頭蓋内圧亢進(頭の中の圧が高くなる状態)
概要
頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん)とは、頭蓋骨(ずがいこつ=頭の骨)の中の圧力が高くなった状態です。頭の骨は硬い入れ物のようなもので、中には脳・血液・脳脊髄液(のうせきずいえき=脳と脊髄を包む水のような液体)が入っています。ふだんはこの3つの量がうまく調整され、圧はほぼ一定に保たれています。ところが、腫れ・出血・水のたまりなどで中の量が増えると、逃げ場がないぶん圧が上がり、脳が押されるように圧迫されます。これは病気そのものの名前というより、けがや脳の病気の結果として出てくる「体からのサイン」です。
重要な事実
- 頭の骨の中はせまく、脳・血液・脳脊髄液の量はふだん一定に保たれています。
- 圧が上がると、頭痛・吐き気・意識の変化などが現れます。
- 進むと脳が圧迫されて命に関わることがあるため、早めの発見と治療がとても大切です。
ふつうの外来でよく見られるものではありません。頭を打ったけが、脳出血、脳腫瘍、髄膜炎などの合併症として起こることが多い状態です。
頭部のけがをした方、脳卒中や脳腫瘍のある方、髄膜炎などの感染症にかかった方、脳の手術を受けた方などに起こります。赤ちゃんから高齢者まで、どの年齢でも起こりえます。
症状
- 意識がない、呼びかけても反応が弱い、ゆさぶっても目を覚まさない
- けいれんが続く、または何度も繰り返す
- 頭を強く打ったあとの激しい頭痛や繰り返すおう吐
- 瞳孔(ひとみ)の大きさが左右で違う、目が合わない
- 呼吸が苦しい、呼吸のリズムがおかしい
- 急に体の片側が動かない、ろれつが回らない、言葉が出ない
- ⚠頭痛がだんだん強くなっている
- ⚠繰り返すおう吐で水分がとれない
- ⚠物が二重に見える
- ⚠強い眠気、ぼんやりして会話がかみ合わない
- ⚠頭を打ったあと、症状が悪くなってきている
一般的な症状
- 頭痛(特に朝方や、せき・いきんだとき、横になったときに強くなることがある)
- 吐き気やおう吐(朝に吐くことが多い)
- 物が二重に見える、視野がせまく感じる
- ぼんやりする、集中できない、眠気が強い
- 会話がかみ合わない、場所や時間がわからなくなる(意識レベルの変化)
- 手足の動きにくさ、しびれ、けいれん
- 耳鳴り(脈打つような音)、めまい
子供の症状
- 大泉門(だいせんもん=赤ちゃんの頭のやわらかい部分)が盛り上がる、触ると張っている
- 頭囲(頭のまわりの長さ)が急に大きくなる
- 機嫌が悪く泣き止まない、泣き声が高い
- 授乳や食事が減る、繰り返すおう吐
- 元気がない、よく眠る、抱っこしても反応が弱い
- けいれん
高齢者の症状
- 急に元気がなくなる、ぼんやりする、日中の眠気が強い
- いつもより歩き方が不安定、転びやすい
- 食欲が落ちる、吐き気がある
- 頭痛をあまり感じないことがある
- 急におねしょや尿もれが始まる
原因
主な原因
- 頭部外傷(転倒・交通事故・スポーツなど)による脳の腫れや出血
- 脳卒中(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞のあとの腫れ)
- 髄膜炎・脳炎など脳の感染症
- 水頭症(脳脊髄液がたまる状態)
- 脳の手術のあと、脳への血流が一時的に減ったあと
- はっきりした原因が見つからないタイプ(特発性頭蓋内圧亢進症)
- 一酸化炭素中毒など
リスク要因
- 頭を打つけが、転倒の経験(高齢者、飲酒している方、血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方は特に注意)
- 脳卒中や脳の病気の既往
- 脳腫瘍や脳の感染症の治療中
- 肥満(一部のタイプで関連が指摘されています)
- 睡眠時無呼吸
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 頭を打ったあとに頭痛や吐き気が出てきた、または強くなってきた
- おう吐を繰り返す、水分がとれない
- 物が二重に見える、視界がせまくなった気がする
- 強い眠気、ぼんやりして会話がかみ合わない
- 赤ちゃんの頭のやわらかい部分が盛り上がっている、頭囲が急に大きくなった
定期受診を予約すべき場合:
- 頭痛が続いていて、今までと感じが違う
- 朝方の頭痛や吐き気が続く
- めまいや耳鳴りが続く
- 脳の病気で通院中で、体調の変化が気になる
診断
まず問診と診察で、症状の始まり方や経過、頭を打った経験、持病や服薬を確認します。そのうえで、意識の状態、目の動き、手足の力などを調べる神経の診察を行い、必要に応じて画像検査やその他の検査を組み合わせます。緊急性が高いと判断されれば、救急の場で速やかに検査が進められます。
行われる可能性のある検査
- 頭のCT検査(出血や骨折、腫れを調べる)
- 頭のMRI検査(脳の細かい変化を調べる)
- 眼底検査(目のおくの血管やむくみを見る)
- 神経の診察(意識、瞳孔、目の動き、手足の力や反射)
- 必要に応じて腰椎穿刺(ようついせんし=腰から細い針で髄液を少し取り、圧を測る検査)
- 入院中は圧を継続して見守るモニタリングを行うことがある
診察で予想されること
検査は痛みが少ないものが多く、CTは数分で終わります。腰椎穿刺を行う場合は、事前に説明があり、体位や注意点を案内されます。結果の説明と合わせて、次にどうするかを医師と相談できます。
治療
治療の基本は、圧が上がっている原因を見つけて取り除くことです。同時に、脳が安全に働けるように呼吸・血圧・体温などを整え、圧を下げるための処置を行います。原因や程度によって、治療の内容と場所(外来か入院か)が変わります。
自宅でのセルフケア
- 医師や看護師の指示を守り、自己判断で薬をやめたり量を変えたりしない
- 頭を打ったあとは一人にせず、しばらく誰かが見守る
- 水分や塩分のとり方は、医師の指示に従う
- 飲酒・喫煙は控える
- 症状の変化(頭痛の強さ、吐き気、眠気など)をメモして受診時に伝える
- 判断力が落ちることがあるため、運転や高所作業は控える
医療治療
原因に応じて、頭を少し高く保つ体位の管理、呼吸・血圧・体温の管理、脳の腫れをやわらげる治療、たまった液体や出血を取り除く処置などが行われます。必要に応じて薬が使われることもありますが、薬の種類や使い方は医師が個別に判断します。
手術が検討される場合
出血を取り除く手術、脳脊髄液を外に出す管を入れる処置、頭蓋骨の一部を一時的に外して圧を下げる手術などが行われることがあります。必要かどうかは、画像検査の結果と全身の状態をもとに医師が判断します。
この病気と共に生きる
治療中や回復の時期は、体調の変化に気づきやすいように、症状を記録しながら過ごすと安心です。疲れや睡眠不足は症状を強く感じさせることがあるので、無理をしない生活リズムを心がけましょう。
生活習慣のアドバイス
- 十分な睡眠と休養をとる
- 急に頭を下げる、力む、重いものを持つなど、頭に力がかかる動作を控える(必要に応じて医師に確認)
- 飲酒・喫煙を控える
- 転倒しないように、家の中の段差や足元を整える
- 家族や周囲の人に症状の見方を伝えておく
食事と運動
食事はバランスよくとり、塩分のとり方は医師の指示に合わせます。運動は、許可が出るまでは軽い散歩などにとどめ、頭を強く揺らす運動やコンタクトスポーツは医師に相談してから再開しましょう。
精神的健康と心の健康
思うように体が動かないことや、先の見えなさから不安や落ち込みを感じるのは自然なことです。気持ちがつらいときは一人で抱えず、かかりつけ医、地域の保健センター、保健所などの相談窓口を利用してください。もし自分を傷つけたい気持ちがわいてきたら、すぐに医療機関や地域の緊急の相談先に連絡し、そばに信頼できる人を呼んでください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、原因となるけがや病気を減らすことでリスクを下げられます。頭を打たない工夫と、脳卒中などの生活習慣病の管理が大切です。
ワクチン
髄膜炎など一部の感染症には、予防できるワクチンがあります。年齢や体調に合わせた接種について、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
高血圧や糖尿病などの健診を受け、脳卒中のリスクを早めに見つけることが役立ちます。特定健診など、お住まいの自治体の案内を確認してみましょう。
合併症
治療しない場合
- 脳が長く圧迫されて、ダメージが残ることがある
- 意識障害やけいれんが起こる
- 視神経が押されて、視力や視野に影響が出ることがある
- 重症になると命に関わることがある
長期的な見通し
原因と程度、治療の早さによって経過はさまざまです。早く見つけて適切な治療を始めれば、回復できる方は多くいます。不安な点は遠慮なく医療者に質問し、回復の見通しについて一緒に確認していきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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