人工膝関節置換術(膝の人工関節の手術)
概要
人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)は、傷んだ膝の関節の表面を、金属やプラスチックでできた人工の部品に置きかえる手術です。膝の軟骨(骨と骨のあいだのクッション)がすり減って強い痛みが続き、歩くのがつらくなったときに検討されます。目的は、痛みをやわらげ、歩きやすくして、ふだんの生活を楽にすることです。
重要な事実
- 膝の内側や外側のすり減った部分だけを置きかえる「部分置換」と、膝全体を置きかえる「全置換」があります。どちらが向いているかは、膝の状態によって変わります。
- 手術そのものは数時間ほどで、多くの場合は数日から1〜2週間ほどの入院になりますが、病院や体の状態によって違います。
- 手術後のリハビリ(筋力トレーニングや歩く練習)が、回復の速さと手術の満足度を大きく左右します。
はい、とてもよく行われる手術です。日本には膝の痛みで悩む人がたくさんおり、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)という、膝の軟骨が少しずつすり減っていく病気は、特に中高年以降で多くなっています。膝の手術を受ける人の数も年々増えているといわれています。
主に50代以降の人で、60代・70代で受けることが多くなっています。女性に多い傾向があります。若い人では、けがの後や生まれつきの病気などが原因で行われることはありますが、頻度は高くありません。体重が重い人、以前に膝をけがした人、膝に負担のかかる仕事やスポーツを続けてきた人では、より早く膝の状態が悪くなることがあります。
症状
- 手術後に突然の激しい痛みと、片方の脚の急な腫れが起きたとき
- ふくらはぎの強い痛み・腫れ・赤みに加えて、息切れや胸の痛みがあるとき
- 手術の傷から血が止まらないほど出ているとき
- 高い熱と意識がぼんやりする状態が一緒に起きたとき
- 胸の痛みや息苦しさが急に出たとき
- ⚠傷口が赤く腫れて膿(うみ)のようなものが出てきたとき
- ⚠38度以上の熱が出たとき
- ⚠膝が急に大きく腫れて熱をもち、痛みが強いとき
- ⚠足の指先の血色が悪い、しびれる、動かしにくいとき
- ⚠市販の痛み止めではまったく動けないほどの痛みがあるとき
一般的な症状
- 歩き始めや階段の上り下りで膝が痛む
- 正座やあぐらがつらい、膝を深く曲げられない
- 長く歩くと膝が腫れる、熱をもつ
- 膝に水がたまる
- 膝がこわばる、動きが悪い
- 膝がガクガクして不安定に感じる、力が入りにくい
- 脚がO脚(がに股)になってきた気がする
子供の症状
- 子どもでは膝の痛みの多くは成長に伴うものやけがによるもので、人工関節の手術が必要になることはまれです。
- 長く続く腫れや痛み、歩き方のくせ、朝のこわばりがあるときは、小児科や整形外科で相談してください。
高齢者の症状
- 痛みが長びいて外出や買い物を控えるようになり、筋力が落ちることがあります。
- 膝が痛いあまり歩き方が変わって、転びやすくなることがあります。
- 膝の痛みで睡眠が浅くなったり、気分が落ち込んだりすることがあります。
- 膝だけでなく、腰や股関節にも負担がかかることがあります。
原因
主な原因
- 変形性膝関節症:膝の軟骨が長い年月をかけてすり減り、骨の形が変わっていく病気です。膝の手術のいちばん多い理由です。
- 関節リウマチなどの炎症性の病気:免疫の働きの異常で関節が炎症を起こし、軟骨や骨が傷むことがあります。
- けがの後遺症:骨折や靭帯(じんたい)・半月板の損傷のあと、膝の形やクッション性が変わって痛みが続くことがあります。
- 骨の一部が壊れてしまう病気(骨壊死など)や、生まれつきの脚の形のくせ
リスク要因
- 体重が重いこと(膝にかかる負担が大きくなります)
- 年齢が上がること
- 女性であること
- 家族に膝の痛みや手術をした人がいること
- 過去に膝をけがした経験
- 重い物を持つ仕事や、膝を曲げ伸ばしする動作の多い仕事
- 太ももの筋肉が弱っていること
- スポーツで膝に繰り返し負担をかけてきたこと
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 膝が急に大きく腫れて、熱をもち、痛くて歩けない
- 発熱と膝の痛み・腫れが同時にある
- 足のしびれや動かしにくさがある
- 転倒してから膝が曲がらない、形が変わったように見える
定期受診を予約すべき場合:
- 膝の痛みが数週間以上続いている
- 階段の上り下りや正座がつらくなってきた
- 歩く距離が短くなった、杖を使うことが増えた
- 膝に水がたまるのを繰り返している
- O脚が進んできた気がする
診断
まず問診と診察で、いつからどんなときに痛むのか、日常生活で何がつらいのかを確認します。膝を動かして可動域(動く範囲)や腫れ、安定性をみて、必要に応じてレントゲンやMRIなどの画像検査を行います。手術を考えるかどうかは、画像だけでなく、痛みの強さや生活への支障、年齢や持病、本人の希望をあわせて総合的に判断します。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(痛む場所、動かせる範囲、腫れ、ぐらつきの確認)
- レントゲン検査(軟骨のすり減り具合、骨の形、O脚の程度をみます)
- MRI検査(軟骨や半月板、靭帯などのやわらかい組織をみます)
- 血液検査(炎症の程度や、関節リウマチなどの別の原因を調べます)
- 必要に応じて関節にたまった水を抜いて調べる検査
診察で予想されること
診察は30分程度のことが多く、画像検査を含めるともう少し時間がかかります。手術を検討する場合は、麻酔科やリハビリの担当者との面談、術前の検査(心電図、肺のレントゲン、血液検査など)が行われます。手術の方法や入院の期間、術後のリハビリの流れについて、事前に説明を受けて質問する時間があります。
治療
治療は、手術を急いで選ぶのではなく、まず体に負担の少ない方法から始めるのが一般的です。体重管理や筋力づくり、生活の工夫、必要に応じて薬や関節への注射、リハビリなどを組み合わせます。それでも痛みが強く、日常生活が大きく制限されるときに、手術が選択肢になります。
自宅でのセルフケア
- 体重を適正に近づける(膝にかかる負担を減らせます)
- 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を中心に、椅子に座っての足上げなど無理のない筋力づくりを続ける
- 水中歩行や自転車など、膝にやさしい運動を取り入れる
- 痛むときは冷やし、こわばるときは温めるなど、自分の体に合った方法を試す
- 杖や手すり、ひざ当てなどを上手に使う
- クッション性のある靴を選び、長時間の正座や階段の往復を減らすなど、生活の動きを工夫する
医療治療
痛みに対しては、炎症や痛みをやわらげる種類の薬が使われることがあります。胃への負担なども考慮されるため、自分で判断せず、医師や薬剤師に相談して使うようにしてください。それ以外に、関節の中への注射、リハビリ(理学療法)、装具や杖の使用、膝への負担を減らす生活指導などが組み合わされます。手術を考える場合は、整形外科の医師から方法やリスク、術後の生活について詳しい説明を受け、納得したうえで決めることが大切です。
手術が検討される場合
手術は、痛みで歩くのがつらく、買い物や入浴、睡眠など毎日の生活に大きな支障が出ているのに、運動療法や薬などで十分な改善が得られないときに検討されます。年齢だけで決まるものではなく、持病の状態や生活の希望も含めて、医師とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
手術を受けた場合は、退院後も数か月かけて少しずつ筋力と動きを取り戻していきます。最初は家の中での歩行練習から始め、徐々に外出の距離をのばします。膝を深く曲げる動作(正座など)は難しいことが多く、生活の中で無理をしない工夫が必要です。手術をしない場合も、痛みと上手につきあいながら、動ける範囲で体を動かし続けることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の軽い運動を習慣にする(散歩、水中運動、自転車など)
- 長く座り続けたあとは、立つ前に軽く膝を動かしてから動き出す
- 階段や重い物の運搬など、膝に負担のかかる動作は道具や家族の助けを借りる
- 睡眠と休息をしっかりとる(疲れや痛みが強まるのを防ぎます)
- 禁煙を心がける(傷の治りや血流に関係します)
- 手術後は、傷口を清潔に保ち、医師の指示に従って通院を続ける
食事と運動
食事は、極端な糖質制限や偏りを避け、野菜・たんぱく質・適度な主食をそろえたバランスのよい内容が基本です。体重が重い場合は、ゆるやかに減らしていくことが膝の負担を減らします。運動は、痛みが強い日は無理をせず、痛みの少ない範囲で行います。太ももの筋肉をきたえる運動は、膝を守る力になります。手術後は、医療者やリハビリ担当者に教わった運動を、継続して行うことが大切です。
精神的健康と心の健康
膝の痛みが長く続くと、外出を控えて人と会う機会が減ったり、思うように動けないもどかしさから気分が落ち込んだりすることがあります。手術に対して不安を感じるのも自然なことです。つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱えず、かかりつけ医や地域の相談窓口、身近な人に話してみてください。気持ちがとてもつらいときや、自分を傷つけたい気持ちがわいてきたときは、ためらわずに医療機関や地域の相談窓口に連絡してください。緊急の場合は119番に電話してください。
予防
膝の軟骨のすり減りを完全に防ぐことはできませんが、進行をゆるやかにするための工夫はあります。体重を適正に保つこと、太ももの筋肉をきたえること、膝に強い負担をかける動作やスポーツを控えめにすること、けがを予防することが役立ちます。膝に違和感があるうちに整形外科で相談しておくことも大切です。
ワクチン
この手術や膝の痛みそのものを防ぐワクチンはありません。ただし、手術を受ける前は、感染症の予防や体調管理のために、ワクチンについて主治医に相談しておくと安心です。
検診プログラム
決まった検診があるわけではありませんが、健康診断の機会などに膝の状態や歩き方について気になる点を相談しておくとよいでしょう。膝の痛みが続く場合は、早めに整形外科を受診してください。
合併症
治療しない場合
- 痛みが続いて歩ける距離が短くなり、外出や社会とのつながりが減ることがあります
- 使わないことで足や腰の筋肉が弱り、転びやすくなることがあります
- 膝の変形(O脚など)が進み、さらに痛みが強くなることがあります
- 活動量が減ることで、体重増加や生活習慣病のリスクが上がることがあります
- 手術後は、傷の感染、脚の血管に血の塊ができる状態、人工の部品のゆるみなどが起こる可能性があります(頻度は高くありませんが、注意が必要です)
長期的な見通し
膝の痛みは、運動や生活の工夫、医療の助けを組み合わせることで、多くの人が改善や安定を実感しています。手術を受けた人の多くは、痛みが減って歩きやすくなったと感じていますが、回復の速さや得られる効果には個人差があり、リハビリを続けることが満足度につながります。心配なことは、かかりつけ医や整形外科で遠慮なく相談してください。
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最終更新: 2026年10月24日
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