子宮腔内授精(IUI)
概要
子宮腔内授精(IUI)は、妊娠を希望しているカップルのための治療のひとつです。排卵の時期に合わせて、洗浄(精子だけをきれいに集めること)と濃縮(元気な精子を集めること)をした精子を、細い管を使って子宮の中にそっと入れる方法です。精子が腟から子宮、そして卵管まで長い距離を自分で泳ぐ必要がなくなるため、卵子に出会いやすくなると考えられています。性交とはちがう方法で精子を届ける治療で、痛みは少なく、処置そのものは数分で終わることが多いです。
重要な事実
- 腟から細い管を入れて、精子を子宮の中に届ける比較的シンプルな治療です。処置は数分で終わることが多く、その日のうちに帰宅できます。
- 排卵の時期に合わせて行うため、超音波などでタイミングを確認しながら進めます。自然な月経周期で行うことも、排卵を促すお薬を使って行うこともあります。
- 1回で必ず妊娠する治療ではありません。一般的には数回繰り返して結果を見ることが多く、回数の目安や次のステップは年齢や体の状態に合わせて医師と相談します。
はい。不妊治療のなかでも比較的よく行われ、最初に試す治療のひとつとされています。体外受精などに比べて体への負担が少なく、通院の負担も抑えめなことが多いです。費用や保険の扱いは施設や条件によって異なるため、受診先に確認しておくと安心です。
主に、妊娠を希望しているものの一定の期間なかなか妊娠に至らないカップルが対象になります。男性側の精子の数や動きがやや少ない場合、頸管(腟と子宮をつなぐ部分)の粘液が精子を通しにくい場合、排卵の時期が合いにくい場合、検査をしてもはっきりした原因が見つからない場合などに選ばれます。年齢や体の状態によって向き・不向きが変わるため、希望する場合は早めに相談することが大切です。
症状
- 強い下腹部の痛みとお腹の著しい張りが同時にあり、呼吸が苦しい・息切れがする(卵巣過剰刺激症候群の可能性があります)— ためらわずに119番へ電話してください
- 高熱(38℃以上)と激しい腹痛が重なり、意識がぼんやりする、または立てない — 119番へ
- 多量の腟出血が続き、ふらつき・動悸・顔面が真っ青になる — 119番へ
- ⚠37.5℃以上の発熱や寒気がある
- ⚠悪臭のあるおりものがあり、痛みが日ごとに強くなる
- ⚠出血が生理と同じくらいの量で続く
- ⚠尿が出にくい、強い吐き気が続く、水分がとれない
一般的な症状
- IUIは病気ではなく治療なので、それ自体に「症状」はありません。
- 処置のあとに、軽い生理痛のような下腹部の張りや痛みを感じることがあります。多くは半日から1〜2日で落ち着きます。
- おりものに少し血が混じる(少量の出血)ことがありますが、たいていはすぐに治まります。
- 排卵を促すお薬を使った周期では、お腹の張りや乳房の張りを感じることがあります。
- 処置の日は少し疲れやすかったり、眠気を感じたりすることがあります。ゆっくり休みましょう。
子供の症状
- この治療は妊娠を希望する成人が対象で、子どもには行いません。この項目は当てはまりません。
高齢者の症状
- 年齢が上がるほど妊娠する力はゆるやかに下がるため、40代では治療の選択肢や進め方について医師と詳しく相談することが大切です。
- 高齢での妊娠は母体への負担や合併症のリスクが高まることがあり、妊娠前からの健康管理がより重要になります。
- 持病がある場合は、妊娠前に主治医と治療計画を話し合っておきましょう。
原因
主な原因
- 男性側の精子の数や動きがやや少ない(軽い男性不妊)
- 頸管粘液(腟と子宮をつなぐ部分の分泌物)が精子を通しにくい
- 排卵の時期が不安定、または排卵しづらい
- 検査をしてもはっきりした原因が見つからない(原因不明不妊)
- 性交痛や腟のけいれんなどがあり、性交が難しい
リスク要因
- 年齢(特に35歳以上では妊娠率が下がりやすい)
- 喫煙(本人もパートナーも)
- 極端なやせ、または肥満
- 過度の飲酒
- 性感染症の既往や、子宮内膜症・子宮筋腫などの婦人科の病気
- 強いストレスや睡眠不足が長く続いている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 処置のあとに強い腹痛・高熱・多量の出血がある(その場合は119番もしくは救急受診を検討してください)
- お腹が急に張って息苦しい、横になれない
- 意識がぼんやりする、ふらついて立てない
定期受診を予約すべき場合:
- 避妊せずに1年ほど性生活をしても妊娠しない(35歳以上の場合は6か月を目安に)
- 生理の周期が不安定、または生理がこない
- 性交痛や腟の違和感がある
- パートナーの精液検査で指摘があった
- IUIを何回か受けて結果が出ず、次の方法を知りたい
- 治療中の気持ちのつらさが続いている
診断
IUIは「診断」して行うものではなく、検査で体の状態を確かめたうえで、治療として行うかどうかを決めます。まず問診で生活習慣や月経の様子、これまでの妊娠歴を確認し、超音波検査や血液検査で卵巣やホルモンの状態を見ます。パートナーの精液検査も大切です。卵管が通っているかを確かめる検査を行うこともあります。結果をもとに、IUIが合っているか、別の方法がよいかを医師と相談します。
行われる可能性のある検査
- 問診(月経周期、既往歴、生活習慣、これまでの妊娠歴など)
- 経腟超音波検査(卵巣や子宮の様子、卵胞の育ち方を見る)
- 血液検査(ホルモンの値や感染症の有無を確認)
- 精液検査(精子の数・動き・形を調べる)
- 子宮卵管造影検査など、卵管が通っているかを確かめる検査
- 頸管粘液の状態を見る検査
診察で予想されること
検査は複数回の通院に分かれることがあります。痛みを伴う検査もありますが、多くは数分で終わり、その日のうちに日常生活に戻れます。検査の前に目的と流れの説明がありますので、わからないことはその場で質問して構いません。結果はできるだけ二人で聞くことをおすすめします。
治療
IUIは、月経周期に合わせて排卵の時期を予測し、その前後に処置を行います。採取した精子を洗浄・濃縮して、細い管で子宮の奥へ入れます。処置は数分で、痛みは軽いことが多いです。自然な周期で行う場合と、排卵を促すお薬を使って卵胞を育てる場合があります。1周期に1回行い、複数回繰り返しながら効果を見ていくのが一般的です。回数の目安や次のステップは、年齢や状態によって変わります。
自宅でのセルフケア
- 基礎体温やアプリで月経周期を記録しておくと、通院の予定を立てやすくなります。
- 処置の日は激しい運動や長時間の入浴を控えめにして、ゆっくり過ごしましょう。
- 妊娠を考えている間は禁煙を。パートナーも一緒に禁煙するとよりよいです。
- お酒は控えめに。カフェインも取りすぎないようにしましょう。
- 妊娠を考えている人は、葉酸を含む食事を意識し、サプリメントを使う場合は医師や薬剤師に相談しましょう。
- 体調や気持ちの変化をメモしておくと、診察で伝えやすくなります。
医療治療
治療の中心は、排卵の時期に合わせて精子を子宮の中に届けることです。周期に合わせて、排卵を促すお薬(飲み薬や注射)を使うことがあります。超音波で卵胞の育ちを確認し、必要に応じて採血で排卵の時期を確かめます。精子は施設で洗浄・濃縮してから使用します。妊娠が成立しにくい場合は、黄体ホルモンを補うお薬を使うことがあります。いずれも体の状態に合わせて医師が判断します。具体的な薬の種類や使い方は、必ず担当医の指示に従ってください。
手術が検討される場合
IUIを繰り返しても妊娠に至らない場合、原因に応じて手術を検討することがあります。たとえば子宮内膜症や卵管の詰まり、子宮の中のポリープや筋腫などが関係しているときは、腹腔鏡(お腹の小さな穴からカメラで見る手術)や子宮鏡(子宮の中を見る手術)が選択肢になります。手術が不要な場合も多く、次のステップとして体外受精などの方法を相談することもあります。
この病気と共に生きる
IUIは通院の回数が増える治療です。排卵の時期は周期によって変わるため、急な予定が入ることもあります。仕事や家庭の予定を調整しやすいよう、あらかじめ職場や家族に伝えておくと気持ちが楽になります。周期ごとに一喜一憂してしまうのは自然なことです。結果を待つ間は、できるだけいつもどおりの生活を大切にしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙(本人もパートナーも)
- 飲酒は控えめに
- 適正体重を保つ(極端なダイエットは避ける)
- 睡眠をしっかりとる
- パートナーと気持ちを話す時間をつくる
- 通院予定を無理なく組めるよう、職場や家族に早めに相談しておく
食事と運動
特別な食事療法があるわけではありません。主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を心がけ、野菜やたんぱく質を意識しましょう。激しい運動を無理にする必要はありませんが、ウォーキングなど心地よい程度の運動は体と心の健康に役立ちます。極端な食事制限や急な減量は月経周期を乱すことがあるので避けましょう。
精神的健康と心の健康
治療中は、期待と不安が交互にやってきて、気持ちが揺れやすい時期です。周期が来るたびに落ち込んだり、パートナーと気持ちがすれ違ったりすることもあります。これは珍しいことではありません。眠れない、涙が出る、何も楽しめないといった状態が2週間以上続くときは、一人で抱えずに医療機関や相談窓口に話してください。気持ちのつらさは治療の一部として、しっかりケアしてよいものです。
予防
IUIは治療の方法なので、「予防する」という考え方は当てはまりません。ただし、妊娠しやすい体の状態を整えることはできます。禁煙、適正体重の維持、性感染症の予防、睡眠と食事を大切にすることが土台になります。妊娠を考え始めたら、年齢にかかわらず早めに相談することが選択肢を広げます。
ワクチン
妊娠を考える前に、風疹(ふうしん)の抗体があるかを確認しておくことが大切です。抗体がない場合は、妊娠前にワクチンを接種することが勧められています。接種後は一定期間の避妊が必要になるため、時期について医師と相談して計画を立てましょう。季節のワクチンについても、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
妊娠を考えている人は、子宮頸がん検診など自治体が行う定期健診の予定を確認しておきましょう。性感染症の検査が必要かどうかも医師に相談してください。やせや肥満、甲状腺の病気など、妊娠に関わる体の状態は血液検査で見つかることがあります。
合併症
治療しない場合
- 妊娠を希望しても、年齢とともに妊娠する力はゆるやかに下がっていきます。
- 原因となる病気(子宮内膜症など)が進むことがあります。
- 治療を続けることでの心理的な負担が大きくなることがあります。
- 治療を先送りにすると、選べる方法が狭くなることがあります。
長期的な見通し
IUIは体への負担が比較的少なく、多くのカップルが最初に試す治療です。年齢や原因によって結果は変わりますが、IUIで妊娠に至る方も多くいます。うまくいかない場合は、体外受精など次の選択肢があります。治療には多胎妊娠(双子以上)や卵巣過剰刺激症候群(お腹に水がたまり張る状態)などのリスクもありますが、超音波で確認しながら進めることで多くは管理できます。一人で抱え込まず、パートナーと、そして医療者と一緒に、納得できるペースで進めていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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