予防接種の受け忘れ(キャッチアップ)と追加接種(ブースター)
概要
予防接種は、決められた回数・決められた間隔で受けることで、体の中に病気への備え(免疫)がつくられます。このページで扱うのは、主に2つの場面です。ひとつは「受け忘れ(キャッチアップ)」—引っ越しや病気、忙しさなどで予定から遅れてしまった分を、今から取り戻すこと。もうひとつは「追加接種(ブースター)」—時間がたつと減ってきた備えを、もう一度補うことです。大切なのは、遅れてしまっても多くの場合「最初からやり直し」ではなく、途中から続きを受けられるということです。
重要な事実
- 予定から遅れても、多くのワクチンは最初からやり直す必要がなく、続きから受けられます。
- 日本の定期接種(公費で受けられる予防接種)には対象の年齢があり、それを過ぎると任意接種(自費)になることがあります。早めに確認しましょう。
- 追加接種は、時間とともに弱くなった免疫を補い、備えを長持ちさせるためのものです。
- 受け忘れはめずらしいことではありません。引っ越し・入院・出産・海外渡航など、きっかけは誰にでもあります。
とてもよくあることです。引っ越しで自治体からの案内が届かなかった、子どもが病気で予定日に行けなかった、仕事や介護で忙しくて忘れていた、海外に住んでいて日本の予定と合わなかった——こうした理由で接種歴に空白ができる人は少なくありません。恥ずかしいことでも、責められることでもありません。
子どもから高齢者まで、どなたにも関係します。特に、乳幼児とそのご家族、引っ越しや海外渡航を予定している人、妊娠を考えている人、心臓・呼吸器・糖尿病などの基礎疾患(もともとある持病)がある人、そして高齢者では、過去の接種歴を覚えていないことがあるため確認が大切です。
症状
- 接種後30分以内に、息苦しさ・ゼーゼーする呼吸・声が出しにくいなどの呼吸の異常がある(アナフィラキシー=強いアレルギー反応の可能性)。
- 顔・まぶた・くちびる・のど・舌が急に腫れてきた。
- 全身にじんましんが出て、広がり続けている。
- 意識がもうろうとしている、ぐったりして反応が弱い。
- けいれんが続いている、または意識が戻らない。
- ⚠接種後から数日、高い熱が続く。
- ⚠接種した部分の赤み・腫れ・痛みがどんどん広がり、腕や脚全体に及ぶ。
- ⚠接種後、強い頭痛・嘔吐・ぐったりした様子が続く。
- ⚠いつもと違う様子が続き、ご家族が見ていて不安が強い。
一般的な症状
- この話題は「病気の症状」ではなく、接種の予定がずれている状態を扱います。母子健康手帳(母子手帳)や接種記録と、自治体の予定表を見比べて「抜けている回がある」と気づくのが典型的です。
- 引っ越しのあと、新しい自治体からの案内が届かず、そのままになっている。
- 子どもが熱や入院で予定日に行けず、その後の予定を決めないまま時間がたってしまった。
- 海外赴任・留学から戻り、日本の予定と食い違っている。
- 保育園・幼稚園・学校や留学の書類で「接種歴の提出」を求められて初めて気づく。
子供の症状
- 母子手帳の記録を見ると、同じワクチンの2回目・3回目が空欄になっている。
- 入園・入学のときに提出する書類で、受け忘れを指摘される。
- きょうだいの予定と混ざってしまい、下の子の分が抜けている。
- 注射が怖くて泣いてしまい、その日は受けられずに帰ったままになっている。
高齢者の症状
- 高齢者では、肺炎球菌(はいえんきゅうきん)や帯状疱疹(たいじょうほうしん)、インフルエンザなどの接種歴を覚えていないことがあります。
- かかりつけ医を変えたことで、過去の接種の情報が引き継がれていない。
- 持病の治療で通院が多く、予防接種のことを聞く機会がなかった。
原因
主な原因
- 引っ越しや転居で、自治体からの案内や予定表が届かなくなった。
- 発熱や入院などで予定日に行けず、そのまま次の予定を決めていなかった。
- 仕事・育児・介護が忙しく、予定を忘れてしまった。
- ワクチンの供給が一時的に少なく、予約が取れない時期があった。
- 「もう大人だから関係ない」「昔受けたから大丈夫」という思い込みがあった。
- 副反応(注射のあとの熱や腫れ)への不安から、次の回に踏み切れなかった。
- 海外在住・海外渡航があり、日本の予定と合わなかった。
リスク要因
- 最近引っ越した、または引っ越しを予定している。
- 海外に住んでいる、または海外へ渡航する予定がある。
- 心臓・呼吸器・腎臓・糖尿病などの基礎疾患(もともとある持病)がある。
- 妊娠中、または妊娠を考えている。
- 高齢で、過去の接種記録が手元にない。
- かかりつけ医が決まっておらず、健康の相談先がはっきりしない。
- 母子健康手帳や接種記録の保管場所がわからない。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 接種後に息苦しさ、顔やのどの腫れ、全身のじんましん、意識がもうろうとするなどの症状が出た(ためらわず救急へ)。
- 接種後に高い熱が数日続く、けいれんがある、ぐったりして反応が弱い。
- 接種した部分の腫れや赤みが急速に広がっている。
定期受診を予約すべき場合:
- 母子健康手帳や接種記録を見て、予定とずれている回があることに気づいた。
- 入園・入学・留学・海外渡航の準備で、接種歴の確認が必要になった。
- 妊娠を考えている、または妊娠中で、受けられるワクチンを相談したい。
- 高齢で、肺炎球菌や帯状疱疹などの接種歴がわからない。
- 副反応が心配で、次の接種に踏み切れないでいる。
診断
この話題では「診断」よりも「接種歴の確認」が中心になります。母子健康手帳、予防接種済証、自治体からの記録、かかりつけ医の記録などを突き合わせて、これまでに何を何回受けたのかを整理します。そのうえで、年齢・健康状况・生活背景に合わせて、これから何を、どの間隔で受けるかを一緒に決めていきます。
行われる可能性のある検査
- 母子健康手帳・予防接種済証・自治体の接種記録の確認。
- 問診(体調、これまでの病気、アレルギー歴、妊娠の可能性などの確認)。
- 必要に応じて抗体検査(血液を採って、免疫がどのくらい残っているかを調べる検査)。すべての人に必要なわけではありません。
- 海外渡航の場合は、渡航先の推奨事項を確認するための情報提供。
診察で予想されること
診察は短時間で終わることが多いです。記録を見せながら「どこまで受けたか」「いつ頃受けたか」を話し、看護師や医師と一緒に今後の予定表を作ります。同時に複数のワクチンを受ける「同時接種」が可能な組み合わせもあります。注射が怖い方、副反応が心配な方は、その気持ちもそのまま伝えてください。
治療
予防接種は「治療」ではなく、病気を防ぐための備えです。受け忘れがあった場合は、年齢やこれまでの接種歴に合わせて「キャッチアップスケジュール(取り戻しの予定表)」を作ります。多くの場合、最初からやり直すのではなく、続きから再開します。追加接種は、時間がたって弱くなった免疫を補うために行います。
自宅でのセルフケア
- 母子健康手帳・接種記録・自治体の案内を、一か所のフォルダやスマホのアプリにまとめておく。
- スマホのカレンダーやリマインダーに、次の予定日を登録する。
- 体調のよい日を選んで受ける。熱があるとき、体調がすぐれないときは無理をせず、日を改める。
- 接種の前日はしっかり睡眠をとり、当日は朝食を抜かずにふだんどおりに過ごす。
- 接種後は、医療機関で案内された時間だけ様子を見てから帰る。当日は激しい運動や飲酒を控えめにする。
- 接種した日と、その後の体調の変化をメモしておくと、次に相談するときに役立つ。
- 予定表を家族と共有しておくと、子どもや高齢者の分も抜けにくくなる。
医療治療
医療機関では、これまでの接種歴を確認したうえで、年齢・健康状態・生活背景に合わせた接種計画を立てます。ワクチンの種類や回数・間隔は、国の方針や年齢によって異なるため、かかりつけ医や自治体の窓口で確認してください。同時接種が可能な組み合わせもあります。注射のあとの熱や腫れなどの副反応(ワクチンを受けたあとに起こる体の反応)への対応は、通常は症状に合わせた対処となります。具体的な薬や量については、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
予防接種そのものに手術は関係しません。ただし、手術や入院を予定している場合は、時期をずらしたほうがよいことがあるため、主治医と予防接種の予定を相談してください。
この病気と共に生きる
予防接種は、一度受けたら終わりではなく、年齢とともに見直していくものです。母子健康手帳や接種記録を年に一度は開いて、家族全員分をまとめて確認する習慣をつけると安心です。引っ越したとき、出産したとき、子どもが進学したとき、家族に病気が見つかったとき——そうした節目が、記録を見直すよいきっかけになります。
生活習慣のアドバイス
- 引っ越しのあとは、新しい自治体の予防接種窓口に連絡して、案内が届くようにしておく。
- かかりつけ医を決めておくと、接種歴の管理や相談がしやすくなる。
- 海外渡航の予定が決まったら、早めに(数か月前から)医療機関や検疫所の相談窓口に相談する。
- 家族の接種記録を1冊のファイルにまとめ、家の中で誰でも見られる場所に置く。
- 自治体の案内が来なくなっても、自分の記録で確認する習慣を持つ。
食事と運動
特別な食事制限はありません。接種の前後は、ふだんどおりのバランスのよい食事と睡眠を心がけましょう。当日の朝は食事を抜かずに、いつもどおりに過ごして構いません。接種後は、強い運動や長時間の激しい活動は控えめにして、体を休める時間を作ると安心です。体調がすぐれないときは無理をせず、予定を変更してください。
精神的健康と心の健康
「受け忘れていた」と気づくと、自分や家族を責めてしまうことがあります。注射が怖い、副反応が心配、情報が多くてどれを信じればよいかわからない——そうした不安も自然な気持ちです。不安は、ひとりで抱えずに、かかりつけ医や看護師、自治体の相談窓口、薬剤師に話してみてください。話すことで気持ちが整理され、具体的な次の一歩が見えてきます。もし気持ちのつらさが続いて日常生活に影響しているときは、地域の相談窓口や医療機関に早めに相談してください。
予防
受け忘れ自体は、工夫でかなり防げます。記録を一か所にまとめる、リマインダーを設定する、引っ越しのときに自治体へ連絡する、年に一度は家族全員分の記録を見直す——こうした習慣が役立ちます。また、予防接種を受けること自体が、感染症とその重症化を防ぐことにつながります。
ワクチン
日本では、決められた年齢で公費(定期接種)で受けられるワクチンと、希望して受ける任意接種のワクチンがあります。対象年齢や回数・間隔は、ワクチンの種類と年齢によって異なります。年齢を過ぎると任意接種になるものもあるため、予定がずれていると感じたら早めに確認しましょう。具体的にどのワクチンをいつ受けるかは、かかりつけ医や自治体の予防接種窓口で相談してください。
検診プログラム
予防接種の分野でいう「スクリーニング」は、抗体検査(免疫がどのくらい残っているかを血液で調べる検査)を指すことがあります。すべての人に必要というわけではなく、風しんやB型肝炎など、状況によって行われることがあります。必要かどうかは医師に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 受け忘れが続くと、その感染症に対する備えが不十分なまま、かかるリスクが残ります。
- 特に乳幼児や高齢者、基礎疾患のある方では、感染したときに重症化しやすいことがあります。
- 保育園・学校・施設など、人が集まる場所では、周りの人に広がる可能性があります。
- 海外渡航の際に、入国や留学の条件として接種証明が必要になることがあります。
- 時間がたつほど過去の記録を探すのが難しくなり、確認に手間がかかることがあります。
長期的な見通し
心配しすぎなくて大丈夫です。多くの場合、今からでも十分に間に合います。記録を確認し、かかりつけ医や自治体の窓口と一緒に予定表を作ることで、抜けていた分を取り戻していけます。遅れたことを責める必要はありません。一歩ずつ進めることが、これからの備えにつながります。
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最終更新: 2026年10月24日
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