脚の潰瘍(下肢潰瘍)
概要
脚の潰瘍とは、脚の皮膚が傷ついて、なかなかふさがらない状態のことです。ふつうは2週間以上たっても治らない傷、あるいは4〜6週間たっても治らない傷を「潰瘍(かいよう)」と呼びます。多くはふくらはぎの下のほうや、足首の内側にできます。脚の血管や神経、皮膚の状態が関係して起こり、いちばん多いのは「静脈性(じょうみゃくせい)潰瘍」です。これは、脚の静脈の血液が心臓へうまく戻れず、たまってしまうことで起こります。
重要な事実
- 脚の潰瘍はめずらしい病気ではなく、主に血流や神経のトラブルが原因で起こります。
- いちばん多いのは静脈性のタイプで、脚の血液が戻りにくくなることで起こります。
- 適切なケアで多くは少しずつ改善しますが、同じ場所に再発しやすいため、予防のケアを続けることが大切です。
はい、めずらしい病気ではありません。年齢が上がるほど増え、高齢の方ではよく見られます。
主に高齢の方に多く見られます。ほかに、静脈瘤(じょうみゃくりゅう)や脚のむくみがある方、長時間立ちっぱなしや座りっぱなしの仕事の方、糖尿病のある方、動脈硬化のある方、けがや手術で脚に傷を負った方、歩くことが難しい方などに起こりやすいとされています。
症状
- 傷から大量に出血し、押さえても止まらない
- 高熱、寒け、意識がぼんやりする(感染が体全体に広がった可能性があります)
- 傷のまわりが急に赤く腫れて広がり、がまんできないほど痛い
- 息苦しさや胸の痛みがある(脚の血管にできた血のかたまりが肺に流れた可能性があります)
- 脚が急に白っぽい・青白くなり、冷たく、感覚がなくなった
- ⚠傷が2週間以上治らない、または広がっている
- ⚠傷から膿や悪臭が出る、傷のまわりが熱っぽい
- ⚠脚の腫れや痛みが急に強くなった
- ⚠糖尿病のある方の足に傷ができた
- ⚠発熱がある
一般的な症状
- 脚(とくに足首の内側や、ふくらはぎの下のほう)にできた傷が2週間以上たっても治らない、または広がっていく
- 傷のまわりの皮膚が赤い、茶色っぽい、かゆい、硬くなっている
- 脚がむくむ、重い感じがする、だるい
- 傷から透明な液や膿のようなものが出る、においがある
- 傷の痛みがある(静脈性では立っていると痛く、脚を上げると楽になることが多い/動脈性では歩くとふくらはぎが痛み、脚を上げると痛むことが多い)
- 皮膚が乾燥して皮がむける、かさぶたができる、色素が沈着して黒ずむ
子供の症状
- 子どもではとてもまれです。
- けがややけど、まれに生まれつきの血管の病気が原因になることがあります。
- 子どもの傷が長く治らないときは、小児科や皮膚科で相談してください。
高齢者の症状
- 高齢の方ではより一般的です。皮膚が薄く弱くなり、むくみや血流の影響を受けやすいためです。
- 糖尿病による神経の障害や動脈硬化があると、傷が悪化しやすくなります。
- 寝たきりや歩く機会が少ないと、脚に血液や水分がたまりやすくなり、潰瘍ができやすくなります。
原因
主な原因
- 静脈性(いちばん多い):脚の静脈の弁がうまく働かず、血液がたまって圧が高くなり、皮膚に栄養が届きにくくなって傷ができ、治りにくくなります。
- 動脈性:動脈硬化などで脚への血流が減り、皮膚が弱って傷ができます。
- 糖尿病による神経の障害や足の変形による圧迫(足の裏や足の指に多くなります)。
- 長時間同じ場所に圧がかかること(寝たきりの方の褥瘡(じょくそう)など)。
- けが、やけど、虫刺され、手術後の傷などが治りにくくなったもの。
リスク要因
- 年齢が高いこと
- 静脈瘤、脚のむくみ、長時間の立ち仕事や座り仕事
- 動脈硬化、高血圧、脂質異常、喫煙
- 過去に脚の血栓症や手術、けがをしたことがある
- 肥満、運動不足、歩くことが難しい状態
- 皮膚が弱い、栄養が足りない、貧血がある
- 一部の薬の影響(気になる薬があれば医師や薬剤師に相談してください)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 傷が2週間以上たっても治らない、または大きくなっていく
- 傷から膿や悪臭が出る、傷のまわりが赤く熱を持つ
- 脚の腫れや痛みが急に強くなった
- 糖尿病があり、足に傷ができた
- 発熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- 脚のむくみや重い感じが続く
- 脚の皮膚が黒ずんできた、硬くなってきた
- 静脈瘤があると言われている
- 一度治った傷が同じ場所に何度もできる
- 小さな傷がなかなか治らない状態が続いている
診断
まず診察で、傷の場所・大きさ・見た目、まわりの皮膚の状態、脚の腫れ、足の脈の触れ方などを確認します。原因が静脈性なのか動脈性なのか、あるいは別のものかを区別することがとても大切です。必要に応じて検査を行い、原因に合ったケアを選びます。
行われる可能性のある検査
- 視診と触診(傷の状態、脚の腫れ、脈の触れ方などを確認)
- 足関節上腕血圧比(ABI)という検査(腕と足首の血圧を比べて、脚の動脈の血流を調べます)
- 超音波(エコー)検査(静脈の弁の働きや血流を調べます)
- 血液検査(糖尿病、貧血、栄養状態などを確認します)
- 傷の分泌物の検査(感染が疑われるときに行います)
- 傷の一部を調べる検査(治りが悪いときや、ほかの病気を除外したいときに行うことがあります)
診察で予想されること
多くの場合は外来で診断できます。検査は痛みが少ないものがほとんどです。結果をもとに、傷の手当ての方法や、むくみを減らす工夫、生活で気をつけることを一緒に考えていきます。
治療
治療の目的は、①傷をふさぐ、②原因(血流や圧)を改善する、③感染を防ぐ、④再発を防ぐ、の4つです。原因のタイプによって方法が変わるため、自己判断で同じケアを続けず、医療者と相談しながら進めることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 傷は清潔に保ち、医師や看護師に教わった方法で洗ったり覆ったりする
- 静脈性の場合は、脚を心臓より高く上げて休む時間をつくる
- 圧迫(弾性ストッキングなど)は、動脈の血流に問題がないことを確認したうえで、医師の指示に従って使う
- 傷をかかない、自分で切ったり、自分で薬を塗ったりしない
- まわりの皮膚を保湿して、乾燥やかゆみから守る
- 禁煙する
- 痛みの出ない範囲で、できるだけ歩く習慣をつくる
- 栄養と水分をしっかりとる
医療治療
医療機関では、看護師による定期的な傷の処置(やさしい洗浄と、傷の状態に合った保護材の選択)を行います。静脈性の場合はむくみを減らす圧迫療法が中心になります。感染がある場合はそれに応じた対応を行います。また、糖尿病・高血圧・脂質異常・静脈瘤など、原因となる病気の管理を続けることが大切です。痛みには必要に応じて対応します。薬の種類や量は医師が決めるため、ここではお伝えしません。気になる薬があれば、医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
すべての方に手術が必要なわけではありません。静脈瘤や静脈の弁の異常が原因の場合は、手術が検討されることがあります。動脈の狭くなった部分への治療や、皮膚の移植が行われることもあります。状態に応じて、担当医とよく相談して決めていきます。
この病気と共に生きる
毎日、傷の大きさや色、におい、まわりの皮膚の変化を観察しましょう。記録や写真を残すと、変化がわかりやすくなります。長時間同じ姿勢を続けず、こまめに脚を動かし、脚を上げて休む時間をつくることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 長時間の立ちっぱなし・座りっぱなしを避け、30〜60分ごとに動く
- 無理のない範囲で散歩をする
- 禁煙する(血流を悪くする大きな要因です)
- 脚の皮膚を保湿し、日焼けやけがを防ぐ
- 靴ずれや小さな傷を放置しない
- 体重を適正に保つ
食事と運動
バランスの良い食事を心がけ、たんぱく質やビタミン、ミネラルをしっかりとりましょう。これらは傷の治りを助けます。塩分は控えめにします。心臓や腎臓の病気がある方は、水分の量について医師の指示に従ってください。運動は、痛みの出ない範囲で歩くのがおすすめです。動脈性の場合は痛みが出たら休みながら行い、主治医や理学療法士に相談してください。
精神的健康と心の健康
長引く傷は、不安やいらだち、外出を控えることによる孤立感につながることがあります。気分の落ち込みが続く、眠れない、好きなことを楽しめないといった状態が続くときは、ひとりで抱え込まず、医師や看護師、地域の相談窓口に話してみてください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、リスクを下げることはできます。脚のむくみをためない、皮膚を守る、糖尿病や血圧などをきちんと管理する、禁煙するといった日々の工夫が大切です。
検診プログラム
脚の潰瘍そのものを早期に見つける決まった検診はありません。糖尿病のある方は定期的に足の状態を確認してもらいましょう。静脈瘤やむくみを指摘されたことがある方は、早めに医療機関に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 傷が深くなり、治るまでに長い時間がかかる
- 細菌による感染が広がる(蜂窩織炎(ほうかしきえん)など)
- 痛みやにおい、渗出液(しんしゅつえき)によって日常生活が制限される
- まれに、治りにくい傷が別の皮膚の病気と見分けにくくなることがある
- 動脈性の場合は、血流がさらに悪くなって組織が壊死することがある
長期的な見通し
脚の潰瘍は、原因に合った適切なケアを続けることで、多くの場合少しずつ良くなっていきます。時間がかかることもありますが、あきらめずに医療者と一緒に取り組むことが大切です。再発を防ぐためのケアを続けることで、快適な日常を取り戻していくことができます。
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最終更新: 2026年10月24日
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