学習障害(LD)について知っておきたいこと
概要
学習障害(がくしゅうしょうがい、英語ではLD)は、知的な力に大きな遅れがないのに、「読む」「書く」「計算する」など特定の分野だけが、同じ年齢の子どもに比べて極端に苦手な状態をいいます。脳が文字や数字の情報を処理するしかたの違いから起こると考えられていて、しつけや努力不足、本人のやる気の問題ではありません。苦手な分野がある一方で、得意な分野はとてもよく伸びることも多いのが特徴です。
重要な事実
- 学習障害は「勉強ができない」ということではなく、特定の学び方に助けが必要という状態です。知的な力全体が低いわけではありません。
- 読み・書き・計算のどれが苦手か、また苦手のあらわれ方は人によって大きく違います。ひとりひとりに合った工夫が助けになります。
- 早く気づいて、家庭と学校が協力して支援を始めると、自信を失わずに学び続けやすくなります。
めずらしいものではありません。複数の調査では、学齢期の子どものおよそ5%前後に関わるといわれています。1つのクラスに数人いても不思議ではない、よくある発達の特性のひとつです。
小学校に入学して文字や計算を学び始める時期に見つかることが多いですが、もっと早く気づかれることも、大人になってから「自分はそうだったのかもしれない」と気づくこともあります。男の子にも女の子にも起こります。
症状
- 自分や周りの人を傷つける行動がある、またはその恐れが強い
- 「消えてしまいたい」「死にたい」と話す、自傷行為がある
- パニック状態で、道路に飛び出すなど危険な行動をしてしまう
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応がおかしい
- ⚠強い不安や不眠が続き、日常生活が保てない
- ⚠食事がとれない、水分がとれない状態が続く
- ⚠学校や仕事に行けない状態が何週間も続き、生活のリズムが大きく崩れている
- ⚠いじめや暴力を受けていて、身の安全が心配される
一般的な症状
- 音読がたどたどしい、文字を読み間違える、行を飛ばして読んでしまう
- 字がマスからはみ出す、誤字や抜け字が多い、文章を組み立てるのが苦手
- 九九がなかなか覚えられない、桁(位取り)を間違える、計算に極端に時間がかかる
- 大人数の指示を聞きもらしやすい、順番を覚えるのが苦手
- 宿題やテストに人よりずっと時間がかかる、集中が続かない
- できることとできないことの差がとても大きい
- 「どうせできない」と自信をなくし、勉強を避けるようになる
子供の症状
- ひらがなやカタカナの覚えが遅い、友達より読む練習に時間がかかる
- 板書を写せない、黒板を見て書くのが間に合わない
- 連絡帳やプリントの文字を読み違えて、宿題の内容を間違える
- 「頑張っているのに結果が出ない」と泣いたり、宿題の前に体調が悪くなったりする
- 学校に行きたがらない、おなかが痛いなど体の不調を訴える
- 自分を責める言葉を口にする、友達とのトラブルが増える
高齢者の症状
- 大人の場合、書類や説明書を読むのに人より時間がかかる、読み返さないと理解できない
- 会議のメモが取れない、聞いた話を書き留めるのが苦手
- 暗算や書類の計算でミスが続く、段取りを立てるのが苦手
- 子どものころからずっと同じ分野が苦手だった、という振り返りがある
- 苦手を隠すために疲れやすく、不安や気分の落ち込みを感じやすい
原因
主な原因
- 脳が文字や数字、音の情報を処理するしかたの違い(読み・書き・計算など、特定の分野に限られることが多い)
- 遺伝的な要因の関わりが指摘されています。家族に同じような苦手さのある人がいることもあります。
- しつけや本人の努力不足、わがままが原因ではありません。また、愛情不足や家庭環境だけで起こるものでもありません。
リスク要因
- 家族(親やきょうだい)に、読み書きや計算に強い苦手さのある人がいる
- 早産や低出生体重など、発達に関わる要因があった
- 言葉の発達や落ち着きなど、ほかの発達の特性と重なっている
- 視力や聴力の課題が重なっている(見えにくさ・聞こえにくさは学びにくさにつながります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 自分を傷つける行動や「いなくなりたい」という言葉があるとき(ためらわず救急・医療機関へ)
- いじめや暴力で身の安全が心配されるとき
- 強い不安・不眠・食欲の低下で日常生活が保てないとき
定期受診を予約すべき場合:
- 就学前健診や乳幼児健診で、発達の気になる点を指摘された
- ひらがなや計算の習得が、同じ学年の子と比べて明らかに遅いと感じる
- 宿題に極端に時間がかかる、または家族がつきっきりでないと終わらない
- 学校を嫌がる、体の不調を訴える日が増えた
- 本人が「自分はできない」と自信をなくしているように見える
- 大人になってから、読み書きや計算の苦手さが仕事や生活に影響していると感じる
診断
診断は、医師(小児科、児童精神科、精神科など)が、心理士や学校の先生からの情報も合わせて、総合的に判断します。まず「知的な力全体に大きな遅れはないか」「読み書きや計算だけが特に苦手か」を確かめ、視力・聴力など別の原因がないかを確認します。そのうえで、生育歴や学校での様子、検査の結果をあわせて、慎重に判断されます。
行われる可能性のある検査
- 本人と家族への問診(小さいころからの様子、苦手だったこと、生活の困りごと)
- 知的な発達をみる心理検査(心理士が対面で行います)
- 読み・書き・計算の力をみる検査
- 視力検査・聴力検査(見えにくさ・聞こえにくさが原因でないかの確認)
- 学校の先生からの聞き取り(授業中の様子、テストや提出物の傾向)
- 必要に応じて、集中や落ち着き、言葉の発達などに関する check(確認)
診察で予想されること
検査は1回で終わらず、何回かに分けて行われることがあります。結果が出るまでに数週間かかることもあります。結果は「できた・できない」の採点ではなく、「どんな方法なら学びやすいか」を見つけるための材料です。診断の内容や学校への伝え方については、本人と家族の気持ちを大切にしながら、医師と相談して決めていきます。
治療
学習障害そのものを「治す」治療法はありません。大切なのは、苦手な分野を避けるのではなく、学び方の道具や方法を工夫して、その子(その人)が力を出せるようにすることです。教育の支援、家庭での工夫、必要に応じた心理的なサポートを組み合わせます。苦手さは一生続くことが多いですが、工夫によって困りごとは大きく減らせます。
自宅でのセルフケア
- 音声で読める教材や読み上げ機能を使う、文字を大きくする、ふりがな(ルビ)を活用する
- タブレットや学習用のアプリ、電卓など、道具の力を借りる(ずるではなく、道具の活用です)
- 宿題を短い時間に区切る、休憩をはさむ、机の上を整理して集中しやすくする
- できたことを具体的にほめる(「ここまで書けたね」のように小さな一歩を認める)
- 「読む」「書く」「計算」それぞれに、本人が楽にできるやり方を一緒に探す
- 睡眠を十分にとり、生活のリズムを整える
医療治療
中心になるのは教育の支援です。学校の通級指導教室(通常の学級に在籍しながら、週に数回、個別の指導を受ける場)や特別支援学級、校内での配慮(テストの時間延長、タブレットの使用など)を、学校と相談して組み立てます。医療の場では、苦手さの評価と説明、学び方の提案、不安や気分の落ち込みなどが重なっている場合の心理的な支援が行われます。薬の要不要や使うかどうかは、症状や状況によって医師が判断することであり、この記事では具体的な薬の名前や量はお伝えしません。気になることは主治医に相談してください。
手術が検討される場合
学習障害は手術で治るものではありません。脳の働きの違いによるもので、手術の対象にはなりません。
この病気と共に生きる
苦手な分野があることは、その人の価値を下げるものではありません。読み書きや計算でつまずきやすいぶん、工夫と応援があれば力を発揮できます。家庭では「できないところ」より「できたところ」に目を向け、学校とはこまめに情報を共有しましょう。本人が自分の得意・不得意を知り、助けを求める練習をすることも、大切な力になります。
生活習慣のアドバイス
- 生活のリズムを整え、睡眠をしっかりとる
- 宿題や準備は、時間を区切って「ここまでやったら休憩」と区切りをつける
- タブレット・音声読み上げ・電卓など、自分に合う道具を早めに使う
- 得意なこと(絵、運動、工作、音楽、人との会話など)を伸ばす時間を大切にする
- 学校や職場と、必要な配慮をあらかじめ相談しておく
- 家族だけで抱え込まず、定期的に専門家や相談窓口に話す機会をつくる
食事と運動
食べ物や運動で学習障害そのものが治るという根拠はありません。特別な食事制限や高価なサプリメントに頼る前に、主治医や管理栄養士に相談してください。ふだんどおりのバランスのよい食事と、体を動かす習慣(散歩、体操、遊びなど)は、集中力や気分の安定、睡眠の質を保つ助けになります。
精神的健康と心の健康
読み書きや計算で何度もつまずくと、「自分はだめだ」という気持ちが積み重なり、不安や気分の落ち込み、登校しぶりにつながることがあります。これは本人の弱さではなく、環境とのミスマッチからくるものです。気分の落ち込みや不安が続くときは、心の面の支援も合わせて受けましょう。「話してみたい」と思ったら、学校の先生、かかりつけ医、お住まいの相談窓口が入口になります。もし「消えてしまいたい」と感じたら、ひとりで抱えず、すぐに医療機関や信頼できる人に連絡してください。
予防
学習障害は、脳の情報処理のしかたの違いから起こるもので、予防できるものではありません。しつけや家庭の関わり方が原因でもないため、本人や家族が責められる理由はありません。ただし、早く気づいて工夫を始めることで、勉強のつまずきや自信の低下を減らすことはできます。
検診プログラム
日本では、乳幼児健診や就学前健診(5歳児健診などを行う自治体もあります)で、発達の様子を確認する機会があります。学校でも、授業やテストの様子から気づかれることがあります。健診で「気になる」と言われたときは、心配しすぎず、まずは相談先で詳しく見てもらうことが勧められます。
合併症
治療しない場合
- 「自分はできない」という思いが積み重なり、自信や自己肯定感が育ちにくくなる
- 宿題やテストの負担から、学校に行きたくない気持ちが強くなる
- からかいやいじめの対象になりやすく、心の傷につながることがある
- 不安や気分の落ち込みなど、二次的な心の問題が起こりやすくなる
- 進学や就職、仕事の場面で、必要な配慮を受けられずに困りごとが続く
長期的な見通し
学習障害は、工夫をしても苦手さが完全になくなるわけではありません。しかし、支援と道具を上手に使うことで、学びや仕事、暮らしの中での困りごとは大きく減らせます。苦手分野を持ちながら、自分の得意な分野で活躍している人はたくさんいます。早めに相談して、その人に合ったやり方を見つけていくことが、いちばんの近道です。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月24日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.