体外受精(IVF)について ― 赤ちゃんを望む方へ
概要
体外受精(たいがいじゅせい、IVF)は、不妊治療の方法のひとつです。卵子(らんし)と精子(せいし)を、体の外の培養液(ばいようえき)の中で出会わせて受精させ、育った胚(はい)を子宮(しきゅう)に戻す治療です。「体外」は体の外で、「受精」は卵子と精子がひとつになることを意味します。タイミング法や人工授精などの治療を試しても妊娠に至らない場合などに、次の選択肢として検討されます。
重要な事実
- 体外受精は不妊治療の選択肢のひとつで、すべての人が最初に受ける治療ではありません。体の状態や希望に合わせて選びます。
- 1回の治療で必ず妊娠するわけではなく、妊娠する可能性は年齢や体の状態によって変わります。
- 日本では厚生労働省の考え方に沿って実施され、条件を満たす場合は公的な医療保険の対象になることがあります(回数などの条件があります)。
- 治療は採卵・受精・胚移植など複数の段階を踏み、通院や注射など生活への負担が伴うことがあります。
日本では体外受精を含む生殖補助医療で生まれる赤ちゃんは年間数万人規模とされ、決して特別な治療ではありません。同じように治療を続けている方はたくさんいます。
パートナーと一緒に赤ちゃんを望む方全般が対象になります。卵管(らんかん)がつまっている、精子の数や動きに問題がある、排卵が起こりにくい、子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)がある、原因がはっきりしない、年齢に伴って卵子の状態が変化してきた、などさまざまな背景があります。同性カップルやひとりで子育てを希望する方が検討する場合もありますが、対応は医療機関によって異なります。
症状
- おなかが強く張って息苦しい、強い腹痛が続く、尿がほとんど出ない(卵巣過剰刺激症候群=らんそうかじょうしげきしょうこうぐんの重い状態の可能性)
- 突然の激しい下腹部痛、ふらつき、冷や汗、意識がぼんやりする(子宮外妊娠や卵巣のねじれなどの可能性)
- 多量の性器出血が止まらない、顔色が悪く力が入らない
- ⚠発熱がある、痛みが日を追って強くなる
- ⚠採卵のあとの出血が続く、痛みがおさまらない
- ⚠尿の量が減った、体重が急に増えた、手足がむくむ
- ⚠胚移植のあとに強い痛みや出血がある
- ⚠気持ちの落ち込みが強く、日常生活が回らないと感じる
一般的な症状
- 避妊をせずに一定期間性生活を続けても妊娠しない(不妊の相談の目安になります)
- 治療の注射による注射部位の痛みや内出血
- 排卵を促す治療によるおなかの張りや軽い痛み
- 採卵(さいらん)のあとの軽い出血や痛み
- 胚移植(はい移植)のあとの少量の出血
- 治療の時期による気分の波、不安、眠りにくさ、疲れやすさ
- 通院の多さによる生活の負担や、仕事との両立のつらさ
子供の症状
- 体外受精は妊娠を望む成人が対象の治療のため、子どもに当てはまる症状はありません。
高齢者の症状
- 年齢が上がるほど妊娠する可能性は下がる傾向があり、40代では特に時間の見通しを持って相談することが大切です。
- 高血圧や糖尿病など持病がある場合は、妊娠前に体の状態を整えておくことが重要です。
- 卵子の提供など、別の選択肢が用意されている医療機関もあります(施設によって考え方が異なります)。
原因
主な原因
- 卵管がつまっていたり、通りが悪かったりする
- 精子の数や動き(運動率)が少ない・弱い
- 排卵が起こりにくい、生理周期が乱れている
- 子宮内膜症や子宮の病気(ポリープ、筋腫など)
- 年齢に伴う卵子の状態の変化
- 検査をしてもはっきりした原因が見つからない(原因不明の不妊)
リスク要因
- 年齢(特に35歳以上では妊娠する可能性が下がりやすい)
- クラミジアなど性感染症にかかったことがある
- 骨盤内の手術や炎症の既往
- 喫煙(本人だけでなく周囲の煙も含む)
- 極端なやせや肥満、睡眠不足、強いストレスが続く生活
- パートナーの精巣やホルモンに関する病気、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)など
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 強いおなかの張りや痛み、息苦しさ、尿が出ないなどがあるときは、すぐに救急(119)に連絡してください。
- 突然の激しい腹痛、ふらつき、冷や汗、多量の出血があるときも、ためらわず救急要請を。
- 発熱や痛みが続く、出血が止まらない場合は、同じ日のうちに医療機関へ連絡してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 避妊をせずに1年ほど(35歳以上の方は6か月ほど)妊娠しない
- 生理が不順、無月経、強い生理痛がある
- 過去に骨盤内の手術や性感染症にかかったことがある
- パートナーの精液検査を受けたい
- 体外受精の流れや費用、仕事との両立について相談したい
- 治療を続けるかどうか迷っている、気持ちの整理を手伝ってほしい
診断
体外受精そのものは「診断」ではなく治療ですが、始める前に二人の体の状態を調べます。問診で生活習慣や生理の周期を確認し、血液検査、超音波検査、精液検査などを行います。必要に応じて卵管の通りを見る検査や子宮の形を見る検査を追加します。これらは一般不妊治療の段階でも共通して行われるものです。
行われる可能性のある検査
- 問診(生理周期、既往歴、生活習慣、治療歴の聞き取り)
- 血液検査(ホルモンの値、感染症の有無、貧血など)
- 経腟(けいちつ)超音波検査(卵巣や子宮の状態を見る)
- 精液検査(精子の数・動き・形を調べる)
- 卵管通水・通気検査や子宮卵管造影検査(卵管の通りを見る)
- 子宮鏡(しきゅうきょう)検査(子宮の中を直接見る)
- 必要に応じて腹腔鏡(ふくくうきょう)検査
診察で予想されること
検査は受けられる時期が決まっているもの(生理中など)があり、通院は複数回になります。治療の流れ、スケジュール、費用の見通しについて説明を受けたうえで、納得してから始められます。パートナーと一緒に説明を聞くと、話し合いがしやすくなります。
治療
体外受精はいくつかの段階を踏みます。①排卵の時期に合わせて卵子を育てる、②腟(ちつ)から細い針で卵子を採る(採卵)、③培養液の中で精子と出会わせて受精させる、④育った胚を子宮に戻す(胚移植)、⑤妊娠したかどうかを血液検査で確認する、という流れです。育った胚を凍結(とうけつ)して、後の周期に使うこともあります。
自宅でのセルフケア
- 通院の予定を早めに把握し、仕事や家事の調整をしておく
- 自己注射は指導を受けた方法と時間を守り、わからないことは遠慮なく聞く
- 睡眠を十分にとり、規則正しい生活を心がける
- 禁煙する(周囲の煙も避ける)、お酒は控えめにする
- 体調の変化や気持ちの動きをメモしておき、診察時に伝える
- パートナーと気持ちを話す時間をつくる。役割を分担する
- つらいときは一人で抱えず、看護師や相談窓口に話す
医療治療
排卵を促す治療、採卵、体の外での受精、胚の培養、胚移植、妊娠しやすい環境を保つための補充などを行います。治療の進め方や使う薬の種類は、医療機関の方針や体の状態によって異なり、医師と相談して決めます。薬の名前や量、副作用については、主治医や薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
採卵は腟から細い針を刺す処置で、手術というより処置に近いものです。卵管に水がたまる状態(卵管水腫)がある場合や、子宮内膜ポリープ・子宮筋腫などが着床(ちゃくしょう)の妨げになると考えられる場合には、治療の前に手術を検討することがあります。
この病気と共に生きる
通院の回数が多く、仕事や家事との両立が負担になることがあります。通院日は「無理をしない日」と決めておく、予定を周囲に前もって伝えておくなど、小さな工夫が気持ちの余裕につながります。治療を休む期間をつくることも、立派な選択です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を徹底する(本人も周囲も)
- アルコールは控えめにし、カフェインのとりすぎにも注意する
- 適正な体重を保つ(極端なダイエットは避ける)
- 睡眠時間を確保し、夜更かしを減らす
- ストレスをためないよう、好きなことや息抜きの時間を持つ
- 治療の情報は信頼できる医療機関や公的機関のものを参考にする
食事と運動
特定の食べ物を食べれば妊娠しやすくなる、という強い証拠はありません。野菜・たんぱく質・主食をそろえたバランスのよい食事と、ウォーキングなどの軽い運動を続けることが、体調づくりに役立ちます。激しい運動や極端な食事制限は避けましょう。葉酸(ようさん)については、妊娠を考えている段階で医師や薬剤師に相談すると安心です。
精神的健康と心の健康
治療の時期は気持ちの波が大きくなります。期待と落胆を繰り返し、注射や通院で心も体も疲れることがあります。落ち込むことや涙が出ることは自然な反応で、弱さではありません。眠れない、気持ちが晴れない状態が長く続く、日常生活が回らないと感じるときは、早めに医療機関や相談窓口に話してください。つらさが強いときは、一人で抱え込まずに助けを求めてください。
予防
不妊のすべてを防ぐことはできませんが、リスクを減らせる部分はあります。禁煙、性感染症の予防と早期の治療、適正体重の維持、そして年齢を考えた早めの相談が大切です。
ワクチン
風疹(ふうしん)などの感染症は妊娠に影響することがあるため、ワクチンで防げるものはあらかじめ確認しておくと安心です。妊娠中は受けられないワクチンがあります。接種歴は母子健康手帳や医療機関で確認し、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
避妊をせずに1年(35歳以上の方は6か月)妊娠しない段階で、早めに婦人科に相談しましょう。子宮頸(しきゅうけい)がん検診など、ふだんの婦人科検診も合わせて受けておくと安心です。
合併症
治療しない場合
- 「治療しなければ必ず悪くなる」というものではありません。ただし年齢が上がるほど妊娠する可能性は下がる傾向があるため、迷っている場合も早めに情報を集めると選択肢が広がります。
- 卵巣のう腫(のうしゅ)や子宮内膜症など、別の病気が見つからずに見過ごされることがあります。
- 排卵を促す治療では、おなかの張りや痛みを伴う卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こることがあります。重い症状が出たときは早めに連絡が必要です。
- 治療が長引くことで、気持ちの落ち込みやパートナーとのすれ違いが生じることがあります。
長期的な見通し
体外受精は多くの方にとって現実的な選択肢で、治療の進歩により妊娠する可能性は少しずつ高まっています。うまくいかない回があっても、次にどうするかを医師と一緒に考えることができます。治療を休む、別の方法を選ぶ、という道も含めて、自分たちのペースで決めていくことが何より大切です。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月24日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.