特発性側弯症(とくはつせいそくわんしょう)
概要
側弯症(そくわんしょう)は、背骨が左右に曲がってしまう状態のことです。背骨を上から見ると、まっすぐではなくS字やC字のようにカーブしています。その中で、生まれつきの骨の異常や神経・筋肉の病気など、はっきりした原因が見つからないものを「特発性側弯症」と呼びます。「特発性」とは「原因が特定できない」という意味です。多くは成長期にゆっくり進み、軽い場合は日常生活にほとんど影響しません。
重要な事実
- 背骨が左右に曲がる状態で、原因がはっきりしないものを特発性側弯症と呼びます。
- 思春期の成長期の子ども、特に女の子に多く見られます。
- 多くの場合は軽度で、定期的に様子を見るだけで済みます。曲がりの角度と成長の残り具合によって、装具(コルセット)や手術が検討されます。
- 姿勢が悪いことや、重いかばんを片側だけで持つことが原因ではありません。
比較的よく見られる状態です。日本の学校健診(運動器検診)で見つかることも多く、成長期の子どもの数%程度に見られると言われています。その多くは軽度で、治療が必要ないことも少なくありません。
主に10歳前後の成長期の子どもに多く、特に女の子に多い傾向があります。成長が早い時期に始まることが多く、大人になってから気づく場合もあります。
症状
- 突然の激しい背中の痛みがあり、動けない
- 脚の力が急に入らない、歩けない
- 転倒や事故のあとに背中が強く痛む
- 呼吸が苦しい、息がしづらい
- 高熱と背中の強い痛みが一緒にある
- ⚠脚のしびれや違和感が新しく出てきた、または強くなってきた
- ⚠排尿や排便のコントロールがしにくい
- ⚠痛みで眠れない、学校や仕事に行けない
- ⚠短期間で見た目の曲がりがはっきり変わった
- ⚠学校健診で「要精密検査」と指摘された
一般的な症状
- 左右の肩の高さが違う
- 肩甲骨(背中の上のほうの骨)の片側が飛び出して見える
- 腰の高さやウエストのくびれが左右で違う
- 前かがみになると、背中の片側が高くなる(肋骨の隆起)
- 服が体にねじれて見える、袖の長さが合わない
- 痛みはほとんどないことが多い
子供の症状
- 成長期に曲がりが進みやすい
- 見た目の変化を指摘される、写真で気づく
- 服が合わない、肩ひもがずれる
- 多くの場合、痛みはない
- 自分では気づきにくく、学校健診や家族の指摘で見つかることが多い
高齢者の症状
- 大人になってから見つかる場合は、腰や背中の疲れやすさ、痛みを感じることがある
- 長時間立つと疲れる、姿勢を保ちにくい
- まれに脚のしびれや違和感が出ることもある
- 年齢を重ねるにつれ、背骨の変形と老化が重なって症状が出ることがある
原因
主な原因
- はっきりした原因は分かっていません(だから「特発性」と呼ばれます)。
- 遺伝的な体質が関係していると考えられており、家族に側弯症の人がいると起こりやすいことが知られています。
- 成長が急速に進む時期に、背骨の成長のバランスがずれることが関係していると考えられています。
- 姿勢の悪さや、重いかばんを片側で持つことは原因になりません。
- 背骨の生まれつきの形の異常や、神経・筋肉の病気による側弯症は「特発性」とは区別されます。
リスク要因
- 思春期の女子
- 家族(親やきょうだい)に側弯症の人がいる
- 身長が急に伸びる成長期(成長スパート)
- 成長がまだ残っている年齢で見つかった場合(進行しやすい)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 脚のしびれや力の入りにくさがある
- 排尿・排便のトラブルがある
- 突然の激しい背中の痛みがある
- 呼吸が苦しいと感じる
定期受診を予約すべき場合:
- 肩の高さが左右で違う、背中がねじれて見える
- 前かがみになると背中の片側が高くなる
- 学校健診で側弯を指摘された
- 服が合わない、写真で姿勢の左右差が気になる
- 背中や腰の疲れやすさが続いている
診断
まず問診と診察で、肩の高さや腰のライン、背中の左右差を確認します。前かがみになってもらう「前かがみテスト(アダムステスト)」で、背中の片側が高くなるかを調べます。確定にはレントゲン写真が使われ、背骨の曲がりの角度(コブ角)を測ります。あわせて、成長がどのくらい残っているかも確認します。
行われる可能性のある検査
- 診察(視診・触診)と前かがみテスト
- 背骨のレントゲン写真(曲がりの角度を測る)
- 骨の成長の度合いを見る検査(手のレントゲンなど)
- 必要に応じてMRI検査(痛みが強い場合や、神経の症状がある場合など)
- 身長の定期的な測定
診察で予想されること
診断後は、曲がりの角度と成長の残り具合に応じて、数か月から半年ごとの定期受診で変化を追うことが多いです。受診のたびにレントゲンを撮る場合があります。検査の頻度や内容は医師の判断によりますので、不安な点はその場で質問してみましょう。
治療
治療の考え方は、曲がりの角度と、これからどれだけ身長が伸びるか(成長の残り)で決まります。軽度であれば定期的な観察、中等度で成長が残っている場合は装具(コルセット)が検討され、曲がりが大きく進む場合は手術が選択肢になります。治療の目的は、曲がりの進行を抑え、日常生活を快適に保つことです。
自宅でのセルフケア
- 姿勢を意識し、長時間同じ姿勢を避ける
- 無理のない範囲で体を動かし、体幹(お腹や背中)の筋力を保つ
- 装具を使う場合は、医師や看護師に指示された時間と方法を守る
- 定期的な受診を欠かさず、変化を記録しておく
- 睡眠と休息を十分にとる
医療治療
治療には、定期的な観察(経過観察)、装具療法(体の外側から支えるコルセット)、理学療法などの運動療法、そして手術があります。装具は、成長が残っている時期に曲がりの進行を抑える目的で使われます。薬で背骨の曲がりそのものを治すことはできません。痛みがある場合は、痛みへの対処法を医師に相談してください。具体的な治療方針は、角度・年齢・成長の状況をふまえて医師と一緒に決めていきます。
手術が検討される場合
曲がりの角度が大きく、進行が続く場合に手術が検討されます。一般的には角度が大きい場合や、装具でも進行を抑えられない場合が目安になりますが、判断は年齢や成長の状況、生活への影響を含めて医師と相談して決めます。手術を勧められた場合は、目的・利点・リスクをよく説明してもらい、納得してから決めましょう。
この病気と共に生きる
多くの場合、学校生活や部活動、仕事を続けながら過ごせます。運動を一律に制限する必要はないことがほとんどです。装具を使う場合は、服の工夫や着け心地の調整など、生活になじませる方法を医療スタッフと一緒に考えると続けやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- ウォーキングや水泳など、無理なく続けられる運動を取り入れる
- 長時間の同じ姿勢を避け、ときどき体を動かす
- 荷物は片側だけに偏らせず、リュックなど両肩で持てるものを使うと楽
- 自分に合った椅子や机の高さを調整する
- 身長や姿勢の変化をときどき家族と確認する
食事と運動
特別な食事療法はありません。バランスの良い食事を心がけ、骨の健康に大切なカルシウムやビタミンDを含む食品(乳製品、小魚、大豆製品、きのこ類など)を意識してとりましょう。運動は、体幹を鍛えるものや、背中を伸ばすストレッチ、水泳などが取り入れられます。痛みがある場合は無理をせず、どの運動が自分に合うか医師や理学療法士に相談してください。
精神的健康と心の健康
見た目の変化や装具の存在は、思春期の自尊感情や気分に影響することがあります。恥ずかしさや不安、友だちとの違いへの悩みは自然な気持ちです。一人で抱え込まず、家族や学校の先生、保健室の先生、医療スタッフに話してみてください。つらい気持ちが続くときは、かかりつけ医や地域の保健センター、学校の相談窓口など、専門の相談先を頼りましょう。
予防
特発性側弯症は原因がはっきりしていないため、確実な予防方法はありません。姿勢の悪さやかばんの持ち方が原因ではないので、自分や子どもを責める必要はありません。大切なのは、成長期に定期的に背中をチェックし、変化に早く気づくことです。
ワクチン
特発性側弯症を防ぐワクチンはありません。
検診プログラム
日本では学校健診で運動器検診が行われ、側弯のチェックが含まれています。成長期は、家庭でもときどき前かがみの姿勢で背中の左右差を見てみるとよいでしょう。「要精密検査」と言われたら、早めに整形外科を受診してください。
合併症
治療しない場合
- 成長期に曲がりが進むことがある
- 見た目の変化が大きくなり、衣服が合いにくくなる
- 腰や背中の疲れやすさ、痛みが出ることがある
- 非常に大きな曲がりの場合、まれに呼吸のしづらさにつながることがある
- 見た目への悩みから、気分が落ち込むことがある
長期的な見通し
多くの人は軽度で、日常生活にほとんど支障なく過ごせます。定期的に経過を見ることで変化に早く気づけ、必要に応じて装具や手術などの選択肢があります。早期に発見して適切にフォローすることが大切で、将来への希望を持って過ごせる状態です。心配なことは、遠慮なく医師に相談してください。
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最終更新: 2026年10月24日
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