肝臓がん(肝細胞がん)
概要
肝臓はおなかの右上にある、とても働き者の臓器です。食べたものから栄養をためたり、体に入ってきた有害なものを無害に変えたり、胆汁(たんじゅう)という消化液をつくったりしています。肝臓がんは、この肝臓にできるがんの総称です。日本で多いのは、肝臓の細胞そのものから発生する「肝細胞(かんさいぼう)がん」です。ほかの臓器のがんが肝臓に移ってできる「転移性肝がん」というものもありますが、ここでは肝臓から発生するがんを中心に説明します。
重要な事実
- 日本では肝細胞がんが大部分を占め、B型・C型肝炎ウイルスや肝硬変との関係が深いとされています。
- 初期には自覚症状がほとんどなく、検査で偶然見つかることが多いがんです。
- 早期に見つかれば、手術や局所的な治療で治せる可能性があり、治療の選択肢も増えています。
日本でも決してまれな病気ではなく、がんで亡くなる原因の上位に入ることがあります。一方で、肝炎ウイルスの治療が広がったことで、患者数は減少傾向にあるといわれています。
中高年の男性に多いがんですが、女性や若い世代にも起こります。慢性肝炎や肝硬変と診断されている人、B型・C型肝炎ウイルスに感染したことがある人、長年の飲酒や脂肪肝のある人が含まれます。
症状
- 大量の吐血、またはコーヒー色の吐物がある
- 黒くてドロッとした便(下血)が続く
- 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が鈍い、ひどい眠気が続く
- 突然の激しい腹痛
- 呼吸が苦しい、息切れが強い
- ⚠皮膚や白目が急に黄色くなった
- ⚠おなかが急に張って苦しい
- ⚠38℃以上の発熱が続く
- ⚠足のむくみが急に強くなった
- ⚠食事がとれないほどの吐き気や嘔吐がある
一般的な症状
- 初期はほとんど無症状で、健康診断や通院中の検査で見つかることが多い
- 疲れやすい、だるさが続く
- 食欲がなくなる、食事量が減る
- 体重が少しずつ減る
- 右上腹部(みぞおちの右あたり)の痛みや張り、違和感
- 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸・おうだん)
- おなかが張る(おなかに水がたまる腹水・ふくすい)
- 足のむくみ
- 理由のわからない発熱
- 皮膚のかゆみ
子供の症状
- 小児では肝細胞がんよりも「肝芽腫(かんがしゅ)」というタイプが多くみられます
- おなかがふくらむ、しこりに気づく
- 体重が増えない、食欲が落ちる
- 機嫌が悪い、元気がない
- 小児では治療の組み立てが大人と異なるため、小児がんを扱う専門チームが担当します
高齢者の症状
- 症状が出にくく、もともとの肝臓病(肝硬変など)の症状と区別しにくいことがあります
- だるさや食欲低下を「年齢のせい」と思い込んでしまいやすい
- 体力や持病、生活の状況を考えた治療の選び方が大切になります
- 飲んでいる薬が多い場合は、治療を始める前に主治医と薬の整理をしておくと安心です
原因
主な原因
- B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルスの持続的な感染(日本で多い原因とされています)
- 肝硬変(肝臓が硬くなり、働きが落ちた状態)
- 長年にわたる多量の飲酒
- 脂肪肝のうち、炎症や細胞の変化を伴うもの
- まれに、カビのつくる毒素(アフラトキシン)を含む食品(日本ではまれです)
リスク要因
- B型・C型肝炎ウイルスに感染したことがある、または現在も感染している
- 慢性肝炎や肝硬変と診断されている
- 習慣的に多量の飲酒をしている
- 肥満、糖尿病、脂質異常症がある(脂肪肝と関連します)
- 喫煙の習慣がある
- 家族に肝臓がんの人がいる
- 50歳以上である、男性である
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 吐血や黒い便がある(この場合は救急要請を)
- 皮膚や白目が急に黄色くなった
- おなかが急に張って息苦しい
- 強い腹痛が続く
- 意識がぼんやりする、ひどい眠気がある
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断で肝機能の数値が悪いと言われた
- 肝炎ウイルス検査を一度も受けたことがない
- 肝炎や肝硬変で通院しているが、しばらく画像検査を受けていない
- だるさや食欲低下が数週間以上続いている
- 右上腹部に違和感や張りがある
- 体重が理由なく減っている
診断
まず問診と血液検査、腹部の超音波(エコー)検査から始まります。肝臓がんが疑われる場合は、造影剤を使ったCTやMRIで詳しく調べます。必要に応じて、細い針で組織の一部を採取して確認する検査(生検・せいけん)を行うこともあります。あわせて、肝臓がどれくらい働いているかをみる検査も行われます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(肝機能の数値、腫瘍マーカーと呼ばれる目印になる物質の量など)
- 腹部超音波検査(エコー)
- 造影剤を使ったCT検査
- 造影剤を使ったMRI検査
- 必要に応じて生検(組織を採取して調べる検査)
- 肝臓の働き(肝予備能・かんよびのう)をみる検査
- 転移がないかを確認するための胸部CTや骨の検査など
診察で予想されること
検査は一度ではなく、何回かに分けて行われます。結果を総合して「がんの大きさ・数・位置」「肝臓の働き」「体全体の状態」を確認し、治療の方針を話し合います。結果が出るまで数週間かかることもあり、その間は落ち着かない気持ちになるかもしれません。診察で聞きたいことをメモしておくと整理しやすく、家族や友人に同席を頼むのもよい方法です。
治療
治療は「がんの状態(大きさ・数・場所)」「肝臓の働き」「体の状態や生活の状況」を組み合わせて選びます。ひとつの方法だけでなく、いくつかを組み合わせることもあります。担当医から説明を聞き、わからないことは遠慮なく質問しながら、一緒に決めていくことが大切です。
自宅でのセルフケア
- 禁酒、または主治医と相談したうえでの節酒
- バランスのよい食事と、塩分を控えめにする工夫
- 体重の管理(毎日同じ条件で体重を測ると変化に気づきやすい)
- 十分な睡眠と休養、疲れたら休む習慣
- 医師の指示どおりの通院と検査
- 手洗いなどの感染症予防(予防接種は主治医に相談してください)
- 体調の変化(食欲、だるさ、おなかの張り、むくみ)を簡単に記録する
医療治療
治療は大きく4つに分けられます。(1) 手術でがんを取り除く、(2) 熱で焼く治療や、がんに栄養を送る血管を塞ぐ治療などの局所的な治療、(3) 薬物療法、(4) 放射線治療です。薬物療法では、がんの増え方を抑える薬や、体の免疫の働きを利用する薬などが使われます。どの方法をどう組み合わせるかは、病状や肝臓の働きに合わせて担当医が判断します。具体的な薬の種類や使い方については、担当医の説明を受けてください。
手術が検討される場合
がんが肝臓の一部にとどまっていて、肝臓の働きが十分に保たれている場合に検討されます。手術の前に、取り除いたあとに残る肝臓が足りるかどうかを詳しく調べます。
この病気と共に生きる
通院の予定をカレンダーや手帳でまとめておくと、予定が立てやすくなります。毎日、体重・食欲・だるさ・おなかの張り・足のむくみを簡単に記録しておくと、診察のときに伝えやすくなります。調子のよい日と悪い日の波があることも多いので、無理をせず、疲れたら休むペースをつくりましょう。
生活習慣のアドバイス
- 飲酒は控える(量や頻度は主治医に相談してください)
- 禁煙を考える
- 十分な睡眠と、こまめな休憩
- 手洗いなど感染症予防を心がける
- ストレスをためない工夫(趣味の時間、人と話す時間)
- 仕事や家事の負担について、家族や職場に早めに相談する
食事と運動
塩分を控えめにし、たんぱく質と野菜をバランスよくとる食事が基本です。むくみやおなかの水がたまっているときは、塩分や水分を制限することがあるため、主治医や管理栄養士の指示に従ってください。運動は散歩など軽いものを、体調に合わせて無理のない範囲で行います。体調がすぐれない日は、休むことを優先しましょう。
精神的健康と心の健康
「がん」と告げられて不安や落ち込みを感じるのは、ごく自然なことです。眠れない、気分が晴れない、涙が出る、考えがまとまらないといった状態が2週間以上続くときは、一人で抱えずに、担当医や看護師、病院の相談窓口に話してみてください。言葉にすることで気持ちが軽くなることもあります。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、ためらわずに救急(119)や地域の相談窓口に連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、リスクを下げることはできます。日本ではB型・C型肝炎ウイルスが大きな原因とされているため、ウイルス肝炎を予防し、感染している場合はきちんと治療することが最も大切です。
ワクチン
B型肝炎ワクチンは日本で定期接種の対象になっています。成人でも感染のリスクが高いと考えられる方は、医師に相談してみてください。C型肝炎にはワクチンはありませんが、飲み薬による治療でウイルスを排除できるようになっています。
検診プログラム
自治体によっては肝炎ウイルス検査を無料で受けられます。慢性肝炎や肝硬変と診断されている方は、超音波検査や腫瘍マーカーの血液検査を定期的(おおむね6か月ごとなど)に受けることが勧められています。自分がどのくらいの間隔で検査を受けるべきかは、主治医に確認してください。
合併症
治療しない場合
- がんが大きくなり、肝臓の働きが落ちる(肝不全)
- おなかに水がたまる(腹水)、足がむくむ
- 黄疸が出る
- 食道や胃の静脈が膨らみ、出血することがある
- ほかの臓器に転移する
- 食事がとれなくなり、体力が落ちる
長期的な見通し
肝臓がんは、早期に見つかれば治せる可能性があり、治療の選択肢も年々増えています。肝臓の働きや体調に合わせた治療を続けることで、長く安定して過ごしている方も多くいます。見通しについて知りたいときは、担当医に今の状態と今後の見込みを具体的に聞いてみてください。
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最終更新: 2026年10月24日
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