レーベル遺伝性視神経症(LHON)
概要
レーベル遺伝性視神経症(LHON)は、目の奥にある「視神経」が傷つき、ものが見えにくくなる遺伝性の病気です。視神経は、目で受け取った光の情報を脳へ送るケーブルのような役割をしています。このケーブルがうまく働かなくなると、視力が下がったり、視野の真ん中が見えにくくなったりします。LHONは「ミトコンドリア」という、細胞にエネルギーを供給する小さな器官のDNAの変化によって起こります。多くの場合、痛みはなく、両目が数週間から数か月の間に続けて見えにくくなるのが特徴です。
重要な事実
- 原因はミトコンドリアDNAの変化で、通常の核DNAの変化とは遺伝の仕方が異なります。
- 母系遺伝といって、母親から子どもへ伝わることが多い病気です。ただし、遺伝子の変化を持っていても必ず発症するわけではありません。
- 現時点で確立された根本的な治し方はありませんが、進行を抑える治療の研究や、見えにくさを補うリハビリ・生活の工夫が進んでいます。
LHONはまれな病気で、頻度は高いものではありません。日本でも国の指定難病に位置づけられており、認定されると医療費の助成を受けられる場合があります。詳しくは主治医やお住まいの自治体の窓口にご相談ください。
10代後半から30代の男性に多いとされていますが、女性にも起こります。発症の年齢や性別には幅があり、子どもから高齢の方まで報告があります。
症状
- 突然の視力低下に、激しい頭痛・吐き気・意識のもうろう・けいれんを伴う(脳卒中などの可能性)
- 目や頭に強い外傷を受けたあとの見えにくさ
- 視力の急な低下とともに、ろれつが回らない・手足の動きにくさがある
- ⚠数時間から数日のうちに視力がはっきり下がった
- ⚠視野の中心が急に暗くなった、または見える範囲が狭くなった
- ⚠片目ずつ見比べると、片方だけが急に見えにくい
- ⚠目に強い痛みや充血を伴う見えにくさ
一般的な症状
- 痛みのない視力低下(片目から始まり、多くは数週間から数か月のうちにもう一方の目にも及ぶ)
- 視野の真ん中が見えにくい、または暗く感じる(中心暗点)
- 色の区別がしにくくなる(特に赤と緑)
- まぶしさを感じやすくなる、コントラストが分かりにくくなる
- 眼鏡をかけても視力が上がりにくい
子供の症状
- 黒板の文字が見えにくい、席を前にしてもらっても改善しない
- 色鉛筆や信号の色の区別を間違える
- 人や物にぶつかる、段差でつまずくなどの変化
- 自分では見えにくさをうまく説明できないことがあるため、学校の様子の変化が手がかりになります
高齢者の症状
- 高齢での発症は比較的少ないものの、加齢による目の病気(白内障や緑内障など)と見分ける必要があります
- 複数の目の病気が重なっている可能性があるため、眼科での詳しい検査が大切です
原因
主な原因
- ミトコンドリアDNAの変化(特定の遺伝子の変化が関係することが分かっています)
- ミトコンドリアのエネルギー産生がうまくいかず、エネルギーを多く必要とする視神経の細胞が傷つきやすくなると考えられています
- 母系遺伝のため、母親の家系に同じ遺伝子の変化を持つ人がいることがあります
リスク要因
- 母方の家系にLHONの人や、遺伝子の変化を持つ人がいる
- 男性であること(発症率が高いとされています)
- 喫煙(発症や進行に関わると考えられており、最も避けたい習慣です)
- 過度の飲酒
- 一部の薬剤や環境からの刺激が発症のきっかけに関わると言われています。気になる薬がある場合は自己判断で中止せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に視力が下がった、または視野の真ん中が見えにくくなった(できるだけ早く、当日中に眼科を受診してください)
- 片方の目が見えにくくなり、もう片方にも変化が出てきた
- 色の見え方が急に変わった
定期受診を予約すべき場合:
- 母方の家系にLHONの人がいて、ご自身のリスクを知りたい
- 遺伝カウンセリングを受けたい
- 見えにくさが生活に影響していて、福祉サービスや補助具の相談をしたい
診断
まず眼科で、見え方の検査と目の奥の様子を調べます。LHONが疑われる場合は、視神経の働きを調べる検査や、血液を使った遺伝子の検査を行います。診断は、症状の経過・目の検査所見・遺伝子検査の結果をあわせて総合的に判断されます。また、遺伝カウンセリングを通してご家族への影響についても話し合います。
行われる可能性のある検査
- 視力検査、視野検査(見える範囲を調べる検査)
- 色覚検査
- 眼底検査(目の奥の視神経の様子を見る検査)
- OCT検査(光を使って視神経の厚みを調べる検査)
- 視覚誘発電位(VEP)検査(視神経から脳への信号の伝わり方を調べる検査)
- 血液による遺伝子検査
- 必要に応じて、他の病気を除外するための画像検査や血液検査
診察で予想されること
検査は痛みの少ないものがほとんどで、外来で行えます。遺伝子検査は結果が出るまで数週間から数か月かかることがあります。結果を待つ間は不安な気持ちになるかもしれません。検査の意味や結果の見通しについて、あらかじめ医師に質問しておくと安心です。
治療
LHONそのものを完全に治す治療は、現在のところ確立されていません。ただし、視神経の働きを助ける可能性のある治療の研究が進んでおり、進行を抑えること、見えにくさを補って生活の質を保つこと、気持ちの面を支えることの3つを柱にしたケアが行われています。発症早期に眼科を受診することが大切です。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する(発症や進行に関わるとされるため、最も大切な対策です)
- 飲酒は控えめにする
- バランスの良い食事と十分な睡眠を心がける
- 照明を明るくする、文字を大きくする、コントラストの強い表示を使うなどの工夫をする
- ルーペや拡大読書器、スマートフォンの読み上げ機能などの補助具を活用する
- 段差や障害物に注意し、転倒を防ぐために室内の配置を整える
- 疲れ目を感じたら休憩し、無理をしすぎない
医療治療
治療は、視神経の細胞のエネルギーを助ける可能性のある薬の研究や、遺伝子に関わる治療の研究などが進められています。国内で使える治療や臨床研究の状況は変わることがあるため、最新の選択肢については主治医に確認してください。あわせて、見えにくさを補うリハビリテーション(ロービジョンケア)、生活支援の相談、不安や落ち込みに対する心のケアも行われます。薬の名前や使い方は、必ず医師・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
LHONそのものを治す手術は、現在のところありません。白内障など別の目の病気が重なっている場合には、その治療のために手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
見えにくさは、工夫次第でかなりカバーできます。文字を大きくする、音声で読み上げる、物の置き場所を決めておくといった小さな工夫が、毎日の暮らしを楽にします。 drivers license や仕事、学校生活についての不安は、早めに専門の相談窓口や主治医に話してみてください。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける(受動喫煙も避ける)
- 節酒を心がける
- 規則正しい生活と十分な睡眠
- スマートフォンやパソコンの画面を大きく設定し、疲れをためない
- 白杖や視覚補助具の使い方を練習する
- 職場や学校に状況を伝え、必要な配慮を相談する
- 運転については、視力の状況を主治医に確認し、法令に沿って判断する
食事と運動
特別な食事療法はありませんが、野菜・たんぱく質・適度な糖質をバランスよくとることが、からだ全体の健康につながります。運動は、ウォーキングなど無理のない範囲で続けるのがおすすめです。見えにくさがあると転倒しやすいため、明るい場所で、必要なら付き添いのもとで行いましょう。
精神的健康と心の健康
見え方が変わることは、大きな不安や悲しみ、怒りを伴う出来事です。落ち込みや眠れない日が続くとき、死にたい気持ちが浮かぶときは、一人で抱えず、早めに医療機関や相談窓口に連絡してください。気持ちの整理には、同じ経験をした人との交流や心理的なサポートが役立つことがあります。
予防
遺伝子の変化そのものを防ぐ方法はありません。また、遺伝子の変化を持っていても発症しない方も多くいます。できる範囲で、禁煙・節酒・規則正しい生活を心がけることが、リスクを下げる助けになると考えられています。
検診プログラム
症状がない方への一般的な遺伝子検査は推奨されていません。母方の家系にLHONの人がいる場合や、ご自身のリスクが気になる場合は、遺伝カウンセリングを受けたうえで検査について相談するのがよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 視力低下が進み、視野の中心が見えにくい状態が残ることがある
- 読書、運転、仕事など日常生活に支障が出る
- 見えにくさによる転倒やけがのリスク
- 不安や落ち込み、社会的な孤立
長期的な見通し
LHONの見え方の経過は人によって異なります。視力が低下したあと、ある程度安定する方、時間をかけて少し改善する方もいます。根本的な治療はまだありませんが、進行を抑える治療の研究や、暮らしを支える工夫・支援は着実に増えています。早めの受診と、必要な支援につながることが、これからの生活の質を保つ力になります。希望を持って、主治医と一緒に方針を考えていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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