腎臓の病気と透析・腎移植
概要
腎臓(じんぞう)は、背中側の腰のあたりに左右1つずつある、にぎりこぶしほどの大きさの臓器です。血液をろ過して、体に不要な老廃物や余分な水分を尿として外に出します。それだけでなく、血圧を整える、血液をつくるホルモンを出す、骨を丈夫にするビタミンDを活性化するなど、いくつもの大切な仕事をしています。この働きが長い時間をかけて少しずつ落ちていく状態を「慢性腎臓病(CKD)」、さらに進んでほとんど働かなくなった状態を「腎不全」と呼びます。腎不全になると老廃物や水分が体にたまり、さまざまな不調が出てきます。そのときに腎臓の仕事の一部を代わりに担うのが「透析(とうせき)」、ドナーの方から健康な腎臓をいただいて腎臓の働きを取り戻すのが「腎移植(じんいしょく)」です。
重要な事実
- 腎臓は腰のあたりに左右1つずつあり、血液をきれいにする・血圧を整える・血液や骨に関わるホルモンを作るなど、いくつもの仕事をしています。
- 慢性腎臓病(CKD)は初期にほとんど症状がなく、健康診断の尿検査や血液検査で初めて見つかることが多いです。
- 腎臓の働きが大きく落ちたときの治療には、透析(血液透析・腹膜透析)と腎移植の2つの道があります。
- 透析は腎臓のすべての仕事を代われるわけではありませんが、食事や薬の調整と合わせて生活を続けることができます。
- 腎移植はドナーの腎臓が必要で、移植後も免疫を抑える薬を続ける必要があります。適合や時期は医療チームと相談して決めます。
とても身近な病気です。日本では成人のおよそ8人に1人が慢性腎臓病(CKD)と言われています。そのうち腎臓の働きが大きく落ちた人や透析を受けている人は合わせて数十万人規模とされています。ただし多くは初期に症状がなく、健康診断で見つかることがほとんどです。
糖尿病や高血圧のある人、高齢者、家族に腎臓病の人がいる人、肥満や喫煙のある人に多く見られます。子どもでは、生まれつき腎臓や尿の通り道の形に問題がある場合や、腎臓に炎症が起きる病気が見つかることもあります。年齢や性別を問わず起こりうる病気です。
症状
- 息が苦しい、横になると息ができない(肺に水がたまった可能性)
- 意識がない、呼びかけに反応がない
- 胸の痛み、強い動悸、脈が乱れている
- けいれんが起きた
- 尿がほとんど出ないのに全身がひどくむくんでいる
- 透析中や透析後に急に具合が悪くなり立てない(まず施設のスタッフを呼び、必要なら119番に連絡してください)
- ⚠尿が急に出なくなった、ほとんど出ない
- ⚠数日で体重が大きく増え、むくみが強い
- ⚠発熱と尿の痛み・頻尿、腰の痛みがある
- ⚠透析の血管(シャント)が腫れる、痛む、出血が止まらない、熱をもっている
- ⚠腹膜透析のカテーテルの出口が赤い、膿む、痛む
- ⚠強い吐き気や嘔吐が続き、水分がとれない
一般的な症状
- 初期はほとんど無症状で、健診で初めて気づくことが多い
- 尿の泡立ちが続く(たんぱく尿)、尿が赤っぽく見える(血尿)
- まぶたや足のむくみ、夕方に靴がきつくなる
- 疲れやすい、だるい、集中しにくい
- 夜中に何度もトイレに起きる、尿の量が減る、または多くなる
- 階段や坂で息切れがする
- 食欲がない、吐き気がする、口の中が気持ち悪い
- 皮膚のかゆみ、手足のむくみ、筋肉のけいれん
子供の症状
- まぶたや顔、足のむくみ(朝に強いことが多い)
- 尿の量が少ない、おむつが長時間ぬれない
- 尿の泡立ちが続く、赤い尿が出る
- 体重が増えない、身長が伸びにくい
- 食欲がない、元気がない、機嫌が悪い
- 発熱と尿のときの痛み(尿路感染症のことがある)
- 頭痛(血圧が高いときに出ることがある)
高齢者の症状
- 食欲低下や体重減少として現れ、腎臓の病気と気づかれにくい
- むくみが「年のせい」と思われて見落とされやすい
- 脱水や薬の影響で急に悪化しやすい
- だるさ、ぼんやりする、急な混乱(せん妄)
- 夜間の頻尿、ふらつき、転倒
- 息切れ、動悸
原因
主な原因
- 糖尿病(糖尿病性腎症)— 日本で最も多い原因です
- 高血圧が長く続くことによる腎臓の血管の傷み(腎硬化症)
- 慢性糸球体腎炎(腎臓のフィルターに炎症が起きる病気)
- 多発性嚢胞腎など、生まれつきや遺伝による病気
- 尿の通り道が詰まる病気(前立腺の病気、結石など)
- 薬の影響(痛み止めの長期使用など)
- 急性の腎障害が治りきらずに慢性化する
リスク要因
- 家族に腎臓病の人がいる
- 健診でたんぱく尿を指摘されたことがある
- 心臓の病気、痛風・尿酸が高い
- 水分不足を繰り返す、強い脱水を経験した
- 市販の痛み止めを長期間使っている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿がほとんど出ない
- 急にむくみが強くなった、息苦しい
- 発熱と尿の痛み・頻尿がある
- 透析のシャントやカテーテルの出口に異常がある
- 嘔吐が続いて水分がとれない
定期受診を予約すべき場合:
- 健診でたんぱく尿や腎臓の数値(eGFR)の低下を指摘された
- むくみが続いている
- 夜中に何度もトイレに起きる
- 疲れやすさや食欲低下が続いている
- 家族に腎臓病の人がいる
- 糖尿病や高血圧で治療中で、腎臓の状態も気になる
診断
問診と血圧の測定に加えて、尿検査と血液検査で腎臓の働きを調べます。血液検査のクレアチニンという値からeGFR(腎臓の働きの目安)を計算し、尿の中のたんぱくの量と合わせて、どのくらい進んでいるかを判断します。必要に応じて腎臓の形を見る画像検査や、原因をはっきりさせるための詳しい検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(たんぱく尿・血尿・尿の比重など)
- 血液検査(クレアチニン、eGFR、カリウム、リン、カルシウム、貧血の指標、アルブミンなど)
- 血圧の測定(家庭血圧の記録も役立ちます)
- 腹部超音波検査(腎臓の大きさや形、尿の通り道を確認)
- 必要に応じてCTやMRI
- 腎生検(腎臓の組織を小さく採って調べる検査。入院が必要なことが多い)
- 24時間の尿をためる検査(たんぱくの量や塩分を調べる)
診察で予想されること
検査の多くは採血と採尿だけで、痛みはほとんどありません。結果が出るまで数日かかることがあります。腎生検は入院が必要ですが、すべての人に行うわけではなく、原因をはっきりさせたいときに行います。検査の前に、何のために行うのか、どのくらい時間がかかるのかを医療者に確認しておくと安心です。
治療
治療の目標は、腎臓の働きが落ちる速さをゆっくりにすることと、体の調子をできるだけ良い状態に保つことです。まだ働きが残っている段階では、血圧や血糖を整える、食事を見直す、腎臓を守るための薬を使うといった「保存的治療」を行います。働きが大きく落ちたときには、透析か腎移植という「腎代替療法」を選ぶことになります。いつ、どの方法を選ぶかは、生活や仕事、家族の状況も含めて、医師・看護師・ソーシャルワーカーと一緒に話し合って決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 血圧を家で測って記録する(朝と夜の習慣にすると続けやすいです)
- 減塩を心がける(1日6g未満が目安とされています)
- 禁煙する。吸っている場合は禁煙の相談を医療者にする
- 水分や食事のとり方は指示に従う(自己流の強い制限は脱水のもとになります)
- 市販の痛み止めを長期間使わない。薬は自己判断でやめたり増やしたりしない
- 適正体重を保ち、歩くなどの無理のない運動を続ける
- 手洗い・うがいなどで感染症を予防する
- 毎日同じ条件で体重を測り、急な増加に気づけるようにする
- 決められた受診と検査を続ける
医療治療
治療は、腎臓を守る治療と、体のバランスを整える治療に分かれます。腎臓を守るために、血圧を下げる薬、血糖を下げる薬、たんぱく尿を減らして腎臓を守る薬などが使われます。体のバランスを整えるために、カリウムを下げる薬、貧血を改善する治療、リンを下げる薬、ビタミンDに関わる治療などが行われます。いずれも医師の判断で使い、自己判断で中止したり量を変えたりしないことが大切です。腎臓の働きが大きく落ちた場合の腎代替療法には、血液透析(医療施設などで週3回程度、1回4時間前後が一般的)、腹膜透析(おなかの中に管を入れて、自宅で毎日行う)、腎移植の3つがあります。それぞれの方法に長所と負担があり、生活スタイルに合わせて選びます。
手術が検討される場合
手術が必要になるのは、主に次のような場合です。透析のための血管(シャント)をつくる手術、腹膜透析のカテーテルを入れる手術、そして腎移植の手術です。腎移植はドナーの臓器が必要で、体の状態や適合性の検査を重ねたうえで行われます。移植後は免疫を抑える薬を続ける必要があり、定期的な通院が欠かせません。手術の必要性や時期は、担当医とよく相談して決めてください。
この病気と共に生きる
治療が始まっても、仕事や学校、趣味を続けている人はたくさんいます。血液透析は週3回・1回4時間前後が一般的で、通院のリズムをつくることが生活の中心になります。腹膜透析は自宅で毎日行うため、時間の使い方を自分で工夫しやすくなります。旅行に行くときは、行き先の透析施設を事前に予約しておくと安心です。体調の記録(体重・血圧・尿の量・食事)をつけておくと、医療者との話し合いがしやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 通院や透析の予定を、仕事・学校・家族の予定と早めに調整する
- 感染症予防(手洗い、うがい、人混みでのマスク)を心がける
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 飲酒・喫煙は医療者に相談する
- 体調の変化を記録し、受診時に伝える
- 経済的な心配や仕事の不安は、早めに医療ソーシャルワーカーに相談する
- 予防接種について医師に相談する
食事と運動
食事は治療の一部です。減塩はすべての人に共通して大切で、加工食品や汁物の塩分に注意します。たんぱく質の量、カリウム・リンの制限、水分の量は、腎臓の状態や透析の方法によって一人ひとり違います。自己流に決めず、必ず管理栄養士や医師の指示に従ってください。運動は、散歩や軽い体操など無理のないものを続けるのがおすすめです。透析の日は疲れやすいので、体調を見ながら行いましょう。
精神的健康と心の健康
腎臓の病気と向き合うのは、気持ちの面でも大きな負担になります。不安、落ち込み、いらいら、先の見えなさ、家族に迷惑をかけているという気持ちがわくのは自然なことです。透析は時間の制約が大きく、疲労感が続くこともあります。気持ちが晴れない日が2週間以上続く、眠れない、何も楽しめない、涙が止まらないといったときは、がまんせずに医療者に話してください。自分を傷つけたい気持ちがわいてきたときは、すぐに医療者や地域の相談窓口(保健所、精神保健福祉センターなど)、または119番に助けを求めてください。一人で抱えなくて大丈夫です。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、進行を遅らせたり、腎臓の病気を予防したりすることは十分できます。糖尿病や高血圧をきちんと管理する、禁煙する、減塩する、適正体重を保つ、健康診断を毎年受ける——この積み重ねが腎臓を守ります。痛み止めの長期使用を避けることも大切です。
ワクチン
透析を受けている方や腎臓の働きが落ちている方は、感染症にかかると重症化しやすいと言われています。インフルエンザ、肺炎球菌、B型肝炎などの予防接種について、かかりつけ医に相談してみてください。
検診プログラム
日本では、40〜74歳の公的医療保険加入者を対象に特定健康診査(メタボ健診)が行われており、尿検査と血液検査で腎臓の状態もある程度わかります。糖尿病や高血圧のある方は、より頻回に尿たんぱくやeGFRを確認することが勧められています。健診結果の「たんぱく尿」や「eGFRの低下」を放置しないことが、早期発見の一番の近道です。
合併症
治療しない場合
- 尿毒症(老廃物がたまり、吐き気や意識の変化などが出る状態)
- 心臓の病気や脳卒中(腎臓病があるとリスクが上がります)
- 貧血(血液をつくるホルモンが減るため)
- 骨が弱くなる(カルシウムとリンのバランスが崩れるため)
- カリウムが高くなり、不整脈が起きる
- 体に水分がたまり、肺に水がたまる(肺水腫)
- 感染症にかかりやすく、重症化しやすい
- 栄養不良、筋力の低下、認知機能の低下
長期的な見通し
腎臓の病気は、進行をゆっくりにする治療がどんどん進歩しています。透析を始めても、移植を受けても、仕事や旅行、趣味を続けている人は大勢います。合併症の管理や移植医療も年々良くなっています。思うようにいかない日があっても、それはあなたの努力が足りないからではありません。心配なことや不安は、一人で抱えずに医療チームに話してください。一緒に答えを探していくことができます。
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最終更新: 2026年10月24日
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