膝のけが(ひざの靭帯・半月板・打撲など)
概要
膝のけがとは、ひざの関節とそのまわりにある組織が傷つくことをいいます。ひざの関節には、骨、軟骨(骨の表面を覆うつるつるしたクッション)、靭帯(骨と骨をつなぐ丈夫なひも状の組織)、半月板(ひざの内側で衝撃をやわらげる軟骨)、腱(筋肉と骨をつなぐ組織)、筋肉などが集まっています。これらのどれかが伸びたり、切れたり、挟まったり、打ち身で傷ついたりすることで、痛みや腫れが出ます。転倒やスポーツだけでなく、階段の昇り降りや畳から立ち上がるときなど、日常のちょっとした場面でも起こります。
重要な事実
- 膝のけがには、打撲(打ち身)、靭帯の損傷、半月板の損傷、腱の損傷、骨折など、いくつかの種類があります。
- 多くの場合、安静・冷却・適切なリハビリで数週間から数か月かけて良くなっていきます。
- けがをした直後の数日間の対応が、その後の回復の速さに影響することがあります。
- 自分で「どの組織が傷ついたか」を判断するのは難しいため、腫れや痛みが強いときは医療機関で診てもらうことが大切です。
はい、とてもよくあるけがです。スポーツをしている人だけでなく、通勤・通学の途中で転んだ人、階段を踏み外した人、加齢で足元が不安定になった人など、幅広い年代で起こります。整形外科を受診する人の多い理由のひとつです。
子どもから高齢者まで、どの年代でも起こります。スポーツ中は10代から30代に多く、転倒によるけがは高齢になるほど増えます。膝に負担のかかる動作が多い人、太ももの筋肉が弱っている人、以前に膝をけがしたことがある人は起こりやすい傾向があります。
症状
- ひざが大きく変形している、または異常な方向に曲がって元に戻らない
- 耐えられないほどの痛みで、立つことも足を動かすこともできない
- ひざから下の感覚がない、足が冷たい、色が青白い(血流が悪くなっているおそれ)
- ひざが赤く腫れて熱をもち、高熱や寒気をともなう(感染のおそれ)
- 転倒して頭を打った、意識がもうろうとしている、など他の場所のけがも疑われる
- 呼吸が苦しい、胸が痛いなど、けが以外の急な体調の変化がある
- ⚠けがをした直後から腫れが強く、どんどん大きくなっている
- ⚠体重をかけられず、歩けない状態が続いている
- ⚠ひざが伸びきらない、または曲がりきらない(何かが引っかかっている感じ)
- ⚠足の指先のしびれや、力が入りにくい感じがある
- ⚠2〜3日たっても痛みや腫れがまったく減らない
一般的な症状
- ひざの痛み(動かしたとき、体重をかけたとき、押したとき)
- ひざの腫れ、熱っぽい感じ、張りぼったさ
- ひざが曲げにくい、伸ばしにくい、動かすと痛む
- 体重をかけると痛む、または力が入りにくい
- 歩くとひざが不安定で、ガクッと力が抜ける感じがする
- けがをした瞬間に「ブチッ」「ポキッ」といった音や感触があった
- ひざに水がたまったように、ふくらむ感じがある
- ひざの内側や外側を押すと、決まった場所だけ痛む
子供の症状
- 転んでひざを打ったあと、痛がって歩きたがらない
- 成長期にスポーツをしている子どもでは、ひざのお皿の下や膝の出っ張りの部分が痛むことがある(成長に伴うもので、休むと良くなることが多い)
- 言葉で説明するのが難しい年齢では、泣く・足を触られるのを嫌がる・いつもと歩き方が違うといった様子が手がかりになります
- 子どもは腫れがわかりにくいことがあるので、歩き方の変化に気をつけてください
高齢者の症状
- 転倒をきっかけに痛みが出て、歩けなくなることがある(高齢者では骨折も起こりやすい)
- もともとある膝の痛み(変形によるもの)が、けがをきっかけに急に悪くなることがある
- 腫れや熱っぽさが目立ちにくく、痛みだけが続くことがある
- 足元が不安定になり、けがのあと再び転びやすくなることがある
原因
主な原因
- 転倒や打撲(段差でつまずく、畳や布団で足をとられる、自転車で転ぶなど)
- スポーツ中の急な方向転換やジャンプの着地(靭帯や半月板に強い力がかかる)
- ひざをひねる動作(足は固定されたまま体だけ回るなど)
- 重いものを持ち上げたときや、無理な姿勢での立ち上がり
- 繰り返しの負荷による、腱や軟骨の少しずつの傷み
- 高齢者では、骨が弱くなっていることによる骨折
リスク要因
- 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)やお尻の筋肉が弱っている
- 以前に膝をけがしたことがある、手術を受けたことがある
- スポーツを急に始めた、運動量を急に増やした
- ウォーミングアップやクールダウンをしないまま運動する
- 合わない靴、滑りやすい靴で歩いたり運動したりしている
- 体重が重めで、膝にかかる負担が大きい
- 家の中に段差が多い、照明が暗い、手すりがないなど転びやすい環境
- バランスを保つのが難しくなる年齢になっている、筋力が落ちている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- ひざが変形している、または変な方向に曲がっている
- 立つことも歩くこともできないほどの痛みがある
- 腫れが急に大きく広がっている、皮膚が赤く熱をもっている
- 足の先のしびれ、冷たさ、色の変化がある
- ひざが伸びない・曲がらない状態が続く
- 発熱をともなう膝の痛み
定期受診を予約すべき場合:
- 軽い痛みや違和感が1〜2週間以上続いている
- 階段の昇り降りや正座のときだけ痛む
- スポーツのあとに毎回腫れる、または痛みが出る
- 歩いているときに、ひざが不安定で力が抜ける感じがする
- 以前のけがのあと、違和感が残っている
診断
まず医師が、いつ・どんなふうにけがをしたか、どんな動きで痛むか、どのあたりが痛むかを聞き、ひざを実際に触ったり動かしたりして診察します。腫れの程度、曲げ伸ばしの範囲、ぐらつきの有無、押して痛む場所などを確認します。必要に応じて画像検査を行い、傷ついている組織を調べます。
行われる可能性のある検査
- 診察(ひざを動かす、押す、軽く引っ張るなどして状態を確認する)
- レントゲン検査(骨の骨折や変形を見る。軟骨や靭帯は直接は写りません)
- MRI検査(靭帯・半月板・軟骨・筋肉などのやわらかい組織を見るのに役立つ)
- 超音波(エコー)検査(腫れや水のたまり具合をその場で見られる)
- 必要に応じて、たまった水を抜いて調べる検査(医師の判断で行います)
診察で予想されること
診察は数分から十数分程度で、ひざを触られることで痛みを感じることがあります。レントゲンはその日のうちに結果がわかることが多く、MRIは後日結果が出ることが一般的です。検査の結果を待つ間に不安になるかもしれませんが、その間は無理をせず、痛みに合わせて動かすようにしてください。
治療
膝のけがの治療は、けがの種類と程度によって変わります。多くの場合は、安静とリハビリを中心にした「保存的治療」から始めます。痛みが強い時期を過ぎたら、徐々に動かして筋力をつけていくことが、回復への近道になります。治療の進め方は医師と相談しながら決めていきましょう。
自宅でのセルフケア
- 安静:痛みが強い数日は、無理に動かさず休める(ただし長期間の完全な安静は筋力を落とすため、痛みに合わせて動かす)
- 冷却:氷やアイスパックをタオルで包み、ひざに15〜20分ほど当てる(直接肌に当てない)
- 圧迫:やわらかい包帯やサポーターで軽く固定する(きつく締めすぎない)
- 挙上:座るときや寝るときに、ひざを心臓より少し高くして腫れを減らす
- 松葉杖や手すりを使って、痛む側に体重をかけすぎないようにする
- 腫れや痛みが落ち着いてきたら、医師や理学療法士の指示に沿って少しずつ動かす
- 痛みが増す動きは避け、痛みの少ない範囲で日常生活を続ける
医療治療
医療機関では、リハビリ(理学療法)を中心にした治療がよく行われます。理学療法士と一緒に、ひざを動かす練習や、太もも・お尻の筋肉を強くする運動、バランスをとる練習を段階的に進めます。必要に応じて装具やサポーターを使うこともあります。痛みや炎症が強い時期には、医師の判断で痛みや炎症をやわらげる薬が出たり、関節に注射を行ったりすることがあります。薬の内容や量は医師の判断によるので、気になることは診察のときに確認してください。
手術が検討される場合
靭帯が完全に切れている、半月板の損傷が大きい、骨折している、ひざに骨片が挟まって動かない、といった場合や、数か月の保存的治療でも改善しない場合には、手術が検討されます。手術が必要かどうかは、年齢、生活スタイル、スポーツの頻度、本人の希望も含めて総合的に判断されます。必ずしも全員が手術を受けるわけではありません。
この病気と共に生きる
けがをした直後は、思うように動けないもどかしさがあるかもしれません。日常生活では、痛みの少ない動き方を選ぶ、重いものは誰かに頼む、階段は手すりを使うなど、少しの工夫で負担を減らせます。回復は一直線ではなく、良い日とよくない日を繰り返すのがふつうです。焦らず、その日の状態に合わせて過ごしてください。
生活習慣のアドバイス
- 家の中の段差や敷物を整理し、照明を明るくして転びにくい環境をつくる
- 浴室や階段に手すりを设置する(設置できる場合は活用する)
- 長時間の正座やしゃがみ込みは、痛みがある間は避ける
- 適度な休息と活動を交互に取り入れる
- 医師や理学療法士に教わった運動を、無理のない範囲で続ける
- 痛みが強い日は活動を控え、翌日に調整する
食事と運動
バランスの良い食事は、からだの回復を助けます。たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品・乳製品など)は筋肉や組織の材料になります。骨の健康のためには、カルシウム(乳製品・小魚・大豆製品・青菜など)とビタミンD(魚・きのこ類など、日光を浴びることでも体内でつくられます)を意識するとよいでしょう。運動は、痛みのない範囲で行うことが大切です。ひざに負担の少ないウォーキングや水中歩行、椅子に座ってできる太ももの運動などから始め、少しずつ量を増やしていきます。痛みが出たら無理をせず、その日のうちに休んでください。食事や運動の内容について迷うときは、医師や管理栄養士、理学療法士に相談できます。
精神的健康と心の健康
けがで動けない期間が長引くと、気分が落ち込んだり、イライラしたり、先が見えなくて不安になったりすることがあります。これは特別なことではなく、よくある気持ちの反応です。ひとりで抱え込まず、家族や友人、かかりつけ医、リハビリのスタッフに気持ちを話してみてください。つらい気持ちが長く続くときや、眠れない日が続くときは、地域の相談窓口や医療機関に相談してください。もし自分を傷つけたい気持ちが浮かんだときは、すぐに医療機関や地域の緊急の相談先に連絡し、緊急の場合は119番に電話してください。
予防
すべてのけがを防ぐことはできませんが、リスクを下げることはできます。太ももの前の筋肉やお尻の筋肉を日ごろから鍛えておくと、ひざへの衝撃がやわらぎ、ぐらつきにくくなります。運動前のウォーミングアップと運動後のクールダウン、自分に合った靴を選ぶこと、急に運動量を増やさないことも大切です。家の中では、段差を少なくする、照明を明るくする、手すりをつけるといった転倒予防の工夫が役立ちます。体重が重めの場合は、無理のない範囲で体重を整えることが膝の負担を減らします。
検診プログラム
膝のけがを事前に見つけるための決まった検査はありません。ただし、膝に痛みや違和感があるまま運動を続けると悪化することがあるため、気になる症状があるときは早めに整形外科で相談してください。高齢者では、健診や通院の際に歩行や筋力の状態を確認しておくと、転倒予防につながります。
合併症
治療しない場合
- 腫れや痛みが長引き、回復が遅れることがある
- 動かさない期間が長くなり、ひざが固くなったり筋力が落ちたりする
- ひざの不安定さが残り、スポーツや階段で力が抜ける感じが続く
- 半月板や靭帯の傷みが広がり、治療に時間がかかることがある
- 将来、ひざの関節の変形(変形性膝関節症)のリスクが高まることがある
- 痛みをかばうことで、反対側の足や腰に負担がかかることがある
長期的な見通し
多くの膝のけがは、適切な対応とリハビリによって、時間はかかっても少しずつ良くなります。痛みが残りやすいけがもありますが、筋力をつけ、動き方を工夫することで、日常生活や好きな活動を続けている人はたくさんいます。回復のペースは人によって違います。気になる症状や不安があるときは、遠慮なく医療機関に相談してください。
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最終更新: 2026年10月24日
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