妊娠中の予防接種(ワクチン接種)
概要
妊娠中の予防接種とは、妊娠している間や妊娠を考えている時期に、ワクチン(予防接種)をどのように考えたらよいかをまとめたテーマです。ワクチンは、病原体のごく一部や、弱めた病原体を使って、体に「免疫」=病気から身を守る力の準備をさせるものです。妊娠中は、お母さん自身が感染症で重症化しにくくなることと、生まれてくる赤ちゃんが生後しばらくの間守られることの両方が期待できます。一方で、妊娠中は接種を避けたほうがよい種類のワクチン(生ワクチン=生きている病原体を弱めて作ったもの)もあるため、接種の前に必ずかかりつけ医か産婦人科医に相談することが大切です。
重要な事実
- 妊娠中に接種が勧められるワクチンと、妊娠中は避けるワクチンがあります。種類によって考え方が違うため、自己判断せず医療者に確認しましょう。
- ワクチンの効果はお母さん自身だけでなく、生まれた赤ちゃんを生後しばらくの間守ることにもつながります。
- 妊娠を考えている段階で接種歴や免疫(抗体)の有無を確認しておくと、計画が立てやすくなります。
妊娠中の予防接種はめずらしいことではありません。日本でも世界でも、妊娠中の方に接種を勧めるワクチンがあり、妊娠健診の場で話題になることもよくあります。反対に、妊娠中は避ける種類のワクチンもあるため、「受けたほうがよいか、受けないほうがよいか」を一人で決めず、医療者と一緒に考えるのが一般的です。
妊娠中の方、妊娠を考えている方、産後まもない方、そしてそのパートナーやご家族が関係します。医療や保育、教育など多くの人と接する仕事をしている方、持病のある方、海外へ渡航する予定のある方は、とくに早めに相談しておくと安心です。
症状
- 接種の直後から数時間以内に、息苦しさ、のどの腫れ・詰まる感じ、全身のじんましん、意識が遠のく感じがある(アナフィラキシー=強いアレルギー反応の可能性があります。すぐに119番へ)
- 妊娠中に激しい腹痛、性器からの出血、胎動(おなかの赤ちゃんの動き)が感じられない
- 突然の強い頭痛、視界の異常、急なむくみ、けいれん
- ⚠接種後に38℃以上の発熱が続く、またはどんどん強くなる
- ⚠接種した場所の腫れが大きく広がる、膿が出る、痛みが強い
- ⚠妊娠中に少量の出血が続く、尿の量が減った、水分がとれない
一般的な症状
- 接種した場所の痛み、赤み、腫れ(多くは数日で落ち着きます)
- 軽い発熱やだるさ、頭痛
- 眠気や体が重い感じ
子供の症状
- このテーマは妊娠中のご本人向けのため、お子さんに直接あてはまる症状はありません
- ただし、お母さんが妊娠中に受けたワクチンの効果で、生まれた赤ちゃんが生後しばらくの間、いくつかの感染症から守られることがあります
高齢者の症状
- 年齢によって考え方が大きく変わるテーマではありません。妊娠中は同じように医療者への相談が大切です
- 持病や服薬がある方は、年齢にかかわらず事前にかかりつけ医へ伝えましょう
原因
主な原因
- 妊娠中は体の免疫のバランスが変化し、感染症にかかると重症化しやすくなることがあります
- インフルエンザなどの感染症は、妊婦さんでは肺炎などを合併しやすいとされています
- 一部の感染症(風疹など)は、妊娠中にかかるとおなかの赤ちゃんに影響することがあります
- ワクチンを接種していない、または接種歴がわからないままでいると、防げたはずの感染症のリスクが残ります
リスク要因
- 医療・保育・教育など、多くの人と接する仕事をしている
- 糖尿病やぜんそく、心臓の病気などの持病がある
- 海外へ渡航する予定がある、または渡航歴がある
- 家族や身近に小さな子どもがいる
- これまでにワクチンの接種歴が少ない、記録が残っていない
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 接種後に息苦しさや全身のじんましん、意識がぼんやりするなどの症状が出た(ためらわず119番)
- 妊娠中に腹痛、出血、胎動の減少がある
- 接種後の発熱が高いまま続く、または急に具合が悪くなる
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠中に受けられるワクチンかどうかを事前に確認したいとき
- 妊娠を考え始めたとき(妊娠前の接種計画を立てたいとき)
- 母子健康手帳や接種記録を見て、これまでの接種歴を確認したいとき
- 海外渡航や、まわりで感染症が流行しているとき
診断
予防接種は「診断する」ものではなく、これまでの接種歴と、免疫(抗体=病気への防御力)があるかどうかを確認するものです。妊娠健診の問診や、母子健康手帳の記録をもとに、医療者が一緒に整理してくれます。
行われる可能性のある検査
- 母子健康手帳やこれまでの接種記録の確認
- 血液検査による抗体の有無の確認(風疹など一部の感染症で行われます)
- 問診・体温測定・体調の確認(接種当日に行われます)
診察で予想されること
確認は短時間で終わることが多く、痛みを伴うものは採血くらいです。結果によって「今の妊娠中に接種する」「産後まで待つ」「すでに免疫があり接種は不要」といった選択肢が示されます。結果がわからず不安な場合は、次の健診で質問してみましょう。
治療
このテーマの中心は「予防」です。接種後の体調の整え方と、もし感染症にかかってしまったときの対応に分けて考えるとわかりやすくなります。
自宅でのセルフケア
- 接種当日は激しい運動や深酒を控え、ゆっくり休む
- 発熱やだるさがあるときは水分をこまめにとり、体を冷やさない
- 接種部位を強くもんだり、長時間こすったりしない
- 接種後の体調の変化をメモしておくと、次回の相談がスムーズになります
医療治療
接種後の副反応が強いときは、医療機関で状態を確認してもらうことがあります。妊娠中に感染症にかかった場合は、産婦人科とかかりつけ医が連携して、妊娠週数や症状に合わせた対応を考えます。使うお薬については、妊娠中でも使えるかどうかを医師・薬剤師が判断しますので、自己判断で市販薬を使ったり、服用中のお薬を勝手にやめたりしないようにしてください。
この病気と共に生きる
妊娠中は、体調の変化を記録しながら日常生活をゆったり整えることが大切です。接種の予定は、健診の日程とあわせて無理のないように組み立てると続けやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 手洗い・うがい・換気など、基本的な感染対策を続ける
- 人混みの多い場所や、感染症が流行している時期の外出は無理をしない
- 睡眠をしっかりとり、疲れをためない
- 家族にも接種歴や体調を確認しておくと安心
食事と運動
特別な食事制限は必要ありません。主食・たんぱく質・野菜をバランスよくとり、水分をこまめにとりましょう。運動は、妊娠経過に問題がないと医師に言われている範囲で、散歩など無理のない軽い運動がおすすめです。体調がすぐれない日は休むことを優先してください。
精神的健康と心の健康
「受けたほうがいいの?」「赤ちゃんに影響はない?」と迷うと、不安が大きくなりがちです。迷っていることを言葉にして医療者に伝えるだけで、気持ちが軽くなることがあります。眠れない日が続く、気分の落ち込みが強い、涙が止まらないといったときは、一人で抱えずに産婦人科や保健センター、地域の相談窓口に話してみてください。気持ちが追い詰められて自分や赤ちゃんを傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに119番、または地域の救急・相談窓口に連絡してください。
予防
ワクチンで防げる感染症は少なくありません。妊娠前から計画的に接種歴を確認し、妊娠中に受けられるワクチンは医療者と相談のうえで受けておくと、ご自身と赤ちゃんを守る备えになります。あわせて手洗いや換気などの基本的な対策も大切です。
ワクチン
ワクチンには大きく分けて、病原体の働きをなくして作った「不活化ワクチン」と、弱めた病原体を使う「生ワクチン」があります。妊娠中は、生ワクチンは原則として避け、不活化ワクチンなどは妊娠経過に応じて相談する、という考え方が一般的です。インフルエンザや百日せきを含むワクチンなど、妊娠中に接種が勧められるものもありますが、実際に受けるかどうかは妊娠週数や体調、持病をふまえて、かかりつけ医・産婦人科医と相談して決めましょう。厚生労働省や学会が公表している最新の情報も参考になります。
検診プログラム
妊娠を考えたタイミングで、風疹などの抗体(免疫)があるかを血液検査で確認しておくと、産後の接種計画まで含めて考えやすくなります。妊娠健診では、問診や母子健康手帳の記録をもとに接種歴の確認が行われます。
合併症
治療しない場合
- 感染症にかかると、妊娠中は重症化しやすく、入院が必要になることがあります
- 高い熱や咳が続くと、体力が消耗して妊娠生活がつらくなることがあります
- 一部の感染症は、おなかの赤ちゃんに影響することがあります
- 接種歴がわからないままだと、防げたはずの感染症のリスクが残ってしまいます
長期的な見通し
多くの方は、医療者と相談しながら接種の予定を整え、大きな問題なく妊娠生活を過ごしています。迷ったときは「聞いてみる」だけで十分な一歩です。妊娠中の体調や不安は、かかりつけの産婦人科・かかりつけ医・薬剤師が一緒に考えてくれますので、一人で抱え込まないでください。
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最終更新: 2026年10月24日
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