湿疹が細菌に感染したとき(感染性湿疹)
概要
湿疹は、皮膚が赤くなったり、かゆくなったり、じくじくしたりする炎症です。感染性湿疹は、その湿疹の部分に細菌(ばい菌)が入り込んで、さらに感染を起こした状態をいいます。湿疹で皮膚の表面が傷つくと、ふだんは皮膚の上にいる菌が中に入りやすくなります。かゆくて掻いてしまうことが、感染のきっかけになることもよくあります。
重要な事実
- 湿疹そのものはとてもよくある皮膚の病気で、そこに細菌がつくことも珍しくありません。
- サインは「じくじくした汁が増えた」「黄色いかさぶたができた」「膿が出た」「急に赤く腫れて痛くなった」などです。
- 菌を減らすケアと、湿疹の炎症を落ち着かせるケアの、両方が大切になります。
とてもよくある状態です。湿疹のある人の一部は、季節や肌の状態によって細菌感染を繰り返すことがあります。特に子どもではよく見られます。
アトピー性皮膚炎などで湿疹がある人、皮膚が乾燥しやすい人、かゆくて掻きむしってしまう人、保育園や学校など集団で過ごす子ども、高齢者、糖尿病や血流の悪い病気がある人、免疫の働きが弱まっている人などが影響を受けやすいです。赤ちゃんから大人まで、どの年代でも起こります。
症状
- 顔や唇、まぶたが急に腫れて、息が苦しい・声が出しにくい
- 皮膚の赤みがものすごい速さで広がり、激しい痛みがある、皮膚の色が黒ずんでくる
- 高熱とぐったりした様子、意識がぼんやりしている、会話がかみ合わない
- けいれんが起きた
- (日本では救急のときは119番に電話してください)
- ⚠38度以上の発熱がある、または寒気がする
- ⚠赤み・腫れが半日〜1日で見てわかるほど広がっている
- ⚠膿がたくさん出る、痛みが強い
- ⚠湿疹が顔や目のまわりにある
- ⚠糖尿病、免疫の働きが弱まる治療中、血流の悪い病気がある人に感染のサインが出た
- ⚠赤ちゃんや小さな子どもで、機嫌が悪く飲みづらい・食べづらい
一般的な症状
- 湿疹の部分が赤く腫れて、さわると熱く感じる
- じくじくした汁(浸出液)が増える
- 黄色っぽいかさぶたができる
- 膿が出る、小さな水ぶくれができる
- かゆみが急に強くなる、または痛みが出る
- 赤みの範囲がだんだん広がっていく
- 近くのリンパ節(首やわきの下など)が腫れて痛む
- 発熱や寒気を伴うことがある
子供の症状
- 鼻の下や口のまわり、手足などに黄色いかさぶたや水ぶくれができることがある(とびひ、伝染性膿痂疹と呼ばれる形)
- 水ぶくれが破れた汁にふれると、別の場所にも広がりやすい
- かゆくて機嫌が悪くなる、夜眠れなくなる
- 保育園や学校で友だちにうつることがあるため、受診して登園・登校の目安を相談すると安心です
- 自分では症状をうまく伝えられないことがあるので、保護者が肌の変化と機嫌・食欲・睡眠を見てあげてください
高齢者の症状
- 皮膚が薄く乾燥しやすいので、小さな傷から感染が起こりやすい
- 脚のむくみや血流の悪さ、糖尿病などがあると治りにくいことがある
- 発熱などの全身のサインが出ても、自分では気づきにくいことがある
- かゆみで眠れない、食事が進まないなど、生活全体に影響が出やすい
原因
主な原因
- 湿疹で皮膚のバリア(外からの刺激を防ぐ壁)が壊れ、そこから細菌が入り込む
- 原因として多いのは、皮膚の上にふだんからいる黄色ブドウ球菌や、レンサ球菌という菌
- かゆくて掻くことで、菌が手を介して別の場所へ広がる
- 汗や湿った状態が続くと、菌が増えやすくなる
リスク要因
- アトピー性皮膚炎など、もともと湿疹がある
- 皮膚が乾燥している、保湿が足りていない
- 爪が長い、掻きむしる癖がある
- 保育園・学校・スポーツなど、人と接する機会が多い
- 糖尿病、血流の悪い病気、免疫の働きが弱まる治療を受けている
- 高齢である
- 汗をかいたまま過ごす、肌を清潔に保ちにくい状況がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱や寒気がある
- 赤みや腫れが急速に広がっている
- 膿が多く、痛みが強い
- 顔や目のまわりの湿疹が悪化している
- 糖尿病や免疫の治療中で、肌の感染のサインが出た
- 赤ちゃんや小さな子どもで元気がない、飲みづらい・食べづらい
定期受診を予約すべき場合:
- じくじくした状態が数日続く
- 黄色いかさぶたが繰り返しできる
- かゆみで夜眠れない日が続く
- 湿疹の治療をしていても、なかなか良くならない
- 家族や周りの人にも同じような症状が出てきた
診断
多くは、医師が肌の様子を直接見て、赤み・腫れ・じくじく・かさぶた・膿の有無を確認し、発熱や痛みの経過を聞いて判断します。特別な機械が必要なことはあまりありません。湿疹が長く続く場合や、感染を繰り返す場合には、菌の種類を調べる検査を行うことがあります。
行われる可能性のある検査
- 皮膚の表面から綿棒で軽く拭い、どんな菌がいるかを調べる培養検査(結果まで数日かかることがあります)
- 血液検査(炎症の程度や全身状態を見るため)
- 重症の場合や治りにくい場合に、皮膚科の専門医による詳しい診察
- アレルギーの有無を確認する検査(必要に応じて)
診察で予想されること
診察は数分程度で、患部をよく見せていただくことになります。かゆみが強いときは、触られるだけで痛むこともあるので、その旨を伝えてください。いつから、どんなふうに変化したか、使っている薬や保湿剤、既往歴(糖尿病など)をメモしておくと話がスムーズです。
治療
治療の柱は二つあります。一つは細菌を減らすこと、もう一つは湿疹そのものの炎症を落ち着かせて、皮膚のバリアを立て直すことです。どちらか一方だけでは良くなりにくいので、両方を一緒に進めることが大切です。具体的な方法は、肌の状態や年齢、持病に合わせて医師が選びます。
自宅でのセルフケア
- 患部はぬるま湯でやさしく洗い、石けんはよく泡立てて刺激を少なくする
- 洗ったあとは、こすらずに押さえるように水分を拭き取る
- 朝晩などこまめに保湿して、肌のバリアを助ける
- 爪を短く整え、掻かない工夫をする(袖やタオルで覆う、夜は手袋をするなど)
- タオルや寝具、衣類は家族と分けて洗い、こまめに交換する
- 汗をかいたら早めに拭き取る、またはシャワーで流す
- 処方された塗り薬は、医師や薬剤師に教わったとおりに使う(自己判断で急にやめない)
- 保育園・学校・仕事に行けるかどうかは、受診時に相談して目安を確認する
医療治療
細菌を減らすために、飲み薬や塗り薬の抗菌薬が使われることがあります。湿疹の炎症を抑えるために、ステロイドの外用薬などが使われることもあります。かゆみが強いときは、かゆみをやわらげる飲み薬が処方されることがあります。重症で広がりが大きいときや発熱があるときは、点滴や経過観察のために入院して治療することもあります。どの治療も、医師が年齢・皮膚の状態・持病に合わせて選びますので、名前や量は診察のときに確認してください。
手術が検討される場合
通常は手術は必要ありません。ただし、膿が袋のようにたまっている場合(膿瘍)は、小さな切開をして膿を出す処置を行うことがあります。これは皮膚科や外科で行われる一般的な処置です。
この病気と共に生きる
感染が落ち着くまでは、肌を清潔で乾燥しすぎない状態に保つことが中心になります。かゆみで夜眠れないと、体も心も疲れやすくなります。寝る前の保湿、爪の手入れ、部屋の温度や湿度の調整など、小さな工夫を続けることが役立ちます。症状が良くなってきても、保湿は続けてください。
生活習慣のアドバイス
- 入浴はぬるめの温度で短めにし、湯上がりは5分以内に保湿する
- 汗をかきやすい服装を避け、肌着は汗を吸う素材にする
- 洗剤や柔軟剤の量を控えめにし、すすぎをしっかりする
- ペットの毛やほこりなど、かゆみのきっかけになるものを減らす
- 爪を短く切る、寝るときは手袋や長袖を使う
- 症状が強い時期は、プールや泥んこの遊びは医師に相談する
食事と運動
特定の食べ物が湿疹を悪くするかどうかは人によって違います。自己判断で食事を大きく制限すると栄養が偏ることがあるので、気になる場合は医師や管理栄養士に相談してください。運動は体にとって大切ですが、汗をかいたら早めに拭き取り、シャワーで流して保湿すると肌への負担を減らせます。体調がすぐれないときは無理をせず、短時間から始めましょう。
精神的健康と心の健康
かゆみが続くと眠れない、集中できない、人目が気になるなど、心が疲れてしまうことがあります。それはわがままではなく、肌の症状が生活全体に影響しているサインです。つらさが強いときや、気分の落ち込みが続くときは、ひとりで抱え込まずに、かかりつけ医や皮膚科の医師、お住まいの自治体の相談窓口、学校や職場の相談担当に話してみてください。日本の場合、小児の救急相談は「#8000」、緊急の場合は119番が使えます。命に関わるように感じるときは、ためらわずに119番へ連絡してください。
予防
完全に防ぐことは難しいですが、湿疹を悪化させないこと、肌のバリアを保つことで、感染のリスクを下げられます。保湿を毎日の習慣にすること、かゆみを放置せず早めに受診することが大切です。
ワクチン
湿疹に細菌が感染するタイプの感染症に対する、一般的なワクチンはありません。
検診プログラム
特別なスクリーニング検査はありません。湿疹が繰り返す人は、定期的に受診して肌の状態を確認してもらうことが役立ちます。
合併症
治療しない場合
- 感染が広がり、蜂窩織炎(ひほうしきえん:皮膚の深いところまで炎症が広がる状態)になることがある
- 膿がたまる膿瘍ができることがある
- まれに、菌が血液に入って全身に回ることがある
- 治ったあとに痕や色の変化が残ることがある
- 湿疹が悪化して、かゆみとか掻きむしりの悪循環が強くなる
- 周りの人にうつる(とびひの形の場合)
- 眠れない、集中できないなど、生活の質が下がる
長期的な見通し
多くの場合は、適切なケアと受診で数日から数週間のうちに落ち着きます。肌のバリアを整える保湿を続けることが、再発を減らす近道です。良くなったり悪くなったりを繰り返すこともありますが、そのたびに早めに対処すれば、大きく悪化させずにすむことがほとんどです。心配な変化があれば、早めにかかりつけ医に相談してください。
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最終更新: 2026年10月24日
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