結核(TB)の治療 — 知っておきたいこと
概要
結核(けっかく、英語ではTB)は、結核菌(けっかくきん)という細菌が体に入ることで起こる感染症です。多くの場合、肺に炎症が起きますが、リンパ節や骨、腎臓、脳など体のほかの部分に起こることもあります。結核は「昔の病気」と思われがちですが、日本でも今も毎年新しい患者さんが報告されています。大切なのは、結核は適切な治療を最後まで続ければ、ほとんどの場合に治せる病気だということです。治療は数か月にわたるため、途中でやめずに続けることがとても重要になります。
重要な事実
- 結核の治療は、複数の抗菌薬(細菌の増殖を抑える薬)を組み合わせて、通常6か月から9か月ほど続けます。症状が良くなっても途中でやめると、再発したり、薬が効きにくい結核になったりする危険があります。
- 結核は、咳やくしゃみで空気中に飛び出した菌を、同じ場所で長い時間吸い込むことでうつります。手を触っただけでうつるような感染症ではありません。
- 日本では、結核と診断された場合は保健所(ほけんじょ)への届け出が法律で決まっており、保健所が治療の支援や、周りの方への感染確認のお手伝いをしてくれます。
日本では、かつてよりずっと少なくなりましたが、今でも年間およそ1万人弱の新しい患者さんが報告されています。世界的に見ると、結核が多い地域もあり、世界全体では今も多い感染症のひとつです。
日本では高齢の方の割合が大きくなっています。ほかにも、糖尿病のある方、免疫(体を守る力)が下がる病気や治療を受けている方、透析を受けている方、外国で生まれ育った方、医療や介護の現場で働く方などが影響を受けやすいとされています。若い世代では、周りの方からの感染が気づかれにくいこともあります。
症状
- 息が苦しくて話すのが難しい、唇や顔色が青白い
- 口から大量の血を吐いた、または血の混じった痰が大量に出て止まらない
- 意識がぼんやりしている、呼びかけへの反応が弱い
- 胸の激しい痛みと息苦しさが急に出た
- ⚠2週間以上続く咳や痰がある
- ⚠血が混じった痰が出た
- ⚠発熱や寝汗、体重減少が続いている
- ⚠結核と診断された人と長い時間一緒に過ごした心当たりがあり、体調がすぐれない
一般的な症状
- 2週間以上続く咳(せき)
- 痰(たん)が出る、特に血が混じることがある
- 微熱(びねつ)が続く、だるさが続く
- 寝汗(ねあせ)をかく
- 食欲が落ちる、体重が減る
- 胸の痛み、息苦しさ
- 声がかすれる(のどの結核の場合)
子供の症状
- 子どもの結核は症状がはっきりしないことが多く、咳が目立たないこともあります
- 発熱が続く、元気がない、体重が増えない、といったささいな変化だけのことがあります
- 乳幼児は重症になりやすいため、結核の人と長く過ごした心当たりがあれば早めに相談してください
高齢者の症状
- 高齢の方では、咳や痰がほとんど出ず、食欲不振や元気がない、ぼんやりする、といった症状だけのことがあります
- 発熱があっても微熱程度で気づかれにくいことがあります
- もともとの持病の悪化のように見えることもあり、診断が遅れやすいとされています
原因
主な原因
- 結核菌(けっかくきん)という細菌が、空気中を漂う小さな粒となって肺に吸い込まれることで起こります
- 結核の人が咳やくしゃみをしたとき、同じ部屋で長い時間過ごすことでうつりやすくなります
- 感染しても、すぐに発病するとは限りません。体の中に菌が潜んだまま、免疫力が下がったときに発病することがあります(潜伏感染=せんぷくかんせん)
リスク要因
- 高齢であること
- 糖尿病(とうにょうびょう)
- 免疫の力が下がる病気(HIV感染など)や、免疫を抑える治療を受けていること
- 透析(とうせき)を受けている
- 喫煙、栄養不足、過労
- 結核が多い地域での生活、またはそこから来た方との長期間の同居
- 医療・介護施設など、人が多く集まる場所での勤務や生活
- 過去に結核と診断されたことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 血の混じった痰が出た、または喀血(かっけつ)した
- 息苦しさが強い、胸の痛みが続く
- 高熱が続き、食事や水分がとれない
定期受診を予約すべき場合:
- 2週間以上、咳や痰が続いている
- 理由のない微熱、寝汗、体重減少、だるさが続いている
- 結核と診断された人と同じ部屋で長く過ごした心当たりがある
- 保健所や職場の健診で「結核の疑い」や「要精密検査」と言われた
診断
まず問診と診察を行い、胸部のレントゲン写真や痰(たん)の検査を組み合わせて診断します。痰の中に結核菌がいるかを直接調べる検査が中心になります。痰が出しにくいときは、血液の検査や画像の検査を追加したり、場合によっては気管支鏡(きかんしきょう)という、細い管でのどから肺の入り口までを観察する検査を行うことがあります。
行われる可能性のある検査
- 胸部エックス線写真、必要に応じて胸部CT
- 痰(たん)の検査:菌の有無を調べる塗抹(とまつ)検査、菌を育てる培養(ばいよう)検査、菌の遺伝子を調べるPCR検査
- 血液検査(体が結核菌に反応した跡があるかを調べる検査を含む)
- 必要に応じて気管支鏡検査や、胸に水がたまっている場合の検査
- 薬が効きにくいタイプかどうかを調べる検査(治療方針を決めるために大切です)
診察で予想されること
痰の検査は、数日から数週間かかることがあります。結果を待つ間も、咳が続く場合はマスクの着用や部屋の換気など、周りの方への配慮を心がけてください。結核と診断されると保健所に届け出が行われ、保健所の保健師などが治療の継続を支援してくれます。検査や治療の費用について心配があるときは、医療機関や保健所に相談してみてください。
治療
結核の治療は「長く、続けること」が何より大切です。複数の抗菌薬を組み合わせて飲み、通常6か月から9か月ほど続けます。症状が良くなっても、菌が完全にいなくなるまでには時間がかかるため、自己判断でやめると再発したり、薬が効きにくい結核になったりする危険があります。治療の途中では、薬がきちんと効いているか、副作用が出ていないかを定期的に確認します。
自宅でのセルフケア
- 決められた服薬を、決められた期間、毎日続ける(飲み忘れを防ぐ工夫をしましょう)
- 通院日を守り、検査をきちんと受ける
- 咳が出るときはマスクを着用し、部屋をこまめに換気する
- 十分な睡眠と休養をとる
- 禁煙する。喫煙は治りを遅らせることがあります
- 飲酒は控えめにする(薬の負担を減らすため、主治医に相談を)
- 体調の変化や気になる症状は、我慢せずに医療機関に伝える
医療治療
治療は、複数の抗菌薬(細菌の増殖を抑える飲み薬)を組み合わせるのが基本です。組み合わせる理由は、菌を確実に減らし、薬が効きにくい菌が生まれるのを防ぐためです。治療の初めの数か月は薬の数が多く、その後は少ない種類で続ける、という段階的な進め方が一般的です。服薬を続けやすくするために、保健所や医療機関が定期的に連絡をしたり、通院に合わせて服薬を確認したりする支援(服薬支援)が行われます。薬の副作用として、肝臓の負担、皮膚のかゆみ、吐き気、視力の変化などが出ることがあるため、気になる症状があれば主治医に伝えてください。薬の名前や飲み方、量については、必ず主治医や薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
手術が必要になることは多くありませんが、薬の治療で改善しにくい場合、肺に大きな空洞ができた場合、大量の血痰や気胸(ききょう)を繰り返す場合などに、手術が検討されることがあります。手術が必要かどうかは、担当の医師が画像や全身の状態を見て判断します。
この病気と共に生きる
治療中は、周りの方にうつさない工夫と、自分の体をいたわることの両方が大切です。治療の初期は特に、人と会う場面ではマスクを着用し、部屋の換気をこまめに行いましょう。ただ、治療が進んで菌が減ってくれば、感染力は大きく下がります。外出や仕事、学校についての不安は、主治医や保健所に相談すれば具体的な目安を教えてもらえます。服薬を続けることが、いちばんの近道です。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の服薬を忘れない工夫(スマホのアラーム、服薬カレンダー、家族の声かけなど)
- 規則正しい生活リズムと十分な睡眠
- 部屋の換気と、適度な湿度の維持
- 人と会う場面でのマスク着用(治療初期は特に)
- 禁煙、飲酒は控えめに
- 体調の記録をつけて、通院時に医師に見せる
食事と運動
特別な食事制限は必要ありませんが、体力を保つために、たんぱく質(肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など)と野菜をバランスよくとりましょう。食欲が落ちるときは、少量を何回かに分けて食べるのもよい方法です。運動は、息苦しさやだるさが強い時期は無理をせず、体調が落ち着いてきたら散歩など軽い運動から始めましょう。どの程度動いてよいかは、主治医に相談してください。
精神的健康と心の健康
結核と聞くと、驚きや不安、恥ずかしさ、周りからどう思われるかの心配など、さまざまな気持ちがわいてくるのは自然なことです。治療が長く続くことで、気分が落ち込んだり、イライラしたりすることもあります。一人で抱え込まず、家族や保健所の保健師、医療機関の相談窓口に話してみてください。つらい気持ちが続くときや、眠れない、何もする気が起きないといった状態が続くときは、医療機関や地域のこころの相談窓口に相談を。緊急の場合は119番に連絡してください。
予防
結核は、早期に見つけて治療することが、自分にも周りにも一番の予防になります。日ごろから、部屋の換気を心がけ、長引く咳があるときはマスクを着用しましょう。周りに結核の方が出たときは、保健所が行う接触者健診(せっしょくしゃけんしん)を受け、感染していないかを確認することが大切です。免疫力を保つために、十分な睡眠、バランスの良い食事、禁煙も役立ちます。
ワクチン
日本では、結核を予防するためのワクチン(BCG)が、乳幼児を対象に定期接種として行われています。大人になってからの追加接種は一般的ではありません。接種の時期や回数については、自治体の案内やかかりつけの小児科に確認してください。
検診プログラム
結核が心配なときは、医療機関で胸部のレントゲン写真や痰の検査を受けることができます。高齢者施設や医療機関では、定期的な健診が行われています。結核の患者さんと長く同じ空間で過ごした方は、症状がなくても接触者健診を受けることが勧められます。健診の案内が届いたら、忘れずに受けましょう。
合併症
治療しない場合
- 肺が傷つき、空洞(くうどう)ができて呼吸の働きが落ちることがあります
- 血の混じった痰や喀血(かっけつ)が起こることがあります
- 胸に水がたまる(胸膜炎)、肺の外に空気がもれる(気胸)ことがあります
- 菌が血液に乗って全身に広がり、髄膜炎(ずいまくえん)や粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)といった重症の状態になることがあります
- 周りの大切な人に感染が広がる可能性があります
長期的な見通し
結核は、適切な治療を最後まで続ければ、ほとんどの方が治せる病気です。治療の途中で症状が落ち着いても、そこでやめずに続けることが、再発や薬が効きにくい結核を防ぐ鍵になります。通院や服薬の支援も利用できます。不安や困りごとは、ひとりで抱えずに主治医や保健所に相談しながら、一歩ずつ進んでいきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月24日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.