腎臓のはたらきと腎臓病について
概要
腎臓(じんぞう)は、背中側の腰のあたりに左右ひとつずつある、そら豆のような形をした臓器です。血液をろ過して、体に不要になったものや余分な水分を尿として外に出します。また、血圧をちょうどよい高さに保つ、赤血球を作るように指示を出す、骨を丈夫にする、体の水分と塩分のバランスを整えるなど、いくつもの大切な仕事をしています。「腎臓病」とは、こうした腎臓のはたらきが少しずつ低下していく状態をまとめた呼び方です。原因や進み方は人によってさまざまで、軽いものから治療が必要なものまで幅があります。
重要な事実
- 腎臓は毎日およそ150リットルもの血液をろ過して、約1〜2リットルの尿を作っています。
- 腎臓のはたらきは一度大きく失われると元には戻りにくいのですが、早く見つけて管理すれば、進行をゆるやかにすることができます。
- 初期には自覚症状がほとんどなく、健康診断の尿検査や血液検査で初めて見つかることが多いです。
日本では、慢性腎臓病(CKD:腎臓のはたらきが少しずつ低下した状態が長く続くもの)の方が成人のおよそ8人に1人、1000万人以上いると推計されています。決してめずらしい病気ではなく、とても身近な健康テーマです。
糖尿病や高血圧のある方、高齢の方、家族に腎臓病の方がいる方に多くみられます。子どもではまれですが、生まれつきの尿の通り道の形の異常や、尿路感染症などが関係することもあります。年齢や性別を問わず、誰でも関係のある臓器です。
症状
- 尿がほとんど出ない状態が丸一日近く続いている
- 息が苦しい、胸が痛い、横になると息苦しい
- 意識がもうろうとしている、会話がかみ合わない
- けいれんが起きた
- 高熱と腰の激しい痛み、悪寒がある(腎盂腎炎など重い感染症のおそれがあります)
- ⚠尿に血が混じる
- ⚠発熱と排尿時の痛みがある
- ⚠急に顔や足がむくんだ
- ⚠尿の泡立ちが数日続いている
- ⚠強い腰の痛みがある
一般的な症状
- 初期はほとんど無症状で、健診で見つかることが多い
- 足のすねやまぶたのむくみ(水分がたまって腫れた状態)
- 尿の泡立ちが続く(たんぱくが尿に漏れているサインのことがあります)
- 夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
- 体がだるい、疲れやすい
- 食欲がない、少し吐き気がある
- 皮膚のかゆみ
- 階段で息が切れる、動くと息苦しい
- 尿の量が少なくなる
- 足がつる、筋肉のけいれん
子供の症状
- 朝起きたときにまぶたが腫れぼったい、足がむくむ
- 尿の色が赤い、またはコーラのような色(血尿)
- おしっこの量が少ない
- おしっこの回数が多い、排尿のときに痛がる
- 体重が増えない、元気がない、食欲がない
- 発熱が続く(尿路感染症のことがあります)
高齢者の症状
- なんとなくだるい、元気が出ない
- 食欲が落ちる、体重が減る
- むくみや息切れが出てきた
- 夜中に何度もトイレに起きる
- 物忘れや集中力の低下のようにみえる変化
- いつも効いていた薬の効き方が変わったように感じる
原因
主な原因
- 糖尿病(長く血糖が高い状態が続くことによる腎臓への負担)
- 高血圧(高い圧力が腎臓の細い血管を傷つけます)
- 糸球体腎炎(腎臓の中で尿を作る細かいフィルターに炎症が起きる病気)
- 尿の流れが悪くなる状態(尿路結石、前立腺の病気、生まれつきの形の異常など)
- 薬の影響(鎮痛薬の長期間の使いすぎなど)
- 脱水や重い感染症による急な腎臓の障害
- 生まれつきの病気(多発性嚢胞腎など、遺伝が関係するもの)
リスク要因
- 糖尿病がある
- 高血圧がある
- 家族に腎臓病の人がいる
- 肥満やメタボリックシンドロームがある
- 喫煙の習慣がある
- 高齢である
- 心臓や血管の病気がある
- 鎮痛薬などを習慣的に使っている
- 塩分の多い食事が続いている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿に血が混じったとき
- 発熱と排尿時の痛み、腰の痛みが同時にあるとき
- 急に顔や足がむくんだとき
- 尿がほとんど出ない、または息苦しさがあるとき(この場合は救急外来へ)
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断で尿たんぱくやクレアチニン(腎臓のはたらきを見る数値)の異常を指摘された
- 血圧が高いといわれた、または家で測っても高い日が続く
- 糖尿病があるといわれた
- 家族に腎臓病の人がいる
- むくみやすい、疲れやすいと感じる
- 尿の泡立ちが気になる
診断
まず問診と血圧測定、そして尿検査と血液検査を行います。尿検査では、尿にたんぱくや血が混じっていないかを見ます。血液検査では「eGFR(いーじーえふあーる)」という数字で、腎臓のろ過のはたらきがどのくらいあるかを推定します。多くの場合、これらは外来でその日に受けられ、痛みもほとんどありません。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(たんぱく、血液、糖、比重などを調べます)
- 血液検査(クレアチニン、eGFR、電解質など)
- 血圧測定(診察室だけでなく、家で測ることも大切です)
- 腹部超音波検査(腎臓の大きさや形、石や水のたまりを見ます)
- 尿のアルブミン・クレアチニン比(微量のたんぱくを詳しく調べる検査)
- 必要に応じて腎生検(腎臓のごく一部を採って調べる検査)や画像検査
診察で予想されること
検査の結果が出るまでに数日かかることがあります。結果は医師から説明があり、腎臓のはたらきの程度や、原因として考えられること、これからの通院の間隔、生活で気をつけることが話し合われます。一度の検査だけで全てが決まるわけではなく、時間をかけて変化を見ていくのがふつうです。
治療
腎臓病の治療は、「腎臓のはたらきがこれ以上落ちないように守ること」と「心臓や血管を守ること」を目指します。原因になっている病気(糖尿病や高血圧など)をきちんと管理することがいちばんの近道です。食事や生活の見直し、必要な薬、定期的な検査を組み合わせて、長い目で付き合っていきます。腎臓のはたらきが大きく低下した場合には、透析や腎移植という選択肢があります。
自宅でのセルフケア
- 塩分を控えめにする(1日6グラム未満がひとつの目安とされています)
- 家で血圧を測り、記録する習慣をつける
- 体重を毎日同じ条件で測り、急な増減に気づく
- 禁煙する。周りの方にも協力してもらう
- 市販の鎮痛薬を長く続けて使わない。使う前に薬剤師や医師に相談する
- たんぱく質の量や水分のとり方は、主治医や管理栄養士に自分の数値に合わせて相談する
- 適度な運動(ウォーキングなど)を無理のない範囲で続ける
- 十分な睡眠と、かぜや感染症の予防を心がける
- サプリメントや漢方も、自己判断で始める前に必ず相談する
医療治療
治療では、血圧を整える薬、血糖を下げる薬、腎臓を守るはたらきのある薬、むくみをやわらげる薬などが、状態に応じて使われることがあります。貧血や骨の弱り、電解質(体の中の塩分やカリウムなどのバランス)の乱れに対する対応も行います。薬の種類や量は医師が一人ひとりに合わせて決めますので、自己判断で飲むのをやめたり量を変えたりせず、気になることがあれば医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
腎臓病そのものを手術で治すことは、ふつうはありません。ただし、尿の流れを妨げている石や狭い部分、前立腺の病気、腫瘍などが原因になっている場合は、手術や処置が必要になることがあります。また、腎臓のはたらきが非常に低下した場合には、透析(血液を機械でろ過する治療)や腎移植が選択肢として検討されます。
この病気と共に生きる
腎臓病と診断されても、多くの方はこれまでと大きく変わらない日常生活を続けています。ポイントは「記録すること」と「変化に早く気づくこと」です。血圧・体重・尿の様子を簡単にメモしておくと、診察のときに役立ちます。体調の変化や食事の悩みは、我慢せずに医療チームに相談してください。
生活習慣のアドバイス
- 通院の予定をカレンダーに書き、忘れないようにする
- 処方された薬は決められたとおりに続ける
- 家での血圧と体重を記録する
- 塩分の多い加工食品や外食の回数を意識して減らす
- 禁煙し、お酒はほどほどにする
- かぜや感染症にかからないよう、手洗い・うがいを心がける
- 疲れをためないよう、休息の時間を意識してとる
食事と運動
食事は、塩分を控えめにし、野菜や魚などバランスよく食べることが基本です。たんぱく質やカリウム、リンの量は腎臓のはたらきによって調整が必要になることがあるので、主治医や管理栄養士と相談しながら自分に合った形にしていきましょう。運動は、ウォーキングや軽い体操など、息が少し上がる程度を無理なく続けるのがおすすめです。始める前や強さを上げるときは、主治医に一声かけてください。
精神的健康と心の健康
腎臓病は長く付き合うものなので、「この先どうなるのだろう」という不安や、食事の制限によるストレス、気分の落ち込みを感じる方は少なくありません。それは自然な気持ちです。一人で抱え込まず、家族や友人、医療チームに話してみてください。つらい気持ちが長く続くときは、かかりつけ医や地域の相談窓口、電話相談などの支援を利用することが大切です。気持ちが追い詰められている、自分を傷つけたいと考えてしまうようなときは、すぐに医療機関や地域の緊急の相談先に連絡してください。緊急の場合は119番に電話してください。
予防
すべての腎臓病を完全に防ぐことはできませんが、よくみられるタイプの多くは、生活習慣の見直しと定期的な検査で、発症を遅らせたり進行をゆるやかにしたりできます。特に血圧と血糖をよい状態に保つことが大切です。
ワクチン
腎臓のはたらきが低下している方は感染症にかかると重くなりやすいため、インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンがすすめられることがあります。接種の時期や必要性は、主治医に相談して決めてください。
検診プログラム
日本では、40〜74歳の方を対象とした特定健康診査(メタボ健診)で、尿検査と血液検査が行われます。職場の健康診断も同じように大切な機会です。糖尿病や高血圧のある方、家族に腎臓病の人がいる方は、主治医と相談してもう少し頻繁に検査を受けると安心です。
合併症
治療しない場合
- 腎臓のはたらきが大きく低下する(腎不全となり、透析や腎移植が必要になることがあります)
- 心臓や血管の病気(心筋梗塞や脳卒中)のリスクが高まる
- 貧血(赤血球が減って、だるさや息切れが起こります)
- 骨が弱くなり、骨折しやすくなる
- カリウムなどの電解質のバランスが崩れ、不整脈が起きることがある
- 体に水分がたまり、むくみや息苦しさが出る
- 感染症にかかりやすく、また重くなりやすい
長期的な見通し
腎臓病は、早く見つけてきちんと管理すれば、進行をゆるやかにできる病気です。実際に、治療と生活の見直しを続けながら、長く安定した毎日を過ごしている方はたくさんいます。定期的な検査を続けることが、いちばんの安心につながります。心配なことがあれば、ひとりで抱えずに医療チームに相談してください。
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最終更新: 2026年10月24日
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