Long Covid(新型コロナ後遺症)について
概要
Long Covid(ロングコビッド)は、日本語では「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(りかんごしょうじょう)」と呼ばれ、新型コロナウイルスに感染したあと、最初の感染が落ち着いてからも、さまざまな体の不調が長く続く状態のことです。一般的には、感染してから症状が続いている期間が、発症から数週間以上(よく使われる目安では12週間以上)たっても続く場合にこの言葉が使われます。症状は人によってまったく違い、ひとつの症状だけの人もいれば、いくつも重なる人もいます。だるさ、息苦しさ、頭がぼんやりする、せき、においや味が戻りにくい、動悸(心臓がドキドキする感じ)などがよく知られています。命にかかわる病気ではない場合が多いものの、日常生活や学校・仕事に大きく影響することがあります。
重要な事実
- Long Covidは、新型コロナに感染したあとに症状が長く続く状態で、だれにでも起こる可能性があります。
- 症状の出方や続く期間は人によって大きく違い、ひとりひとりに合わせた対応が必要です。
- 決まった特効薬はまだありませんが、症状に合わせたケアと無理のない休息で、多くの人は少しずつ良くなっていきます。
めずらしいものではありません。世界中の研究で報告されており、日本でも厚生労働省が「罹患後症状」として情報を提供しています。感染した人のうち、どのくらいの割合で起こるかは研究によって幅がありますが、決して特別な人だけに起こるものではありません。
年齢や性別を問わず、どのような人にも起こりえます。若い人や、軽い症状ですんだ人にも起こることがあります。ただし、感染したときの症状が重かった人、入院した人、もともと持病がある人、高齢の人では起こりやすいと報告されています。子どもにも起こることがあります。
症状
- 息ができず、話すのも苦しい、肩で息をしている
- 胸の強い痛みが続く、胸が締めつけられる感じがする
- 唇や顔色が青白い、または青紫色になっている
- 意識がもうろうとしている、会話がかみ合わない、呼びかけに反応が弱い
- けいれんが起きた、意識を失って倒れた
- いきなり片方の手足が動かない、言葉が出にくい(脳の症状の可能性)
- ⚠息苦しさが急に強くなってきた
- ⚠動悸が止まらない、または動悸とともにふらつき・めまいがある
- ⚠高熱が続き、ぐったりして水分もとれない
- ⚠嘔吐(おうと)や下痢が続き、尿が極端に少ない(脱水のサイン)
- ⚠症状が日ごとに急速に悪くなっている
一般的な症状
- 強いだるさ・疲れやすさ(休息しても取れにくい)
- 息苦しさ、階段や坂道で息が上がる
- 頭がぼんやりする、集中しにくい、物忘れが増えたように感じる(ブレインフォグ)
- せきが続く、のどに違和感が残る
- 動悸(心臓がドキドキする)、胸の痛みや圧迫感
- においや味が戻りにくい、感じにくい
- 眠りにくい、途中で目が覚める、寝ても疲れが取れない
- 筋肉や関節の痛み、頭痛
- 気分が落ち込む、不安が強くなる、イライラしやすい
- 微熱が続く、汗が出やすい
- 食べるとすぐおなかが張る、下痢や便秘などのおなかの不調
- 立ちくらみ、めまい(立ち上がったときに特に)
子供の症状
- 疲れやすさ、朝起きられない
- 集中しにくい、学校でぼんやりしてしまう
- 眠りのリズムが乱れる
- おなかの痛み、食欲がない、気持ちが悪い
- せきや鼻の症状が長引く
- 気分の落ち込み、不安、怒りっぽくなる
- 「なんとなく調子が悪い」と本人が言うが、説明しにくいこともある
高齢者の症状
- 強い倦怠感(けんたいかん)と、以前より体を動かしにくくなる
- 息苦しさ、少し動いただけで疲れる
- 筋力が落ちる、歩くのが遅くなる、転びやすくなる
- もともとの持病(心臓・肺・糖尿病など)が不安定になる
- 食欲が落ちる、体重が減る
- 物忘れや混乱が目立つようになる
- 気分の落ち込み、社会とのつながりが減る
原因
主な原因
- はっきりした原因はまだ研究中ですが、いくつかの仕組みが考えられています。
- 感染のあとも体の中で炎症(体が反応して熱や痛みを起こす働き)が長引いている可能性
- 免疫(体を守る仕組み)の働きが乱れ、自分自身の体に反応してしまう可能性
- ウイルスの一部が体の中に残っている可能性
- 感染中に心臓・肺・神経などの臓器が受けたダメージが回復しきっていない可能性
- 自律神経(心臓の動きや血圧、消化などを自動で調整する神経)のバランスが乱れる「自律神経失調」のような状態
- 感染をきっかけに、体力が落ちてしまったこと(筋力低下)や、眠りのリズムの乱れ
リスク要因
- 感染したときの症状が重かった、または入院した
- 感染の初期に、たくさんの症状が一度に出た
- 年齢が高い
- 女性であること(報告によって差があります)
- 肥満(ひまん)がある
- ぜんそく、糖尿病、心臓や肺の病気などの持病がある
- こころの不調(不安や抑うつ)があった
- ワクチン接種を受けていない(接種でリスクが下がるとの報告があります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさが強い、または急に悪化した
- 胸の痛みや強い動悸がある
- 意識がぼんやりする、会話がかみ合わない
- 水分がとれない、尿がほとんど出ない
- 高熱が続いてぐったりしている
- 症状が日単位で急速に悪くなっている
定期受診を予約すべき場合:
- 感染から回復したあとも、数週間以上だるさや息苦しさが続く
- 仕事・学校・家事など日常生活に支障が出ている
- 眠れない、疲れが取れない状態が続いている
- においや味が戻らない
- 気分の落ち込みや不安が続き、生活がつらくなっている
- 症状が良くなったり悪くなったりを繰り返している
- 自分では原因がわからず不安なとき(早めに相談して大丈夫です)
診断
Long Covidには、これひとつで確定できる特別な検査はありません。医師はまず、いつ感染したか、どんな症状がいつから続いているか、日常生活にどんな影響が出ているかをくわしく聞き取ります。そのうえで、同じような症状を起こすほかの病気(貧血、甲状腺の病気、心臓や肺の病気、睡眠の病気、こころの不調など)ではないかを確認していきます。つまり「除外(ほかではないと確かめる)しながら診断する」という考え方です。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状の経過、生活への影響、持病や服薬の確認)
- 血液検査(貧血、甲状腺、炎症の程度、ビタミン不足など)
- 胸部レントゲンやCT(肺の状態をみる)
- 心電図、必要に応じて心臓の超音波検査
- 血中の酸素の量を測る検査(パルスオキシメーター)
- 呼吸機能検査(肺がどれだけ働いているか)
- 睡眠の状態を確認する問診や検査
- 気分や不安、睡眠に関する問診(こころの状態の確認)
- 症状の記録表(自分でつけたメモが診断の大きな助けになります)
診察で予想されること
診察は1回で終わらず、何度か通院しながら経過を見ていくことが多いです。いくつかの科(内科、呼吸器科、循環器科、神経内科、リハビリ科、心療内科など)を組み合わせることもあります。検査で異常が見つからないこともありますが、その場合も症状に合わせた支援を受けられます。症状が良くなったり悪くなったりするので、記録を取りながら通院すると良いでしょう。
治療
Long Covidに「これを飲めば治る」という決まった治療法は、今のところありません。治療の中心は、一人ひとりの症状に合わせて、つらい症状をやわらげ、体力と生活のリズムを取り戻していくことです。あせって一気に動き出すより、無理のない範囲で少しずつ進めることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 活動と休息のバランスをとる(「ペーシング」):調子がいい日に頑張りすぎず、こまめに休む
- 毎日の症状と活動量を簡単に記録する(何をすると悪くなるかが見えてきます)
- 水分をこまめにとる。食事は決まった時間に、無理のない量で
- 眠る時間と起きる時間をできるだけ一定にする。昼寝は短めに
- 息苦しさを感じたら、ゆっくり長く息をはく呼吸を試す
- 一度に多くの用事を抱えこまず、優先順位を決めて一つずつ行う
- アルコールやカフェインのとりすぎに気をつける
- 体を冷やさない、無理な運動を急に始めない
- 家族や職場・学校に、今の状態を伝えて協力を頼む
医療治療
症状に合わせて、それぞれの症状への対応を行います。たとえば、息苦しさには呼吸のリハビリや吸入などの方法が検討され、動悸や胸の痛みには心臓の検査と経過観察、だるさや体力低下には無理のない範囲でのリハビリテーション、眠りの問題には睡眠の相談、気分の落ち込みには心療内科などでの相談が行われます。薬を使う場合も、症状や体の状態に合わせて医師が判断します。自分で市販薬を重ねて使う前に、必ず医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
Long Covidは手術で治すものではありません。ただし、感染中に見つかった別の病気(心臓・肺などの問題)が症状の原因になっている場合は、その病気に対して外科的な治療が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
Long Covidとともに暮らすうえで大切なのは、「昨日と同じように今日も動けるとは限らない」と受けとめることです。調子のいい日に頑張りすぎると、そのあと何日も動けなくなる「クラッシュ」が起こりやすくなります。予定は詰めこまず、休む時間を先に確保しておくと安心です。買い物や家事は、ネットスーパーや家族の協力など、体への負担が少ない方法を上手に使いましょう。
生活習慣のアドバイス
- 活動と休息を細かく分ける(例:10分動いたら5分休む)
- 「やることリスト」は3つまでなど、上限を決めておく
- スマートフォンや画面をみる時間を減らし、目と頭を休める
- 日中の光を浴びて、体内時計を整える
- 体調の波を家族や同僚と共有しておく
- つらい日は「何もしない日」をつくってよいと決めておく
- 手指衛生や換気など、基本的な感染対策を続ける
食事と運動
食事は、たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品など)と野菜をバランスよく、決まった時間にとることが体力の回復を助けます。一度にたくさん食べるのがつらいときは、少量を数回に分けましょう。運動は、はじめは散歩や軽いストレッチなど、息が上がりすぎない程度から。翌日に強い疲れが残ったら、次は少し短めにします。「昨日の量をこなさなければ」と考えなくて大丈夫です。医師やリハビリの担当者と相談しながら、自分のペースで進めましょう。
精神的健康と心の健康
「なぜ治らないんだろう」「周りにわかってもらえない」という気持ちは、とても自然なことです。長引く不調は、不安や落ち込み、いらだちにつながることがあります。これは弱さではなく、体の不調にこころが反応している状態です。一人で抱えこまず、家族や友人、かかりつけ医、心療内科や相談窓口に話してみてください。つらい気持ちが続くとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や地域の相談窓口、救急(119)に連絡してください。
予防
Long Covidを100%防ぐ方法はまだわかっていませんが、新型コロナへの感染そのものを減らすことが、いちばんの予防になります。手洗い、換気、人が多い場所でのマスク着用、体調が悪いときは無理をしないことが基本です。また、感染したあとは、症状が軽くても無理に活動を再開せず、しっかり休むことが大切だと考えられています。
ワクチン
ワクチン接種は、新型コロナに感染するリスクや重症化するリスクを下げると報告されており、Long Covidのリスクを下げる可能性も示されています。回数や時期については、厚生労働省や自治体の案内、かかりつけ医の説明を参考にしてください。
検診プログラム
Long Covidそのものを見つけるための決まったスクリーニング検査はありません。気になる症状が続く場合は、かかりつけ医に相談することが早期の支援につながります。
合併症
治療しない場合
- 症状が長引き、仕事・学校・家事などの日常生活が続けにくくなる
- 体力や筋力が落ちて、動くのがさらにつらくなる(廃用)
- 眠りの乱れや疲労が重なり、気分の落ち込みや不安が強くなる
- 人とのつながりが減り、孤立感が強まる
- もともとの持病(心臓・肺・糖尿病など)の管理が乱れる
- まれに、心臓・肺・神経などの臓器に問題が隠れていることがある
長期的な見通し
Long Covidの経過は人によって大きく異なりますが、多くの人は時間とともに少しずつ良くなっていくことが報告されています。数週間で軽快する人もいれば、数か月から年単位でかかる人もいます。良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、全体としては上向いていくことも多いです。あせらず、症状に合わせたケアと周囲のサポートを続けることが、回復への近道になります。つらいときは一人で抱えず、かかりつけ医に相談してください。
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最終更新: 2026年10月24日
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