歯がぐらぐらする・歯が抜けそうなとき
概要
歯がぐらぐらして、指で押すと動く状態を「歯の動揺(どうよう)」といいます。子どもでは、乳歯(にゅうし・子どもの歯)が抜ける前に自然にぐらぐらすることが多く、これは成長の一部です。一方、大人の歯(永久歯)がぐらつくときは、歯を支えている歯ぐきや骨に何かが起きているサインのことがあります。原因は年齢によって大きく違うので、まず「子どもの生えかわり」か「それ以外」かで考え方が変わります。
重要な事実
- 子どもの乳歯がぐらぐらするのは、およそ6歳から12歳にかけて順番に起こる自然な変化です。
- 大人の永久歯がぐらつく場合、いちばん多い原因は歯周病(ししゅうびょう=歯ぐきと、歯を支える骨の病気)です。
- 転んだり、ぶつかったりした後のぐらつきは、できるだけ早く歯科を受診してください。特に永久歯が完全に抜けた場合は、急いで受診が必要です。
とてもよくあることです。乳歯のぐらつきは、ほぼすべての子どもが経験します。大人でも、歯周病がある人の多くは、程度の差はあれ歯が動くことがあります。あわてずに、原因を見きわめることが大切です。
主に2つの年代で起こります。1つは5〜12歳ごろの子どもで、乳歯から永久歯への生えかわりの時期です。もう1つは大人、特に40代以降で歯周病が進んできた人です。このほか、けがをした人、歯ぎしりやくいしばりの強い人、矯正治療中の人、全身の病気や栄養状態の影響を受けている人にも起こります。
症状
- 顔やあごを強く打ち、意識がもうろうとしている、嘔吐(おうと)やけいれんがある
- 口の中の出血が止まらず、顔色が悪い、ぐったりしている
- 顔や首が急に大きく腫れて、息が苦しい、飲み込みにくい、声が出しにくい
- ⚠転倒・打撲・スポーツなどで永久歯が完全に抜けた、または大きくぐらついた(抜けた歯は乾かさず、牛乳や生理食塩水につけて、できるだけ早く歯科へ)
- ⚠歯が折れた、欠けた、歯が奥に押し込まれたように見える
- ⚠歯ぐきから膿が出る、発熱をともなう腫れがある、強い痛みが続く
- ⚠大人の歯が、けがをしていないのに急にぐらつき始めた
一般的な症状
- 歯を指で押すと前後に動く、ぐらぐらする感じがある
- かんだときに痛い、力が入らない、違和感がある
- 歯ぐきが赤く腫れる、歯みがきのときに血が出る
- 歯と歯の間のすき間が広がった、歯が以前より長く見える
- 口臭が気になる、歯ぐきから膿(うみ)のような味やにおいがする
- かみ合わせが変わった気がする、食べ物がはさまりやすくなった
子供の症状
- 6歳ごろから、前歯などから順番に乳歯がぐらぐらし、自然に抜け落ちる
- 抜けた後に永久歯が生えてくる(生えかわり)
- 乳歯が抜ける前に、永久歯が後ろ側から生えてくることがある
- 子どもが怖がって歯を触らせない、抜けるのを嫌がることがある
- 生えかわりの時期は、かむと少し痛い、食事に時間がかかることがある
- 乳歯がなかなか抜けずに残り、永久歯が押されて生えてくることがある
高齢者の症状
- 歯周病で歯を支える骨が減り、1本だけでなく複数の歯が同時にぐらつく
- 入れ歯の金具がかかっている歯がゆるんで、入れ歯が不安定になる
- 歯ぐきが下がって歯の根元が見え、しみる感じが増える
- 口の乾きが気になることがある(一部の薬や体の状態が関係することもあります)
- 糖尿病などの全身の病気があると、歯ぐきの炎症が長引きやすい
- 加齢や栄養状態の変化で、歯を支える力が弱くなることがある
原因
主な原因
- 生えかわり:乳歯の根が自然に吸収されて、永久歯に押されて抜ける(子どもでは正常なこと)
- 歯周病:歯ぐきに炎症が起き、歯を支える骨が少しずつ減っていく病気
- けが:転倒、ぶつかる、スポーツ中の衝撃などで、歯を支える組織が傷つく
- 歯ぎしり・くいしばり:強い力が繰り返しかかり、歯と歯ぐきに負担がたまる
- かみ合わせの変化や矯正治療中:歯が動く過程で一時的にぐらつくことがある
- 歯の根の病気:根の先に膿がたまり、歯が浮いたように感じる・動く
- 全身の状態:ホルモンの変化、栄養不足、全身の病気の影響で歯ぐきが弱ることがある
リスク要因
- ていねいな歯みがきや歯間の掃除が十分でない
- たばこを吸う習慣がある
- 糖尿病など、全身の病気がある
- 歯ぎしり・くいしばりの習慣がある
- 定期的な歯科受診をしていない、歯科健診を受けていない
- 妊娠中・思春期・更年期など、ホルモンが大きく変わる時期
- スポーツで口を守るマウスピースを使っていない
- 強いストレスや睡眠不足が続いている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けがのあとに歯がぐらついている、欠けた、抜けた
- 歯ぐきが大きく腫れて、熱がある、膿が出ている
- 強い痛みで眠れない、食べられない
- 大人の永久歯が、短い期間に急にぐらついてきた
定期受診を予約すべき場合:
- 子どもの乳歯がぐらついているが、なかなか抜けない
- 永久歯が生えてきているのに、乳歯が残っていて邪魔になっている
- 少しずつ歯が動く気がする、歯ぐきから血が出やすくなった
- 歯みがきのときに痛みや違和感がある
- 見た目やかみ合わせの変化が気になる
診断
歯科医が口の中を直接見て、歯のぐらつき方、歯ぐきの色や腫れ、かみ合わせを確認します。あわせて、細い器具を使って歯と歯ぐきの間の溝の深さを測る検査(プロービング)や、レントゲン撮影で歯を支える骨の状態を調べます。子どもの場合は、生えかわりの進み具合と永久歯の位置を確認します。
行われる可能性のある検査
- 視診・触診:歯の動き、歯ぐきの状態、かみ合わせを確認
- プロービング検査:歯と歯ぐきの間の深さを測り、歯周病の程度を調べる
- レントゲン撮影:歯を支える骨の量や、歯の根の状態を見る
- かみ合わせのチェック、歯の動きの記録
- 必要に応じてCT撮影や、全身の病気が疑われる場合の血液検査
診察で予想されること
検査の多くは口の中の診察で、ほとんど痛みはありません。プロービングは少しチクチクすることがありますが、短時間で終わります。レントゲンは何枚か撮ることがあります。子どもの場合、怖がるようであれば声かけをしながら進めてもらえます。結果の説明を受けてから、治療の必要性や通院の間隔を相談しましょう。
治療
治療は原因によって変わります。乳歯の生えかわりであれば、多くは見守るだけで大丈夫です。歯周病が原因なら、歯ぐきの炎症を抑える治療と、毎日のケアの見直しが中心になります。けがが原因の場合は、できるだけ早い対応が大切です。まずは歯科で原因を確かめ、どう進めるかを一緒に決めていきましょう。
自宅でのセルフケア
- 抜けそうな乳歯を無理に引っぱらない。自然に抜けるのを待つのが基本(永久歯が生えていて邪魔な場合は歯科に相談)
- ぐらつく歯の周りも、やさしくていねいにみがいて清潔に保つ
- 痛みがあるときは、やわらかい食べ物を選び、痛い側を避けてかむ
- 抜けた場所は清潔にし、うがいをして食べかすを残さない
- けがで歯が抜けた場合は、歯の根元を触らず、乾かさないように牛乳や生理食塩水につけて、できるだけ早く歯科へ向かう
- スポーツをするときは、口を守るマウスピースの使用を検討する
- たばこは歯ぐきの血の流れを悪くするので、控えることを検討する
- 痛み止めなどを使う前に、必ず歯科医か薬剤師に相談する
医療治療
歯科での治療は、原因に合わせて組み立てられます。歯周病が原因の場合は、歯石や歯の汚れを取り除く処置と、正しいみがき方の指導が中心になります。かみ合わせの負担が強いときは、かみ合わせの調整や、ぐらつく歯を隣の歯とつないで支える処置を行うことがあります。歯の根の奥に膿がたまっている場合は、根の中をきれいにする治療が検討されます。細菌による炎症が強いときには、歯科医の判断で薬が使われることもあります。いずれも、状態を確かめたうえで歯科医と相談して決めていきます。
手術が検討される場合
歯を支える骨が大きく失われていて、このまま残すのが難しいと判断された場合は、抜歯が必要になることがあります。抜いたあとは、入れ歯、ブリッジ、インプラントなど、かみ合わせを戻すいくつかの方法があり、年齢や体の状態、生活スタイルに合わせて歯科医と相談して選びます。
この病気と共に生きる
ぐらつく歯があると、食事のたびに気になってしまうものです。まずは「これは生えかわりなのか、別の原因なのか」をはっきりさせることが安心につながります。歯科で原因と今後の見通しを聞いておくと、毎日のケアにも迷いが少なくなります。痛みや不安が強い時期は、無理をせずやわらかい食事を選び、気になることは遠慮なく歯科医に伝えましょう。
生活習慣のアドバイス
- 1日に数回、時間を決めてていねいに歯をみがく習慣をつくる
- 歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやフロスも使って歯と歯の間を清潔に保つ
- 歯ぎしりやくいしばりに気づいたら、歯科医に相談する
- 睡眠と休息を十分にとり、強いストレスをためこまないようにする
- たばこを控える、または減らすことを検討する
- スポーツ時のマウスピースなど、口を守る道具を活用する
食事と運動
かむ力が落ちている時期は、やわらかく栄養バランスのよい食事を心がけましょう。豆腐、卵、魚、煮込んだ野菜、スープなどは食べやすく、たんぱく質もとれます。よくかんで食べることは、歯ぐきへの刺激にもなり、だ液も出て口の中が清潔に保たれます。運動は血の流れをよくし、体全体の健康を支えます。転倒や顔面のけがを防ぐため、屋内の段差をなくす、スポーツ時は防具を使うなどの工夫も大切です。
精神的健康と心の健康
歯のぐらつきは、見た目や話し方、食事が気になって、不安や落ち込みにつながることがあります。子どもは抜けることを怖がったり、友だちの目を気にしたりすることもあります。気持ちが落ち着かないときは、無理に一人で抱えこまず、家族や歯科医に話してみてください。つらい気持ちが長く続くときは、かかりつけ医やお住まいの地域の相談窓口に相談することも大切です。
予防
子どもの乳歯の生えかわりは、成長の一部なので防ぐものではありません。一方で、大人の歯がぐらつく原因の多く(歯周病やけが)は、日々のケアである程度予防できます。毎日の歯みがきと歯間の掃除、定期的な歯科健診、禁煙、スポーツ時の口の保護が、歯を長く保つ近道です。
ワクチン
この症状に直接関係するワクチンはありません。ただし、全身の病気が歯ぐきの健康に関わることもあるため、年齢に応じた予防接種や健康管理は大切にしてください。
検診プログラム
日本では、自治体や勤務先による歯科健診を受けることができます。子どもの母子歯科健診や学校歯科健診、大人の歯科健診、後期高齢者を対象とした歯科健診など、地域によって内容が異なります。厚生労働省やお住まいの自治体の案内を確認し、年に1回は歯科で状態を確認してもらう習慣をつけましょう。
合併症
治療しない場合
- 歯周病が進み、歯を支える骨が減って、最終的に歯を失うことがある
- かむ力が落ちて、食事の量や種類が偏り、栄養が不足しやすくなる
- 複数の歯がぐらつくことで、入れ歯が合わなくなり、生活の質が下がることがある
- 歯ぐきの腫れや膿が広がり、強い痛みや発熱につながることがある
- 転倒やけがの後、放置すると歯の根や周りの組織の状態が悪化することがある
- 口の中の状態が悪いままだと、全身の病気の管理にも影響することがある
長期的な見通し
多くの場合、早めに相談することで状況は大きく変わります。生えかわりは自然に進み、大人の歯のぐらつきも、原因に合った治療と毎日のケアで進行を抑えられることがあります。歯を残すのが難しい場合でも、かみ合わせを戻す方法はいくつかあります。心配な気持ちを一人で抱えず、歯科医と一緒に次の一歩を決めていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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