レッグ・カルベ・ペルテス病(子どもの股関節の病気)
概要
レッグ・カルベ・ペルテス病は、主に成長期の子どもに起こる股関節の病気です。太ももの骨(大腿骨)の先っぽにある丸い部分を「骨頭(こっとう)」といいますが、この骨頭にいく血液の流れが一時的に減ってしまい、骨が弱くなって形が変わりやすくなる状態を指します。骨が壊れてから、からだの力で少しずつ作り直されていく、という経過をたどります。英語の名前をとって「ペルテス病」と呼ばれることもあります。
重要な事実
- 股関節の骨の一部に血液が届きにくくなり、骨の形が変わりやすくなる病気です。大人の股関節の病気とは別のものです。
- 痛みや歩き方の変化が出ますが、子どもはうまく言葉で伝えられないことが多く、膝や太ももの痛みとして訴えることもあります。
- 多くのお子さんは、活動を調整しながら時間をかけて治っていきます。定期的に医師の診察を受けて経過を見ることが大切です。
比較的まれな病気です。小児科や整形外科でときどき見られる程度で、多くの子どもには起こりません。
主に4〜10歳くらいの子どもに多く、特に男の子に多く見られます(女の子より数倍多いとされています)。やせ型の子どもや、成長がややゆっくりめの子どもに多い傾向があるといわれています。大人には基本的に起こりません。
症状
- 股関節や脚の激しい痛みで、立つことも歩くこともできない
- 脚が急に動かせない、感覚がない、色が悪い
- 股関節の強い痛みに高熱を伴う(関節の感染症などの可能性があります)
- 転倒や事故の後から、股関節が痛くて体重をかけられない
- ⚠歩き方のおかしさ(足を引きずる)が数日以上続く
- ⚠夜眠れないほどの股関節や脚の痛みがある
- ⚠微熱が続く、または原因のわからない熱と股関節の痛みが同時にある
- ⚠痛みで学校や保育園の活動に参加できない状態が続く
一般的な症状
- 股関節(足のつけ根)や太もも、ときには膝のあたりの痛み
- 歩き方がおかしい、足を引きずる(跛行(はこう))
- 走ったり長く歩いたりした後に痛みが強くなり、休むと軽くなる
- 足を横に開く、内側にひねるなど、股関節の動きがかたくなる
- 痛みが続くと、だんだん足の動きが小さくなる
子供の症状
- 「足が痛い」と言わずに、急に歩きたがらない、遊びを嫌がる、抱っこを求めるなど、様子の変化として現れることがあります。
- 朝は調子がよいのに、夕方や運動の後に痛がる、といった波があることもあります。
- 膝の痛みとして訴えることがあります。股関節の病気でも膝に痛みが出ることがあるため、注意が必要です。
- 小さい子どもの場合、一時的に治まって見えても病気が続いていることがあるので、歩き方の変化が続くときは受診してください。
高齢者の症状
- この病気は成長期の子どもに起こるもので、大人になってから新たに発症することは基本的にありません。
- 大人の股関節の痛みや歩きにくさは、変形性股関節症など別の原因が考えられます。気になる場合は整形外科に相談してください。
- 子どもの頃にこの病気を経験した方は、大人になってから股関節の調子が悪くなることがあるため、定期的な確認が役立ちます。
原因
主な原因
- はっきりした原因はまだ完全にはわかっていません。
- 大腿骨の骨頭に届く血液の流れが、一時的に減ってしまうことが中心にあると考えられています。
- 血液の流れが減ると骨が弱くなり、体重のかかり方で骨の形が変わってしまいます。その後、からだの力で骨が作り直されていきます。
- けが(外傷)が直接の原因になることは多くないといわれています。
リスク要因
- 4〜10歳くらいの男の子
- 骨の成熟が実年齢よりややゆっくりしている(骨年齢が遅い)
- 身長が同学年の平均よりやや低め
- 家族に同じ病気の人がいる
- 受動喫煙(周りの人のたばこの煙)にさらされている
- 血液が固まりやすい体質の傾向がある
- やや体重が多い、または急に成長している時期
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に歩けなくなった、足をまったく地面につけられない
- 強い痛みが続き、夜も眠れない
- 発熱と股関節の痛みが同時にある
- 転倒や事故のあとから股関節が痛む
定期受診を予約すべき場合:
- 歩き方がおかしい状態が1〜2週間以上続いている
- 運動のあとに決まって股関節や膝が痛くなる
- 片足立ちや階段の上り下りがしにくそう
- 足を横に開きにくくなった、動作がぎこちない
- 以前この病気と診断され、定期通院の予定がある
診断
まずは診察で、いつから、どんなときに痛むのか、歩き方の変化などを聞きます。股関節の動きを確かめ、必要に応じてレントゲンやMRIなどの画像検査を行います。初期にはレントゲンで目立った変化が出ないこともあるため、経過を見ながら検査を繰り返すことがあります。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(痛みの出方、歩き方、股関節の動きの確認)
- 股関節のレントゲン検査
- MRI検査(骨の状態や血液の流れを詳しく見る)
- 血液検査(ほかの病気との区別のため)
- 必要に応じて骨シンチグラフィなど
診察で予想されること
診断がついたあとは、骨の形がどう変わっていくかを見るために、数か月ごとの定期通院と画像検査が続くことがあります。経過は人によって異なり、数月単位から数年単位で見守ることが多いです。心配なことは遠慮なく医師に聞いてください。
治療
治療の目標は、骨頭の形ができるだけ丸いまま保たれるようにして、将来の股関節の不調を減らすことです。多くは手術をせず、活動の調整と経過観察が中心になります。年齢や骨の状態によって方針が変わるため、主治医とよく相談しながら進めます。
自宅でのセルフケア
- 走る・跳ぶ・長時間歩くなど股関節に負担のかかる活動を、医師の指示に合わせて控える
- 必要に応じて松葉杖や装具を使い、股関節への体重のかかり方をやわらげる
- プールでの運動など、体重の負担が少ない動きで股関節の動きを保つ
- 痛みが強い日は無理をせず休む。痛みの程度を記録しておくと診察に役立つ
- 学校や園の先生に病気のことを伝え、体育や遊びの配慮をお願いする
- 定期的な受診を欠かさず、指示された検査を受ける
医療治療
治療は大きく分けて、股関節を安静に保つ方法と、動きを保ちながら骨の形を守る方法があります。医師の判断で、活動制限、松葉杖や装具の使用、牽引(けんいん:脚に軽い力をかけて股関節を休める方法)、理学療法などが組み合わされます。痛みが強いときは、医師の指示のもとで痛みをやわらげる薬が使われることがあります。薬の名前や量は医師・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
骨の形の崩れが大きい場合や、年齢がやや高いお子さんでは、骨の向きを整える手術(骨切り術)が検討されることがあります。手術が必要かどうかは、年齢、骨の状態、股関節の動きなどを総合して主治医が判断します。手術を勧められた場合は、目的や経過、日常生活への影響について納得いくまで話し合いましょう。
この病気と共に生きる
治療中は、走ったり跳んだりする遊びを控える場面があります。ただし、まったく動かないことがよいわけではなく、体重のかかりにくい動きで股関節を動かしておくことが大切です。学校や保育園と相談しながら、できる活動を見つけていくのがおすすめです。
生活習慣のアドバイス
- 体育や外遊びの内容を、担任の先生とあらかじめ相談しておく
- 長距離の移動や階段は、疲れないように休憩をはさむ
- 自転車やプールなど、股関節にやさしい運動を取り入れる
- 夜はしっかり睡眠をとり、生活リズムを整える
- 痛みや歩き方の変化を家族で共有し、記録しておく
- 周りの人のたばこの煙を避ける
食事と運動
特別な食事制限はありません。骨や筋肉のもとになるたんぱく質やカルシウムを、バランスのよい食事からとるようにしましょう。運動は、医師の指示の範囲で、泳ぎや水中歩行など体重の負担が少ないものが向いています。痛みが出たときは無理をせず、主治医に相談してください。
精神的健康と心の健康
子どものころに遊びを制限されることは、お子さん自身にとっても家族にとってもつらいものです。「みんなと同じように遊べない」と感じて、不機嫌になったり、落ち込んだりすることもあります。これは自然な気持ちです。無理に明るくふるまわせようとせず、気持ちを聞いてあげることが大切です。保護者の方自身が疲れや不安を抱えることもあります。つらい状態が続くときは、一人で抱え込まず、小児科やかかりつけ医、お住まいの自治体の相談窓口に相談してください。気持ちが追い詰められていると感じたら、地域の救急や医療機関に連絡してください。
予防
この病気のはっきりした原因がわかっていないため、確実に防ぐ方法はありません。ただし、歩き方の変化や股関節・膝の痛みに早く気づいて受診することで、悪化を減らせる可能性があります。日常的に子どもの歩き方や遊び方の変化に関心を持つことが役立ちます。
検診プログラム
この病気だけを対象にした集団検診は一般的ではありません。気になる症状があるときの受診が基本になります。
合併症
治療しない場合
- 骨頭の形が崩れたまま固まり、股関節の動きが制限される
- 脚の長さに差が出ることがある
- 大人になってから股関節の痛みや変形性股関節症が出やすくなる
- 歩き方のくせが残ることがある
長期的な見通し
多くのお子さんは、時間をかけて骨が作り直され、日常生活に大きな支障なく過ごせるようになります。経過や結果は年齢や骨の状態によって異なりますが、定期的な診察と適切な活動の調整で、将来の股関節の健康を守ることが期待できます。心配な点は早めに主治医に相談し、一緒に見通しを立てていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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