内反性乳頭腫(ないはんせいにゅうとうしゅ)— 鼻のなかにできる良性のできもの
概要
内反性乳頭腫は、鼻のなか(鼻腔)や、鼻の奥にある空洞(副鼻腔・ふくびくう)にできる、良性(悪性のがんではない)の「できもの(腫瘍)」です。名前の「内反性」は、腫瘍の細胞が下の層に向かって潜り込むように増える様子を表しています。鼻の粘膜から発生し、片側の鼻のなかにできることが多いのが特徴です。ゆっくり大きくなり、鼻づまりや鼻血などの原因になります。良性ですが再発しやすく、一部は悪性(がん)に変わる可能性が報告されているため、きちんと検査して治療することが大切です。
重要な事実
- 鼻の粘膜にできる良性の腫瘍で、多くは片側の鼻にできます。
- 手術で取り除くのが基本の治療で、再発を防ぐために根元まできれいに取ることが大切です。
- 良性でも再発しやすく、一部に悪性の部分が隠れていることがあるため、定期的な経過観察が必要です。
比較的まれな病気ですが、副鼻腔にできる良性腫瘍の中では比較的多いとされています。日本での正確な頻度ははっきりしていません。
50〜60歳代の中高年にもっとも多く、男性にやや多いとされています。子どもには非常にまれです。
症状
- 鼻血が大量に出て、15分以上しっかり押さえても止まらない
- 息が苦しい、呼吸ができない
- 意識がもうろうとしている、会話がかみ合わない
- 顔や首が急にはれ、のどが腫れている感じがする
- ⚠片側の鼻づまりが急に強くなった
- ⚠顔や目の周りのはれ、視力の低下、ものが二重に見える
- ⚠鼻血が何度も繰り返す
- ⚠高熱と顔の痛みがある
一般的な症状
- 片側の鼻づまりが続く(両側のこともあります)
- 鼻血、とくに片側の鼻血
- においが感じにくくなる(嗅覚の低下)
- 鼻水、におう鼻水
- 顔や目の奥の痛み・圧迫感、頭痛
- 鼻の奥に何かある感じ、いびき
- 頬や鼻の周りのはれ(大きくなった場合)
子供の症状
- 子どもには非常にまれです。
- 子どもで片側の鼻づまりや鼻血が続くときは、まずアレルギー性鼻炎、鼻に物を入れた、アデノイドなど、よくある原因を考えます。
- それでも症状が続くときは、耳鼻咽喉科で鼻のなかを診てもらいましょう。
高齢者の症状
- 中高年に多い病気です。
- 高血圧などの持病がある方も多く、治療方針は全身の状態をふまえて相談します。
- 鼻血が続くときは、血液をサラサラにする薬を飲んでいるかどうかを医師に伝えましょう(自己判断で薬をやめないでください)。
原因
主な原因
- はっきりした原因はまだわかっていません。
- ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの関与が指摘されていますが、感染したから必ず起こるというものではありません。
- 慢性の副鼻腔炎(ちくのう)やアレルギー性鼻炎など、鼻の粘膜に長く炎症が続く状態が関係するといわれています。
リスク要因
- 50〜60歳代の中高年
- 長く続く副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎
- 粉塵や化学物質にさらされる仕事(報告があります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 鼻血が繰り返し出る、止まりにくい
- 片側の鼻づまりが数週間以上続く
- 顔や目の周りの腫れ、視力の変化
- においが急にわからなくなった
定期受診を予約すべき場合:
- 片側の鼻づまりや鼻水が長引く
- 鼻の奥に違和感がある
- いびきや鼻づまりで眠りが浅い
- 「鼻茸(はなじろ)」と言われたがよくならない
診断
まず耳鼻咽喉科で、鼻のなかを細いカメラ(内視鏡)で見て、できものの場所や見た目を確認します。必要に応じて画像検査や組織の検査(生検)を行い、良性かどうか、悪性の部分が隠れていないかを調べます。
行われる可能性のある検査
- 鼻内視鏡検査(細いカメラで鼻のなかを見る)
- CT検査(骨への広がりを見る)
- MRI検査(腫瘍の範囲や性質をくわしく見る)
- 生検(組織の一部を取って顕微鏡で調べる)
- 血液検査やアレルギー検査(必要に応じて)
診察で予想されること
検査の多くは外来でできます。内視鏡は細い管を鼻に入れるので少し違和感がありますが、通常は短時間で終わります。生検のあとに少量の出血があることがあります。結果が出るまで1〜2週間ほどかかることがあり、その間は不安な気持ちになるかもしれません。わからないことは遠慮なく医師に聞きましょう。
治療
内反性乳頭腫は、手術で取り除くのが基本です。良性ですが再発しやすく、一部に悪性の部分が隠れていることがあるため、きちんと取ることと、その後の定期的な観察が大切です。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する(鼻の粘膜への刺激を減らす)
- 鼻を強くかみすぎない。片方ずつ、やさしくかむ
- 鼻の乾燥を防ぐ(加湿、適度な水分をとる)
- 医師に言われた通りの日にちで通院し、経過観察を受ける
- 症状の変化(鼻血の回数、鼻づまりの強さ)をメモしておく
医療治療
治療の中心は手術です。腫瘍の根元の粘膜や骨の膜まで含めて取り除くことで再発を防ぎます。最近は、鼻の穴から細いカメラと器具を入れて行う内視鏡手術が多く、顔に傷が残らず、体への負担も比較的少ない方法が選ばれています。腫瘍が大きい場合や悪性が疑われる場合は、より広い範囲の手術が必要になることがあります。手術の前に、炎症を落ち着かせる目的で鼻の治療を行うこともあります。薬の名前や使い方は医師・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
診断がついたら、基本的には手術が勧められます。手術を急ぐかどうかは、腫瘍の大きさ、症状の強さ、悪性が疑われるかどうかで決まります。高齢の方や持病がある方は、麻酔や手術のリスクも含めて医師とよく相談しましょう。
この病気と共に生きる
手術のあとは、しばらく鼻のなかのかさぶたや鼻づまりが続くことがあります。医師の指示に従って鼻を洗ったり、通院で処置を受けたりしながら、少しずつ良くなっていきます。再発を早く見つけるために、決められた通院を続けることがいちばん大切です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙する(受動喫煙も避ける)
- 鼻の粘膜をいたわる(乾燥対策、マスクの活用)
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎がある場合は、きちんと治療する
- 症状の記録をつけておく
食事と運動
特別な食事制限はありません。バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動は、体力づくりや手術後の回復に役立ちます。手術後は、医師の許可が出るまで激しい運動や重いものを持つことは控えましょう。
精神的健康と心の健康
「良性と言われたけれど再発が心配」「悪性ではないか不安」といった気持ちは自然なものです。診察のときに質問をメモしていくと、気持ちが整理されます。眠れない、不安が強い、気分が落ち込む状態が続くときは、ひとりで抱えずに医師や看護師、家族に話してください。つらいときは、地域の相談窓口や医療機関の相談室を利用することもできます。
予防
原因がはっきりしていないため、確実な予防法はありません。ただし、禁煙や、副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎の治療で鼻の粘膜の炎症を減らすことは、鼻の健康を守る助けになります。
ワクチン
現在、内反性乳頭腫を防ぐワクチンは確立していません。HPVワクチンは別の目的(子宮頸がんなど)で接種されるもので、この病気を防ぐかどうかはわかっていません。接種についてはかかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
この病気だけを対象にした決まった検診はありません。片側の鼻づまりや鼻血が続くときは、耳鼻咽喉科で鼻のなかを診てもらうことが早期発見につながります。
合併症
治療しない場合
- 腫瘍が大きくなり、鼻づまりやにおいの低下が強くなる
- 副鼻腔や目の周り、頭蓋底(ずがいこつ)へ広がることがある
- まれに悪性(がん)に変わる
- 鼻出血や顔の痛みが続く
長期的な見通し
内反性乳頭腫は良性の腫瘍で、手術で取り除くことで多くは改善します。再発しやすいため定期的な観察は必要ですが、早期発見と治療で対応できます。悪性に変わるのは一部の例で、きちんと検査と通院を続けることでリスクを管理できます。不安なときは医師に率直にたずねてください。
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最終更新: 2026年10月24日
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