妊娠中の肝臓の病気:基礎知識と対処法
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
妊娠すると、体の変化によって肝臓に負担がかかることがあります。妊娠中の肝臓の病気には、妊娠がきっかけで起こるものと、妊娠する前からあった肝臓の病気が妊娠中に悪化するものがあります。肝臓は、食べ物の栄養を蓄えたり、体に不要なものを分解したりする大切な臓器です。正しい知識を持ち、早めに対処することが大切です。
重要な事実
- 妊娠中の肝機能の異常は、多くは軽度で治療により改善します。
- 皮膚が黄色くなる(黄疸)、ひどいかゆみ、右上腹部の痛みは肝臓に問題があるサインです。
- 定期的な妊婦健診と、気になる症状を医師に伝えることで、重症化を防げます。
妊娠中の肝機能の数値が少し上がることは、それほど珍しいことではありません。しかし、重症の肝臓病(妊娠性急性脂肪肝やHELLP症候群など)は非常にまれです。
妊娠中の女性なら誰でも起こりえますが、初めての妊娠、多胎妊娠(双子など)、もともと肝臓や胆のうの病気(B型・C型肝炎、胆石など)がある方に少し多くみられます。
症状
- 次の症状が1つでもある場合は、ためらわずに119番(救急車)を呼んでください。
- けいれん(ひきつけ)を起こしている
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- 激しい腹痛がある
- 大量の出血(膣からの出血など)がある
- 胎動がまったく感じられない(妊娠後期)
- ⚠皮膚や白目が黄色くなってきた
- ⚠尿の色が赤褐色(コーラ色)になる
- ⚠手のひらや足の裏のかゆみが強く、眠れないほど
- ⚠おなかの右上の痛みが続く、または強くなる
- ⚠発熱がある
- ⚠胎動がいつもより少ない
一般的な症状
- 吐き気や嘔吐が続く
- 食欲がない
- おなかの右上(みぞおちの右側)が痛む
- 疲れやすい、体がだるい
- 皮膚や白目が黄色くなる
- 手のひらや足の裏がひどくかゆい
- 尿の色が濃い、便の色が白っぽい
- むくみが出る
原因
主な原因
- 妊娠によるホルモンの変化や血流の変化で肝臓に負担がかかる
- 妊娠が原因で起こる肝臓の病気(妊娠性肝内胆汁うっ滞症、妊娠急性脂肪肝、HELLP症候群など)
- 妊娠中に胆石ができやすくなり、胆管をふさぐことがある
- 妊娠前からあるB型・C型肝炎などが悪化する
- 特定の原因がわからない場合もある
リスク要因
- 初めての妊娠
- 多胎妊娠(双子・三つ子など)
- 妊娠高血圧症候群になったことがある
- もともと肝臓の病気(B型・C型肝炎など)がある
- 胆石がある
- 肥満気味
- 高齢妊娠(一般的に35歳以上)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 黄疸(皮膚や白目が黄色い)
- 強いかゆみが続く
- 右上腹部の痛みがひどい
- 発熱を伴う
- 胎動が減った
- このような症状がある場合は、当日中に産科または内科を受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 妊婦健診で肝機能の値に異常を指摘された
- 妊娠前から肝臓の病気があるため、妊娠中も専門医に相談したい
- 軽いかゆみが続いている
- これらは、普段の妊婦健診のときに医師に相談しましょう。
診断
問診(症状や経過の確認)と身体診察、血液検査などを組み合わせて診断します。必要に応じて、腹部の超音波(エコー)検査で肝臓や胆のうの状態を確認します。妊娠中でも安全に行える検査が選ばれます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:肝機能の数値(ALT・ASTなど)、胆汁酸、肝炎ウイルスの有無を調べます
- 腹部超音波検査(エコー):肝臓や胆のうの形、胆汁の流れを確認します
- 尿検査と血圧測定:妊娠高血圧症候群のチェック
- 場合によっては、肝臓の組織を一部採取する肝生検を行うこともあります(妊婦では慎重に判断します)
診察で予想されること
血液検査やエコー検査は体への負担が少なく、妊娠中でも安心して受けられます。検査結果によって、今後の妊娠中の管理方法や治療方針が決まります。結果を待つ間も、不安なことがあれば医師や助産師に遠慮なく聞いてください。
治療
治療は、原因と重症度によって異なります。お母さんの命とおなかの赤ちゃんの安全をいちばんに考えて、医師と相談しながら進めます。軽症の場合は安静と食事の見直しで経過を見ますが、状態によっては薬物療法や入院が必要になることもあります。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示に従って、安静と十分な睡眠をとる
- かゆみがあるときは、爪でかかずに冷たいタオルで押さえる
- お酒(アルコール)は妊娠中は一切飲まない
- 塩分や脂っこい食事を控え、バランスのよい食事を心がける
- 薬は自己判断で飲まない(妊娠中に安全な薬かどうか必ず医師に確認)
医療治療
妊娠中に使える安全なお薬(肝臓の働きを助けるもの、かゆみや吐き気を和らげるもの、血圧を下げるものなど)を、医師が必要と判断した場合に限り処方します。症状が重いときは、入院して点滴や安静、赤ちゃんの状態のモニタリング(胎児心拍数モニター)を行います。妊娠を継続するリスクが高い場合は、赤ちゃんの状態が安全な時期に早めに出産することが治療になることもあります。
手術が検討される場合
胆石が原因で強い痛みや感染を繰り返す場合など、まれに手術が必要になることがあります。妊娠中でも安全に行える腹腔鏡手術(おなかに小さな穴を開けて行う手術)を選ぶ医師もいます。手術の判断は、産科と外科の医師が一緒に行います。
この病気と共に生きる
妊娠中は、定期的に妊婦健診と血液検査を受けることが大切です。体調の変化や気になる症状をメモしておき、健診のときに伝えましょう。不安なことは早めに相談することで、安心して妊娠期間を過ごせます。
生活習慣のアドバイス
- 十分な睡眠と休息をとる
- ストレスをためない(好きなこと、リラックスできる時間をもつ)
- アルコールやタバコは避ける
- 規則正しい生活リズムを心がける
食事と運動
特別な食事制限が必要な場合を除き、バランスのよい食事を心がけましょう。塩分を控えめにし、脂っこい料理より蒸す・煮るなどの調理法が負担になりにくいです。運動は、医師に確認した上で、無理のない範囲で散歩などを行うとよいでしょう。
精神的健康と心の健康
妊娠中に肝臓の異常を指摘されると「赤ちゃんは大丈夫だろうか」と不安になるのは自然なことです。気分が沈む、眠れない、イライラするなどの症状が続く場合は、産科医や助産師、心の専門家(精神科医や臨床心理士)に相談しましょう。また、地域の相談電話(自治体の保健所など)を活用することもできます。全国で利用できる相談窓口は、厚生労働省や自治体の情報を確認してください。
予防
妊娠が原因の肝臓病は、すべてを予防できるわけではありません。しかし、妊娠前に健康診断で肝臓の状態を確認し、必要な予防接種(B型肝炎など)を済ませておくことは役立ちます。妊娠中は、定期的な妊婦健診を欠かさず受けることで、異常を早期に見つけることができます。
ワクチン
妊娠前にB型肝炎の予防接種を検討してください(医師と相談)。妊娠中にB型肝炎と診断された場合、赤ちゃんへの感染を防ぐため、出生後すぐに免疫グロブリンとワクチンの接種が行われます。C型肝炎には予防ワクチンがありませんが、治療や管理方法は医師と相談できます。
検診プログラム
妊婦健診では、妊娠初期にB型肝炎・C型肝炎などの感染症検査が行われます。また、定期的に肝機能の血液検査も行われます。自治体によっては、妊娠初期の検査費用を助成する制度があります。気になる場合は、保健所や医療機関に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 妊娠性肝内胆汁うっ滞症が進行すると、早産やおなかの赤ちゃんのトラブルのリスクが高まります。
- 妊娠高血圧症候群やHELLP症候群を放置すると、けいれん発作(子癇)や脳出血など、母体の命に関わる危険があります。
- 妊娠急性脂肪肝は、重症になると肝不全や出血傾向を起こし、母体と赤ちゃんの両方に危険が及びます。
- B型肝炎の母子感染を予防しない場合、赤ちゃんが慢性的な肝炎キャリアになることがあります。
長期的な見通し
妊娠中の肝臓の病気は、早期に見つけて適切な管理を行えば、ほとんどは母子ともに健康に過ごせます。たとえ重い病気でも、妊娠中は産科・内科・小児科の医師が連携して、最善の方法を選びます。あわてず、信頼できる医療者と一緒に進んでいきましょう。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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