ピアスの感染(化膿)
概要
ピアスの感染とは、ピアスを開けた部分(穴)に細菌(ばいきん)が入り込み、赤み・腫れ・痛み・膿(うみ)などが起こる状態です。ピアスの穴は「小さな傷」と同じで、皮膚が完全に治るまでには時間がかかります。その治りかけの間に、汚れた手で触ったり、汗や化粧品がたまったりすると、細菌が入りやすくなります。
重要な事実
- ピアスの穴は傷です。耳たぶで約6〜8週間、耳の軟骨(やわらかい骨)では数か月かけて、少しずつ治っていきます。
- 赤み・腫れ・痛み・膿・熱感は感染のサインです。早めに気づいてやさしくケアすれば、多くは数日〜数週間で良くなります。
- 消毒をしすぎたり、何度も触ったりすると、かえって治りが遅くなることがあります。「清潔にして、さわらない」が基本です。
とてもよくあるトラブルです。ピアスを開けた人の一定数が、開けてから治るまでの間に、軽い感染や炎症を経験すると言われています。
ピアスを開けたばかりの人、とくに耳の軟骨(耳の上のほうの硬い部分)にピアスをした人によく起こります。自分でピアスを開けた人、汗をかきやすい人、髪や化粧品が当たりやすい人も注意が必要です。糖尿病のある人、免疫(体を守る力)が弱まっている人、ニッケルなどの金属アレルギーのある人も、感染が起きやすいことがあります。年齢を問わず起こります。
症状
- 呼吸が苦しい、ゼーゼーする、声がかすれる、飲み込みにくい(のどや気道が腫れている可能性)
- 顔・くちびる・まぶた・首が急に大きく腫れる
- 意識がもうろうとしている、ぐったりして反応が弱い
- 高熱とともに、皮膚が黒ずむ・水ぶくれができる・激しく痛む
- 患部から出血が止まらない、急に顔色が悪くなった
- ⚠38℃以上の発熱がある
- ⚠赤みがどんどん広がる、赤い線が皮膚の上を走るように広がる
- ⚠膿がたくさん出て止まらない、においが強い
- ⚠痛みが強く、眠れない、生活に支障が出ている
- ⚠耳が腫れてピアスが埋まりそう、外せなくなった
- ⚠耳の軟骨のピアスで、耳全体が赤く腫れて熱をもっている
一般的な症状
- ピアスのまわりが赤くなる、熱をもつ
- 腫れる、押すと痛む、触るとズキズキする
- 黄色や緑色の膿(うみ)が出る、かさぶたが何度もできる
- ピアスのまわりがかゆい、じゅくじゅくする
- ピアスがきつく感じる、埋まりそうになる
- 耳の下や首のリンパ節(しこりのようなもの)が腫れる
- 治りかけの穴が急に痛くなった、また腫れてきた
子供の症状
- 自分で「痛い」「かゆい」と説明できず、不機嫌・ぐずりで気づくことがあります
- 痛みやかゆみで、無意識に手で触ったり、服や枕でこすったりする
- 学校や習い事、プールの時間がつらくなる
- 腫れが強いと、ピアスを外すのをこわがる、泣いて嫌がる
- 発熱や耳の下の腫れを伴うことがある
高齢者の症状
- 治りがゆっくりで、少しの赤みが長く続くことがあります
- 糖尿病や血行(けっかん)の悪化があると、感染が進みやすい
- 免疫を下げる薬を使っている場合は、症状が目立ちにくくても重症化することがある
- 皮膚が薄く、ピアスの金属が当たって傷になりやすい
- 痛みに気づきにくく、腫れや膿で初めて気づくこともある
原因
主な原因
- 皮膚にいる細菌(黄色ブドウ球菌など)が、ピアスの穴から入り込む
- 汚れた手で触る、爪でひっかく、何度も回したり動かしたりする
- ピアスを開けたときの器具や、開けたあとのケアが不衛生だった
- 汗・皮脂・化粧品・整髪料・髪の毛が穴のまわりにたまる
- プール・海・温泉・お風呂の水が、治りきっていない穴に入る
- キャッチ(留め具)の形や大きさが合わず、汚れがたまる、皮膚を傷つける
- 寝るときに圧迫する、衣類やマスクのひもが当たる
リスク要因
- 耳の軟骨(耳の上のほう)のピアス。血流が少なく治りにくいため感染が進みやすい
- 自分でピアスを開けた、開けたあとの説明やケアを受けていない
- 金属アレルギー(ニッケルなど)がある
- 糖尿病、貧血、免疫の病気、ステロイドなどの免疫を下げる薬を使っている
- 喫煙(血の流れが悪くなり治りが遅くなる)
- 10代など、ホルモンの変化や汗が多い時期
- スポーツや仕事で汗をかく、汚れやすい環境にいる
- 複数のピアスを同時に開けた、開けた直後に何度も触った
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 38℃以上の発熱、寒気、だるさが強い
- 赤み・腫れが急速に広がる、痛みがどんどん強くなる
- 膿が大量に出る、ピアスが埋まって外せない
- 耳の軟骨のピアスで耳全体が腫れている
- 顔や首の腫れがある、飲み込みにくい、声が変わった(この場合は救急要請も検討してください)
定期受診を予約すべき場合:
- セルフケアを1週間ほど続けても、赤み・腫れ・膿が良くならない
- かゆみや赤みが長く続き、金属アレルギーが気になる
- 治ったあとに、しこり・盛り上がった傷あとができた
- ピアスの穴を残したいか、閉じたいかを含めて相談したい
- ピアスの素材やサイズが合っているか相談したい
診断
多くは診察だけで判断できます。医師がピアスのまわりを見て、触って、赤み・腫れ・熱感・膿の有無を確認し、いつ開けたか、どんなケアをしていたか、アレルギーや持病の有無を聞きます。
行われる可能性のある検査
- 通常は問診と診察が中心で、特別な検査は不要なことが多い
- 膿が出ている場合は、細菌の種類を調べる検査(培養検査)を行うことがある
- 発熱や腫れが強い場合は、血液検査を行うことがある
- 金属アレルギーが疑われる場合は、皮膚科でアレルギーの検査を相談することがある
- 深い膿のたまり(膿瘍)が疑われる場合に限り、超音波などの画像検査を行うことがある
診察で予想されること
診察は数分から十数分程度で終わることが多く、その場で洗浄や処置を受けられることもあります。検査をした場合は結果が数日かかることがあります。診察のときは、ピアスを開けた日、これまでのケア、使っているピアスの素材、持病や薬、アレルギーを伝えると話がスムーズです。
治療
治療の中心は「清潔を保ち、刺激を与えないこと」です。軽い場合は自宅でのケアで改善します。腫れや膿が強い場合は医療機関で洗浄や処置を受け、状態に応じて薬が使われることがあります。
自宅でのセルフケア
- 石けんとぬるま湯で、1日1〜2回やさしく洗い、流水でよくすすぐ
- 洗ったあとは、清潔な紙や布でやさしく押さえて水気を取る(こすらない)
- 手を洗ってから触る。それ以外はできるだけ触らない、回さない
- アルコールや消毒薬の使いすぎは避ける。刺激が強く、治りを遅らせることがある
- 髪を留める、マスクのひもや衣類が当たらないようにする
- 枕カバー・タオルはこまめに交換する
- 寝るときに患部を下にしない、圧迫しない
- 治るまではプール・海・温泉・サウナを避ける
- 自分でピアスを抜く前に医療機関に相談する(穴を残したい場合はとくに)
- 触ったあとや、膿にさわったあとは必ず手を洗う
医療治療
医療機関では、まず患部をやさしく洗浄し、必要に応じて膿を出す処置を行います。細菌の検査をしたり、状態に応じて抗菌薬(細菌を抑える薬)の飲み薬や塗り薬が使われたりすることがあります。耳の軟骨の感染は治りにくいため、耳鼻咽喉科(耳・鼻・のどを専門とする科)と連携して対応することもあります。薬の種類や使い方、期間は医師・薬剤師の指示に従ってください。自己判断で市販薬を使ったり、以前もらった薬を使い回したりしないようにしましょう。
手術が検討される場合
膿が袋のようにたまった状態(膿瘍)になった場合や、軟骨まで感染が及んだ場合には、切開して膿を出す小さな処置が必要になることがあります。治ったあとに盛り上がった傷あと(ケロイド)や形の変化が気になる場合は、皮膚科や形成外科で相談できます。
この病気と共に生きる
感染が落ち着くまでは「清潔・安静・さわらない」を心がけましょう。ピアスは自分で外さず、医療機関の指示に従ってください。治り具合を毎日同じ時間に鏡でチェックし、赤みや腫れの広がりを記録しておくと、受診のときに役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 汗をかいたら、シャワーでやさしく洗い流し、よく乾かす
- 髪が長い場合は、患部に当たらないようにまとめる
- スポーツ後は早めに洗い流す。接触の多い競技では防具やテーピングで守る
- 喫煙は血の流れを悪くし治りを遅らせるため、減らすことを検討する
- 睡眠をしっかりとり、体の抵抗力を保つ
- 治るまでは、新しいピアスを追加で開けない
- ピアスの素材は、金属アレルギーが気になる場合、医療機関や専門店に相談する
食事と運動
特別な食事制限はありません。バランスのよい食事と、十分な水分、たんぱく質・ビタミンを含む食事は、体の回復を助けます。運動は基本的に続けて構いませんが、患部をぶつける・こする種目は治るまで控えるか、保護をしましょう。プールや海での運動は、治るまで避けてください。
精神的健康と心の健康
見た目が気になったり、痛みで眠れなかったりすると、気分が落ち込んだり、イライラしたりすることがあります。とくに10代の方は、友人との関係や自分らしさと結びつけて悩みやすいものです。不安やつらさが続くときは、一人で抱え込まず、家族や信頼できる大人、学校の相談窓口、医療機関に話してください。気持ちがとてもつらいときは、地域の相談窓口や医療機関、緊急の相談先に連絡してください。
予防
完全に防ぐことは難しいですが、かなり減らせます。ピアスは信頼できる施設で開け、開けたあとは説明されたケアを守ることが大切です。開けてから治るまでの期間は、清潔・乾燥・さわらないを徹底しましょう。
ワクチン
ピアス感染そのものを防ぐワクチンはありません。けがや傷が化膿したときは、破傷風(はしょうふう)の予防接種の状況を医師に相談するとよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 膿が袋のようにたまる(膿瘍)
- 耳の軟骨が傷つき、耳の形が変わる(軟骨が縮んだり、でこぼこになる)
- 盛り上がった傷あと(ケロイド)や、しこりが残る
- 感染が広がって、皮膚の下や体の奥に及ぶ(まれですが重症になります)
- ピアスの穴が使えなくなる、閉じてしまう
- 金属アレルギーによるかぶれが続く
長期的な見通し
ピアスの感染は、多くの場合、適切なケアと必要な受診で数日から数週間のうちに良くなります。耳の軟骨の感染は治るのに時間がかかることがありますが、早めに対応すれば大半はきれいに治ります。不安なときは早めに医療機関に相談してください。
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最終更新: 2026年10月24日
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