妊娠中の過敏性腸症候群(IBS)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
過敏性腸症候群(IBS)は、おなかの痛みや下痢、便秘などを繰り返す消化管の機能的な不調です。腸に炎症やがんなどの病気がないのに、便通の変化とともに腹痛があります。妊娠中はホルモンの変化や体調の変化で症状が出やすくなることがあります。
重要な事実
- 妊娠中はホルモンバランスの変化で腸の動きが影響を受けやすくなります。
- 妊娠中でも医師と相談しながら安全に対処できます。
- 市販薬を自己判断で使わず、まずは医師や薬剤師に相談しましょう。
妊娠中のIBSの正確な頻度ははっきりしませんが、妊娠中に便通の変化を感じる方は多く、IBSの症状を経験する方も少なくありません。
元々IBSがある方、妊娠中に便秘や下痢が続く方、ストレスを感じやすい方などにみられやすいです。
症状
- 激しい腹痛が続く、おなかが張って痛みが強い
- 性器出血や破水のような症状がある
- 胎動がいつもより極端に少ない、または感じない
- 意識がもうろうとする、めまいや冷や汗がひどい
- 妊娠中の激しい腹痛は、赤ちゃんやお母さんに危険な状態のサインかもしれません。我慢せずに救急車(119番)を呼んでください。
- ⚠下痢や嘔吐で水分が取れず、尿が少ない
- ⚠血便や黒い便がある
- ⚠発熱を伴う腹痛
- ⚠安静にしてもおさまらない強いおなかの張り
- ⚠これらの症状がある場合は、同じ日に医療機関に相談してください。
一般的な症状
- おなかの痛みや不快感(排便で和らぐことがあります)
- 下痢や便秘、またはその両方が交互に起こる
- おなかの張りやガスの増加
- 便に粘液が混じる
- 排便後もすっきりしない感じ
子供の症状
- この記事は妊娠中の方が対象のため、子どもにおけるIBSの症状についてはここでは扱いません。妊娠中のおなかの症状と赤ちゃんへの影響は、かかりつけの医師に必ず相談してください。
高齢者の症状
- 高齢の妊娠はまれですが、IBSの症状の現れ方は年齢に関係なく同様です。高齢の妊婦さんは他の持病があることもあるため、症状が続く場合は早めに受診しましょう。
原因
主な原因
- 妊娠中のホルモン(プロゲステロンなど)の変化による腸の動きの変化
- ストレスや不安(妊娠への不安や体調の変化)
- 腸の知覚過敏(腸の神経が敏感になっている状態)
- 妊娠による食事や生活習慣の変化
リスク要因
- 元々IBSや過敏な腸をお持ちの方
- 妊娠前からストレスが多い方
- 妊娠中のホルモン変化に敏感な方
- 便秘薬などを自己判断で使っている方
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい腹痛、出血、胎動の変化がある場合
- 下痢や嘔吐が続き、水分が取れない場合
- 血便がある場合
- このような場合は、すぐに医療機関を受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 便通の変化やおなかの張りが続く場合
- 食事や水分を工夫しても症状が改善しない場合
- 妊娠中の薬の使用について確認したい場合
- かかりつけの産科医や内科医に相談しましょう。
診断
妊娠中は赤ちゃんへの影響を考慮して、おなかの状態を詳しく聞き、必要な検査だけを行います。内診やエコーなどでおなかの赤ちゃんの状態を確認しながら、IBSの診断は症状と経過から判断されることが多いです。
行われる可能性のある検査
- 腹部エコー(超音波検査)で赤ちゃんや消化器の状態を確認
- 血液検査や尿検査(感染症や貧血の確認)
- 便検査(感染性の下痢との区別のため)
- 必要に応じて内視鏡検査(妊婦さんにはリスクがあるため、慎重に適応を判断します)
診察で予想されること
まずは医師があなたの症状や妊娠週数、体調を詳しく聞きます。不安なことは遠慮なく伝えましょう。診断や治療は妊娠中でも安全な方法を優先して進められます。
治療
妊娠中のIBSの治療は、お薬に頼りすぎず、まずは生活習慣や食事の見直しを中心に行います。症状が強い場合でも、妊娠中に安全に使える薬を医師と相談しながら使うことができます。
自宅でのセルフケア
- 規則正しい食事を心がけ、一度にたくさん食べず、少量を数回に分けて食べる
- 水分をこまめに取る(ただし飲みすぎに注意)
- おなかを冷やさない、リラックスできる時間を作る
- 便秘気味のときは食物繊維を少しずつ増やし、下痢気味のときは繊維の多い食品を控える(医師や栄養士に相談しながら)
- 日常の範囲で軽い運動(ウォーキングなど)を取り入れる
医療治療
医療機関では、妊娠中にも安全な整腸薬や、必要に応じて下痢止めや便秘薬が処方されることがあります。ただし、必ず医師の指示に従い、自己判断で市販薬を使わないでください。また、プロバイオティクス(乳酸菌など)の整腸薬は、医師に相談した上で使用することがあります。薬の名前や量はここでは示しません。
手術が検討される場合
妊娠中のIBSで手術が必要になることは通常ありません。腸に重い病気がないか、症状が非常に強い場合でも、手術は原則として行われません。どうしても手術が必要な場合は、産科と消化器科の医師が連携して判断します。
この病気と共に生きる
妊娠中は体調が日によって変わるのは普通です。IBSの症状がある日は無理をしないで、休むことを優先しましょう。パートナーや周囲の人に、自分の状態を伝えて理解を得ることも助けになります。
生活習慣のアドバイス
- 十分な睡眠を取る
- ストレスをため込まない(妊婦健診や相談の場を活用)
- おなかを締め付けない服装を選ぶ
- トイレに行きやすい環境を整える(外出先のトイレを確認しておく)
食事と運動
食事は、香辛料の強いものや脂っこいもの、カフェインを取りすぎないようにしましょう。妊娠中の適度な運動(医師の許可を得た範囲で)は、腸の働きを整えるのに役立ちます。便秘が続くときは、プルーンやりんごなど、妊娠中に安全な食品を少量ずつ試してみても良いです。ただし、食事制限は必ず医師や栄養士に相談してください。
精神的健康と心の健康
妊娠中はホルモンの影響で気分が不安定になることもあります。IBSの症状が続くと、不安やストレスが強くなることがありますが、これは決してあなたのせいではありません。気分の落ち込みが続くときは、産科医や助産師、メンタルヘルスの専門家に相談してください。
予防
妊娠中のIBSを完全に予防することは難しいですが、規則正しい生活、バランスの良い食事、ストレスをためない工夫によって、症状を和らげたり、悪化を防いだりすることができます。妊娠前からIBSがある方は、妊娠を計画するときに医師と相談しておくと安心です。
合併症
治療しない場合
- 栄養不足や脱水(下痢や極端な食事制限による)
- 体重増加不良や低出生体重児のリスク(極端な食事制限がある場合)
- ストレスや不安の悪化によるメンタルヘルスへの影響
- 自己判断による薬の使用で赤ちゃんに影響が出る可能性
長期的な見通し
妊娠中のIBSは、多くの場合、適切な対応で症状は和らぎます。出産後はホルモンバランスが落ち着くにつれて、症状が改善する方も多いです。妊娠中も医師や助産師のサポートを受けながら、安心して過ごすことができます。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。