吸入剤(揮発性物質)について
概要
吸入剤とは、家庭用品などから出る蒸気を吸い込んで、気分を変えようとする行為や、そのために使われる物質を指します。シンナーや接着剤、スプレー、ライター用ガス、洗浄剤などの蒸気が含まれます。とても危険で、一度の使用でも命に関わることがあります。
重要な事実
- 家庭にある製品の蒸気が対象になることが多く、手に入りやすい一方で危険性は非常に高いです。
- 脳、心臓、肺などに急な影響が出ることがあり、突然死の原因になることもあります。
- やめたくてもやめられなくなる依存が起こることがあり、早めの支援が大切です。
正確な人数は把握しにくいですが、若い年代を中心に問題となることがあり、決して珍しいことではありません。学校や家庭で見逃されやすいこともあります。
主に10代の若者に多いとされますが、年齢を問わず起こりえます。家庭や学校でのつらさ、孤立、不安などを抱える人ほどリスクが高まることがあります。
症状
- 意識がない、呼びかけに反応しない
- けいれんが起きている
- 呼吸が苦しい、呼吸が止まりそう
- 胸が痛い、強い動悸が続く
- 唇や顔色が青白い
- 突然倒れた、吸入直後にぐったりした
- 大量に吸った可能性がある
- 上記のいずれかがあるときは、すぐに119番を呼んでください
- ⚠激しい頭痛や繰り返す嘔吐
- ⚠強いめまいで立っていられない
- ⚠幻覚や激しい興奮が治まらない
- ⚠動悸や脈の乱れを感じる
- ⚠使用をやめたいのにやめられない
- ⚠やめた後に強い不安、震え、発汗がある
- ⚠これらがあるときは、できるだけ早く医療機関に相談してください
一般的な症状
- めまい、ふらつき、頭痛
- 吐き気や嘔吐
- ぼんやりする、会話がかみ合わない
- ろれつが回らない、歩き方がふらつく
- 気分の高ぶりやイライラ、攻撃的な態度
- 幻覚や幻聴のような体験
- 動悸、息苦しさ、胸の痛み
- 強い眠気、意識がもうろうとする
子供の症状
- 持ち物や衣服から強い薬品のにおいがする
- 隠した容器やビニール袋が見つかる
- 学校に行きたがらない、成績が急に下がる
- 友達関係が急に変わる、閉じこもる
- 頭痛や吐き気を繰り返す
- 表情が乏しい、会話が少ない
- かぜでもないのに鼻やのどの違和感を訴える
高齢者の症状
- めまいやふらつきが増える
- 息切れ、動悸、胸の不快感
- 急な混乱や物忘れのような状態
- 気分の落ち込みや不安の悪化
- 隠れて使用している場合、周囲が気づきにくい
原因
主な原因
- 家庭用品の蒸気を吸うと、一時的に気分が変わるため繰り返すことがある
- 好奇心や仲間からの誘い
- ストレス、不安、つらさから逃れたい気持ち
- 危険性を低く見積もる誤った情報
- 手軽に手に入る環境
リスク要因
- 10代の若年層
- 家庭内の不和や虐待体験
- 学校での孤立やいじめ
- 抑うつ、不安、トラウマなどの心の不調
- 家族や身近な人の物質使用
- 経済的な困難
- 家庭用品が安全に保管されていない環境
- 相談できる大人や支援者が少ないこと
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識がもうろうとしている、反応が鈍い
- けいれん、呼吸困難、胸痛がある
- 幻覚や激しい興奮が続く
- 使用をやめられず、体調が悪化している
- やめた後の離脱症状が強い
定期受診を予約すべき場合:
- 薬品のにおいがする持ち物がある
- 使用を疑う変化が続いている
- 気分の落ち込みや不安が強い
- 学校や仕事に行きづらくなっている
- やめたい気持ちがあるが一人では難しい
- 家族としてどう支えればよいか知りたい
診断
診断は、本人や家族から話を聞くことから始まります。どのような物質を、どのくらい、どのように使ったか、体調や気分にどんな変化があるかを確認します。身体診察や検査を行い、心臓や肺、脳への影響を評価します。本人の安全と同意を大切にしながら進めます。
行われる可能性のある検査
- 問診と生活状況の確認
- 血圧、脈、呼吸、体温などの身体診察
- 血液検査
- 必要に応じた胸部X線や画像検査
- 尿検査などで他の物質の影響を確認することもある
- 気分や不安、睡眠に関する質問
診察で予想されること
話しにくい内容かもしれませんが、正直に話すほど安全な支援につながります。家族や信頼できる人と一緒に相談することもできます。検査結果や相談内容は、プライバシーに配慮して扱われます。
治療
まず安全を確保し、体の状態を評価します。使用を続けている場合は、一人で急に中断するのではなく、支援者と相談しながら計画します。治療は、カウンセリング、家族への支援、生活の立て直し、心のケアを組み合わせて進めます。
自宅でのセルフケア
- 使用した可能性があるときは、その場を離れて換気し、必要なら119番を呼ぶ
- 一人で抱え込まず、信頼できる人や専門機関に連絡する
- 使用したくてたまらない波が来たときの対処法を、あらかじめ決めておく
- 睡眠を整え、食事を抜かない
- 家庭用品は鍵のかかる場所などに安全に保管する
- つらい気持ちを話せる場所や人を持つ
医療治療
専門機関では、動機づけ面接、認知行動療法、家族療法、集団療法などの心理社会的な支援が行われます。併存する不安や抑うつには、精神科的な支援を組み合わせることがあります。体の合併症には、救急や内科的な治療が必要です。薬が必要と判断される場合もありますが、状態に応じて医師が判断します。具体的な薬剤名や用量はここでは示しません。
手術が検討される場合
手術で治す病気ではありません。必要なのは、安全の確保と専門的な支援です。
この病気と共に生きる
使いたい気持ちが強くなる波は、時間とともに弱まることが多いです。波が来たときは、その場を離れる、信頼できる人に連絡する、ゆっくり呼吸する、予定を入れるなど、自分に合った対処法を決めておくと安心です。家族も一緒に安全な環境を整えましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の睡眠時間をできるだけ整える
- 朝昼夕の食事を抜かない
- 軽い散歩やストレッチなど、無理のない運動を続ける
- 人とつながる時間をつくる
- 使いたくなる場所や状況を避ける工夫をする
- 支援グループや相談の場を定期的に利用する
食事と運動
特別な食事療法はありません。規則正しい食事と水分補給を心がけ、無理のない範囲で体を動かすことが、気分と睡眠の安定に役立ちます。体調に不安があるときは、医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
吸入剤を使う背景には、不安、抑うつ、トラウマ、孤立などのつらさがあることがあります。使用をやめると、気分の波や強い不安が出ることもあります。つらい気持ちが強いときは、地域の精神保健福祉センター、かかりつけ医、地域の相談窓口に相談してください。命に関わる危険があるときは、ためらわず119番を呼んでください。
予防
教育と安全な環境づくりで、リスクを減らすことができます。家庭用品の危険性を伝え、安全に保管し、子どもが困ったときに相談できる大人を増やすことが大切です。厚生労働省や自治体の啓発資料も参考にしてください。
ワクチン
該当するワクチンはありません。
検診プログラム
決まったスクリーニング検査はありませんが、健康診断や相談の場で、必要に応じて使用について尋ねることがあります。学校や家庭で変化に早く気づくことが大切です。
合併症
治療しない場合
- 記憶、集中力、判断力への影響
- 心臓の不整脈や突然死の危険
- 肺や気道の障害
- 肝臓や腎臓への負担
- けいれんや意識障害
- 依存が進み、やめたくてもやめられなくなる
- 学校や仕事の継続が難しくなる
- 事故やけがの危険が増える
- 不安や抑うつの悪化
長期的な見通し
やめることは十分に可能です。早めに支援につながるほど、体と心の回復が期待できます。再発しても、それは失敗ではなく、支援を調整するサインです。専門家や家族と一緒に、一歩ずつ進んでいけます。
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最終更新: 2026年10月24日
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