川崎病(かわさきびょう)
概要
川崎病は、おもに4歳くらいまでのお子さんがかかる、体の中の血管に炎症(赤く腫れるような反応)が起きる病気です。38℃以上の高い熱が5日以上続き、目の充血、唇の赤み、全身の発疹など、いくつもの症状が一度に現れるのが特徴です。1967年に日本の小児科医・川崎富作先生が報告したことから、この名前がつきました。心配な名前ですが、多くのお子さんは早めの治療で1〜2週間ほどで元気になっていきます。ただし心臓の血管(冠動脈=心臓に血液を送る血管)に影響が出ることがあるため、しばらく心臓の検査を続けることが大切です。
重要な事実
- 主にかかるのは4歳以下のお子さんで、日本は世界的にみて患者数が多い国です。
- いちばん多いサインは「5日以上続く高い熱」です。熱が下がってもまた上がることを繰り返します。
- 心臓の冠動脈に「こぶ(拡がり)」ができることがあるため、診断後は心エコー(超音波で心臓をみる検査)で経過を確認します。
- 人から人へうつる病気ではありません。原因はまだ完全にはわかっていません。
日本では毎年およそ1万人以上のお子さんが川崎病にかかっていると報告されており、決してめずらしい病気ではありません。世界的にみると日本を含む東アジアの地域で多くみられます。小児科の入院ではよく出会う病気のひとつです。
かかるのはほとんどが子どもで、特に生後6か月から5歳くらいまでが中心です。1歳前後がいちばん多いとされています。男の子は女の子よりやや多くかかります。生後6か月未満の赤ちゃんは症状がそろいにくく、気づくのが遅れやすいので注意が必要です。大人では非常にまれですが、まれに発症することがあります。一度かかっても数%のお子さんは再びかかることがあります。
症状
- けいれんが数分以上続く、またはけいれんを繰り返す
- 呼びかけへの反応が弱い、意識がぼんやりしている、ぐったりして動かない
- 呼吸が苦しそう、息が速い、顔色や唇が青白い
- 水分をまったく受けつけず、尿が半日以上出ていない
- 胸を痛がる、心臓の鼓動がとても速くて苦しそう(ことばで伝えられる年齢のお子さん)
- ⚠5日以上続く高い熱がある
- ⚠両方の目が充血している
- ⚠全身に発疹が出ている、唇が真っ赤になっている
- ⚠首のリンパ節が腫れて痛がる
- ⚠いったん下がった熱がまた上がった、または回復途中で元気がなくなり心配
一般的な症状
- 38〜39℃以上の高い熱が5日以上続く(解熱の薬で一時的に下がっても、また上がってくる)
- 両方の目の白目が赤く充血する(目やには少ないのが特徴)
- 唇が真っ赤になってひび割れ、舌が赤くぶつぶつになる(いちご舌と呼ばれます)
- 全身に赤い発疹が出る。おむつが当たる部分に多く出ることもある
- 手のひらと足の裏が赤く腫れる。回復する時期に指先や足の指の皮がむけてくる
- 首のリンパ節(リンパ腺)が腫れて、触ると痛がる
- BCGワクチンのあと(接種痕)が赤くなる
- とても不機嫌になる、ぐったりして元気がない
子供の症状
- 乳幼児では症状がそろわず、熱だけが続くようにみえることがあります。
- 赤ちゃんは「機嫌が悪い」「ミルクの飲みが悪い」「ぐったりしている」といった様子の変化が大切なサインになります。
- 生後6か月未満では、目の充血や発疹などが目立たないことがあります。
- BCGのあとが赤くなるのは、日本のお子さんによくみられる特徴的なサインです。
- 熱が下がったあとに指先の皮がむけてくるのは、回復の過程でよくみられます。
高齢者の症状
- 大人では非常にまれですが、発症すると子どものような典型的な症状がそろわず、診断が遅れることがあります。
- 大人の場合は、長く続く原因不明の熱や、発疹・目の充血などが手がかりになります。
- 大人の発症はまれであるため、まずは他の病気かどうかを調べることが一般的です。
原因
主な原因
- 川崎病の原因は、まだはっきりとはわかっていません。
- 何らかの感染をきっかけに、体の免疫(外から入ってきたものと戦う仕組み)が過剰にはたらいてしまい、自分の血管を炎症させてしまうと考えられています。
- 特定の細菌やウイルスが原因だと断定されたものは、今のところ見つかっていません。
- 患者さんから患者さんへうつる病気ではありません。保育園や学校で広がることはありません。
リスク要因
- 4歳以下(特に1歳前後)であること
- 男の子であること(女の子よりやや多い)
- 東アジア系(日本を含む)であること
- 兄弟や家族に川崎病にかかった人がいること
- 冬から春にかけてやや多いとされています
- 生まれつきの体質(遺伝的なかかりやすさ)が関係していると考えられています
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 38℃以上の熱が5日以上続いている(解熱の薬で一時的に下がっても、また上がる)
- 熱と同時に、目の充血・唇の赤み・発疹・首のリンパの腫れなどが2つ以上みられる
- 生後6か月未満の赤ちゃんが発熱している
- 熱が下がったあとに、また熱が出た、あるいは元気がなくなった
- 機嫌がひどく悪い、ミルクや食事の飲み込みが悪い、尿の量が減っている
定期受診を予約すべき場合:
- 川崎病のあと、指示された通院日・心エコーの予定日
- 退院後に指の皮がむけてきた(多くは回復の過程ですが、診察で確認しておくと安心です)
- 保育園・学校・部活動に戻るタイミングについて相談したい
- 今後の予防接種のスケジュールを確認したい
- かかった記録を大人になってからも伝えたい(母子健康手帳と一緒に保管しておくと役立ちます)
診断
川崎病には「これ1つで確定」という検査はありません。医師は、特徴的な症状がいくつそろっているかを確認し、血液検査や心エコーの結果とあわせて診断します。典型的には、5つ以上のみられる症状(長く続く熱、両目の充血、唇・舌の変化、発疹、手足の腫れ、首のリンパの腫れ)のうち5つ以上、または4つに心臓の血管の変化が加わった場合に川崎病と診断されます。症状がそろいにくい乳幼児では、医師が慎重に経過をみながら判断します。
行われる可能性のある検査
- 診察と問診(熱が何日続いているか、症状がいつから出たかの確認)
- 血液検査(炎症の程度、血小板の数、肝臓のはたらきなどを調べます)
- 心エコー検査(超音波で心臓と冠動脈の形・働きをみる、痛みのない検査)
- 必要に応じて胸部レントゲン検査
診察で予想されること
診断がつくと、多くはそのまま入院して治療を始めます。入院はおよそ1〜2週間が目安ですが、お子さんの状態によって変わります。心エコーは、治療の前だけでなく、治療のあとや退院後にも繰り返し行います。発症から1か月くらいまでは特に注意して経過をみることが多く、その後も数か月〜数年、定期的な通院が続くことがあります。検査の多くは痛みがなく、短時間で終わります。
治療
川崎病の治療の目標は、できるだけ早く血管の炎症をしずめて、心臓の冠動脈を守ることです。発症から早い時期(目安として10日以内)に治療を始めると、冠動脈に後遺症が残るリスクを大きく下げられるとされています。治療は入院して行うことがほとんどです。
自宅でのセルフケア
- 熱が高いあいだは、水分をこまめに少しずつ飲ませる(お茶、経口補水液など、飲みやすいもので構いません)
- 安静を心がけ、ぐったりしているときは無理に起こさない
- 熱が下がって元気になっても、入浴や激しい遊びは主治医に確認してからにする
- 母子健康手帳や退院時の説明書をまとめて保管し、次の受診のときに持って行く
- 予防接種は、治療の影響で時期を調整する必要があることがあるため、自己判断せず必ず主治医に相談する
- 保育園・学校への復帰の時期や運動の制限は、冠動脈の状態によって変わるので医師の指示に従う
医療治療
入院して、血管の炎症を強くおさえるための点滴治療を行います。多くのお子さんは1回の治療で熱が下がりますが、下がりきらない場合は追加の治療を検討します。あわせて、血液が固まりやすくなるのを防いで血栓(血のかたまり)ができないようにするための内服薬を、しばらくのあいだ続けることがあります。治療の効果と冠動脈の状態は、心エコーで確認します。使う薬の種類や量は、お子さんの体重・状態・反応に合わせて医師が決めます。
手術が検討される場合
手術が必要になることはほとんどありません。冠動脈に大きな「こぶ」が残り、心臓への血流が悪くなっている場合に限り、カテーテル治療や手術を検討することがありますが、これはとてもまれなケースです。
この病気と共に生きる
退院後は、しばらく定期的に小児科(場合によっては循環器=心臓の専門医)へ通います。通院の間隔は、冠動脈に変化があったかどうかで大きく変わります。変化がなかったお子さんは数回の検査で終わることも多く、変化があった場合は長く経過をみていきます。日常生活の多くは、制限なく過ごせます。
生活習慣のアドバイス
- 手洗い・うがい・規則正しい生活など、ふだんの健康管理を大切にする
- 熱や発疹など気になる症状が出たら、早めに小児科に相談する
- 運動やプール、部活動の制限があるかどうかを、受診のたびに確認する
- 保育園・学校には、必要に応じて主治医の指示書を出す
- 大人になっても「川崎病にかかった」ことを伝えられるよう、記録を保管しておく
食事と運動
ふつうは特別な食事制限はありません。バランスのよい食事と、年齢に合った運動で問題ありません。ただし、冠動脈に変化が残っている場合は、激しい運動を制限することがあります。体育や部活動について迷ったら、自己判断せず主治医に相談してください。
精神的健康と心の健康
子どもの入院は、親御さんにとって大きな負担です。付き添いで眠れない日が続いたり、「もっと早く気づいていれば」と自分を責めてしまったりすることもあるかもしれません。でも、川崎病は原因がわかっていない病気で、防げなかったことを責める理由はありません。お子さん自身も、入院や検査で不安を感じていることがあります。年齢に合ったことばで、やさしく説明してあげてください。
予防
残念ながら、川崎病を確実に防ぐ方法は今のところ見つかっていません。原因がはっきりしていないためです。また、人から人へうつる病気ではないので、隔離や消毒で防ぐという性質のものでもありません。早く気づいて早く治療を始めることが、いちばん大切な「備え」になります。
ワクチン
川崎病そのものを防ぐワクチンはありません。ただし、治療で使われる点滴の影響により、生ワクチンの接種時期を一定期間ずらす必要が出ることがあります。今後の予防接種は、必ず主治医の指示に従ってください。
検診プログラム
川崎病のための特別な検診はありません。ただし、かかったことのある方は、症状がなくても心臓の経過観察を続けることが大切です。大人になって健康診断を受けるときや、妊娠・出産のときには、川崎病にかかったことを医療者に伝えてください。
合併症
治療しない場合
- 冠動脈(心臓に血液を送る血管)が拡がって「こぶ」ができることがあります。治療しない場合、およそ15〜25%にみられるとされています。
- 心臓の筋肉や心臓を包む膜に炎症が起きることがあります(心筋炎・心膜炎)。
- 冠動脈の中に血栓(血のかたまり)ができ、血流が悪くなることがあります。
- ごくまれに、心臓の血管が詰まる重い状態につながることがあります。
- 心臓の弁にはたらきの異常が残ることがあります。
長期的な見通し
ほとんどのお子さんは、早めに適切な治療を受けることで熱が下がり、冠動脈に後遺症を残さずに元気に回復します。治療の進歩により、予後はとてもよくなっています。冠動脈に変化が残った場合も、定期的な検査と生活上の配慮で、多くの方がふつうの生活を送っています。心配なことがあれば、次の受診のときに遠慮なく医師に聞いてください。
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最終更新: 2026年10月24日
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