低血圧(血圧が低いと言われたら)
概要
血圧は、心臓が血液を送り出すときに血管の壁にかかる圧力のことです。低血圧は、一般に上の血圧(収縮期血圧)が100mmHg未満くらいを目安に言われますが、世界中で共通したはっきりした基準があるわけではありません。それよりも大切なのは「体に症状があるかどうか」です。血圧が低めでも元気に生活している人はたくさんいます。一方で、立ちくらみやだるさなど不快な症状が出て、日常生活に支障がある場合に、治療や生活の工夫を考えることになります。
重要な事実
- 低血圧には共通の基準がなく、数値だけでなく「症状があるかどうか」が大切です。
- 多くは体質によるもので、命に関わる病気が隠れていることは多くありません。ただし、急に血圧が下がったときや気を失ったときは受診が必要です。
- 水分不足、長時間の立ち仕事、食事のあと、急に立ち上がったときなど、日常のちょっとしたことで血圧は下がります。
低血圧はよく見られる状態です。若いやせ型の女性や成長期の子ども、高齢者では特に多くみられます。ただし症状のない人も多く、治療が必要になるのはそのうちの一部です。
10代から20代のやせ型の女性、成長期の子ども、高齢者、妊娠中の方、長時間立って働く方、暑い場所や脱水になりやすい環境にいる方などに多くみられます。
症状
- 意識を失った、呼びかけても反応が弱い
- けいれんが起きた
- 胸の痛みや強い圧迫感がある
- 息が苦しい、呼吸が浅い
- 冷や汗とともに急に具合が悪くなった
- 脈がとても弱い、または触れない
- 顔や手足のまひ、ろれつが回らない、見えにくい(脳卒中のサインの可能性)
- ⚠気を失うことがくり返し起きる
- ⚠転倒して頭を打った
- ⚠吐き気や下痢がひどく、水分が飲めない
- ⚠黒い便や血便が出た
- ⚠強い動悸や胸の不快感が続く
- ⚠急に血圧が下がった、または血圧が測れないほど具合が悪い
一般的な症状
- 立ちくらみ、めまい、ふらつき
- からだがだるい、疲れやすい
- 頭が重い、頭痛がする
- 朝なかなか起きられない
- 食欲がない、胃の調子が悪い
- 手足が冷たい
- concentration(集中しづらい)
- 気が遠くなるような感じがする
- 動悸(心臓の鼓動が強く感じる)がする
子供の症状
- 朝起きられず、学校に行きづらい
- 立っていると気分が悪くなる、顔色が悪い
- おなかの痛みや食欲不振をくり返す
- 立ち上がったときに体の調整がうまくいかない状態(起立性調節障害:立ち上がったときに血圧や脈の調整がうまくいかず、めまいやだるさが出るもの)が関係することがあります
高齢者の症状
- 立ち上がったときのふらつきや転倒
- 食事のあとに血圧が下がり、だるさや眠気が出る
- 飲んでいる薬の影響で血圧が下がりやすい
- のどの渇きを感じにくく、脱水になりやすい
- ふらつきが原因で、外出や食事を控えてしまうことがある
原因
主な原因
- 体質によるもの(もともと血圧が低めで、体格や自律神経の働きが関係する)
- 立ち上がったときに血圧が下がる(起立性低血圧)
- 食事のあとに血圧が下がる(食後低血圧)
- 脱水(汗、発熱、下痢、嘔吐、水分をとらないことによる体内の水分不足)
- 貧血(血液中の酸素を運ぶ成分が不足した状態)
- 心臓や血管の病気
- ホルモン(甲状腺や副腎など)の働きの変化
- 感染症による体の反応
- 薬の影響(血圧を下げる薬、利尿薬、一部の精神科の薬など)
- 妊娠に伴う体の変化
- 長時間の立ち仕事、暑い環境、アルコール、睡眠不足
リスク要因
- 高齢であること
- やせ型で若い女性であること
- 妊娠中であること
- 長時間立って働くこと
- 暑い場所での作業や運動
- 水分・食事の量が少ないこと
- 糖尿病や神経の病気があること
- 長い間ベッドで過ごすことが多い
- 血圧に影響する薬を飲んでいる
- 飲酒の習慣がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 気を失った、または意識が遠のいたことがある
- 転倒してけがをした、頭を打った
- 急に血圧が下がり、ぐったりしている
- 出血が疑われる(黒い便、血便、多い月経など)
- 胸の痛み、息苦しさ、強い動悸がある
定期受診を予約すべき場合:
- 立ちくらみやめまいが毎日のように続く
- 朝起きられず、学校や仕事に支障が出ている
- だるさや疲れやすさが数週間以上続く
- 体重が減った、食欲がない
- 薬を飲み始めてから調子が悪くなった
- 妊娠中で、ふらつきや気分の悪さが強い
診断
診察では、まず症状の話を聞き、血圧を測ります。座ったときと、立ち上がった直後・数分後の血圧を比べることで、立ち上がりで下がるタイプかどうかを見ます。症状が出たときの状況(立ち上がった、食事のあと、暑い場所にいた、薬を飲んだあと)を伝えると、原因を絞りやすくなります。
行われる可能性のある検査
- 血圧測定(座った姿勢と立った姿勢で測る)
- 血液検査(貧血、脱水、血糖、甲状腺や副腎のホルモンなどを調べる)
- 必要に応じて24時間心電図(ホルター心電図)
- 心臓超音波検査
- 起立試験(台の上で体を傾け、血圧と脈の変化を調べる検査)
診察で予想されること
診察は10〜20分程度が一般的です。自宅で朝・昼・夜に測った血圧のメモや、症状が出たときの時刻・状況の記録があると役立ちます。検査は日を分けて行うこともあります。結果の説明を受け、原因に応じた対応を一緒に考えていきます。
治療
治療は原因によって変わります。症状がなく生活に支障がなければ、無理に血圧を上げる治療をしないことが多いです。脱水が原因なら水分と電解質を補い、薬の影響が考えられる場合は医師が薬の見直しを判断します。体質によるもので症状が強い場合は、生活の工夫を中心に、必要に応じて医師の判断で治療が行われます。
自宅でのセルフケア
- 水分を1日を通して少しずつ、こまめにとる
- 朝は布団の中で手足を動かし、ゆっくり座ってから立ち上がる
- 長時間立つときは、つま先立ちや足踏みなどで足を動かす
- 食事は一度にたくさん食べず、分けて食べる。食後は少し休む
- 暑い場所や熱いお風呂、サウナは長居を避ける
- アルコールは控えめにする
- 十分な睡眠と規則的な生活リズムを心がける
- 弾性ストッキング(足を締めつけて血液の戻りを助ける靴下)については医師・看護師に相談する
- 塩分を増やすかどうかは自己判断にせず、医師に相談する(高血圧や腎臓病、心臓病がある方は特に注意)
医療治療
原因に応じて、血圧を上げる働きのある薬や、体内の水分量を調整する薬が使われることがあります。薬が必要かどうか、種類や量は、年齢や持病、症状の強さをみて医師が決めます。ここでは具体的な薬の名前や量はお伝えしません。市販薬を自己判断で使わず、医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
低血圧そのもののために手術が必要になることは通常ありません。心臓や血管の病気など、別の原因が見つかった場合に、専門的な処置が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
血圧手帳をつけて、測定した時刻と症状を一緒に記録すると、パターンが見えやすくなります。「数値を上げること」を目標にしすぎず、無理のない範囲で生活のリズムを整えることが大切です。調子が良い日と悪い日があっても不思議ではありません。
生活習慣のアドバイス
- 朝にカーテンを開けて光を浴び、体内時計を整える
- 急に立ち上がらず、動作をゆっくりにする
- 立ち仕事の合間に足を動かしたり、座って休む
- 長時間の入浴や熱いお風呂を避ける
- ウォーキングなど無理のない運動を習慣にする
- 睡眠不足や疲れをためない
- 体調が悪い日は無理をせず、周りに助けを求める
食事と運動
食事はバランスよく、水分を多めにとることを心がけます。塩分については、持病によって適量が違うため医師に相談してください。運動は、ふくらはぎなどの下半身の筋肉を保つと、血液が心臓に戻りやすくなります。ウォーキングや水中運動など、無理なく続けられるものがおすすめです。急に激しい運動を始めたり、運動後のだるさを我慢したりしないようにしましょう。
精神的健康と心の健康
毎日の立ちくらみや「また倒れるかもしれない」という不安は、思っている以上につらいものです。特に10代では、朝起きられないことが学校生活の負担になり、気持ちが落ち込むこともあります。つらさを一人で抱え込まず、家族や先生、医療者に話してください。気持ちが追い詰められたときや、命に関わる緊急のときは、ためらわず救急(119)を呼んでください。
予防
体質による低血圧は完全には防げませんが、脱水、長時間の立ちっぱなし、急な立ち上がり、熱いお風呂、飲酒など、症状を引き起こすきっかけは工夫で減らせます。日ごろから水分をとり、無理のない生活リズムを保つことが役立ちます。
検診プログラム
健康診断や家庭での血圧測定で、自分の血圧の傾向を知っておくと役立ちます。症状がなくても、数値を記録しておくと変化に気づきやすくなります。
合併症
治療しない場合
- 転倒や骨折(特に高齢者)
- 気を失うことによるけがや事故
- めまいやだるさが続くことによる生活の質の低下
- 脳や心臓への血流が減ることによるふらつきや集中しづらさ
- 貧血や心臓の病気など、原因となる病気の発見が遅れること
長期的な見通し
低血圧の多くは命に関わるものではなく、生活の工夫で症状が軽くなることが期待できます。原因が見つかれば、それを治療することで改善する場合も多くあります。心配な症状があるときは早めに医療機関に相談し、自分に合った付き合い方を見つけていきましょう。
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最終更新: 2026年10月24日
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