性欲(リビドー)が気になるとき — からだとこころの理解ガイド
概要
性欲(リビドー)は「性的なことに関心を持ったり、性的な交流を求めたくなる気持ち」のことです。人によって強さも波もまったく違い、多い少ないがそのまま病気というわけではありません。性欲は、体の具合、睡眠や疲れ、こころの状態、パートナーとの関係、服んでいる薬、年齢など、いろいろなものの影響を受けて上がったり下がったりします。「昔より減ったな」と感じたときは、何が影響しているかを一緒に整理していくことが大切です。
重要な事実
- 性欲の感じ方には個人差がとても大きく、他人と比べて「普通かどうか」を決めることはできません。
- 性欲が下がる理由はひとつではなく、体・こころ・生活・人間関係が重なり合っていることが多いです。
- 多くの場合、原因に合わせた工夫や相談で改善の道があります。ひとりで抱え込まなくて大丈夫です。
はい、とてもよくある悩みです。「性欲が減った」「パートナーと気持ちがかみ合わない」と感じる人は少なくありません。ただ、人に話しにくい話題のため、実際より少なく見えているだけです。医療機関で相談される方も多くいます。
年齢や性別を問わず、誰にでも起こりえます。疲れやストレスが強い時期、女性では出産後や更年期、男性では加齢に伴う体の変化、また糖尿病や心の病気のある方、薬を服んでいる方などで経験されやすいことが知られています。未婚・既婚、パートナーの有無にかかわらず起こります。
症状
- 性欲の低下そのものが命にかかわる緊急事態になることはほとんどありません。ただし次のようなときは、すぐに119番(救急)に連絡してください。
- 胸の強い痛み、息苦しさ、冷汗、意識がぼんやりするなど、体の緊急サインがあるとき
- 自分を傷つけたい気持ちや、死にたい気持ちが強いとき(周りの人に助けを求めてください)
- 性的な暴力や被害を受けた、またはその危険が今あるとき
- ⚠ここ数日〜数週間で、性欲が急に完全になくなった、または気力・食欲・睡眠が大きく崩れた
- ⚠気分の落ち込みや不安が強く、日常生活に支障が出ている
- ⚠月経が長く止まっている、体重が急に減った、動悸や汗が続くなど、ホルモンや甲状腺の変化が疑われる症状がある
- ⚠性器の強い痛み、はれ、出血、けががある
一般的な症状
- 以前に比べて、性的なことへの関心や興味が減った
- 性的な場面を想像しても、ときめきやわくわくを感じにくい
- パートナーとの性的な交流をしたいと思わない、または避けてしまう
- 性欲はあるのに、体が反応しにくい・痛みがあるなどでうまくいかない
- 性欲の低下を気にしている本人が、そのことで悩んだり落ち込んだりしている
- 疲れやすさ、眠気、気分の落ち込みなど、ほかの不調をともなうことがある
子供の症状
- 子どもは大人のような性欲はまだなく、この話題が直接あてはまることは多くありません。
- 思春期に入ると関心の持ち方や体の変化には大きな個人差があり、早い遅いはその子なりのペースです。
- 思春期以降で極端に元気がない、食欲がない、学校に行きづらいなどがあれば、性欲の話とは別に、こころと体の健康について大人が相談してみてください。
高齢者の症状
- 年齢とともに性欲や体の反応がゆるやかに変化するのは自然なことです。
- ただし「年をとったから性欲がなくなる」と決めつける必要はなく、年齢を重ねても親密さを楽しむ方は多くいます。
- 持病の悪化、服んでいる薬の影響、睡眠の質の低下、痛みや疲れが背景にあることも多いため、遠慮なく医療機関で相談できます。
原因
主な原因
- ストレスや疲労、睡眠不足など、体とこころの消耗
- うつ病や不安症など、こころの状態の変化(病気そのものと、治療で使う薬の両方が影響することがあります)
- ホルモンの変化:女性の更年期・産後・授乳中、男性の加齢に伴う変化など
- 糖尿病、甲状腺の病気、心臓や血管の病気、貧血などの体の病気
- 服んでいる薬の影響(血圧の薬、こころの薬、ホルモンに関わる薬など)。ただし自己判断で中止せず、必ず医師・薬剤師に相談してください
- 飲酒、喫煙、運動不足、夜更かしなどの生活習慣
- パートナーとの関係のすれ違い、コミュニケーション不足、過去のつらい経験
- 痛み、体の不調、育児や介護による心身の負担
- 年齢による自然な変化
リスク要因
- 強いストレスが続いている、忙しさで休めていない
- 睡眠が足りない、生活リズムが乱れている
- 糖尿病・高血圧・脂質異常症・甲状腺の病気などの持病がある
- こころの病気の治療中、または複数の薬を服んでいる
- 飲酒量が多い、喫煙している
- 運動する習慣が少ない
- パートナーとの会話や信頼関係が減っている、関係に悩みがある
- 出産後・更年期・加齢など、体の変化が大きい時期にある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に性欲がまったくなくなったうえに、気分の落ち込み・食欲低下・不眠が強い
- 自分を傷つけたい気持ちがある、または生活が立ち行かないほどつらい
- 胸痛・息苦しさ・動悸・冷汗など体の緊急サインがある(119番)
- 性器の強い痛み、はれ、出血、けががある
定期受診を予約すべき場合:
- 性欲の低下が数か月以上続き、自分やパートナーが困っている
- 性欲のことで悩み、気分が沈んだり自信を失ったりしている
- パートナーとの関係ですれ違いが続き、話し合いの助けがほしい
- 持病や服んでいる薬が関係しているかもしれないと感じる
- 月経の変化、体重の変化、疲れやすさなど、ほかの不調も気になっている
- 妊娠を考えている、または避妊や性の健康について相談したい
診断
診察では、まず話を聞くことが中心になります。いつごろから、どんなふうに変化したか、生活や睡眠、ストレス、パートナーとの関係、持病、服んでいる薬やサプリメント、飲酒や喫煙などをていねいに確認します。そのうえで、必要に応じて体の検査を行い、ほかに原因となる病気がないかを調べます。「性欲がないこと」を責めるような診察ではありません。あなたの困りごとを一緒に整理する場だと考えてください。
行われる可能性のある検査
- 問診(生活習慣・こころの状態・関係性・服薬についての聞き取り)
- 血圧・体重・脈などの基本的な身体測定
- 血液検査(貧血、血糖、脂質、甲状腺の働き、ホルモンの状態など)
- 必要に応じて、こころの状態を確認する質問票
- 症状に応じて、婦人科・泌尿器科など専門の診察
診察で予想されること
診察は個人のペースで進みます。話しにくいことがあれば「この話は避けたい」と伝えてかまいません。パートナーと一緒に受診することも、ひとりで受診することもできます。検査の結果が出るまでに数日かかることもあります。結果をもとに、生活の工夫・病気の治療・薬の見直し・カウンセリングなど、いくつかの選択肢を相談して決めていきます。
治療
性欲の低下は、原因によって対応のしかたが変わります。治療の目的は「性欲を無理に上げること」ではなく、あなたが自分らしく心地よく過ごせるようにすることです。体の病気があればその治療を、こころの不調があればそのケアを、関係性の悩みがあれば話し合いの支援を、というように、重なっている要因を一つずつ整えていきます。
自宅でのセルフケア
- 睡眠をしっかりとり、毎日のリズムをできるだけ整える
- 疲れをためこまないように、休む時間を意識して作る
- 飲酒を控えめにし、禁煙を考える
- 軽い運動や散歩など、体を動かす時間を週に数回つくる
- パートナーがいる場合は、性行為の話だけでなく、気持ちや日常のことをゆっくり話す時間をつくる
- 自分を責めず、性欲の波を「体からのサイン」として受け止める
- 服んでいる薬やサプリメントを自己判断でやめず、気になる場合は医師・薬剤師に相談する
医療治療
治療は原因に合わせて組み立てます。背景にある病気(例:貧血、甲状腺の病気、糖尿病など)があればその治療を行います。服んでいる薬が影響している可能性があれば、医師が効果と副作用のバランスを見ながら調整を検討します。こころの不調には、カウンセリングや心のケアが役立つことがあります。ホルモンの状態に応じた対応が検討される場合もありますが、内容は検査結果と体調をもとに医師と相談して決めます。パートナーとの関係については、二人で話すための支援やカップル向けの相談が利用できます。具体的な薬の名前や量は、症状と体の状態を診た医師が判断するものです。
手術が検討される場合
性欲の低下そのものに対して手術が必要になることは通常ありません。ごくまれに、痛みや器質的な原因が強く関わっている場合に、専門医が検査のうえで治療の選択肢を検討することがあります。
この病気と共に生きる
性欲は一定ではなく、調子の波とともに動くものです。「今日はそういう気分ではない」と感じた日は、無理をせず、そっとしておいてよい日です。パートナーがいる場合は、「あなたが嫌いになったわけではない」と気持ちを言葉で伝えるだけでも、すれ違いが減ることがあります。予定を決めすぎず、触れ合いや会話など、性的なこと以外の親密さを大切にしてみてください。
生活習慣のアドバイス
- 就寝・起床の時間をできるだけ一定にする
- 仕事や家事の合間に、短くても休憩をとる
- スマートフォンや画面の時間を減らし、眠る前は静かに過ごす
- 飲酒は量と頻度を控えめに、喫煙は減らす・やめることを検討する
- 体を動かす習慣を、無理のない範囲で続ける
- ひとりで抱えず、信頼できる人や医療者に話す
食事と運動
食事は、野菜・たんぱく質・主食をバランスよくとり、極端な食事制限を避けることが基本です。鉄やたんぱく質が不足すると疲れやすさにつながることがあるため、偏りが気になるときは管理栄養士やかかりつけ医に相談してみてください。運動は、息が少し上がる程度のウォーキングや軽い筋トレを週に数回行うだけでも、気分の安定や体力づくりに役立ちます。激しすぎる必要はありません。続けられることを優先しましょう。
精神的健康と心の健康
性欲の低下は、自信をなくしたり、パートナーとの関係に不安を感じたり、自分を責めてしまったりと、こころに大きく響くことがあります。それはあなたが弱いからではなく、とても繊細な問題だからです。気分の落ち込みが続く、眠れない、何も楽しめないといった状態があるときは、早めに医療機関や相談窓口に連絡してください。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいてきたときは、ためらわずに救急(119番)や、お住まいの地域の相談窓口、信頼できる人に助けを求めてください。ひとりで抱えなくて大丈夫です。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、生活習慣を整え、こころと体の疲れをためないようにし、持病をきちんと管理することで、性欲の低下をやわらげたり、早めに気づいたりできる可能性があります。また、パートナーとの日ごろの会話や、自分の気持ちを言葉にする習慣も、関係性の面での予防につながります。
検診プログラム
健康診断を定期的に受けることは、性欲に関わる体の変化(血糖・血中脂質・血圧・貧血・甲状腺など)を早く見つける助けになります。自治体の健診や職場の健診を活用し、結果で気になる点があれば医療機関で相談してください。こころの状態が気になるときも、健診の場で伝えてかまいません。
合併症
治療しない場合
- パートナーとのすれ違いや、関係への不安が大きくなることがある
- 自信を失う、自分を責める気持ちが続く
- 気分の落ち込みや不安が強くなり、日常生活に影響することがある
- 背景にある病気(貧血、甲状腺の病気、糖尿病など)に気づくのが遅れることがある
- 性に関する悩みをひとりで抱え、孤立感が強まることがある
長期的な見通し
性欲の変化はとても多く、そして改善の可能性があるものです。原因が生活習慣やこころの疲れであれば、休み方や環境を整えることで少しずつ戻ってくることがあります。体の病気や薬が関係している場合も、適切な対応で状態が変わることは少なくありません。大切なのは、あせらず、自分を責めず、必要なときに助けを求めることです。あなたのペースで、できるところから始めていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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