リプシュッツ潰瘍(外陰部の急性潰瘍)
概要
リプシュッツ潰瘍は、主に若い女性の外陰部(女性器の外側の部分)に、突然できて痛みを伴う「潰瘍(皮膚がえぐれたようにただれること)」ができる病気です。ウイルスや細菌への感染に対する体の免疫反応が関係していると考えられていますが、性感染症(性行為でうつる病気)ではありません。多くの場合は数週間で自然に治ります。
重要な事実
- 主に10代から20代の女性に多くみられますが、子どもや閉経後の女性に起こることもあります。
- 外陰部の痛み、発熱、喉の痛みなどが組み合わさって現れることがあります。
- 性行為でうつる病気ではなく、衛生状態の悪さが原因でもありません。多くの場合、1〜3週間ほどで自然に治ります。
まれな病気です。外陰部の潰瘍(ただれ)としては比較的知られていますが、日常的に多く見られるものではありません。
主に思春期から20代の女性に起こります。小児や閉経後の女性にみられることもありますが、その場合はほかの原因がないかを丁寧に調べる必要があります。
症状
- 意識がもうろうとしている、けいれんしている
- 息が苦しい、唇や顔が腫れている(アレルギー反応の可能性)
- 出血が止まらない、大量に出血している
- 高熱に加えて血圧が下がったようなぐったりした状態(ショックの可能性)
- ⚠痛みが強くて尿が出せない、お腹に尿がたまっている感じがする
- ⚠38.5度以上の高熱が続く
- ⚠潰瘍が急に大きくなる、赤みや腫れが広がる
- ⚠膿(うみ)や悪臭が出てきた
- ⚠痛みで眠れない、水分もとれない
一般的な症状
- 外陰部(小陰唇など)に、境界がはっきりした痛みの強い潰瘍が1つまたは複数できる
- 歩く、座る、下着が触れるだけで痛む
- 排尿時にしみる、痛い
- 発熱(多くは38度前後)
- 喉の痛み、リンパ節の腫れ、だるさなど、かぜに似た症状
- おりものの増加や、外陰部の腫れ・赤み
子供の症状
- 外陰部の痛みをうまく言葉で伝えられず、不機嫌になったり泣いたりすることがある
- 排尿をこわがって我慢し、トイレを嫌がることがある
- 発熱やだるさで元気がない、食欲が落ちることがある
高齢者の症状
- 閉経後の女性ではまれですが、潰瘍がみられた場合はほかの病気との区別が大切です
- 痛みや違和感を「年のせい」と思わず、早めに受診することが大切です
- 糖尿病などの持病がある方は、治りが遅くなることがあります
原因
主な原因
- はっきりした原因はまだ完全には分かっていません
- 初感染のEBウイルス(伝染性単核症の原因になるウイルス)や、マイコプラズマなどの感染に対する免疫反応が関係すると考えられています
- 発熱や喉の痛みのあとに続いて起こることがあります
- 性行為でうつる感染症や、衛生状態の悪さが原因ではありません
リスク要因
- 10代から20代の女性であること
- 最近、発熱や喉の痛み、リンパ節の腫れがあった
- 疲労やストレスで体の免疫のバランスが崩れている
- ほかの自己免疫の病気や皮膚の病気を持っている(関連が指摘されることがあります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿が出せない、排尿がとてもつらい
- 高熱が続く、全身のぐったり感が強い
- 潰瘍が急に大きくなる、赤みや腫れが広がる、膿が出る
- 出血が続く
定期受診を予約すべき場合:
- 外陰部に痛みのあるただれができた(特に初めての場合)
- 1〜2週間たってもよくならない
- 同じような潰瘍をくり返す
- 発熱や喉の痛みなど、かぜのような症状が一緒にある
- 性感染症の可能性も含めて検査を受けたい
診断
まず問診と診察で、症状の経過や潰瘍の様子を確認します。見た目だけではほかの病気と区別しにくいため、性感染症や皮膚の病気がないかを調べる検査を組み合わせることが一般的です。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状の始まり、発熱や喉の痛みの有無、性行為の有無など)
- 外陰部の診察(潰瘍の数、大きさ、形を確認)
- 潰瘍やおりもののぬぐい液検査(ヘルペス、梅毒、クラミジア、淋菌などの除外)
- 血液検査(EBウイルスなどの感染の有無、炎症の程度)
- 必要に応じて組織の一部を採って調べる検査(症状が典型的でない場合や繰り返す場合)
診察で予想されること
診察はプライバシーに配慮して行われます。痛みが強いときは、体位の工夫や麻酔の配慮をしてもらえることもあります。検査結果が出るまで数日かかることがあり、その間は痛みをやわらげるケアをしながら過ごします。
治療
リプシュッツ潰瘍は多くが自然に治るため、治療の中心は痛みをやわらげ、排尿や日常生活を楽にすることです。同時に、ほかの感染症や病気がないかを確認し、必要に応じて治療します。
自宅でのセルフケア
- 痛みが強いときは、市販の痛み止めを使えるか薬剤師や医師に相談する
- ぬるま湯でやさしく洗い、石けんの使いすぎやこすりすぎを避ける
- 通気性の良い綿素材の下着を選び、きつい衣服を避ける
- 排尿時にしみるときは、ぬるま湯をかけながら排尿すると和らぐことがある
- 水分を十分にとり、尿を我慢しない
- 安静を心がけ、治るまでは性行為を避ける
- タオルや下着は清潔に保ち、必要なら家族と分ける
医療治療
医療機関では、症状に応じて痛みをやわらげる治療や、炎症をしずめる外用薬などが使われることがあります。感染症が見つかった場合は、その原因に応じた治療が行われます。症状や状態によって対応が変わるため、自己判断で薬を選ばず、医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
通常は手術は必要ありません。まれに、非常に大きな潰瘍や治りが悪い場合に、専門医による評価や処置が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
痛みがある間は、長時間の座位や激しい運動を避け、楽な姿勢で過ごしましょう。学校や仕事を休む必要があるほどつらい場合は、無理をせず休み、医療機関に相談してください。症状の経過をメモしておくと、受診のときに役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- バランスの良い食事と水分補給を心がける
- ストレスをためず、リラックスする時間をつくる
- 下着は通気性の良い素材を選び、毎日取り替える
- 治るまでは性行為を避け、パートナーにも状況を伝える
食事と運動
特別な食事制限はありません。バランスの良い食事と十分な水分をとり、体調が良い日は無理のない範囲で軽い散歩などをすると、気分転換や回復の助けになります。痛みが強い日は安静を優先しましょう。
精神的健康と心の健康
外陰部の症状は、恥ずかしさや不安、性感染症と誤解されることへのつらさを感じやすいものです。これは特別なことではなく、誰にでも起こる感情です。ひとりで抱え込まず、信頼できる人や医療者に話してください。気持ちがつらい状態が続くときは、医療機関やお住まいの自治体の相談窓口に相談しましょう。緊急のつらさがあるときは、迷わず119番や救急の窓口を利用してください。
予防
はっきりした予防法は確立していません。ただし、体調を整えて免疫のバランスを保つこと、気になる症状があれば早めに受診することが大切です。性感染症ではないため、衛生面を過度に心配する必要はありません。
検診プログラム
この病気のための決まったスクリーニング検査はありません。外陰部のただれや痛みが続く場合は、自己判断せず医療機関で相談してください。
合併症
治療しない場合
- 多くの場合は自然に治りますが、治るまでに1〜3週間ほどかかることがあります
- まれに潰瘍の跡が瘢痕(きずあと)として残ることがあります
- 痛みのため排尿できなくなる(尿閉)ことがあります
- 細菌の二次感染を起こすことがあります
- 一部の人では再発することがあります
長期的な見通し
リプシュッツ潰瘍は多くが数週間で自然に治る、予後の良い病気です。再発することもありますが、その場合も適切なケアで回復が期待できます。不安なときは早めに医療機関に相談し、ひとりで抱え込まないようにしましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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