細菌性感染症とウイルス性感染症
概要
感染症は、細菌(さいきん)やウイルスといった小さな生き物が体の中に入り、増えることで起こります。細菌とウイルスはまったく別の種類のもので、かかる病気の進み方も、治し方も違います。かぜやおなかの風邪(胃腸炎)の多くはウイルスが原因です。細菌が原因のときは「抗菌薬(こうきんやく=抗生物質とも呼ばれ、細菌をやっつける薬)」が効くことがありますが、ウイルスには効きません。つまり、原因がどちらかによって、家で様子を見てよいのか、医療機関で相談したほうがよいのかが変わってきます。
重要な事実
- ウイルス性の感染症の多くは、体の免疫(めんえき=体を守る力)が働いて、数日から2週間ほどで自然に良くなります。
- 抗菌薬(細菌をやっつける薬)はウイルスには効きません。ウイルス性のかぜに抗菌薬を飲んでも、良くなるのが早くなるわけではありません。
- 手洗い、換気、マスク、ワクチンなど、家でできる予防策には確かな効果があります。
とてもよくあることです。人は一生の間に何度も感染症にかかります。特に子どもは1年に何度もかぜをひきますし、大人でも年に数回は鼻かぜやのどの痛みを経験します。ほとんどの場合は軽く済み、家での休養と水分補給で回復します。
症状
- 意識がない、または呼びかけても反応が弱い・ぼんやりしている
- 呼吸が苦しい、息ができない、肩で息をしている
- 唇や顔色が青白い、血色が悪い
- けいれんが続く、または意識が戻らない
- 皮膚に押しても消えない紫〜赤色の斑点が出ている
- ぐったりして反応が鈍い、ぐったりしたまま動かない
- ⚠38℃以上の熱が3日以上続く、または急に悪くなる
- ⚠水分がとれない、尿がほとんど出ない、口の中がカラカラに乾いている(脱水のおそれ)
- ⚠首が硬くて曲げにくい、強い頭痛、光がまぶしい
- ⚠胸が痛い、息苦しい、せきがどんどん強くなる
- ⚠耳の強い痛み、耳だれが出る
- ⚠小さな子どもで、機嫌が悪く水分をとらず、ぐったりしている
一般的な症状
- 発熱(37〜38℃台が多い)
- 鼻水、鼻づまり、くしゃみ
- のどの痛み、せき
- 頭痛、体のだるさ、筋肉の痛み
- 食欲が落ちる、気持ちが悪い
- 吐き気、嘔吐、下痢(胃腸炎の場合)
- 発疹(ほっしん=皮膚に赤いぶつぶつが出ること)
子供の症状
- 機嫌が悪い、ぐずる、泣き方がいつもと違う
- 母乳やミルクを飲む量が減る、水分をとらない
- ぐったりして元気がない、遊ばない
- 高い熱が出る、熱が急に上がる
- 耳を痛がる、耳をさわる(中耳炎のことがあります)
- 下痢や嘔吐が続く
- 発疹が出る
高齢者の症状
- 熱が出ない、または微熱しか出ないことがある(高齢者では熱が目立ちにくいです)
- 元気がない、ぼんやりしている、話がかみ合わない
- 食欲がない、水分をとらない
- いつもより歩きにくい、ふらつく、転びやすくなる
- 尿の回数が増える、尿のにおいが強い(尿路感染のことがあります)
- 息切れ、せきが続く
原因
主な原因
- ウイルスが体に入る(かぜウイルス、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、新型コロナウイルスなど)
- 細菌が体に入る(のどや肺、皮膚、尿の通り道などで増えることがあります)
- 人から人へのうつり(せきやくしゃみのしぶき、手を介して、同じ部屋の空気を介して)
- 汚れた食べ物や水をとる(食あたり)
- 傷口から細菌が入る
- 蚊やダニなどの虫、動物からうつる(日本では少ないですが、渡航先によってはあります)
リスク要因
- 手洗いが十分でない、消毒をしない
- 人が多く集まる場所、換気の悪い部屋に長くいる
- 睡眠不足、疲れ、食事が偏っている
- 糖尿病、心臓病、喘息、腎臓病などの持病がある
- 免疫(体を守る力)を下げる治療を受けている
- 高齢である、または小さな子どもである
- ワクチンを受けていない
- たばこを吸う(のどや肺の感染症にかかりやすくなります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 呼吸が苦しい、胸が痛い、顔色が悪い
- 意識がぼんやりする、反応が鈍い
- 水分がとれず、尿が出ない、ぐったりしている
- 高い熱が続き、急に具合が悪くなる
- 首が硬い、激しい頭痛がある
- 押しても消えない紫色の斑点が皮膚に出る
定期受診を予約すべき場合:
- 熱やせき、のどの痛みが3日以上続く
- 症状が一度良くなったのに、また悪くなった
- 耳の痛み、耳だれがある
- 長引くせき、息切れがある
- 下痢や嘔吐が続き、食事や水分がとりにくい
- 小さな子どもの機嫌が悪く、水分をとらない
- 症状が強い、または心配なとき(早めの相談で安心できます)
診断
多くの場合、問診(症状・いつから・どんな経過か)と診察で見分けます。のどや鼻の様子、熱の出方、せきの感じ、おなかの状態などを確認します。細菌かウイルスかは、症状だけではっきり分からないことも多く、その場合は検査で確かめたり、経過を見ながら判断したりします。
行われる可能性のある検査
- のどや鼻を綿棒で軽くぬぐって調べる迅速検査(インフルエンザや溶連菌など)
- 血液検査(炎症の程度や体の状態を見る)
- 尿検査(尿路感染かどうかを調べる)
- 便検査(胃腸炎の原因を調べる)
- たんやうみを調べて、細菌の種類を調べる培養検査
- 胸部レントゲンやCT(肺炎が疑われるとき)
診察で予想されること
検査は痛みが少なく、短時間で終わることがほとんどです。結果が出るまでに数分から数日かかることがあります。検査をしないこともあります。それは「必要ない」という判断であり、症状と経過から十分に判断できる場合が多いためです。診察のときは、いつから具合が悪いか、熱の上がり下がり、水分や食事がとれているか、持病や飲んでいる薬を伝えると、話がスムーズに進みます。
治療
治療の考え方は、原因がウイルスか細菌かで変わります。ウイルス性の多くは、体の免疫が働いて自然に治るのを待つ間、つらい症状をやわらげるケアが中心になります。細菌性が疑われる場合には、細菌をやっつける薬(抗菌薬)が使われることがあります。ただし、抗菌薬はウイルスには効かないため、ウイルス性と判断されたときには処方されないことが多いです。これは「薬をケチっている」のではなく、効果がないうえに、薬が効きにくい菌を増やしてしまうのを防ぐためです。
自宅でのセルフケア
- とにかく休む。睡眠をしっかりとる
- 少量ずつこまめに水分をとる(水、お茶、薄めた経口補水液など)
- 食べられるものを無理のない範囲でとる(おかゆ、うどん、スープなど)
- 部屋の湿度を保ち、換気をする
- 手洗いをこまめに行い、タオルは家族で分ける
- 熱が下がってもしばらくは無理をしない
- 症状をやわらげる市販薬を使うか迷ったら、薬剤師やかかりつけ医に相談する(持病や飲んでいる薬との組み合わせに注意が必要です)
- 症状と経過をメモしておくと、受診のときに役立ちます
医療治療
症状に合わせて、熱や痛み、せき、鼻水などをやわらげる治療を行います。細菌が原因と判断された場合には、細菌をやっつける薬が処方されることがあります。処方された場合は、指示された期間を最後まで使い切ることが大切です(症状が良くなっても途中でやめると、菌が残ってぶり返すことがあります)。特定のウイルス感染症では、ウイルスの働きを抑える薬が使われることもあります。脱水が強いときや重症のときは、入院して点滴や酸素投与を行うことがあります。
手術が検討される場合
通常、感染症そのもののために手術が必要になることはありません。ただし、細菌がたまって膿(うみ)の袋を作った場合や、盲腸炎など別の病気が隠れている場合には、処置や手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
具合が悪い間は、仕事や学校を休んで体を休めることが一番の近道です。熱が下がって元気になっても、しばらくは疲れやすかったり、せきが残ったりします。周りの人にうつさないために、せきやくしゃみのときは口と鼻を覆い、手を洗い、タオルや食器の共用を避けましょう。回復のペースは人それぞれです。焦らず、少しずつ日常に戻っていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 手洗いは石けんと流水で20〜30秒を目安に
- 換気を1日に数回、数分ずつでも行う
- 十分な睡眠と、バランスのよい食事を心がける
- 人が多い場所では、必要に応じてマスクを使う
- たばこを控える(のどや肺を守ります)
- 決まったワクチンを、かかりつけ医と相談しながら受けておく
食事と運動
治りかけの時期は、消化にやさしいものを少量ずつとると負担が少なくて済みます。おかゆ、うどん、スープ、やわらかい野菜、卵、豆腐などが食べやすいでしょう。回復してきたら、無理のない範囲で散歩など軽い運動から再開します。激しい運動は、熱が下がって体力が戻ってからにしましょう。アルコールは回復するまで控えめにすると、体が楽になります。
精神的健康と心の健康
感染症にかかると、思ったより長引いて不安になったり、仕事や家族のことが気になって落ち着かなくなったりすることがあります。特に、人にうつしてしまったかもしれないと感じたときや、隔離のような状態が続いたときは、気持ちが沈みやすいものです。そんなときは、ひとりで抱え込まず、信頼できる人に話す、かかりつけ医に相談する、自治体の相談窓口を利用するなど、助けを求めてください。つらい気持ちが続くときは、遠慮なく専門の相談先につながってください。気持ちのつらさが強いとき、自分を傷つけたい気持ちが浮かんだときは、すぐに医療機関やお住まいの緊急の相談窓口に連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、かかる確率を下げ、重症化を防ぐことはできます。基本は、手洗い、換気、十分な睡眠、バランスのよい食事、そして必要なワクチンです。調子が悪いときは無理に出かけず、家で休むことも、周りの人を守る大切な予防になります。
ワクチン
ワクチンは、感染症を防いだり、かかっても軽く済ませたりする助けになります。日本では、季節性インフルエンザ、新型コロナウイルス、肺炎球菌、帯状疱疹などのワクチンがあり、年齢や持病によってすすめられるものが変わります。どのワクチンをいつ受けるのがよいかは、かかりつけ医や市区町村の案内、厚生労働省の情報を参考にしながら相談してみてください。
合併症
治療しない場合
- 脱水(水分が足りなくなり、ぐったりすること)
- 肺炎(肺に炎症が広がり、息苦しくなること)
- 中耳炎、副鼻腔炎(耳や鼻の奥に炎症が広がること)
- 細菌が血の中に入って全身に回る状態(重症になると入院が必要です)
- 尿路感染が腎臓に広がる(腎盂腎炎)
- 心臓や筋肉に炎症が及ぶこと(まれですが、胸の痛みや動悸が続くときは相談を)
- 抗菌薬が効きにくい菌が増えて、次に病気になったときに治りにくくなること
長期的な見通し
ほとんどの感染症は、しっかり休んで水分をとることで、数日から2週間ほどで良くなります。せきやだるさが少し残ることもありますが、それも徐々に消えていきます。早めに相談すること、处方された薬を指示どおり使うこと、そして無理をしないことが、回復への近道です。心配な点は、抱え込まずに医療機関に聞いてください。
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最終更新: 2026年10月24日
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