ケロイド(盛り上がった傷あと)について
概要
ケロイドとは、皮膚が傷ついて治ったあとに、赤く硬く盛り上がってできる「瘢痕(はんこん)」の一種です。ふつうの傷あとは時間とともに平らになり色も薄くなりますが、ケロイドは傷が治ったあとも少しずつ大きくなり、元の傷の範囲をはみ出して広がっていくのが特徴です。似たものに「肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)」があり、こちらは傷の範囲の中にとどまる盛り上がりを指します。ケロイドは命に関わる病気ではありませんが、かゆみや痛みが出たり、見た目が気になったりして、生活の質に影響することがあります。
重要な事実
- 傷が治ってから数か月〜数年かけて、ゆっくり大きくなることが多いです。
- 元の傷の範囲をこえて広がるのが、ふつうの盛り上がった傷あととの大きな違いです。
- 胸、肩、背中、耳たぶ、あご、関節の近くなど、皮膚が引っ張られやすい場所にできやすいとされています。
- かゆみ、痛み、ひきつれ感、熱っぽさを伴うことがあります。
- 体質(遺伝)が大きく関係していて、同じような傷でもケロイドになる人とならない人がいます。
ケロイドは日本でも比較的よく見られる皮膚の変化です。肌の色が濃い方に多いとされていますが、肌の色が薄い方でも十分に起こります。傷やにきび、ピアス、手術のあとなど、日常生活のなかでできることが多いため、決してめずらしいものではありません。
10代から30代くらいの方にできやすく、女性にやや多いとされています。子どもから高齢の方まで、どの年代でも起こる可能性はあります。家族にケロイドのある方がいる場合や、以前にケロイドになったことがある場合は、できやすい傾向があります。
症状
- 傷あとが急に大きく腫れ、膿が出て、38℃以上の発熱や激しい痛みがあるとき(重い感染症の可能性があります。夜間や休日は119番に連絡するか、救急外来を受診してください)
- 傷あとからの出血が止まらないとき、または皮膚が広くはがれてしまったとき
- ⚠傷あとが赤く熱を持ち、腫れや痛みがどんどん強くなってきたとき(感染の初期サインかもしれません)
- ⚠ケロイドが急に大きくなった、硬さが増した、強く痛むようになったとき
- ⚠手術や処置をしたあとの傷が開いてきた、じくじくした液が出てきたとき
一般的な症状
- 傷あとが赤みを帯びて、硬く盛り上がってくる
- 盛り上がりが元の傷の範囲をこえて、横に広がっていく
- かゆみがある(特に汗をかいたときや、衣服がこすれたとき)
- 痛み、ずきずきする感じ、ひきつれる感じがある
- 表面がつるっとしている、または少し赤紫色〜褐色に見える
- 数年かけて大きくなったあと、落ち着いたり少し小さくなったりすることもある
子供の症状
- 転んだときの傷、やけど、予防接種のあと、ピアスの穴などがきっかけでできることがあります。
- 成長期は皮膚が伸びるため、傷あとが引っ張られて盛り上がりやすいことがあります。
- 子どもはかゆくて掻いてしまい、傷を広げてしまうことがあるので、爪を短くしたり、掻かないように声をかけるとよいでしょう。
- 痛みをうまく言葉で伝えられないこともあるので、傷あとの色や盛り上がりの変化を周りの大人が見てあげてください。
高齢者の症状
- 年齢を重ねると、ケロイドが新しくできることは少なくなる傾向があります。
- すでにあるケロイドは、長い時間をかけて落ち着いていくことが多いです。
- 糖尿病などの持病があると傷の治りが遅くなり、傷あとが目立ちやすくなることがあります。
- 皮膚が乾燥しやすいので、かゆみが強く出ることがあります。保湿を心がけましょう。
原因
主な原因
- 皮膚の傷が治る過程で、皮膚を支えるコラーゲン(たんぱく質の一種)が過剰につくられ、バランスが崩れることで起こると考えられています。
- けが、手術の傷、やけど、にきび、ピアスの穴、予防接種の跡、虫さされなど、皮膚が傷つくことがきっかけになります。
- 皮膚が引っ張られる力(張力)が強い場所ほどできやすいとされています。胸の中央、肩、背中、耳たぶ、あご、関節の近くなどが代表的です。
- 体質(遺伝)が関係していて、家族にケロイドのある方がいる場合はできやすくなります。
リスク要因
- 家族にケロイドのある方がいる
- 以前にケロイドや肥厚性瘢痕になったことがある
- 肌の色が濃い(メラニン色素が多い)
- 10代〜30代である
- 胸、肩、背中、耳たぶ、あご、関節の近くに傷がある
- 深い傷、やけど、感染した傷、治りが遅かった傷
- 妊娠中など、ホルモンのバランスが変化している時期
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 傷あとが赤く腫れて熱を持ち、痛みが強くなってきた
- 膿のようなものが出ている、または強いにおいがする
- 発熱がある
- ケロイドが急に大きくなった、急に硬くなった
定期受診を予約すべき場合:
- 傷あとが赤く盛り上がってきて、傷の範囲をこえて広がっている気がする
- かゆみや痛みが続いて、生活に支障がある
- 見た目が気になって、服の選び方や外出に影響している
- ピアスや手術、タトゥーを考えていて、自分の体質が心配
- 子どもや家族の傷あとの盛り上がりが気になる
診断
ケロイドの診断は、多くの場合、医師が傷あとの見た目をよく観察し、お話をうかがうことで行われます。ポイントになるのは「元の傷の範囲をこえて広がっているかどうか」です。特別な検査が必要になることはあまりありません。
行われる可能性のある検査
- 視診と触診(色、硬さ、盛り上がりの広がり、熱感を確認します)
- 問診(いつ、どんな傷からできたか、かゆみや痛みの程度、家族に同じような人がいるか)
- 写真での記録(大きさや色の変化を比べるために撮ることがあります)
- ダーモスコピー(皮膚を拡大して見る道具)を使うことがあります
- ほかの皮膚の病気との区別が必要なときに、ごくまれに組織を少し採って調べる検査(生検)を行うことがあります
診察で予想されること
診察は数分から十数分程度で終わることが多く、痛みを伴う検査は通常ありません。傷ができた時期や、これまでの治疗歴、家族歴を聞かれるので、気づいたことをメモしておくと話しやすくなります。
治療
ケロイドは、完全に消すことが難しいこともありますが、かゆみや痛みをやわらげ、これ以上大きくならないようにし、目立ちにくくする治療があります。ひとつの方法だけでなく、いくつかを組み合わせて、時間をかけて付き合っていくのが一般的です。効果の感じ方には個人差があり、治療には数か月単位の通院が必要になることが多いです。
自宅でのセルフケア
- 傷あとを清潔に保ち、掻いたり強くこすったりしないようにしましょう。
- かゆみが強いときは、冷たいタオルなどで冷やすと楽になることがあります。爪は短く切っておきましょう。
- 紫外線を浴びると色素沈着(色が濃くなること)が目立ちやすくなるので、日焼け止めや衣服で覆って守りましょう。
- 傷あとにテープやシリコン素材のシートを貼って保護すると、盛り上がりを抑える助けになることがあります。使い方や選び方は医師や薬剤師に相談してください。
- 皮膚が引っ張られないよう、テープで軽く圧迫する方法が勧められることがあります。
- 乾燥はかゆみを強めるので、保湿を心がけましょう。
医療治療
医療機関では、炎症とかゆみを抑えるための注射、液体窒素で患部を凍らせる治療、レーザー治療、シリコン素材のシートやジェル、外用薬、テープによる圧迫などが、症状や部位に応じて組み合わせて行われます。再発を防ぐ目的で放射線療法が検討されることもあります。どの方法が合うかは、ケロイドの大きさ、場所、できた時期、体質によって変わるため、医師とよく相談して決めていきましょう。治療は一度で終わらず、繰り返し通院が必要になることが多いです。
手術が検討される場合
手術でケロイドを取り除くこともありますが、そのまま切除するだけでは再発しやすいことが知られています。そのため手術を選ぶ場合は、術後に注射やテープによる圧迫、放射線療法などを組み合わせて、再発を防ぐ工夫が行われます。すべてのケロイドに手術が適しているわけではなく、部位や大きさによって判断が変わります。
この病気と共に生きる
ケロイドは、付き合いながら少しずつ落ち着かせていくものです。衣服の締めつけや摩擦、日焼け、掻く癖など、刺激を減らすことが日常のケアの基本になります。治療は長い期間にわたることがあるので、通院の予定をあらかじめ生活に組み込んでおくと無理がありません。
生活習慣のアドバイス
- 傷ができたら、乾燥させず清潔に保ち、化膿(感染)させないようにしましょう。
- 新しいピアスやタトゥー、手術を考えている場合は、事前に医師に相談しましょう。
- にきびはつぶさず、皮膚科で相談しながら治しましょう。
- 衣服は締めつけの少ないものを選び、傷あとをこすらないようにしましょう。
- 爪を短く保ち、寝ている間の掻きむしりを防ぐ工夫をしましょう。
- 禁煙は皮膚の血流と治りをよくする助けになります。
食事と運動
ケロイドを防ぐために特別に避けるべき食べ物はありません。バランスのよい食事と、十分な睡眠を心がけることが、皮膚の健康を保つ基本になります。運動は問題なく行えますが、ケロイドのある部位を強くこすったり、マッサージで刺激したりするのは控え、気になる場合は医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
ケロイドは見た目に関わるため、人に見られるのがつらい、水着や半袖を着るのをためらう、気分が落ち込む、人と会うのがおっくうになる、といった悩みを持つ方が少なくありません。これは決してわがままではなく、自然な気持ちです。一人で抱え込まずに、家族や友人、医療者に話してみてください。つらい気持ちが強いときや、気分の落ち込みが続くときは、地域の相談窓口や医療機関に相談しましょう。
予防
ケロイド体質そのものを変えることはできませんが、きっかけを減らし、悪化を防ぐことはできます。傷をきれいに保って感染させないこと、傷が治る間はテープなどで保護し引っ張られないようにすること、にきびをつぶさないこと、紫外線を避けることが大切です。ピアスやタトゥー、手術など皮膚に傷がつく行為は、体質を考えて慎重に判断しましょう。
ワクチン
ケロイドを防ぐワクチンはありません。ただし、予防接種の跡がケロイドになることがあるため、接種後は強くこすったり掻いたりしないようにしましょう。自分や家族がケロイド体質だと思う場合は、接種の前に医師や保健師に相談しておくと安心です。
検診プログラム
ケロイドのための決まった検診はありません。傷あとが赤く盛り上がってきた、傷の範囲をこえて広がってきたと感じたら、早めに皮膚科などの医療機関に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 時間とともに大きくなり、見た目がさらに目立つことがあります。
- かゆみや痛みが続き、眠りや日常生活に影響することがあります。
- 関節の近くにできると、皮膚がひきつれて動かしにくくなることがあります。
- 見た目の悩みから、気分の落ち込みや外出を避ける気持ちにつながることがあります。
- 傷あとが傷つくと、まれに感染を起こすことがあります。
長期的な見通し
ケロイドは、多くの場合、数年かけて少しずつ落ち着いていきます。治療を続けることで、かゆみや痛みが軽くなり、盛り上がりが目立ちにくくなることもあります。治るスピードや経過には個人差がありますが、あせらずに医師と相談しながら、自分に合った付き合い方を見つけていける可能性は十分にあります。
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最終更新: 2026年10月24日
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