- 食事はバランスを大切にし、必要な栄養について医師や管理栄養士に相談する
- 体調の変化や気になる症状をメモして、診察時に伝える
医療治療
治療は症状に応じて行われます。骨の石灰化を助ける酵素を補う治療(酵素補充療法)が使われることがあり、対象となるかどうかは専門医が状態をみて判断します。そのほか、痛みのコントロール、骨折の予防と治療、歯科治療、リハビリテーション、必要に応じた呼吸や栄養のサポートなどが組み合わされます。使われる治療や通院の間隔は人によって異なるため、主治医とよく相談してください。
手術が検討される場合
骨折の治療や骨の形の矯正、頭の骨のつなぎ目が早く閉じることで起きる問題への対応などで、手術が必要と判断されることがあります。手術が必要かどうかは、症状の程度や年齢、生活への影響をみて専門医が総合的に判断します。
この病気と共に生きる
低ホスファターゼ症とともに生活するうえで大切なのは、無理をせず自分のペースを保つことです。痛みや疲れが出やすい日は休み、体調がよい日は無理のない範囲で動くなど、波に合わせた過ごし方が役立ちます。学校や職場、周りの人に状態を伝えておくと、必要な配慮を受けやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 生活のリズムを整え、十分な睡眠をとる
- 転倒しにくい靴や環境を選ぶ
- 歯科の定期受診を習慣にする
- 痛みや疲れを記録して、自分の体の傾向を知る
- 周囲の人や学校・職場に、必要に応じて状態を伝えておく
- ストレスをためこまず、話せる相手や相談先を持つ
食事と運動
食事は特別な制限が必要ないことが多いですが、骨の健康を支えるためにバランスのよい食事を心がけます。カルシウムやビタミンD、たんぱく質などについて、必要量は人によって異なるため、医師や管理栄養士に相談すると安心です。運動は、骨に負担をかけすぎない散歩や水中運動、ストレッチなどが向いています。始める前に主治医やリハビリの専門家に相談し、転倒予防も意識しましょう。
精神的健康と心の健康
まれな病気で診断までの時間が長かったり、痛みや通院が続いたりすると、不安や疲れ、孤独感を感じることがあります。それは自然な気持ちです。気持ちがつらい日が続くときは、一人で抱えこまずに、医療者や家族、信頼できる人に話してみてください。必要に応じて心理的なサポートや相談窓口を利用することも大切です。もし気持ちが追い詰められて自分を傷つけたい気持ちがわいたら、すぐに地域の救急や医療機関、相談窓口に連絡してください。
予防
低ホスファターゼ症は生まれつきの遺伝子の変化によるもので、生活習慣で防ぐことはできません。ただし、家族に同じ病気の人がいる場合や、遺伝子の変化がわかっている場合は、妊娠を考える前に遺伝カウンセリングを受けることで、見通しを立てたり相談したりできます。
検診プログラム
必要な検査は症状や家族歴によって異なります。血液検査でアルカリホスファターゼ(ALP)の値が低い場合は、専門医への相談が勧められることがあります。妊娠中や出生後の検査については、かかりつけの医師や専門医に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 骨折を繰り返したり、骨の変形が進んだりすることがある
- 身長の伸びが妨げられることがある
- 歯が早く抜けて、食べる・話すことに影響することがある
- 歩行や運動のしにくさから、日常生活に負担がかかることがある
- 赤ちゃんの重いタイプでは、呼吸や栄養に関する深刻な問題が起きることがある
- 痛みや疲れが続き、生活の質が下がることがある
長期的な見通し
症状の重さは人によって大きく異なり、軽い場合は生活上の工夫で無理なく過ごせることも多い病気です。医療の進歩により、サポートの選択肢は増えてきています。早めに専門医につながり、定期的にフォローを受けることで、骨や歯の健康を守り、生活の質を保ちながら前向きに過ごすことができます。
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最終更新: 2026年10月24日
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