高齢者の過敏性腸症候群
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)は、検査では特別な病気が見つからないのに、おなかの痛みや張り、下痢や便秘などが続く状態です。腸そのものに傷や炎症がないことが多く、「腸の働きのバランス」がくずれて症状が出ると考えられています。命にかかわる病気ではありませんが、日常生活に大きく影響することがあります。
重要な事実
- おなかの痛みや張り、下痢・便秘などが慢性的に続きます。
- 大腸カメラなどの検査では、がんや炎症などのはっきりした異常が見つからないことが特徴です。
- 食事や生活リズムの見直し、ストレスへの対処で症状は改善しやすい病気です。
はい。日本でも多くの人が経験する身近な症状で、高齢になっても決して珍しくありません。消化器の症状で医療機関を受診する方のなかには、過敏性腸症候群と診断される方も少なくありません。
過敏性腸症候群は若い世代に多いイメージがありますが、高齢者にもみられます。女性にやや多いとの報告がありますが、男性でも起こります。高齢になると、加齢による腸の働きの変化や、複数の薬を飲んでいること、運動不足などが症状に関わることがあります。
症状
- 次のような症状がある場合は、すぐに119番で救急要請をしてください。
- 突然の激しいおなかの痛みがある
- 血を吐く、または黒い便・血が混ざった便が出る
- 高熱とともに強い腹痛がある
- 意識がもうろうとする、冷や汗がひどい
- ⚠次のような症状がある場合は、当日中に医療機関へ連絡してください。
- ⚠長く続く下痢や嘔吐で水分や食事がとれない
- ⚠一度でも便に血が混ざる
- ⚠急に体重が減った
- ⚠おなかの痛みで眠れない、日常生活に支障が出る
一般的な症状
- おなかの痛み・不快感(排便すると楽になることが多い)
- 下痢や便秘、または下痢と便秘をくり返す
- おなかの張りやガスの溜まりを感じる
- 便にゼリー状の粘液が混ざることがある
- 便が残っている感じ(残便感)がある
高齢者の症状
- 腹痛の感じ方が若い人よりはっきりしないことがあり、「なんとなくおなかが重い」と感じることがあります。
- 下痢のあとに便が漏れそうになるなど、トイレへの不安が強くなることがあります。
- 便秘が長く続き、おなかの張りや食欲低下をともなうことがあります。
- 高齢者は脱水や転倒を避けるため、症状が強いときは無理をしないことが大切です。
原因
主な原因
- はっきりした原因はまだわかっていませんが、腸の動きが敏感になりすぎたり、正常に動かなくなったりすることが関係していると考えられています。
- 脳と腸は神経でつながっています。ストレスや不安、疲れが腸の働きに影響することがあります。
- 感染性の胃腸炎(おなかの風邪)のあとに、症状が続くこともあります。
リスク要因
- 加齢による腸の動きの変化
- ストレスや不安、睡眠不足
- 不規則な食事や水分不足
- 運動不足
- 一部の薬の影響(便秘になりやすい薬など)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に症状が強くなった、いつもと違う腹痛がある
- 便に血が混じる、黒い便が出る
- 体重が急に減った、貧血を指摘されたことがある
- 高齢の方では、腸が細くなる病気や腫瘍など、別の病気が隠れている可能性もあるため、早めの受診が大切です。
定期受診を予約すべき場合:
- おなかの症状が1〜3か月以上続いている
- 便通の状態が安定せず、日常生活に影響がある
- 市販の整腸薬などを試しても改善しない
- 検診で便潜血などの異常を指摘された
診断
医師は、お話をうかがい、おなかの診察を行ったうえで、ほかの病気を除外しながら診断します。高齢の場合は、大腸がんや炎症性腸疾患など、似た症状を起こす病気がないかを確認することが大切です。
行われる可能性のある検査
- 便検査(血が混ざっていないかなどを調べます)
- 血液検査(貧血や炎症の有無を調べます)
- 腹部エコー(超音波)検査
- 大腸カメラ(内視鏡)検査
診察で予想されること
受診当日は、症状がいつからあるか、便の状態、食事や服薬の状況などを聞かれます。医師がほかの病気を疑った場合、検査が行われることもあります。検査に時間がかかる場合もありますが、無理強いされることはありません。不安なことは遠慮なく質問しましょう。
治療
過敏性腸症候群の治療は、薬だけでなく、食事・生活習慣・ストレスへの対処を組み合わせて行うことが基本です。高齢の方では、内服している薬や持病とのバランスを考えながら、無理のない計画を立てます。薬の名前や種類については、医師と相談して決めることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 1日3食、できるだけ決まった時間に食べる
- よく噛んで、ゆっくり食べる
- 自分に合う排便のリズムをつくる(毎朝トイレに行く習慣など)
- 適度な水分をこまめにとる(水分制限が必要な持病がある場合は医師に相談)
- 症状を悪くする食品があれば、少量ずつ試しながら調整する
医療治療
医療機関では、症状に合わせて、腸の動きを整える薬、下痢をおさえる薬、便秘を改善する薬などが処方されることがあります。また、ストレスや不安が強い場合には、心の面からのアプローチも検討されます。薬の種類や使い方は必ず医師・薬剤師の説明に従ってください。ご自身の判断で量を変えたり、ほかの薬と併用したりしないことが大切です。
手術が検討される場合
過敏性腸症候群そのものが手術で治ることは通常ありません。しかし、症状の中に別の病気(腸の閉塞や腫瘍など)が見つかった場合には、その病気に対して手術が必要になることがあります。気になる場合は、医師に相談してください。
この病気と共に生きる
過敏性腸症候群は「付き合い方」が大切な病気です。症状がまったく出ない日もあれば、悪い日もあります。無理に完璧を目指さず、自分の体のリズムを知り、症状が出にくい生活を少しずつつくっていきましょう。外出前はトイレの場所を確認しておくなど、安心の工夫も役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 十分な睡眠をとる
- 散歩や軽い体操など、無理のない範囲で体を動かす
- ストレスをためこまない工夫をする(趣味、人とのおしゃべり、深呼吸など)
- 喫煙や過度の飲酒は控える
食事と運動
食事は、野菜・果物・全粒穀物などの食物繊維を少しずつ取り入れることが参考になる場合があります。ただし、高齢の方では食物繊維を急に増やすとおなかが張ることがあるので、少しずつ増やしましょう。また、脂っこい食事や刺激の強いもの、炭酸飲料などが症状を悪くすることもあります。運動は、食後にゆっくり歩くなど、腸の動きを助ける軽い活動を日常に取り入れるのがおすすめです。体重減少や食べることに不安がある場合は、管理栄養士や主治医に相談してください。
精神的健康と心の健康
おなかの症状が続くと、外出を控えたり、不安や気分の落ち込みが強くなることがあります。これは決して「気のせい」ではなく、過敏性腸症候群の一部としてあらわれることがある反応です。つらいときは一人で抱え込まず、家族や友人、かかりつけ医に話してください。必要に応じて、心の専門家のサポートも選択肢の一つです。もし自傷や希死念慮などの深刻なつらさがある場合は、ためらわずに救急や相談窓口へ連絡してください。
予防
過敏性腸症候群を完全に予防する方法はまだわかっていません。しかし、規則正しい生活、バランスのよい食事、適度な運動、ストレス対策を続けることで、症状をやわらげたり、悪化を防いだりできる可能性があります。また、感染性胃腸炎のあとに過敏性腸症候群が出ることがあるため、手洗いや衛生管理も大切です。
ワクチン
過敏性腸症候群を予防するワクチンはありません。
検診プログラム
過敏性腸症候群そのものの検診はありませんが、高齢の方では便潜血検査や大腸内視鏡検査が大腸がんの早期発見につながることがあります。定期的な検診は受けるようにしましょう。
合併症
治療しない場合
- 日常生活の活動範囲が狭くなる(外出や旅行を避けるなど)
- 食事が偏って栄養不足や体重減少につながることがある
- 強いストレスや不安を感じ、気分の落ち込みをともなうことがある
- 高齢の場合、下痢による脱水や低栄養、便秘による食欲低下などに注意が必要
長期的な見通し
過敏性腸症候群は不快な症状が続くこともありますが、適切なサポートと生活の工夫で多くの方は症状とうまくつき合えるようになります。高齢の方でも、無理のない範囲で改善を目指せる病気です。焦らず、医療者と一緒に一歩ずつ進んでいきましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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