失禁用品(尿もれ・便もれのケア用品)について
概要
失禁用品とは、尿や便が自分の意思と関係なく少しもれてしまう「失禁」に対処するためのケア商品の総称です。紙おむつ、尿とりパッド、吸収型の下着(尿もれ用ショーツ)、男性用の尿漏れパッド、夜用のパンツなど、たくさんの種類があります。これらは病気を治すための薬ではなく、毎日の生活を快適に、安心して過ごすための「道具」です。合わないと感じたら別の形やサイズに替えてよく、体の形・もれる量・生活スタイルに合わせて選ぶことが大切です。
重要な事実
- 失禁用品は症状そのものを治すものではありません。困りごとが続くときは、用品だけで我慢せず、医師や看護師、薬剤師に相談してみましょう。
- 種類がとても多く、吸収量・形・サイズ・肌ざわりがそれぞれ違います。少量もれ用から長時間用まであり、自分に合うものを選ぶことで外出や睡眠の不安がぐっと減ります。
- こまめに交換し、肌を洗ってよく乾かすことが基本です。交換の回数が足りないと、かぶれや床ずれ(長期の圧迫でできる皮膚の傷)の原因になることがあります。
とてもよくある悩みです。年齢を問わず経験する人が多く、特に高齢の方では珍しいことではありません。恥ずかしいことではなく、工夫や相談でずいぶん楽になるものです。
出産を経験した女性、閉経後の女性、前立腺の病気や手術を経験した男性、高齢の方、神経の病気(脳卒中や脊髄の病気など)のある方、認知症の方、車いすや寝たきりで過ごす方、おむつはずれの時期の子どもや夜尿(おねしょ)のある子どもなど、幅広い人が使っています。
症状
- 尿がまったく出ず、下腹部が張って痛い(尿閉=尿が膀胱にたまって出せない状態の可能性)— すぐに119番へ連絡してください
- 高熱、腰や背中の強い痛み、ぐったりしている、意識がぼんやりしている(感染症が重くなっているおそれ)
- 失禁と同時に、ろれつが回らない、片側の手足が動かない、顔がゆがむ、急に立てない(脳卒中のサインの可能性)
- ⚠尿に血が混じった(初めて気づいたとき)
- ⚠発熱、排尿時の痛み、においの強い尿がある
- ⚠失禁用品を使っていて、皮膚が赤くただれる、傷になる、痛む
- ⚠力が入らない、感覚がないなどと一緒に、急に失禁が始まった
- ⚠水分がとれない、尿の量がとても少ない、体がむくむ
一般的な症状
- 咳・くしゃみ・笑ったとき・走ったときなどに、少し尿がもれる
- トイレに間に合わずもれてしまう、強い尿意をがまんできない
- 排尿したあとに下着がぬれている、少量の尿がぽたぽた出る
- 便がもれてしまう、おならと一緒に少し出てしまう
- 夜中に何度もトイレに起き、間に合わないことがある
- 下着やシーツの汚れを気にして、外出や人付き合いを控えるようになった
- 肌の赤み・かぶれ・においが気になる(用品の交換の回数や種類が合っていないサインのことがあります)
子供の症状
- おむつはずれの時期の失敗は自然なことで、心配しすぎなくて大丈夫です
- 夜尿(おねしょ)は小学校に入ってからも続くことがあります。叱らず、夜用パンツなどを上手に使います
- 昼間の尿もれが続く、排尿のときに痛がる、何度もトイレに行くなどの場合は、小児科で相談しましょう
- 子ども用のサイズの用品もあります。本人の気持ちを傷つけない声かけが大切です
高齢者の症状
- 加齢による筋力の低下や頻尿で、トイレに間に合わないことが増える
- 認知症や体の動きにくさで、トイレの判断や移動が難しくなる
- 皮膚が弱くなり、かぶれや床ずれ(長時間の圧迫でできる皮膚の傷)が起こりやすい
- 介護する家族と、交換のタイミングや用品の選び方を相談しておくと安心です
原因
主な原因
- 骨盤底筋(骨盤の底をハンモックのように支える筋肉)のゆるみ
- 前立腺が大きくなる病気や、前立腺の手術のあと
- 膀胱が自分の意思と関係なく縮んでしまう状態(過活動膀胱)
- 神経の病気(脳卒中、脊髄の病気、パーキンソン病など)
- 便秘(腸にたまった便が膀胱を圧迫します)
- 薬の影響(利尿剤など、尿の量や回数が変わる薬があります)
- 認知症によるトイレの判断の難しさや、体の動きにくさ
- 尿路の感染症
リスク要因
- 年齢を重ねること
- 出産の経験
- 体重が多めであること
- 喫煙や、長く続く咳
- 慢性的な便秘
- 前立腺の病気や手術、骨盤の手術の経験
- 神経の病気や認知症
- 車いすや寝たきりで過ごす時間が長いこと
- カフェインやアルコールのとりすぎ
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿がまったく出ない、下腹部が張って痛い
- 尿に血が混じる
- 発熱や排尿時の強い痛みがある
- 失禁用品による皮膚のただれや傷ができた
- 急に失禁が始まり、体の動きや感覚の異常もある
定期受診を予約すべき場合:
- 少しの尿もれが続いていて、気になっている
- 頻尿や尿意の切迫で、生活に支障が出ている
- 何度も夜中にトイレに起きて眠りが浅い
- 用品が体に合わない、かぶれる、においが気になる
- 外出や人付き合いを控えるようになった
- 便もれがある
診断
まずは問診で、どんなときにもれるのか、回数や量、生活への影響をうかがいます。あわせて、排尿の記録をつけてもらったり、尿の検査をしたりして、原因を推測していきます。必要に応じて専門の医療機関(泌尿器科など)を紹介します。
行われる可能性のある検査
- 問診(もれる状況、回数、使っている用品、服薬、これまでの病気などを聞きます)
- 排尿日誌(何時にどれくらい排尿したか、もれた量を1〜3日ほど記録します)
- 尿検査(感染や血が混じっていないかを調べます)
- 残尿の測定や腹部の超音波検査(尿が膀胱に残っていないかを見ます)
- 内診や直腸診(骨盤の状態や前立腺を確認します)
- 尿の流れの検査や、パッドを使って漏れる量を測る検査
- 必要に応じて、より詳しい検査(膀胱の内視鏡や尿流の詳しい検査など)
診察で予想されること
診察はあっという間に終わることが多く、痛みを伴う検査ばかりではありません。排尿日誌は、自分の記録をそのまま持って行けば大丈夫です。話しづらいことは「トイレのことで相談したい」と最初に伝えるだけで十分です。
治療
失禁への対処は、大きく2つの柱があります。ひとつは失禁用品や生活の工夫で毎日を快適にすること、もうひとつは原因に応じた治療で症状そのものを減らすことです。この2つを組み合わせると、外出や睡眠の不安が軽くなりやすくなります。まずはかかりつけ医に相談し、必要なら泌尿器科などの専門医につないでもらいましょう。
自宅でのセルフケア
- 用品はこまめに交換し、肌をぬるま湯でやさしく洗って、よく乾かす
- 吸収量・形・サイズの違うものをいくつか試してみる(試供品や小容量のものから)
- 外出時は替えの用品と、ぬれたものを入れる袋を持ち歩く
- 水分は控えすぎない(控えすぎると尿が濃くなり、刺激や感染の原因になります)
- 便秘を防ぐために、食物繊維や水分を適度にとる
- 骨盤底筋体操(骨盤の底の筋肉を意識して締める体操)を毎日少しずつ続ける
- トイレを我慢しすぎず、一定の間隔でトイレに行く習慣をつくる
- 夜間は照明や通路を整え、転ばないようにする
医療治療
原因に応じて、いくつかの方法を組み合わせます。膀胱やトイレの習慣を整える行動療法、骨盤底筋を鍛える訓練、膀胱にためる練習などがよく行われます。症状に応じて薬が使われることもありますが、薬の種類や量は医師が体の状態を見て判断します。そのほか、神経に刺激を与える方法、便通を整える治療、必要に応じてカテーテル(管で尿を出す方法)などが用いられることもあります。詳しくは主治医にたずねてください。
手術が検討される場合
生活の工夫や訓練などの治療で十分な改善が得られない場合、原因に応じて手術が検討されることがあります。手術が必要かどうかは、症状の強さや体の状態、生活スタイルをふまえて医師と相談して決めます。
この病気と共に生きる
用品は「我慢して使うもの」ではなく、自分に合わせて選ぶものです。吸収量が多すぎると厚みやムレが気になり、少なすぎると交換が増えて不安になります。少量もれ用の薄型パッド、下着に貼るタイプ、テープで止めるタイプ、ズボン型など、場面によって使い分けるのもよい方法です。夜間用の長時間タイプを取り入れると、睡眠の不安が軽くなることがあります。においが気になるときは、防臭袋や消臭効果のある用品、ゴミの出し方を工夫してみましょう。介護保険のサービスで用品の相談ができる場合もあるので、地域の窓口にたずねてみるのも一案です。
生活習慣のアドバイス
- 外出先のトイレの場所をあらかじめ確認しておく
- 脱ぎ着しやすい服装(ゴムウエスト、ゆったりした形、濃い色)を選ぶ
- 夜間はトイレまでの通路に照明を置き、段差や物を片づける
- 家族や介護する人に、用品の場所や交換のタイミングを伝えておく
- 予定の前にトイレに行くなど、無理のない習慣をつくる
- 一人で抱え込まず、同じ悩みを持つ人の集まりや相談窓口を利用する
食事と運動
水分は必要な量をとることが大切です。不足すると尿が濃くなり、膀胱を刺激しやすくなります。カフェイン(コーヒー・紅茶・緑茶)や炭酸飲料、アルコールは、人によっては尿意を強めたり回数を増やしたりするので、とりすぎに気をつけましょう。食物繊維をとって便秘を防ぐことも、失禁の軽減につながります。運動は、ウォーキングなどの軽い有酸素運動と、骨盤底筋体操を毎日少しずつ続けるのがおすすめです。体重が多めの方は、少し減らすだけで症状が軽くなることがあります。
精神的健康と心の健康
「みっともない」「におうかもしれない」と感じて、外出や人付き合いを控えてしまう方は少なくありません。眠れない、気分が落ち込む、不安が強いといった状態が続くときは、一人で抱え込まずに、かかりつけ医や地域の相談窓口、専門の相談機関に話してみてください。つらい気持ちが強いときは、地域のこころの相談窓口やいのちの電話などの支援を利用することが大切です。あなたの悩みは、助けを求めてよい悩みです。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、日々の工夫でリスクを下げられる場合があります。骨盤底筋体操を続ける、体重を適正に保つ、便秘を防ぐ、禁煙する、長引く咳を治療する、水分を適度にとる、トイレを我慢しすぎない、といったことが役立ちます。出産後や手術後の早い段階で体操を始めるとよいといわれています。
検診プログラム
健康診断の尿検査は、感染や血尿を見つける助けになります。尿もれや頻尿が気になり始めたら、悪化を待たずに早めにかかりつけ医や泌尿器科に相談してみましょう。
合併症
治療しない場合
- 皮膚のかぶれや、床ずれ(長時間の圧迫でできる皮膚の傷)
- 尿路の感染症
- トイレを急いで転倒し、骨折するなどのけが
- 夜間の頻尿による睡眠不足
- 外出や人付き合いを控えることによる社会的な孤立や、気分の落ち込み
- においや身だしなみへの不安からくる自信の低下
長期的な見通し
失禁は「年だから仕方ない」とあきらめなくて大丈夫です。用品の選び方を工夫するだけでも毎日はずいぶん楽になりますし、原因に応じた治療で改善する方も多くいます。今の悩みを医師や看護師、薬剤師に伝えることが、快適な生活への第一歩です。
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最終更新: 2026年10月24日
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