腸骨動脈瘤(ちょうこつどうみゃくのこぶ)
概要
腸骨動脈は、お腹の下の方から骨盤を通って脚へ向かう血管です。腸骨動脈瘤は、その血管の壁が弱くなり、風船のようにふくらんだ状態をいいます。大きくなると血管が破れる危険が高まるため、大きさを定期的に確認することが大切です。
重要な事実
- 多くの場合は症状がなく、腹部超音波やCTなどの画像検査で見つかります。
- 腹部大動脈瘤(お腹の大きな血管のふくらみ)と一緒に見つかることがあります。
- 禁煙や血圧の管理は、血管の健康を守る助けになります。
まれな病気です。ただし、腹部大動脈瘤がある人では見つかりやすいことがあります。
症状
- 突然の激しいお腹・腰・股の付け根の痛みがある。
- 冷や汗、めまい、失神、意識がぼんやりする。
- 顔色が青白い、脈が速い、血圧が下がったように感じる。
- 脚が急に白っぽい・青っぽくなる、冷たい、脈が触れない、強い痛みがある。
- ⚠新しく痛みが出た、または痛みが強くなってきた。
- ⚠脚の冷感、しびれ、力が入りにくい感じがある。
- ⚠発熱を伴う股の付け根の痛みがある。
- ⚠医師から注意するよう言われた症状が出た。
一般的な症状
- ほとんどの人は症状がありません。
- ふくらみが大きくなると、下腹部、腰、股の付け根に違和感や痛みが出ることがあります。
- 血栓(血のかたまり)が脚の血管を詰まらせると、脚の冷感、しびれ、歩くときの痛みが出ることがあります。
子供の症状
- 子どもでは非常にまれです。
- 生まれつきの血管の弱さ、体を支える組織の病気、感染、けがが関係することがあります。
- 多くは別の理由で受けた検査のときに見つかります。
高齢者の症状
- 高齢者では動脈硬化の影響で見つかりやすい傾向があります。
- 無症状のことが多く、健診や別の病気の検査で見つかることがあります。
- 腰や股の付け根の痛み、脚の冷感、歩行時の脚の痛みがある場合は相談してください。
- 定期的な画像検査で大きさを確認することが大切です。
原因
主な原因
- 動脈硬化:血管の壁が傷み、弱くなってふくらむことがあります。
- 加齢による血管の変化。
- 喫煙による血管への負担。
- 高血圧など、血管に負担をかける状態。
- 生まれつきの血管や結合組織(体を支える組織)の弱さ。
- 感染やけが、過去の血管の手術が関係するまれな場合もあります。
リスク要因
- 高齢の男性。
- 現在喫煙している、または過去に喫煙していた。
- 高血圧。
- コレステロールが高い状態。
- 糖尿病など、動脈硬化を進める病気。
- 腹部大動脈瘤がある。
- 家族に動脈瘤の人がいる。
- 肥満や運動不足。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の激しいお腹・腰・股の付け根の痛み、失神、脚の急な色の変化や冷感があるときは、ためらわず119番に連絡してください。
- 痛みが新しく出た、強くなった、発熱を伴うなど、いつもと違う症状があるときは、同じ日のうちに医療機関へ相談してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 健診や超音波検査で「血管がふくらんでいる」と言われた。
- 腹部大動脈瘤や腸骨動脈瘤があると言われた。
- 家族に動脈瘤の人がいる。
- 禁煙や血圧、コレステロールの相談をしたい。
- 脚の冷感や歩行時の痛みが続いている。
診断
問診と診察のあと、血管の大きさや形を確認する画像検査を行います。足の脈を触って、脚への血流も確認します。
行われる可能性のある検査
- 腹部超音波検査(お腹に機械を当てて血管を見る検査)。
- 造影CT検査(血管を写りやすくする液体を使って詳しく見る検査)。
- MRI・MRA検査(磁石の力で血管を描く検査)。
- 血液検査(腎臓の働きや炎症の有無を確認)。
- 足の脈を触る診察。
診察で予想されること
超音波検査は痛みが少なく、短時間で終わることが多い検査です。CTでは血管を写りやすくする液体を使うことがあり、腎臓の働きやアレルギーの有無を事前に確認します。結果をもとに、瘤の大きさや位置を確認し、経過観察か治療かを医師と相談します。
治療
治療は、瘤の大きさ、大きくなる速さ、症状、体の状態によって決まります。小さいものは定期的な画像検査で経過を見ることが多く、生活習慣の管理も大切です。大きい、急に大きくなる、症状がある場合は、手術や血管内治療を検討します。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する。禁煙が難しいときは医師や薬剤師に相談する。
- 医師に言われた血圧やコレステロールの薬を、自己判断でやめない。
- 塩分を控えめにし、バランスのよい食事を心がける。
- 無理のない範囲で歩くなど、体を動かす。
- 決められた間隔で画像検査を受け、受診を続ける。
- 突然の強い痛みや脚の急な変化があれば、すぐ119番に連絡する。
医療治療
瘤を小さくする飲み薬はありません。医師は、血圧、コレステロール、血糖を管理する薬や、禁煙を助ける方法を検討することがあります。血栓が関係する場合は、血液を固まりにくくする薬を使うことがあります。痛みや炎症があるときは、原因に応じた治療を行います。
手術が検討される場合
瘤が大きい、急に大きくなる、症状がある、破裂の危険が高いと医師が判断したときに手術を検討します。方法には、開いて人工血管に置き換える手術と、カテーテルを使って金属の網と布でできた筒(ステントグラフト)を入れる血管内治療があります。体への負担や血管の形を考えて選びます。
この病気と共に生きる
決められた間隔で画像検査を受け、血圧を家で記録すると変化に気づきやすくなります。禁煙を続け、体調の変化をメモしておくと受診時に役立ちます。旅行や運動の制限については、事前に医師に相談してください。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける。
- お酒は適量にする。
- 睡眠を十分にとり、ストレスをためすぎない。
- 便秘を防ぎ、いきみすぎないようにする。
- 無理のない範囲で体を動かす。
- 定期的な受診と検査を欠かさない。
食事と運動
塩分を控えめにし、野菜、果物、魚、大豆製品などを取り入れたバランスのよい食事を心がけます。運動は、歩行など無理のない有酸素運動から始めると続けやすいです。脚が痛くなる場合は休みながら行い、運動を始める前に医師へ相談してください。
精神的健康と心の健康
「血管がふくらんでいる」と言われると不安になるのは自然なことです。検査結果を待つ間は特に心配になりやすいものです。家族や医療者に気持ちを話し、一人で抱え込まないようにしてください。つらい気持ちが続くときは、お住まいの保健所や医療機関、公的な相談窓口に相談できます。緊急の場合は119番に連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、動脈硬化を進めない生活はリスクを下げる助けになります。特に禁煙は大切です。血圧、コレステロール、血糖を管理し、厚生労働省がすすめる禁煙や生活習慣病の予防の考え方も参考にしてください。
ワクチン
この病気を直接防ぐワクチンはありません。
検診プログラム
腸骨動脈瘤だけを対象にした国の定まったスクリーニングはありません。腹部大動脈瘤がある人、家族歴がある人、医師が必要と判断した人は、超音波やCTで確認することがあります。健診の機会に医師へ相談してください。
合併症
治療しない場合
- 破裂:瘤が破れると、突然の激しい痛みや出血が起こり、命に関わることがあります。
- 血栓:血のかたまりが脚の血管を詰まらせ、強い痛み、冷感、組織が傷む危険があります。
- 周りの神経や静脈、尿管を圧迫して、しびれやむくみ、排尿の変化を起こすことがあります。
- 腹部大動脈瘤など、ほかの血管の病気を合併することがあります。
長期的な見通し
多くは定期的な観察で管理でき、必要になれば手術や血管内治療で対処できます。禁煙と生活習慣の管理を続けることで、リスクを下げることが期待できます。心配な症状があるときは、早めに医療機関に相談してください。
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最終更新: 2026年10月24日
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