リステリア症(リステリア感染症)
概要
リステリア症は、「リステリア」という細菌が食べ物を通して体の中に入り、感染を起こす病気です。多くの健康な人は、軽いかぜのような症状やおなかの不調で済みます。ただし、妊娠中の方、生まれたばかりの赤ちゃん、高齢の方、体の免疫(細菌やウイルスから体を守る力)が弱っている方では、菌が血液や脳にまで広がって重症になることがあります。
重要な事実
- 主な原因は食品です。加熱が十分でない肉、殺菌していない乳製品、スモークサーモンなどの生に近い魚、よく洗っていない生野菜などから感染することがあります。
- リステリア菌は冷蔵庫の中でもゆっくり増えることがあるため、「冷やしておけば安心」とは限りません。
- 症状が出るまでの期間が長く、食べてから数日から数週間(場合によってはそれ以上)たってから具合が悪くなることもあります。
- 健康な人は軽く済むことが多い一方、妊娠中・高齢・免疫が弱い方は重症化しやすいという特徴があります。
日本では報告される患者数は多くなく、まれな感染症と考えられています。ただ、軽いおなかの不調だけで終わった場合は検査をしないことも多いため、実際にはもう少し多く起きているのではないかと言われています。
誰でもかかる可能性はありますが、特に注意が必要なのは、妊娠中の方、生まれたばかりの赤ちゃん、65歳以上の高齢者、がんの治療中や免疫を抑える薬を使っている方、臓器移植を受けた方、肝臓や腎臓に持病がある方、糖尿病のある方などです。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が弱い
- けいれん(ひきつけ)が起きた
- 首が硬く、あごを胸につけられない
- 激しい頭痛、何度も吐く、光が異常にまぶしい
- 呼吸が苦しい、唇や顔色が青白い
- 生まれたばかりの赤ちゃんがぐったりして、哺乳(母乳やミルクを飲むこと)ができない
- ⚠妊娠中に発熱がある、または赤ちゃんの動きがいつもと違うと感じる
- ⚠38度以上の熱と筋肉痛が続く
- ⚠強い頭痛や吐き気が続き、普段どおりに過ごせない
- ⚠高齢の方で、急に元気がなくなり、意識がぼんやりしている
- ⚠免疫を抑える治療を受けている方で発熱がある
一般的な症状
- 筋肉の痛み(インフルエンザのようなだるさ)
- 吐き気や嘔吐
子供の症状
- 子どもでは、発熱やおなかの不調など軽い症状で済むことが多いです。
- 生まれたばかりの赤ちゃんは特に注意が必要で、発熱、ぐったりして元気がない、母乳やミルクを飲まない、泣き方が弱い、けいれんなどの様子が見られることがあります。
- 赤ちゃんにこれらの様子があれば、すぐに医療機関に連絡してください。
高齢者の症状
- 高齢の方では、発熱に加えて、意識がぼんやりする、会話がかみ合わないといった変化が出ることがあります。
- 首が硬くて前に曲げにくい、光がまぶしい、激しい頭痛などは、脳やその周りに感染が広がったサインのことがあります。
- ふらつき、歩きにくさ、けいれんなども見られることがあります。
- 高齢の方の「なんだかいつもと違う」という変化は、軽く考えずに早めに相談してください。
原因
主な原因
- リステリア菌が付いた食べ物を食べることで感染します。人から人へうつることは通常ありません(妊婦から胎児へは移ることがあります)。
- 加熱が十分でない肉や鶏肉、生の肉を使った料理
- 殺菌していない牛乳や、それを使った生乳チーズなどの乳製品
- スモークサーモンや生の魚介類、パテやレバーのペーストなどの加工食品
- よく洗っていない生野菜や、カット野菜、生の果物
- 菌は冷蔵庫の中でも少しずつ増えるため、長く保存した食品にも注意が必要です。
リスク要因
- 妊娠中(免疫の働きが変化し、赤ちゃんへの影響も心配されるため)
- 65歳以上の高齢
- がんの治療中、ステロイドなどの免疫を抑える薬を使っている、臓器移植を受けた
- HIV感染などで免疫が弱っている
- 肝臓病、腎臓病、糖尿病などの持病がある
- 生まれたばかりの赤ちゃん(お母さんから感染することがあります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 妊娠中に発熱や体のだるさがあるとき(早めの受診が大切です)
- 高熱と筋肉痛が続き、日を追って悪くなっている
- 激しい頭痛、首の硬さ、吐き気が続く
- 高齢の方や免疫が弱い方で、急な発熱や意識の変化がある
- 赤ちゃんが元気なく、母乳やミルクを飲まない
定期受診を予約すべき場合:
- 軽い下痢やおなかの不調が数日続く
- 発熱はないが、だるさや食欲の低下が続く
- 妊娠中でなくても、生もの(生乳製品・生魚・加熱不十分な肉)を食べた後に体調がすぐれない
- リステリア症が心配で、どうしたらよいか相談したい
診断
医師はまず、症状の経過と、最近食べたもの(生ものや加熱が不十分な食品、乳製品など)について聞き取ります。そのうえで、必要に応じて血液や髄液(脳と脊髄を囲む液体)を調べて、菌がいるかどうかを確かめます。症状だけでは他の感染症と見分けがつきにくいため、検査が役立ちます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(菌を調べる培養検査や、体の炎症の程度を見る検査)
- 髄液検査(腰椎穿刺:腰から細い針で液体を採る検査。頭痛や首の硬さがあるときに行われることがあります)
- 便の検査(胃腸炎症状が中心のとき)
- 妊娠中の方では、必要に応じて血液検査や、胎盤・羊水などの検査
- 医師の判断で、腹部超音波やCT・MRIなどの画像検査
診察で予想されること
診察では、症状と食事の履歴をくわしく聞かれます。検査結果が出るまでに数日かかることがあります。髄液検査は入院して行うことが多く、検査の前に説明と同意がされます。結果を待つ間は不安なこともありますが、医師や看護師に疑問をその場で聞いてかまいません。
治療
リステリア症は、症状の重さや体の状態によって対応が変わります。軽い胃腸症状だけの場合は、水分と休息をとりながら様子を見ることもあります。一方、妊娠中の方、高齢の方、免疫が弱い方、熱が高い方や意識の変化がある方は、入院して治療を受けることがあります。治療の内容は医師が一人ひとりの状態に合わせて決めます。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとる(少量ずつ何度も飲むのがコツです)
- 十分に休息をとる
- 体温や症状の変化をメモしておき、受診時に伝えられるようにする
- 食べられそうなものを無理のない範囲でとる
- 症状が良くなっても、医師に指示された通院や経過観察は続ける
- 妊娠中の方は、自己判断で市販薬を使わず、必ず医療者に相談する
医療治療
リステリア症が疑われる場合や重症の場合は、細菌をやっつけるための抗菌薬(細菌を退治する薬)による治療が行われます。治療は飲み薬のこともあれば、入院して点滴で行うこともあります。どの薬をどのくらい使うかは、症状の重さ、年齢、妊娠の有無、持病、アレルギーの有無などを考慮して医師が決めます。妊婦さんの場合は、お母さんと赤ちゃんの両方を守ることを考えて治療方針が立てられます。治療の内容について疑問があれば、必ず担当の医師や薬剤師に確認してください。
この病気と共に生きる
治療中や回復期は、無理をせず体を休めることが一番です。熱が下がってもしばらくだるさが続くことがあるので、仕事や家事は体调に合わせて少しずつ戻していきましょう。妊娠中の方は、赤ちゃんの動きを意識して確認し、少しでも気になることがあれば医療機関に連絡してください。
生活習慣のアドバイス
- 手洗いを丁寧に行う(調理の前後、食事の前、トイレの後)
- 肉や魚を調理するときは、まな板や包丁を生野菜用と分ける
- 食品は中心までしっかり加熱する
- 冷蔵庫の温度管理を意識し、残り物は早めに食べる
- 妊娠中や免疫が弱い時期は、生ものや加熱不十分な食品を避ける
- 外食時は、生ものや加熱の有無を店の人に確認すると安心です
食事と運動
回復期は、消化にやさしい温かい食事を少しずつとるとよいでしょう。激しい運動は体調が戻ってからにし、散歩など軽い活動から始めます。妊娠中の方は、運動や食事の内容について主治医に相談しながら進めてください。
精神的健康と心の健康
「自分や赤ちゃんに何かあったらどうしよう」と強い不安を感じるのは自然なことです。インターネットの情報を見すぎて余計に心配になることもあります。不安が強いとき、眠れないとき、気持ちが落ち込んでつらいときは、一人で抱え込まず、かかりつけ医、助産師、保健師、地域の保健センターなどに話してください。気持ちが追い詰められていると感じたら、ためらわずに医療機関や相談窓口につながることが大切です。
予防
完全に防ぐことは難しいですが、食べ物の扱い方に気をつけることでリスクを大きく下げられます。厚生労働省も、妊娠中の方や免疫が弱い方に対して、生ものや加熱不十分な食品を避けるよう注意を呼びかけています。
ワクチン
リステリア症を防ぐワクチンは、現在ありません。日々の食品の扱いが中心の予防法となります。
検診プログラム
妊娠中の方全員にリステリア症の検査を routinely 行うことは、日本では一般的ではありません。症状があるときや、感染が疑われる状況があったときに検査が行われます。
合併症
治療しない場合
- 菌が血液に入り、全身に広がる(敗血症)
- 脳や脊髄の周りに感染が広がる(髄膜炎)。強い頭痛や発熱、意識の変化が起こります
- 妊娠中の方は、流産や死産、赤ちゃんへの感染につながることがあります
- 生まれたばかりの赤ちゃんでは、重症の感染を起こすことがあります
- 回復後も、神経の症状などが残ることがあります(頻度は多くありません)
長期的な見通し
リステリア症は、早く気づいて適切な治療を始めれば、多くは回復が期待できます。健康な方では自然に治ることもあります。妊娠中の方も、早めに受診して治療を受けることで、赤ちゃんへの影響を減らせると言われています。「心配しすぎかな」と思っても、少しでも気になるときは早めに相談することが、何よりの近道です。
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最終更新: 2026年10月24日
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