腎不全(腎臓の働きが低下した状態)
概要
腎臓は、血液の中の老廃物や余分な水分を尿として出す「ろ過」の働きをしています。腎不全は、このろ過の働きが低下した状態です。急に起きる急性腎障害(急性腎不全)と、長い時間をかけてゆっくり進む慢性腎不全があります。慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の異常や働きの低下が3か月以上続く状態で、進行すると腎不全になることがあります。腎不全は、原因や段階によって治療法が異なり、すべての人が同じ経過をたどるわけではありません。
重要な事実
- 腎不全は、腎臓のろ過機能が低下した状態で、急性と慢性があります。
- 初期は症状がほとんどないことがあり、健診の尿検査や血液検査で見つかることがあります。
- 治療は原因に応じた管理、食事、血圧や血糖の管理、必要に応じて透析や腎移植などがあります。
慢性腎臓病は日本でも多い病気で、成人のおよそ8人に1人程度が該当するといわれています。ただし、腎不全まで進行する人はその一部です。
糖尿病や高血圧がある人、高齢者、家族に腎臓病がある人、心臓病や脳卒中のある人、肥満や喫煙のある人に多くみられます。子どもでは、生まれつきの腎臓・尿路の異常や遺伝の病気が関係することもあります。
症状
- 息が苦しい、呼吸が荒い
- 胸が痛い、強い動悸
- 意識がもうろうとしている、けいれん
- 尿が全く出ない
- 激しい嘔吐で水分が取れない、ぐったりしている
- これらの症状があるときは、ためらわずに119番へ連絡してください
- ⚠尿の量が急に減った
- ⚠むくみが急にひどくなった
- ⚠発熱、寒気
- ⚠血尿、尿の色が赤い
- ⚠嘔吐が続き水分が取れない
- ⚠強いだるさで日常生活が難しい
- ⚠これらの症状があるときは、同じ日のうちに医療機関へ相談してください
一般的な症状
- 初期は無症状のことが多い
- だるさ、疲れやすい
- 足やまぶたのむくみ
- 尿の量が減る、夜中に尿が増える
- 尿が泡立つ
- 食欲がない、吐き気
- 皮膚のかゆみ
- 息切れ、階段で苦しい
- 集中力の低下
- 血圧が高くなる
子供の症状
- 元気がない、食欲がない
- 体重が増えない、成長がゆっくり
- まぶたや足のむくみ
- おしっこの量や色の変化
- 脱水を繰り返す、吐き気
高齢者の症状
- 食欲低下、体重減少
- 強いだるさ、動きたがらない
- むくみ、息切れ
- 意識がぼんやりする、転倒
- 脱水、尿の量の変化
原因
主な原因
- 糖尿病による腎臓の障害
- 高血圧による腎臓の障害
- 糸球体腎炎などの腎臓の炎症
- 多発性のう胞腎などの遺伝性の病気
- 尿の流れが悪くなる病気(前立腺の病気、尿路結石など)
- 脱水、感染、一部の薬の影響などで急に起きる急性腎障害
- 自己免疫の病気
- 生まれつきの腎臓・尿路の異常
リスク要因
- 家族に腎臓病がある
- 心臓病や脳卒中の既往
- 急性腎障害を経験したことがある
- 痛み止めの長期・大量使用
- 脱水を繰り返す
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿が極端に少ない、または出ない
- むくみが急に悪化し、息苦しい
- 嘔吐が続いて水分が取れない
- 強いだるさ、意識がぼんやりする
- 発熱や血尿がある
- 胸痛、動悸、息切れが強い
定期受診を予約すべき場合:
- 健診で尿たんぱくやeGFRの異常を指摘された
- 足やまぶたのむくみが続く
- 尿の泡立ちや夜間尿が気になる
- 糖尿病、高血圧、心臓病を指摘されている
- 家族に腎臓病の人がいる
- 疲れやすさや食欲低下が続く
診断
問診と診察のあと、血液検査と尿検査で腎臓の働きや尿の異常を調べます。必要に応じて画像検査や、腎臓の組織を調べる検査を行うことがあります。原因や段階を把握して、治療方針を決めます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(血清クレアチニン、eGFR、尿素窒素、電解質など)
- 尿検査(尿たんぱく、尿潜血、尿沈渣など)
- 血圧測定
- 腹部超音波検査
- 必要に応じてCTやMRI
- 必要に応じて腎生検(腎臓の組織を調べる検査)
診察で予想されること
検査は1回だけでなく、数回行うことがあります。eGFRは「推算糸球体ろ過量」といい、腎臓のろ過の働きをおおよそ示す数値です。原因を調べるために、使っている薬やサプリメント、既往歴、家族歴を聞かれます。必要なら腎臓内科などの専門医に紹介されます。結果の説明を受け、生活の注意点を一緒に確認しましょう。
治療
腎不全の治療は、原因、急性か慢性か、腎臓の働きの程度によって変わります。急性の場合は原因を取り除くことで回復することがあります。慢性の場合は、進行をゆっくりにし、むくみ、貧血、血圧の変化などの合併症を防ぎながら、長く安定して過ごせるようにします。透析や腎移植が選択肢になることもあります。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示どおりに通院し、薬は自己判断で中止・変更しない
- 血圧、体重、尿の量、むくみの変化を記録する
- 塩分を控えめにし、水分やたんぱく質の量は医師や管理栄養士の指示に従う
- 喫煙を避ける、節酒する
- 無理のない範囲で体を動かす
- 風邪や感染症を防ぐため、手洗いや口腔ケアを心がける
- 市販の痛み止めやサプリメントは、使う前に医師や薬剤師に相談する
- ワクチン接種はかかりつけ医と相談する
医療治療
原因に応じた治療とともに、血圧や血糖を管理し、食事療法を行います。むくみ、貧血、電解質の乱れ、骨の健康などを整えるために、医師が必要と判断した薬を使うことがあります。腎臓の働きが大きく低下した場合は、血液透析や腹膜透析、腎移植などの治療を検討します。治療の内容は人によって異なるため、医療チームと相談して決めます。
手術が検討される場合
透析を受けるための血管の通り道を作る手術、腎移植、尿の流れを妨げる原因を取り除く手術などが行われることがあります。すべての人に必要なわけではなく、状態に応じて検討されます。
この病気と共に生きる
腎不全とともに過ごすうえで、通院、服薬、体調の記録は大切です。毎日の体重や血圧、尿の量、むくみの変化をメモしておくと、医療チームに伝えやすくなります。食事や水分のとり方は腎臓の働きによって変わるため、自己流に決めず、定期的に管理栄養士に相談しましょう。体調がいつもと違うときは、早めに医療機関に連絡してください。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙する
- 節酒する
- 適正体重を保つ
- 塩分を控えめにする
- 睡眠を十分にとる
- ストレスをため込まない
- 医師の指示に合わせて運動する
- 歯科受診で口腔ケアを続ける
- 感染症予防の手洗いを心がける
- ワクチンについてかかりつけ医に相談する
食事と運動
食事は、腎臓の働きの段階によって塩分、たんぱく質、カリウム、リンの量などが変わります。極端な食事制限や自己流の健康法はかえって体調を崩すことがあるため、医師や管理栄養士の指示に従ってください。運動は、散歩など無理のない範囲から始め、息苦しさや強い疲れがあるときは中止して相談しましょう。
精神的健康と心の健康
腎不全の管理は、不安や落ち込み、疲れを感じることがあります。これは珍しいことではありません。一人で抱え込まず、家族や友人、医療チーム、地域の相談窓口に話してください。気分の落ち込みが続くとき、自分を傷つけたい気持ちがあるときは、すぐにかかりつけ医や地域の緊急相談窓口に連絡し、緊急時は119番へ連絡してください。
予防
すべての腎不全を防ぐことはできませんが、リスクを下げることはできます。糖尿病や高血圧を適切に管理し、健診を受けて尿や血液の異常を早く見つけることが大切です。禁煙、適正体重、バランスのよい食事、痛み止めの使いすぎに注意することも役立ちます。
ワクチン
腎臓の働きが低下していると、感染症が重症化しやすくなることがあります。インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンについて、かかりつけ医と相談してください。生ワクチンは状態によって使えないことがあるため、必ず事前に相談しましょう。
検診プログラム
特定健診などの健康診断では、尿たんぱくや血清クレアチニン、eGFRを調べることがあります。糖尿病や高血圧がある人、家族に腎臓病がある人は、定期的に検査を受けましょう。厚生労働省の健診・保健指導の情報も参考にし、結果の説明は医療機関で受けましょう。
合併症
治療しない場合
- 体液がたまり、心不全や息苦しさを起こす
- 電解質の乱れによる不整脈
- 骨が弱くなる
- 栄養不良
- 感染症にかかりやすくなる
- 老廃物がたまり、意識がぼんやりする(尿毒症)
長期的な見通し
腎不全は、早期に見つけて適切に管理することで、長く安定して過ごせる人が多くいます。治療の選択肢も増えており、透析や腎移植を受けながら生活している人も大勢います。不安なときは一人で決めず、医療チームに何度でも相談してください。希望を持って治療と生活を整えていくことが大切です。
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最終更新: 2026年10月24日
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