ネフローゼ症候群(腎臓の病気)
概要
ネフローゼ症候群(ネフローゼしょうこうぐん)は、腎臓(じんぞう)の「ろ過(か)」という働きの部分がうまく働かなくなり、本来は体の中に残しておくべきたんぱく質が、尿と一緒にたくさん外へ出てしまう状態です。「症候群(しょうこうぐん)」とは、いくつかの症状がまとまって現れる状態という意味で、それ自体がひとつの病名というより、いくつかの特徴がそろった状態を指します。具体的には、①尿にたんぱくがたくさん出る、②血液中のたんぱく質(アルブミン)が減る、③顔や手足がむくむ、という3つが代表的です。むくみは、血液中のたんぱく質が減って、水分が血管の外にしみ出しやすくなるために起こります。
重要な事実
- 尿にたんぱくがたくさん出る・血液中のたんぱく質が減る・むくみが出る、という3つがそろうとネフローゼ症候群と考えられます。
- 子どもと大人では、原因となる病気の種類が違います。子どもの多くは免疫(体を守る仕組み)の異常が関係するタイプです。
- 日本では「指定難病(していなんびょう)」に位置づけられている、比較的まれな病気です。
- 尿検査と血液検査で診断の手がかりが得られ、必要に応じて腎臓の一部を調べる検査(腎生検・じんせいけん)を行います。
- 多くの場合は治療で症状が落ち着きますが、再発を繰り返すこともあるため、長く経過を見ていく必要があります。
とても多い病気ではありません。日本では指定難病のひとつに位置づけられており、子どもでは毎年、数万人に1人くらいの割合で新しく発症するとされています。大人では子どもより多く、背景に別の病気がある場合もあります。
子どもでは3〜5歳ごろに発症することが多く、やや男の子に多い傾向があります。大人では40〜50代以降にもみられ、糖尿病や膠原病(こうげんびょう)など別の病気が背景にある「二次性(にじせい)」のタイプが増えてきます。年齢や性別を問わず起こる可能性はあります。
症状
- 息が苦しい、呼吸ができない、横になると息ができない
- 意識がもうろうとしている、返事がおかしい
- けいれんが起きた
- 胸の強い痛みや、突然の息苦しさ(血管が詰まった可能性)
- 尿がほとんど出ない状態が続く
- ⚠数日のうちに体重が急に増えた、むくみが急に強くなった
- ⚠おなかが張って痛い、食べられない
- ⚠38℃以上の発熱がある、寒気がする
- ⚠片方の足だけが急にはれて痛い
- ⚠尿の泡立ちが続き、体のだるさが強い
一般的な症状
- まぶたや顔のむくみ(朝起きたときにとくに目立つことが多い)
- 手足のむくみ、夕方に足がはれやすい
- 尿が泡立つ(尿にたんぱくが多く出ているサイン)
- 体重が急に増える(数日で1〜2kg以上増えることも)
- 尿の量が減る
- 体がだるい、元気が出ない
- 食欲が落ちる、吐き気がする
- おなかが張る、ガスがたまったように感じる
- 階段の上り下りで息切れがする
子供の症状
- まぶたのむくみを家族が最初に気づくことが多い
- 食欲がなくなる、元気がなくなる、機嫌が悪くなる
- おなかが張って苦しそうにする(おなかに水がたまる)
- 陰嚢(いんのう)や陰部がはれる
- 風邪をひいたあと数日〜数週間でむくみが出てくる
- 体重が短い期間で増える、おしっこの回数や量が減る
高齢者の症状
- 足のむくみや息切れが目立ち、心臓や肺の病気と間違われやすい
- だるさや食欲低下など、はっきりしない不調から始まることがある
- 糖尿病や膠原病など、もともとの病気が背景にあることが多い
- 血液が固まりやすくなり、血管が詰まる合併症のリスクが高まる
- 感染症にかかりやすく、重症化しやすい
原因
主な原因
- 子どもの多くは「微小変化型(びしょうへんかがた)」と呼ばれるタイプで、体を守る免疫の仕組みが自分自身の腎臓を攻撃してしまうことが関係すると考えられています。
- 大人では、糖尿病による腎臓の障害(糖尿病性腎症)や、膜性腎症(まくせいじんしょう)、IgA腎症(アイジーエーじんしょう)などが原因になります。
- 感染症、一部の薬の影響、腫瘍(しゅよう)、膠原病(こうげんびょう)など、別の病気が原因で起こる「二次性ネフローゼ症候群」もあります。
- 遺伝子の変化が関係するタイプも、まれにあります。
- 原因がはっきり特定できないこともあります。
リスク要因
- 免疫の働きの異常やアレルギー体質がある
- 糖尿病、膠原病、ウイルス感染症などの持病がある
- 腎臓に負担をかける薬を長期間使っている
- 家族に腎臓の病気の人がいる
- 肥満、高血圧、喫煙などの生活習慣要因がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- まぶたや手足のむくみが急に出てきた、どんどん強くなっている
- 尿が泡立つのが数日続いている
- 体重が短期間で急に増えた
- 尿の量が明らかに減った
- おなかが張る、息切れがする
- 発熱がある、だるさが強い
定期受診を予約すべき場合:
- むくみが軽いが、何となく続いている
- 健康診断や学校健診で尿たんぱくを指摘された
- 以前ネフローゼ症候群と言われたことがあり、最近体調が気になる
- 家族に腎臓の病気の人がいて心配である
診断
まず尿検査と血液検査を行い、尿にたんぱくがどのくらい出ているか、血液中のたんぱく質(アルブミン)がどのくらい減っているかを調べます。この2つとむくみがそろうと、ネフローゼ症候群と考えられます。次に、原因となる病気のタイプを調べるために、必要に応じて腎臓の組織を少しだけ採取して顕微鏡で調べる「腎生検(じんせいけん)」を行います。お子さんの場合は、まず治療を始めて反応を見ることも多く、腎生検を急がないこともあります。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(尿たんぱくの量、血尿の有無を調べる)
- 血液検査(アルブミン、コレステロール、腎臓のはたらきを調べる)
- 1日分の尿をためて、たんぱくの量を正確に測る検査
- 腎臓の超音波(エコー)検査
- 腎生検(組織を調べる検査。入院が必要なことが多い)
- 原因となる別の病気がないかを調べる検査(血糖、免疫の抗体、感染症など)
診察で予想されること
検査の多くは外来でその日のうちに終わります。腎生検は数日の入院が必要で、結果が出るまでに1週間ほどかかることがあります。結果が出るまでは不安な気持ちになるかもしれませんが、診断がつくことで、体に合った治療を選びやすくなります。
治療
治療の目標は、①むくみをとる、②尿にたんぱくが出るのを減らす、③原因となっている病気に応じたケアをする、の3つです。食べ物からの塩分や水分を調整し、必要な場合は体の水分バランスを整える治療を行います。免疫の異常が関係するタイプでは、免疫の働きを抑える治療を行うことがあります。どの治療を選ぶかは、年齢・原因・症状の強さによって変わります。治療の内容や期間については、必ず主治医の説明を聞いてください。
自宅でのセルフケア
- 毎日体重を測って記録する(むくみの変化に気づきやすくなります)
- 塩分を控えめにする(味付けは薄味を心がけ、加工食品や汁物を減らす)
- 水分のとり方は主治医の指示に従う(自分で極端に減らさない)
- 手洗い・うがいを丁寧に行い、人混みではマスクをする
- むくみのある足は、座っているときに少し高くして休める
- 薬は自己判断で中止したり量を変えたりしない
- 発熱や体調の変化があったら早めに医療機関に連絡する
- 禁煙する
医療治療
治療は、症状の強さと原因のタイプに合わせて組み立てられます。むくみに対しては、体の余分な水分を尿として出しやすくする治療や、塩分・水分の調整が行われます。免疫の異常が関係するタイプでは、免疫の働きを抑える治療が中心になります。血液中のたんぱく質が大きく減っている場合には、医療機関で補充を行うこともあります。また、血液が固まりやすくなるのを防ぐためのケアや、感染症の予防も並行して行われます。治療中は定期的に尿検査・血液検査を行い、効果と副作用の両方を見守ります。具体的な薬の種類や量については、主治医と薬剤師の説明を受けてください。
この病気と共に生きる
ネフローゼ症候群は、症状が落ち着いても定期的な通院と検査が続きます。毎日の体重測定と尿の状態の観察を習慣にすると、変化に早く気づけます。学校や仕事については、主治医と相談しながら無理のない範囲で続けるのが基本です。むくみが強い時期は安静を心がけ、体調が安定してきたら少しずつ活動を戻していきます。
生活習慣のアドバイス
- 体重・血圧・尿の泡立ちを毎日メモする習慣をつける
- 塩分を控え、バランスのよい食事をとる
- 十分な睡眠と休息をとる
- 風邪や感染症を避けるため、手洗い・うがい・マスクを徹底する
- 医師の許可を得てから、ウォーキングなど軽い運動を始める
- 喫煙をやめる、飲酒は控えめにする
- ストレスをためず、話せる人や相談窓口を活用する
食事と運動
食事は、塩分を控えめにすることが基本です。たんぱく質やカロリーの量は、腎臓のはたらきや治療の内容によって適切な量が変わるため、自己判断で極端に減らしたり増やしたりせず、管理栄養士や主治医の指示を受けてください。むくみが強い時期は運動を控えめにし、落ち着いてきたら散歩など軽い運動から無理なく再開します。運動の強さや量は、必ず主治医に相談しながら決めましょう。
精神的健康と心の健康
むくみや体重の変化、通院の多さ、再発への不安などから、気持ちが落ち込んだり、イライラしたりすることは自然なことです。子どもでは、入院や学校を休むことで不安や寂しさを感じることがあります。家族や周りの人に気持ちを話すこと、医療者に遠慮なく相談することが大切です。つらい気持ちが続くときは、かかりつけ医や地域の相談窓口に早めに相談してください。気持ちの面でもサポートを受けられます。
予防
免疫の異常が関係するタイプは、今のところ確実な予防法は分かっていません。一方で、糖尿病や膠原病など別の病気が背景にある「二次性」のタイプは、もととなる病気をきちんと治療し、血圧や血糖を管理することでリスクを下げられる可能性があります。市販の薬や健康食品を自己判断で長期間使うことは避け、気になる場合は薬剤師や医師に相談してください。
ワクチン
感染症はネフローゼ症候群のきっかけや再発の引き金になることがあります。ワクチン接種は感染予防に役立ちますが、免疫の働きを抑える治療中は受けられない種類(生ワクチン)もあります。接種の可否と時期は、必ず主治医と相談して決めてください。
検診プログラム
学校健診や健康診断の尿検査は、たんぱく尿を早く見つける大切な機会です。尿たんぱくを指摘されたら、症状がなくても医療機関で再検査を受けましょう。糖尿病や高血圧がある方は、定期的な尿検査と血液検査を続けることが腎臓を守ることにつながります。
合併症
治療しない場合
- 感染症にかかりやすくなり、重症化することがある
- 血液が固まりやすくなり、血管が詰まる病気(血栓症)が起こることがある
- 腎臓のはたらきが急に悪くなる(急性腎障害)
- 栄養が不足し、成長や体力に影響することがある
- コレステロールが高くなる
- 治療に使う薬による副作用(感染症にかかりやすい、骨への影響など)
- むくみが強いと息苦しさや日常生活の制限が続く
長期的な見通し
ネフローゼ症候群は、適切な治療と経過観察で症状が落ち着く(寛解・かんかい)ことが多い病気です。子どもの多くの場合は治療によく反応し、成長とともに落ち着いていきます。大人では原因となる病気によって経過が異なりますが、治療を続けながら日常生活を送っている方はたくさんいます。再発を繰り返すこともありますが、そのたびに治療を調整しながら付き合っていくことが可能です。心配なことは一人で抱えず、主治医と相談しながら進めてください。
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最終更新: 2026年10月24日
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