開腹手術(おなかを開く手術)について
概要
開腹手術とは、おなかの皮膚を切り開いて、中を直接見ながら行う手術のことです。最近はおなかに小さな穴をいくつかあけてカメラで見る「腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)」という方法も増えていますが、開腹手術は、より広い範囲を確実に見たり、大きな病気に対応したりする必要があるときに行われます。手術そのものは「病気」ではなく、治療のための方法のひとつです。
重要な事実
- 開腹手術は全身麻酔(ぜんしんますい:眠った状態で行う麻酔)で行われることが多く、手術中は痛みを感じません。
- 入院期間は手術の内容や体の状態によって変わりますが、数日から2週間ほどがひとつの目安です。
- 手術後の痛みやだるさ、おなかの張りはよくあることで、多くの場合は少しずつ良くなっていきます。
はい。開腹手術は、緊急のときにも予定された手術としても、とてもよく行われている一般的な治療法です。年間で非常に多くの人が受けています。
年齢を問わず行われます。こどもから高齢の方まで、必要に応じて行われます。ただし、年齢や持病、体力によって回復のスピードや注意点は変わります。
症状
- 呼吸が苦しい、息がゼーゼーする、胸が痛い
- 意識がぼんやりする、呼びかけへの反応がにぶい
- 傷から大量に出血していて止まらない
- おなかが硬く、触ると激しく痛む
- 何度も呕吐をくり返す、水分がとれない
- 高熱と強い悪寒が同時にある
- 片方の脚が急に腫れて、痛みや赤みがある(血のかたまりができる病気のサインのことがあります)
- ⚠38度以上の熱が続く
- ⚠傷が赤く腫れて、膿のようなものが出ている
- ⚠痛みが日ごとに強くなっている
- ⚠尿が出にくい、おなかが張って苦しい
- ⚠排便もガスも3日以上出ていない
- ⚠傷が開いてきた、または縫ったところが引きつれて痛い
一般的な症状
- 傷の痛みやつっぱり感(動いたとき、せきをしたときに強くなることがあります)
- おなかの張りや、ガスが出にくい感じ
- だるさ、疲れやすさ
- 食欲がわかない、少し気持ちが悪い
- 手術後数日間の微熱
- 傷のまわりのかゆみやしびれ
子供の症状
- 痛みをうまく言葉で伝えられず、泣き続けたり不機嫌になったりする
- 元気がなく、ぐったりしている
- 母乳やミルク、食事をあまりとらない
- おなかが張っている、排便やガスが出ない
- 傷を触りたがる、傷をかばうしぐさをする
高齢者の症状
- 痛みを感じにくく、症状が軽く見えることがある
- 熱が出にくいことがある
- 一時的な混乱(せん妄:急にぼんやりする、話がかみ合わない)
- 体力が落ちやすく、寝たきりになりやすい
- 傷の治りがゆっくりで、感染にも注意が必要
原因
主な原因
- 虫垂炎(ちゅうすいえん:盲腸ともよばれる)や胆のうの炎症など、急な腹痛の原因を取り除くため
- 腸閉塞(ちょうへいそく:腸が詰まる状態)の治療
- 胃や大腸など消化管のがんの手術
- 腹部を強く打ったときのけがや、内臓からの出血
- 子宮や卵巣など、おなかの中の病気の治療
- ヘルニア(ふくらみ)が急に悪化したときの緊急手術
- これまでの手術でできた癒着(ゆちゃく:内臓どうしがくっついた状態)をはがす手術
リスク要因
- たばこを吸っている(傷の治りが悪くなり、感染の危険が上がります)
- 糖尿病などの持病がある
- 肥満がある
- 高齢である
- 栄養状態がよくない、体重が減っている
- 免疫の働きを抑える薬を使っている
- 以前におなかの手術を受けたことがある
- 手術の時間が長くなる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 手術後に急に息苦しくなった、胸が痛い
- 傷から血が止まらないほど出ている
- おなかが硬く、動けないほどの激痛がある
- 38度以上の熱と悪寒がある
- 片脚が腫れて痛む
- 水分がとれず、呕吐をくり返す
定期受診を予約すべき場合:
- 傷の痛みが長引いている
- 傷が赤くなっている、少し膿んでいる気がする
- 食事がとりづらい、体重が減っている
- 便やガスが出にくい状態が続いている
- 手術前に説明された経過と違うと感じる
診断
開腹手術が必要かどうかは、問診(お話をうかがうこと)、おなかを触る診察、血液検査、画像検査などを組み合わせて判断します。緊急のときは、命に関わる状態かどうかを優先して調べます。
行われる可能性のある検査
- 問診とおなかの触診
- 血液検査(炎症や貧血、肝臓・腎臓の働きを調べます)
- 腹部超音波検査(エコー:音の波でおなかの中を映す検査)
- CT検査やMRI検査(体の断面を画像で見る検査)
- レントゲン検査
- 手術前の心電図や呼吸機能検査、胸部レントゲン(麻酔の安全のために行います)
診察で予想されること
手術が決まったら、医師から手術の目的、方法、予想される経過、考えられるリスクについて説明があります。わからないことは遠慮なく質問してください。手术前は食事を控える「絶食」が必要になることが多く、麻酔科の医師との面談もあります。不安なことはメモにまとめておくと伝えやすくなります。
治療
開腹手術は、全身麻酔で眠った状態で行われます。手術の後は、痛みの管理、傷のケア、食事を少しずつ進めること、そして早めに体を動かすことが回復の中心になります。
自宅でのセルフケア
- 医師や看護師に教わったとおりに傷を観察し、清潔に保つ
- 痛みが許す範囲で、早めに歩く(ベッドで過ごし続けると回復が遅れ、血のかたまりができやすくなります)
- 深く息を吸ってゆっくり吐く「深呼吸」をこまめに行う(肺の合併症を防ぎます)
- 水分をとり、食事は指示された段階から少しずつ進める
- 退院後しばらくは重い物を持たず、無理な運動を控える
- たばこを吸っている場合は、禁煙を検討する
医療治療
手術の後は、痛みをやわらげる薬や、感染を防ぐための薬が医師の判断で使われることがあります。薬の種類や量は、体の状態や手術の内容に合わせて医療スタッフが決めます。自己判断で薬を中止したり、市販薬を加えたりせず、必ず担当の医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
手術には、緊急に行うものと、準備を整えて計画的に行うものがあります。緊急手術は、命に関わる状態や強い炎症があるときに行われます。予定手術は、検査を済ませ、体の状態を整えてから日を決めて行います。開腹手術か腹腔鏡手術かは、病気の場所や大きさ、体の状態、これまでの手術歴などをふまえて医師が判断します。
この病気と共に生きる
退院後は、少しずつ日常生活の範囲を広げていきます。傷は数週間から数か月かけてゆっくり治ります。入浴やシャワー、仕事復帰、運転の再開などは、退院時の説明に従ってください。
生活習慣のアドバイス
- 傷の状態を毎日チェックする習慣をつける
- 睡眠を十分にとり、無理のない範囲で動く
- 便秘を防ぐために水分と食物繊維をとる
- 飲酒や喫煙は、医師に再開の時期を確認する
- 退院後の通院日は必ず守る
食事と運動
食事は、おかゆやスープなど消化のよいものから始め、体の反応を見ながら少しずつ普通の食事に戻していきます。一度にたくさん食べず、よくかんで食べましょう。運動は、散歩のような軽いものから始め、医師に許可された時期までは腹筋に負担のかかる運動や重い物を持ち上げる動作を控えます。
精神的健康と心の健康
手術のあとは、不安や気分の落ち込み、眠りにくさ、集中しづらさを感じることがあります。これは体が回復する途中でよくあることです。気持ちがつらい日が続くときは、一人で抱え込まず、担当の医師や看護師、地域の相談窓口に話してください。もし自分や身のまわりの人の安全が心配な強い気持ちがわいたときは、ためらわず救急(119番)に連絡してください。
予防
開腹手術そのものを完全に防ぐことはできませんが、手術が必要になる病気を早めに見つけたり、手術後の合併症の危険を下げたりすることはできます。気になる症状があれば早めに受診し、持病をきちんと治療しておくことが大切です。
検診プログラム
厚生労働省は、大腸がんなどの検診を年代に応じて受けることをすすめています。自治体の検診案内を確認し、かかりつけ医に相談してみてください。早期に見つかれば、体への負担が少ない治療が選べることがあります。
合併症
治療しない場合
- 傷の感染(赤み、腫れ、膿、熱が出ます)
- 手術後の出血
- 脚や肺の血管に血のかたまりができる状態
- 肺炎などの呼吸器の合併症(とくに高齢の方)
- 腸がくっついて詰まる「腸閉塞(ちょうへいそく)」
- 傷の部分が弱くなってふくらむ「腹壁瘢痕ヘルニア」
- 手術が必要だった病気そのものが進んでしまうこと
長期的な見通し
開腹手術は、多くの方にとって病気を治し、生活を取り戻すための大切な治療です。回復のスピードには個人差があり、傷の痛みや疲れやすさが続くこともありますが、時間とともに良くなっていくのが一般的です。気になる症状は早めに相談し、焦らず自分のペースで回復を進めていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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