おなかの張り(腹部膨満感)をやわらげるために
概要
おなかの張り(腹部膨満感)は、おなかの中にガスがたまったり、腸の動きが乱れたりして、おなかがふくらんで苦しい、ウエストがきつく感じる、おなかがゴロゴロするといった状態です。英語では「Bloating(ブローティング)」と呼ばれます。多くは一時的なもので、食事のとり方や生活の工夫で楽になることがほとんどです。
重要な事実
- おなかの張りの多くは、命に関わるものではなく、食事や生活の工夫で数日から数週間のうちに楽になります。
- 原因はさまざまで、食べ方(早食い)、便秘、腸内細菌による発酵、ストレス、生理に伴うホルモンの変化などが関係します。
- 激しい痛み、血便、発熱、体重が減るなどがあるときは、我慢せずに早めに医療機関へ相談してください。
とてもよくある症状で、外来を受診する理由としても多いもののひとつです。多くの人は一生のうちに何度も経験します。
年齢を問わず、誰にでも起こります。便秘がちな人、早食いの人、炭酸飲料やガムをよくとる人、ストレスの多い人に多くみられます。女性では生理の前に張りを感じやすいことがあります。子どもは授乳や哺乳瓶で空気を飲み込みやすく、高齢者は腸の動きがゆっくりになるため、便秘から張りを感じやすくなります。
症状
- 激しい腹痛で動けない、痛みがどんどん強くなる
- おなかが板のように硬く、押すと強く痛む
- 血を吐いた、黒い便や血の混じった便が出た
- 息苦しさや胸の痛みをともなう
- 顔色が悪い、冷や汗がでる、意識がぼんやりする
- おなかが張って、便もおならもまったく出ない状態が続く
- ⚠数日便が出ないうえに、吐き気や嘔吐がある
- ⚠発熱をともなうおなかの張りや痛み
- ⚠体重が意図せず減っている
- ⚠症状が2週間以上続き、よくならない
- ⚠便が細い状態が続く、便に血が混じる
- ⚠夜中に痛みで目が覚める
一般的な症状
- おなかが張って、ふくらんだように感じる
- 服のウエストがきつく感じる、おなかを押すと張っている
- げっぷやおならが増える
- おなかがゴロゴロと鳴る
- 軽い腹痛や、にぶい痛み
- 便秘や下痢、便通のリズムの変化
- みぞおちのあたりの不快感、食欲がわかない
- 夕方から夜にかけて症状が強くなりやすい
子供の症状
- 泣き続ける、反り返る、機嫌が悪い
- おなかが張って硬く感じる
- げっぷやおならが多い
- 授乳やミルクのあとにすぐぐずる、飲みが悪い
- うんちの回数が減る、いきんでいるのに出ない
- 哺乳瓶やストローで空気を飲み込みやすい
高齢者の症状
- 便秘が長く続き、おなかの張りと一緒に感じる
- おなかの張りと食欲低下、食べられる量の減少
- 薬の影響で腸の動きがにぶくなることがある(飲んでいる薬は医師・薬剤師に伝えてください)
- 体重が減る、便が細くなった、血が混じるといった変化があるときは早めに受診する
- 水分不足や食事量の減少で便秘が悪化しやすい
原因
主な原因
- 飲み込んだ空気:早食い、ガム、あめ、炭酸飲料、ストローでの飲み物などで空気を多く飲み込む
- 腸内細菌による発酵:食物繊維や糖アルコール(甘味料)、乳糖などが腸で発酵してガスが増える
- 便秘:腸に便がたまると、ガスもたまりやすくなる
- 腸の動きの乱れ:過敏性腸症候群(けいれん性の腹痛や便通異常を繰り返す状態)などで腸が敏感になる
- 生理に伴うホルモンの変化:生理前に水分やガスがたまりやすくなることがある
- ストレス:緊張や不安が腸の動きに影響する
- 食べ物の不耐症:乳糖不耐症など、特定の食品をうまく消化できない体質
- 薬の副作用:飲んでいる薬が関係していることもあるため、自己判断で中止せず医師・薬剤師に相談する
リスク要因
- 早食い・早飲み、ながら食べ
- 炭酸飲料、ガム、あめ、ストロー飲料をよくとる
- 便秘がち、運動不足
- 強いストレス、睡眠不足
- 食物繊維を急にたくさん増やした
- 乳製品を多くとる(体質による)
- 一部の薬を服用している
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい腹痛、おなかが硬い、押すと痛む
- 血便・吐血・黒い便
- 発熱、繰り返す嘔吐、便もおならも出ない
- 体重が減っている、夜中に痛みで目が覚める
定期受診を予約すべき場合:
- おなかの張りを繰り返し、生活に支障がある
- 食事や生活の工夫をしても改善しない
- 市販薬を使ってもよくならない、何度も使うことになる
- どの食べ物で調子が悪くなるのか知りたい
- 便秘や下痢を交互に繰り返す
診断
まずは問診と診察が中心です。症状がいつから、どんなときに強くなるか、食事や便通の様子、体重の変化、飲んでいる薬などを聞き、おなかを触って張りや硬さを確かめます。多くの場合、この段階で原因の見当がつきます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(炎症や貧血などを確認)
- 便の検査(血が混じっていないかなど)
- 腹部のレントゲンや超音波検査(ガスや便のたまり具合を確認)
- 呼気テスト(乳糖不耐症など、消化しにくい食品がないかを調べる)
- 大腸カメラ(年齢や症状、血便などがある場合)
診察で予想されること
症状の経過によっては、まず生活の工夫を試しながら様子をみることがあります。検査が必要かどうかは、年齢や症状、家族歴などをふまえて医師が判断します。診察の前に、症状と食事・便通の記録をメモしておくと話がスムーズです。
治療
治療の中心は、原因に合わせて食事や生活を整えることです。便秘があればまずそれを改善し、食べ方や飲み方を見直します。それでもつらいときに、医師の判断で薬が使われることがあります。
自宅でのセルフケア
- よくかんで、ゆっくり食べる。食事の時間を落ち着いてとる
- 一度にたくさん食べず、少量ずつ数回に分ける
- 炭酸飲料、ガム、あめ、ストローでの飲み物を減らす
- 水分をこまめにとり、便秘をためない
- 食物繊維は急に増やさず、少しずつ増やす
- 散歩など軽い運動を毎日続ける
- おなかを温める、やさしく時計回りにマッサージする
- 食事と症状を記録して、自分のきっかけを見つける
- 睡眠と休息をしっかりとり、ストレスを減らす工夫をする
医療治療
医師はまず問診と診察で原因を整理し、便秘があればそれを整える方針をとります。症状に応じて、腸の動きを整える薬、ガスを減らす薬、便秘を改善する薬などが用いられることがあります。食物不耐症が疑われる場合は、その食品を避ける指導が行われます。薬は自己判断で市販薬を重ねず、かかりつけ医や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
通常、おなかの張りのために手術が必要になることはありません。まれに、腸閉塞(腸が詰まった状態)など別の病気が原因のときに手術が必要となることがあります。
この病気と共に生きる
症状が続くと、食事のたびに気になってしまうこともあります。まずは「どの食べ物・どんな場面で張りやすいか」を記録してみましょう。原因がわかると、工夫しやすくなり、気持ちも楽になります。
生活習慣のアドバイス
- 決まった時間に食事と排便のリズムをつくる
- 食べる前に深呼吸して、落ち着いてから食べ始める
- 食後すぐ横にならず、軽く歩く
- 腹巻きなどでおなかを冷やさない
- 適度な運動と十分な睡眠を心がける
- ストレスをためず、リラックスする時間をとる
食事と運動
暴飲暴食を避け、よくかんでゆっくり食べることが基本です。食物繊維や乳製品は体に良いものですが、急に増やすと張りを感じることがあるため、少しずつ試して自分の体に合う量を見つけましょう。ウォーキングなどの軽い運動は腸の動きを助け、ガスを出しやすくします。
精神的健康と心の健康
おなかの張りが続くと、「また今日も張るのでは」と不安になったり、外出を控えたくなったりすることがあります。ストレスや不安は腸の動きに影響するため、気持ちの面のケアも大切です。つらさが続くときは、かかりつけ医や地域の相談窓口に話してみてください。気持ちの落ち込みが強いときは、医療機関や地域のメンタルヘルス相談を利用してください。
予防
すべてを防ぐことは難しいですが、食べ方や生活のリズムを整えることで、張りを感じる頻度や強さを減らせる可能性があります。自分に合った工夫を続けることが大切です。
ワクチン
おなかの張りそのものを防ぐワクチンはありません。
検診プログラム
おなかの張りのための決まった健診はありませんが、日本では年齢に応じて大腸がん検診(便潜血検査)が推奨されています。自治体の案内を確認し、節目の年に受けるようにしましょう。
合併症
治療しない場合
- 便秘が悪化し、張りや痛みが強くなることがある
- 痔(いぼ痔・きれ痔)を繰り返すことがある
- 食欲が落ち、食事が楽しめなくなる
- 眠りが浅くなる、日中の集中力が落ちる
- 外出や人付き合いを控えてしまうことがある
- まれに、腸閉塞など別の病気が隠れていることがある
長期的な見通し
おなかの張りのほとんどは、食事や生活の工夫でゆっくり改善していきます。すぐに全部を変える必要はありません。できそうなことから一つずつ試し、気になる症状があれば早めに相談することが、安心につながります。
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最終更新: 2026年10月24日
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