右心低形成症候群(みぎしんていけいせいしょうこうぐん)を知る
概要
右心低形成症候群は、生まれつき心臓の右側が十分に大きく育たない病気です。心臓は4つの部屋に分かれていて、右側の部屋(右心室)は、体じゅうから戻ってきた血液を肺へ送り出し、そこで酸素を取り込む働きをしています。右心室が小さいと、肺へ送れる血液の量が足りなくなります。そのため、生まれた直後から酸素が足りない状態(チアノーゼ=皮膚や唇が青みを帯びること)になったり、呼吸が苦しくなったりすることがあります。心臓の弁や、肺へ血液を送る血管の形にも異常がともなうことが多く、生まれつきの心臓の形の異常(先天性心疾患)のひとつに数えられます。
重要な事実
- 生まれつきの心臓の形の異常で、心臓の右側が小さく、肺へ血液を送る流れが妨げられる状態です。
- 多くは妊娠中の超音波検査や、生まれた直後の診察で見つかります。
- 手術を中心とした治療を、生後まもなくから段階的に行うことが多く、その後も定期的な通院と経過観察が大切です。
とても少ない病気です。先天性心疾患の中でもまれな部類に入り、多くの病院でも数年に数例ということがあります。まれだからこそ、小児の心臓を専門とする医療チームでの診療が大切になります。
生まれたばかりの赤ちゃんに見られる状態です。妊娠中の検査で見つかることもあれば、生まれた後の診察や、退院前のチェックで見つかることもあります。男の子・女の子の差はあまりないといわれています。
症状
- 唇や顔色が青白い、または青くなり、呼吸がとても苦しそうなとき
- 意識がぼんやりしている、呼びかけへの反応が弱い、ぐったりして動かない
- けいれんを起こした、または突然意識を失って倒れた
- 激しい胸の痛み、または動悸が止まらずふらつくとき
- このような症状があるときは、すぐに119番へ連絡してください。迷ったときもためらわずに救急へ相談してかまいません。
- ⚠ミルクを飲む量が急に減った、飲みながら疲れてしまう
- ⚠呼吸がいつもより速い、肋骨の下や首のところがへこんで見える
- ⚠むくみが急に強くなった、尿の量が減った
- ⚠発熱がある(心臓に病気のある子どもは、感染が重くなりやすいため)
- ⚠泣き声が弱い、元気がなく、いつもと様子が違う
- ⚠これらの症状は、その日のうちにかかりつけ医または小児救急の相談窓口に連絡してください。
一般的な症状
- 皮膚や唇、爪の色が青みを帯びる(チアノーゼ)
- 呼吸が速い、息が苦しそう、肋骨の下がへこんで見える
- ミルクを飲む途中ですぐ疲れてしまう、飲む量が少ない
- 体重がなかなか増えない、元気がなくぐったりしている
- 手足やまぶたがむくむ
子供の症状
- 歩いたり走ったりするとすぐ息が切れる、遊びの途中で休みたがる
- 疲れやすく、同年代の子どもと同じように動けないことがある
- 身長・体重の伸びがゆっくりで、細身に見えることがある
- 指先が太く丸くなる(ばち指=たいきゅうし)ことがある
- かぜなどの感染症にかかると、症状が重くなりやすい
高齢者の症状
- この病気は子ども時代に手術を含む治療を受けるのが一般的です。成人した方は、手術後の心臓の状態に合わせた経過観察が続きます。
- 運動したときの息切れ、動悸(どうき=心臓の鼓動を強く感じる)、疲れやすさ、脚のむくみが出ることがあります。
- 不整脈(心臓のリズムの乱れ)が起こることがあり、動悸やふらつきとして気づくことがあります。
- 妊娠を考えている方は、必ず事前に心臓を専門とする医師に相談してください。
- かぜや歯の感染が心臓に影響することがあるため、発熱や歯の痛みも早めに相談してください。
原因
主な原因
- 心臓が形づくられる妊娠初期(およそ妊娠4〜8週ごろ)に、右側の部屋や弁、肺へ向かう血管の形成がうまく進まないことで起こると考えられています。
- はっきりした原因がわからないことが多い病気です。
- 一部には、遺伝子の変化や、ほかの臓器の特徴をともなう症候群が関係している場合があります。
リスク要因
- 家族(親やきょうだい)に先天性心疾患の人がいる場合
- 遺伝子の変化や、先天症候群と診断されている場合
- 妊娠中の糖尿病など、お母さんの健康状態が関係することがあるといわれています
- 妊娠中の飲酒や喫煙、一部の薬の使用が関係する可能性が指摘されています(薬は自己判断で中止せず、必ず医師・薬剤師に相談してください)
- ただし、多くはお母さんやご家族の「何かのせい」ではありません。ご自分を責めないでください。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪い、意識がはっきりしない → ためらわず119番へ
- ミルクが飲めない、体重が減っている、むくみが急に強くなった → その日のうちに受診
- 発熱がある、機嫌が悪くぐったりしている → その日のうちに連絡・受診
- 動悸が続く、胸が痛い、ふらついて立てない → 早めに受診、強ければ119番
定期受診を予約すべき場合:
- 定期的な心臓の検査(心エコーなど)の予定どおりの受診
- 体重・身長の伸び、飲み方や食欲の変化の相談
- 予防接種のスケジュールの相談
- 歯の検診と歯みがきの指導(歯の感染は心臓に影響することがあります)
- 保育園・幼稚園・学校での生活や運動についての相談
- 成人した方は、妊娠を考えたとき、旅行や引っ越しの前の相談
診断
妊娠中の超音波検査(胎児心エコー)で見つかることが増えています。生まれた後に見つかる場合は、診察での聴診、皮膚の色の観察、血液中の酸素の量を測るチェック(パルスオキシメトリー)がきっかけになります。確定のためには、超音波で心臓の形と血流をくわしく見る検査(心エコー)が中心になります。
行われる可能性のある検査
- 胎児心エコー(おなかの赤ちゃんの心臓を超音波で見る検査)
- パルスオキシメトリー(指や足に機械を当てて、血液中の酸素の量を測る検査)
- 心エコー(超音波で心臓の部屋の大きさ、弁、血流の向きを調べる検査)
- 胸部レントゲン(心臓の大きさや肺の状態を見る)
- 心電図(心臓の電気の流れを調べる)
- 心臓カテーテル検査(細い管を血管から入れて、心臓の中の圧や酸素の量を測る検査)
- CT・MRI(心臓や血管の形を立体的に調べる画像検査)
- 血液検査(酸素の状態、栄養状態、感染の有無などを調べる)
診察で予想されること
いくつかの検査を組み合わせて、心臓のどの部分がどれくらい小さいのか、肺への血流がどれくらい保てるのかを総合的に判断します。検査によっては、その日に結果がわかるものもあれば、数日かかるものもあります。結果の説明のときは、わからない言葉があればその場で遠慮なく聞いてください。ご家族が納得して治療方針を選べるように、医療チームが時間をとって説明します。
治療
治療の目標は、肺へ十分な血液を送れるようにして、体が成長できる状態を保つことです。手術を中心に、必要に応じて薬やカテーテルを使った治療を組み合わせます。一度で終わるのではなく、成長に合わせて何回かに分けて治療を進めるのが一般的です。
自宅でのセルフケア
- 手洗いをていねいに行い、感染症を防ぐ
- ミルクの量や飲み方、体重の変化を記録して、受診時に伝える
- 指示されたとおりに通院し、検査を受ける
- 予防接種を主治医と相談しながら進める
- 歯みがきを習慣にして、歯の健康を保つ
- 家族みんなで禁煙し、たばこの煙を避ける
- 体調がいつもと違うときは、早めに医療チームへ連絡する
医療治療
心臓の働きを助ける薬や、体のむくみを軽くする薬、肺への血流を保つための薬を使うことがあります。薬の種類や使い方は、心臓の状態や成長に合わせて医師が判断しますので、名前や量については主治医・薬剤師の説明を受けてください。また、狭くなった弁を風船のようにふくらませて広げるカテーテル治療や、酸素を補う治療、栄養を支えるサポートを行うこともあります。手術の方法や時期は、心臓の形や体の大きさによって一人ひとり異なります。
手術が検討される場合
多くの場合、生後まもなく(数日〜数週間のうち)に、肺へ血液を送るための最初の手術を行います。その後、成長に合わせて血液の流れを組み替える手術を段階的に行い、最終的に「フォンタン循環」と呼ばれる状態を目指すことが一般的です。手術の回数や時期は一人ひとり違うため、医療チームから詳しい説明を受け、ご家族で相談しながら進めていきます。まれに心臓移植が必要と判断される場合もあります。
この病気と共に生きる
定期的な通院と検査が生活の中心になります。毎日の飲み方・食べ方、体重、睡眠、機嫌の変化を記録しておくと、受診のときに役立ちます。保育園・幼稚園・学校とは、運動の制限や緊急時の対応についてあらかじめ共有しておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 家族全員で禁煙し、受動喫煙を避ける
- 手洗い・うがいを習慣にし、人混みは流行期に注意する
- 予防接種を主治医と相談して計画的に受ける
- 歯科検診を欠かさず、歯の感染を防ぐ
- 旅行や帰省の前には、主治医に相談し、緊急時の連絡先を確認しておく
- 睡眠を十分にとり、生活のリズムを整える
食事と運動
赤ちゃんの時期は、飲む量と体重の増え方が何より大切です。飲み方が弱いときは、授乳の回数や方法を栄養の専門家と一緒に工夫します。離乳食以降は、バランスの良い食事を心がけ、塩分のとりすぎに注意します。運動は、主治医の指示の範囲で行います。疲れすぎない程度に体を動かすことは、体力づくりに役立ちます。体育の参加や部活動については、学校と医療チームで相談しながら決めていきましょう。
精神的健康と心の健康
この病気と向き合うご家族は、不安、疲れ、孤独感を抱えやすいものです。入院が長引くと、きょうだいへの気がかりや、ご自身の生活の負担も大きくなります。子ども自身も、大きくなるにつれて自分の体のことをどう説明するか悩むことがあります。つらい気持ちを一人で抱え込まず、医療ソーシャルワーカーや心理の専門家、同じ経験を持つ家族の集まりなどを頼ってください。気持ちがとてもつらいときは、かかりつけ医や地域の相談窓口に早めに話してください。緊急を要すると感じたら119番へ連絡してください。
予防
この病気を確実に防ぐ方法は、今のところわかっていません。ただし、妊娠を考えている方、妊娠中の方は、禁煙・節酒、バランスの良い食事、持病(糖尿病など)のコントロール、十分な睡眠を心がけることが、赤ちゃんの健康を守る基本になります。薬を飲んでいる方は、自己判断で中止せず、必ず医師・薬剤師に相談してください。家族に先天性心疾患の人がいる場合は、妊娠前にかかりつけ医や専門医に相談しておくと安心です。
ワクチン
予防接種は、感染症から体を守るために大切です。心臓に病気がある子どもでも受けられるワクチンがほとんどです。時期や順番については、主治医・小児科医と相談しながら進めてください。家族もワクチンを受けておくと、赤ちゃんを感染から守ることにつながります。
検診プログラム
妊娠中の健診での超音波検査は、赤ちゃんの心臓の形を確認する大切な機会です。生まれた後には、血液中の酸素の量を測るチェック(パルスオキシメトリー)が行われ、地域によっては新生児を対象とした取り組みとして実施されています。気になることがあれば、妊婦健診や乳幼児健診の場で相談してください。
合併症
治療しない場合
- 酸素が足りない状態が続き、体の臓器に負担がかかる
- 心不全(心臓が十分に血液を送れない状態)
- 不整脈(心臓のリズムの乱れ)
- 体重が増えにくい、成長がゆっくりになる
- 感染性心内膜炎(心臓の内側や弁に感染が起こる状態)
- 血液の流れがよどむことで血栓(血のかたまり)ができやすくなる
- 手術後の状態によっては、肝臓やリンパの流れに影響が出ることがある
長期的な見通し
この病気は手術を組み合わせて治療することで、多くの子どもたちが成長し、成人されるようになってきました。生涯にわたって通院と経過観察は必要ですが、学校生活や仕事、趣味など、その人らしい生活を送ることは十分に可能です。一人ひとり心臓の形や状態が違うため、将来の見通しは主治医に具体的に聞いてみてください。医療は日々進歩しており、希望を持って進んでいける病気です。
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最終更新: 2026年10月24日
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