日本脳炎(にほんのうえん)
概要
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスというとても小さな病原体が原因で起こる、脳の感染症です。ウイルスを持った蚊(主にコガタアカイエカ)に刺されることで人にうつります。人から人へ直接うつることはありません。感染しても多くの人は症状が出ないか、軽いかぜのような症状で終わりますが、ごく一部の人で脳に炎症が起こり、重い症状につながることがあります。
重要な事実
- 蚊に刺されてうつる感染症で、人から人へはうつりません。
- 感染してもほとんどの人に症状は出ません。脳炎になるのはごく一部の人です。
- 日本ではワクチンが定期接種に含まれていて、対象年齢の子どもは公費で受けられます。
- 蚊が増える夏から秋(7〜10月ごろ)にかけて、蚊に刺されない工夫が大切です。
日本では報告される患者数がとても少なく、まれな病気です。一方、東アジア・東南アジア・南アジアでは広く見られ、世界では毎年数万人が発症すると言われています。
蚊に刺される機会が多い人、水田や養豚場の近くに住む人、屋外で長く過ごす人、ワクチンを受けていない人が注意が必要です。子どもは重症化しやすいとされますが、日本では子どもの定期接種が進んでいるため患者は少なくなっています。
症状
- けいれんが止まらない、または何度も繰り返す
- 意識がない、呼びかけに反応しない
- 呼吸が苦しい、息が荒い
- 急に体が動かなくなった、ろれつが回らない
- これらの症状があるときは、ためらわずに119番へ連絡してください。
- ⚠高熱が続き、頭痛が強い
- ⚠首が硬く、首を前に曲げられない
- ⚠嘔吐を繰り返す
- ⚠意識がぼんやりする、様子がいつもと違う
一般的な症状
- 吐き気・嘔吐
- だるさ、食欲がない
- 意識がぼんやりする、会話がかみ合わない
- 首が硬くなる(首を前に曲げにくい)
- けいれん
- 手足の麻痺、ふるえ
子供の症状
- ぐったりしていて元気がない
- 呼びかけへの反応が弱い、視線が合いにくい
- けいれん
- 繰り返す嘔吐
- 母乳やミルクを飲まない、水分がとれない
- 泣き方がいつもと違う、きげんが悪い状態が続く
高齢者の症状
- 急な発熱とともに意識がぼんやりする
- 話が通じにくい、受け答えがおかしい
- 転倒しやすい、歩行がふらつく
- 食事や水分をとる量が急に減る
原因
主な原因
- 日本脳炎ウイルスを持った蚊(主にコガタアカイエカ)に刺されること
- ウイルスはブタなどの動物の体内で増え、蚊を介して人に届きます
- 人から人へ直接うつることはありません
- 輸血や臓器移植で例外的にうつった報告がありますが、非常にまれです
リスク要因
- 蚊が多い地域や時期に過ごすこと(水田・養豚場の近く、夏から秋)
- 屋外での作業や長時間の活動
- ワクチンを受けていない、または接種歴がわからない
- 高齢である、免疫の働きが弱い状態である
- 海外の流行地域へ渡航・滞在すること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 高熱と強い頭痛が同時にある
- 首が硬い、光がまぶしく感じる
- 意識がぼんやりする、受け答えがおかしい
- けいれんがあった
- 嘔吐が続いて水分がとれない
定期受診を予約すべき場合:
- 蚊に刺された後に発熱がだらだら続く
- 海外で蚊に刺され、帰国後に体調がすぐれない
- 自分のワクチンの接種歴を確認したい
- 海外渡航前の健康相談をしたい
診断
症状と診察に加えて、血液検査や髄液検査で、ウイルスに対する体の反応(抗体)やウイルスの遺伝子を調べます。蚊に刺された時期、渡航歴、住んでいる地域、ワクチンの接種歴なども聞かれます。脳の画像検査で脳の状態を確認することもあります。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状、蚊に刺された時期、渡航歴、住んでいる地域、ワクチン歴)
- 血液検査(抗体検査など)
- 髄液検査(腰から細い針で体液を少し採る検査)
- 脳の画像検査(CT・MRI)
- 必要に応じて脳波検査
診察で予想されること
髄液検査は腰のあたりを麻酔して行い、10〜20分ほどで終わります。結果が出るまで数日かかることがあります。経過を見るために入院となることが多いです。
治療
日本脳炎ウイルスそのものを直接退治する特効薬はありません。治療の中心は、体がウイルスと戦う力を支える「支持療法」です。発熱やけいれんをやわらげ、水分と栄養を保ち、呼吸や意識の状態を注意深く見守ります。重症の場合は集中治療室で管理することがあります。
自宅でのセルフケア
- 安静にして体力の回復を待つ
- 水分をこまめにとる
- 医師に指示された薬は指示どおりに使う
- けいれんや意識の変化があれば、すぐに医療機関に連絡する
- 退院後は無理をせず、少しずつ日常に戻していく
医療治療
病院では、発熱やけいれんをやわらげる治療、点滴による水分・栄養の補給、呼吸が苦しいときの酸素や呼吸のサポートなどを行います。脳の腫れへの対応や、回復を助けるリハビリテーションが必要になることもあります。治療は症状に合わせて医師や看護師が組み立てていきます。
手術が検討される場合
通常、手術が必要になることはありません。
この病気と共に生きる
回復には時間がかかることがあります。退院後も疲れやすさや集中しにくさが残ることがあり、無理をせず少しずつ活動を増やしていくことが大切です。家族や周りの人は、本人のペースを尊重して見守りましょう。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠と休息を十分にとる
- 体力に合わせて少しずつ体を動かす
- リハビリが必要なときは続ける
- ストレスをためこまないようにする
- 蚊に刺されない工夫を続ける
食事と運動
食事はバランスよく、食べやすいものを少量ずつで構いません。運動は、体調を見ながら散歩など軽いものから始め、だるさが強い日は休みましょう。急に激しい運動をしないことが大切です。
精神的健康と心の健康
入院や長い回復の期間は、不安になったり気分が落ち込んだりすることがあります。それは自然なことです。話を聞いてもらうだけでも楽になることがあります。つらい気持ちが続くときは、医療者や相談窓口に話してください。気持ちがとてもつらいときは、一人で抱え込まず、地域の相談窓口や医療機関に連絡してください。
予防
はい。ワクチンと、蚊に刺されない工夫の2つが予防の柱になります。
ワクチン
日本では日本脳炎のワクチンが定期接種のひとつになっており、対象年齢の子どもは公費で受けられます。標準的な時期は、3歳ごろに初回、4歳ごろに追加、9歳ごろに2回目の追加です(時期はお住まいの自治体のお知らせを確認してください)。海外の流行地域に長く滞在する大人や、蚊に刺される機会が多い仕事の人などは、渡航前に医師に相談するとよいでしょう。接種歴がわからないときは、母子健康手帳や自治体の記録を確認しましょう。
検診プログラム
日常的に受ける検査(スクリーニング)は特にありません。海外渡航前の健康相談は役立ちます。
合併症
治療しない場合
- 脳の炎症が進み、意識障害やけいれんが長引くことがある
- 手足の麻痺、話しにくさ、飲み込みにくさなどの後遺症が残ることがある
- 記憶や集中力の低下がみられることがある
- 呼吸の状態が悪くなるなど、重い合併症につながることがある
- まれに命に関わる場合がある
長期的な見通し
多くの人は軽い症状で回復します。脳炎を発症した場合でも、適切な医療と周りの支援のもとで回復する人がたくさんいます。後遺症が残る場合も、リハビリテーションによって少しずつできることが増えていくことがあります。長い目で見て、あせらずに進めていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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