不妊(妊娠しにくいこと)について
概要
妊娠を望んで、避妊をせずに性生活を続けているのに、一定の期間(目安は1年、35歳以上の方は6か月)妊娠に至らない状態を「不妊」と呼びます。不妊は女性だけの問題ではなく、カップル二人の問題です。原因がはっきりしないことも多く、誰かの努力不足や気持ちの問題ではありません。
重要な事実
- 不妊の原因は、女性側・男性側・両方・不明に分かれます。男性側だけが原因ということも少なくありません。
- 年齢が上がるほど妊娠しにくくなる傾向はありますが、年齢だけで妊娠の可能性がゼロになるわけではありません。
- 日本では2022年から、一定の条件のもとで不妊治療が公的医療保険の対象になっています。
日本では、約5.5組に1組のカップルが不妊の検査や治療を受けたことがあるといわれています。決して珍しいことではなく、身近な問題です。
妊娠を望むすべてのカップルが関係します。年齢や性別を問わず、二人の問題として考えることが大切です。
症状
- 突然の激しい下腹部の痛み、痛くて動けない
- 精巣(睾丸)の突然の激しい痛みや腫れ(精巣ねんてん=精巣がねじれる状態の可能性)
- 妊娠検査が陽性で、激しい腹痛や大量の出血がある(子宮外妊娠の可能性)
- 高熱とぐったりした様子、意識がもうろうとしている
- ⚠妊娠検査が陽性で、少量の出血や腹痛が続いている
- ⚠発熱を伴う下腹部の痛み
- ⚠月経が長期間ない、または異常に重い月経が続く
- ⚠精巣の痛みや腫れが続いている
一般的な症状
- 不妊そのものには、目立った症状がないことが多いです。
- 月経の間隔が不安定、月経が来ない、回数が少ない
- 月経痛が強い、性交のときに痛みがある
- 妊娠しても流産を繰り返す
- 精巣(睾丸)の腫れや痛み、違和感
- 射精や勃起に関する悩み
- にきびや体毛の変化など、ホルモンの影響を思わせる変化
子供の症状
- 不妊は通常、子どもの時期には当てはまらない問題です。
- 思春期になっても月経が始まらない、月経が極端に不規則、強い痛みがある場合は、将来のことを含めて婦人科に相談しておくと安心です。
高齢者の症状
- 35歳以上の方は、6か月を目安に早めの相談がすすめられます。40歳以上の方は、さらに早めの相談が選択肢を広げます。
- 年齢とともに妊娠する力は低下しますが、そのスピードは人それぞれです。年齢だけで決めつけず、検査を受けて自分の状態を知ることが大切です。
原因
主な原因
- 排卵(卵子を出すこと)がうまくいかない:ホルモンのバランスの乱れなど
- 卵管(卵子と精子が出会う通り道)の詰まりや癒着
- 子宮内膜症(子宮の内側に似た組織が別の場所にできる病気)
- 子宮の形の異常や筋腫(子宮にできるこぶのようなもの)
- 卵子の数や質の低下(年齢の影響が大きい)
- 男性側の精子の数・動き・形の問題
- 精巣の血流に関わる問題(精索静脈瘤=精巣の静脈が膨らむ状態)
- ホルモンや糖尿病などの全身の病気、過去の手術や治療の影響
- 原因がはっきりしない場合(約4分の1程度)
リスク要因
- 年齢(特に35歳以上)
- 喫煙(本人もパートナーも)
- 過度の飲酒
- 極端なやせや肥満
- 性感染症(クラミジアなど)の既往
- 子宮内膜症や卵管の病気の既往
- がん治療(手術・放射線・抗がん剤)の既往
- 強いストレスや睡眠不足、不規則な生活
- 精巣を高温にさらす習慣(長時間のサウナ、ノートパソコンを膝に置くなど)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 強い下腹部痛、発熱、大量の出血がある
- 妊娠検査が陽性で、腹痛や出血がある
- 精巣の突然の強い痛みや腫れがある
定期受診を予約すべき場合:
- 避妊せずに1年(35歳以上は6か月)過ごしても妊娠しない
- 月経が不規則、来ない、強い痛みがある
- クラミジアなど性感染症にかかったことがある
- 子宮内膜症や子宮の病気を指摘されたことがある
- パートナーに精巣の違和感や性機能の悩みがある
- 妊娠を考え始めた段階で、一度相談しておきたい
診断
不妊の検査は、できれば二人一緒に進めます。原因を一つに決めるのではなく、いくつかの可能性を順番に確かめていく形が一般的です。問診で生活や月経の様子を聞き、必要な検査を組み合わせます。
行われる可能性のある検査
- 問診と基礎体温の記録の確認
- 血液検査(ホルモンの状態、卵巣の働きの目安)
- 超音波検査(子宮や卵巣の様子を見る)
- 卵管(通り道)が通っているかを調べる検査
- 精液検査(男性側の検査としてとても大切です)
- 必要に応じて子宮の中を直接見る検査や、お腹の中を小さなカメラで見る検査
診察で予想されること
検査は一度で終わらず、数か月かけて少しずつ進むことがあります。痛みは軽いものが多いですが、検査の種類によっては多少の痛みや出血があります。費用や保険が使えるかどうかは、受診先で早めに確認しておくと安心です。結果は二人で一緒に聞き、気持ちを共有しながら進めましょう。
治療
治療は、原因・年齢・二人の希望に合わせて段階的に選びます。まずは生活の見直しから始め、必要に応じて治療を組み合わせていきます。ステップが多いので、一度にすべてを決める必要はありません。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する(本人もパートナーも)
- 適正な体重を保つ
- お酒は控えめにする
- 葉酸を含むバランスのよい食事をとる
- 基礎体温や月経の記録をつけて、自分のリズムを知る
- 睡眠を十分にとり、ストレスをため込まない工夫をする
医療治療
治療には、排卵のタイミングを合わせる方法、排卵を促すお薬を使う方法、精子を子宮に届ける人工授精、体外受精や顕微授精(卵子と精子を体の外で出会わせる方法)などがあります。手術が検討される場合もあります。どの方法を選ぶかは、年齢や検査結果、二人の希望によって変わります。薬の種類や量については、必ず担当の医師と相談してください。保険が使えるかどうかは治療の種類や条件によって異なるため、受診先で確認しましょう。
手術が検討される場合
子宮内膜症、子宮の筋腫や形の異常、卵管の詰まり、精索静脈瘤(精巣の静脈が膨らむ状態)などでは、手術が検討されることがあります。手術が本当に必要かどうかは、検査結果をもとに医師とよく相談して決めましょう。
この病気と共に生きる
通院の予定に合わせて生活のリズムを整えると、気持ちが安定しやすくなります。治療の話ばかりにならないよう、二人で楽しめる時間を意識してつくることも大切です。周りの人にどこまで話すかは、二人で決めてかまいません。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙と節酒を心がける
- 適度な運動を習慣にする
- 睡眠をしっかりとる
- 性感染症を防ぐために、検査や予防を心がける
- 男性は精巣を高温にさらす習慣を避ける
- サプリメントなどは自己判断で始めず、医師や薬剤師に相談する
食事と運動
主食・野菜・たんぱく質をバランスよくとり、葉酸を含む食品(緑黄色野菜や豆類など)を意識しましょう。ウォーキングなど無理のない運動がおすすめです。極端なダイエットや激しすぎる運動は、かえって月経のリズムを乱すことがあるので注意しましょう。
精神的健康と心の健康
なかなか結果が出ないと、不安、落ち込み、いらだち、パートナーとのすれ違いが生じることがあります。それは自然な反応で、弱さではありません。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、一人で抱えず、医療機関や地域の相談窓口にすぐ連絡してください。
予防
すべてを予防することはできませんが、リスクを減らせることはあります。禁煙、節酒、適正体重、性感染症の予防、睡眠やストレスの管理は、将来の妊娠にも良い影響が期待できます。妊娠を考え始めたら、早めに情報を集めて相談しましょう。
ワクチン
風疹(ふうしん)の予防接種は、妊娠前に確認しておくことが大切です。子宮頸がんワクチンはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を防ぎ、将来の健康を守ることにつながります。接種の可否や時期は、医師や自治体の案内で確認してください。
検診プログラム
性感染症の検査や婦人科健診は、早めに受けておくと安心です。月経の記録をつけておくと、変化に気づきやすくなります。
合併症
治療しない場合
- 不安や落ち込みが長引き、心の負担が大きくなることがあります
- パートナーとの関係に緊張が生じることがあります
- 治療にかかる費用や通院の負担が重なることがあります
- 治療に伴い、卵巣が腫れるなど体の負担が出ることがあります
- 年齢とともに選べる治療の幅が狭くなることがあります
長期的な見通し
不妊は、多くのカップルが治療や生活の見直しを通じて妊娠に至っています。治療の選択肢は年々増えており、原因がわからない場合でも道はあります。一方で、妊娠しないという人生の形を選ぶことも、尊い選択です。あせりや悲しさを一人で抱え込まず、二人で、そして周りの支えを借りながら進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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