脚の潰瘍(下腿潰瘍・足の治りにくい傷)
概要
脚の潰瘍(かたいかいよう、あるいは下腿潰瘍)は、足やふくらはぎの皮膚が深く傷つき、なかなか治らない「傷あと」ができる状態です。ふつうの傷は数週間で治っていきますが、4〜6週間以上たってもふさがらない傷を「潰瘍」と呼びます。皮膚の下の組織まで傷が及ぶことが多く、じくじくした液体が出たり、痛みや腫れをともなったりします。脚の血液の流れが悪くなったり、血がたまりすぎたりすることが主な原因です。
重要な事実
- 脚の潰瘍は「治りにくい傷」で、放置すると広がったり感染したりすることがあります。
- 原因は主に3つ:静脈の流れが悪いタイプ(最も多い)、動脈の血流が足りないタイプ、糖尿病による足のトラブルです。
- 原因によってケアの方法が変わるため、自己判断で包帯を巻き続けず、医療機関で診てもらうことが大切です。
脚の潰瘍はめずらしい病気ではなく、特に高齢の方に多くみられます。欧米のデータでは成人の約1〜2%程度が経験するといわれ、年を重ねるほど増える傾向があります。日本でも、静脈瘤や糖尿病、動脈硬化のある方の増加にともない、身近な健康問題になっています。
主に中高年から高齢の方に多くみられます。特に、脚の静脈瘤がある方、むくみやすい方、長時間立ち仕事や座り仕事をする方、糖尿病の方、動脈硬化のある方、過去に脚の血管が詰まったことのある方に多くみられます。子どもにはまれですが、まったく起こらないわけではありません。
症状
- 傷から大量に出血して、押さえても止まらない
- 脚が急に黒っぽく変色したり、感覚がなくなったりした
- 高熱とともに脚が急に赤く腫れ上がり、どんどん広がる
- 突然の息切れ、胸の痛み、動悸がある(脚の血管の病気が関係する場合があります)
- 意識がもうろうとしている、顔色が悪い、冷汗が出る
- ⚠傷から膿(うみ)が出る、強いにおいがする、熱をもっている
- ⚠発熱がある、だるさが強い
- ⚠傷が急に大きくなった、深くなった
- ⚠痛みが急に強くなり、歩くのがつらい
- ⚠傷のまわりの赤みがどんどん広がっている
一般的な症状
- 足首のまわりや、ふくらはぎの下の方に、なかなか治らない傷ができる
- 傷のまわりの皮膚が茶色っぽくなる、硬くなる、かゆくなる
- 脚が腫れる、重い感じがする、夕方になるとむくむ
- 傷から透明〜黄色っぽい液体が出る(じくじくする)
- 傷の痛み(じっとしていると軽くなり、歩くと痛むことがある)
- 傷のまわりが赤くなったり、温かく感じたりする
子供の症状
- 子どもでは非常にまれですが、生まれつきの血管の病気や血液の病気が関係することもあります。
- 子どもの脚に長く続く傷があるときは、小児科や皮膚科で相談してください。
高齢者の症状
- 高齢の方は皮膚が薄く弱くなっているため、小さな傷でも潰瘍になりやすいです。
- 静脈瘤、糖尿病、動脈硬化、関節のこわばりなどが重なると、治りが遅くなることがあります。
- 痛みを感じにくくなり、傷が悪化してから気づくこともあります。定期的に足を観察しましょう。
原因
主な原因
- 静脈性(最も多い):脚の静脈の弁が弱まり、血液がたまりやすくなって、皮膚の栄養が悪くなる
- 動脈性:動脈硬化などで脚への血流が減り、皮膚や組織が酸素不足になる
- 糖尿病性:血糖値が高い状態が続くことで神経や血管が傷つき、足の傷が治りにくくなる
- その他:長期間の圧迫、やけどやけが、感染、皮膚の病気、まれに腫瘍や自己免疫の病気
リスク要因
- 年齢が高いこと
- 脚の静脈瘤(りゅう)がある
- 過去に深部静脈血栓症(脚の血管が詰まる病気)になったことがある
- 動脈硬化、高血圧、脂質異常症
- 長時間立ちっぱなし、または座りっぱなしの生活
- 肥満、むくみやすい体質
- 脚のけがや手術のあと
- 関節リウマチなどの慢性的な病気
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 傷から膿が出る、強い痛みがある、熱をもっている
- 発熱がある、傷のまわりの赤みが広がっている
- 傷が急に大きくなった、深くなった、出血が続く
定期受診を予約すべき場合:
- 脚の傷が2週間以上たってもよくならない
- 傷のまわりの皮膚の色が変わってきた、硬くなってきた
- 脚のむくみや重さが続いている
- 糖尿病や静脈瘤があり、足に傷ができた
診断
まず、医師が脚の傷の様子をよく見て、大きさ、深さ、まわりの皮膚の色、腫れ、痛みの場所などを確認します。そのうえで、静脈の問題か、動脈の問題か、糖尿病によるものかを見分けるために、いくつかの検査を行います。診断は痛みを伴わない検査がほとんどで、時間もそれほどかかりません。
行われる可能性のある検査
- 視診・触診:傷の状態や脚の皮膚、脈の触れ方を確認します
- 血液検査:貧血、炎症、血糖値、腎臓の働きなどを調べます
- 超音波(エコー)検査:脚の静脈や動脈の流れを調べます
- 血圧測定(ABI:足の血圧と腕の血圧の比をみる検査):動脈の血流が足りているかを確認します
- 場合によっては、傷の一部を調べる検査や、細菌の検査を行うことがあります
診察で予想されること
診察では、脚を出して傷の状態をみてもらいます。検査の多くは身体の外から行うもので、痛みはほとんどありません。診断がついたら、原因に合わせたケアの方法や、日常生活で気をつけることを一緒に考えていきます。
治療
脚の潰瘍の治療は、原因によって変わります。静脈性であれば脚の血液の流れを助けるケアが中心になり、動脈性であれば血流を守るための工夫が必要です。糖尿病が関係する場合は、血糖値の管理も大切になります。治療の中心は、傷を清潔に保ちながら、治る環境を整えていくことです。
自宅でのセルフケア
- 医師や看護師の指示にしたがって、傷の手当てをする
- 脚を心臓より少し高く上げて休む時間をつくる
- 長時間同じ姿勢で立ったり座ったりしない
- 医師の指示があれば、弾性ストッキング(圧迫ストッキング)を正しく使う
- 傷を自分で強くこすったり、消毒薬を何度も使ったりしない
- 禁煙する
- 足の状態を毎日観察し、変化を记録する
- バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動を心がける
医療治療
医療機関では、原因に合わせて次のようなアプローチを組み合わせます。脚の血液の流れを助ける圧迫療法、傷を清潔に保ち適切な被覆材で保護する創傷ケア、必要に応じた感染への対応、皮膚を保護するためのケア、そして生活習慣の見直しです。動脈の血流が悪い場合には、血流を改善するための処置が検討されることがあります。具体的な薬や処置については、担当の医師・薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
傷がなかなか治らない場合や、静脈瘤などが原因になっている場合には、原因そのものを治療するための処置が検討されることがあります。手術が必要かどうかは、検査の結果や全身の状態をみながら医師が判断します。
この病気と共に生きる
脚の潰瘍は、時間をかけてゆっくり治っていくことが多いため、あせらずに毎日のケアを続けることが大切です。傷の変化を記録しておくと、診察のときに役立ちます。痛みやむくみが強い日は無理をせず、脚を上げて休みましょう。
生活習慣のアドバイス
- 長時間の立ち仕事や座り仕事の合間に、脚を動かす休憩をとる
- 脚を高く上げて休む習慣をつくる
- 医師の指示に合わせて、ウォーキングなど軽い運動を続ける
- 禁煙し、受動喫煙も避ける
- 適正体重を維持する
- 皮膚を乾燥から守り、やさしく保湿する
- 爪切りや靴ずれなど、足の小さなトラブルにも気を配る
食事と運動
バランスのよい食事は、皮膚や血管の健康を支えます。塩分や脂っこい食事を控えめにし、野菜やたんぱく質をしっかりとりましょう。運動は、医師の指示のもとで無理のない範囲から始めます。歩くことは脚の血液の流れを助けるので、痛みが強くないときは少しずつ続けてみましょう。糖尿病がある方は、血糖値の管理も大切です。
精神的健康と心の健康
傷が長引くと、「このまま治らないのでは」という不安や、外出を控えてしまう気持ちになることがあります。そうした気持ちは自然なものです。一人で抱え込まずに、家族や医療者に話してみてください。つらい気持ちが続くときは、かかりつけ医に相談しましょう。
予防
すべてを防ぐことは難しいですが、生活の工夫である程度リスクを下げることができます。脚の血液の流れをよく保つこと、皮膚を大切にすること、糖尿病や動脈硬化などの持病をうまく管理することがポイントです。
ワクチン
脚の潰瘍そのものを防ぐワクチンはありません。ただし、糖尿病や血管の病気がある方は、かかりつけ医と相談して、年齢や状態に合った予防接種を受けておくと安心です。
検診プログラム
糖尿病、静脈瘤、動脈硬化、過去の血栓症などがある方は、定期的に足の状態を診てもらうことが大切です。足の観察は、自分でも毎日少しずつ行えます。
合併症
治療しない場合
- 傷が広がったり深くなったりする
- 細菌による感染(蜂窩織炎など)を起こす
- 治りが遅くなり、再発をくり返す
- 脚の血管が詰まる病気(深部静脈血栓症)のリスクが高まることがある
- 日常生活が制限され、生活の質が下がることがある
- まれに、長く続く傷が別の病気に変化することがある
長期的な見通し
脚の潰瘍は、原因に合ったケアを続けることで、多くの方は改善していきます。時間はかかることがありますが、早めに相談して適切なケアを始めることが、治りをよくする一番の近道です。あせらず、医療者と一緒に一歩ずつ進めていきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月24日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.