妊娠中の肺と呼吸の健康
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
妊娠すると、赤ちゃんに酸素を送るために体が大きく変化します。肺や呼吸の働きも変わり、息切れを感じることは珍しくありません。この記事では、妊娠中の肺と呼吸の健康について、症状や受診の目安、日常生活での注意点をわかりやすく説明します。
重要な事実
- 妊娠中は赤ちゃんに酸素を送るため、体が酸素を約20%多く必要とします。
- 子宮が大きくなって横隔膜が押し上げられると、息苦しさを感じやすくなります。
- 息切れがひどいときや胸の痛みがあるときは、遠慮せず産科・呼吸器科に相談し、緊急時は119番してください。
妊娠中の息切れはとても一般的で、特に妊娠後期(7か月~9か月)の妊婦さんの約6割が感じるともいわれています。ただし、激しい息苦しさや胸の痛みを伴う場合は別の問題の可能性があるため、注意が必要です。
妊娠中のすべての女性に起こりうる症状ですが、もともとぜんそく(喘息)やたばこを吸う習慣がある方、肥満の方、貧血のある方は、より注意が必要です。
症状
- 急に激しい息苦しさが現れた。
- 胸の強い痛み、または背中や肩まで広がる痛みがある。
- 血の混じった痰(たん)や血を吐く。
- 唇や爪が青く見える。
- 足の片側が急に腫れて痛む(血栓の可能性)。
- ⚠息切れが時間とともに悪くなり、話をするのもつらい。
- ⚠38度以上の発熱がある。
- ⚠痰のからむ咳が続く。
- ⚠動悸(どきどき)がひどい。
- ⚠横になれないほど息苦しい。
一般的な症状
- 階段や坂道など、少し動いただけで苦しくなる。
- 横になると息苦しく、座ると楽になる。
- 息を吸っても十分に入っていない感じがする。
- 日常の中での息切れが妊娠前に比べて増えた。
子供の症状
- おなかの赤ちゃんに症状はありませんが、ママの呼吸が苦しくなり酸素が不足すると、胎動が減ることがあります。普段と違うと感じたらすぐに産院へ連絡してください。
高齢者の症状
- 35歳以上の高齢出産では、妊娠高血圧症候群や肺の合併症のリスクが高まることがあります。少しの息切れでも、いつもと違うと感じたら早めに受診を検討しましょう。
原因
主な原因
- 妊娠で増える女性ホルモン(プロゲステロン)が呼吸を促し、息が速くなる。
- 子宮が大きくなって横隔膜を押し上げ、肺が広がりにくくなる。
- 血液量や心拍数が増え、心臓と肺に負担がかかる。
- もともとの喘息や貧血、肺の病気が妊娠で悪化することがある。
リスク要因
- 妊娠前からの喘息
- たばこを吸っている、または受動喫煙がある
- 多胎妊娠(双子など)
- 妊娠高血圧症候群
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息切れがひどくなり、家事や仕事ができない。
- 咳や痰、発熱が続く。
- 動悸や胸の違和感がある。
- 赤ちゃんの胎動をあまり感じない。
定期受診を予約すべき場合:
- 定期健診のときに、息苦しさや咳の症状を必ず伝えましょう。
- かかりつけの産科医に、妊娠中の肺のチェックを相談する。
診断
医師はまず、症状がいつからあるのか、どのような時に強くなるのかなどを詳しく聞きます。そのうえで、聴診器で肺の音を聞いたり、血中の酸素濃度を測ったりします。必要に応じて、血液検査や心電図、胸部レントゲン(おなかを防護して行います)などで詳しく調べます。
行われる可能性のある検査
- 問診および聴診(呼吸音を聞く)
- パルスオキシメーターで血中酸素濃度を測る
- 血液検査(貧血や炎症の有無)
- 肺機能検査(息を吸う・吐く力を測る)
- 胸部レントゲン(必要時、妊娠中でも安全に配慮して実施)
診察で予想されること
検査は、一般的に痛みを伴わないものが多く、妊婦さんと赤ちゃんの安全に配慮して行われます。結果が出たら、医師があなたの状態に合った計画を説明してくれます。必要な場合には、産科と呼吸器科の医師が連携して治療を行います。
治療
治療の内容は、原因によって異なります。妊娠中の息切れの多くは特別な治療をしなくても、休息や体位を変えることで楽になります。喘息や感染症、血栓症などの病気が関係している場合は、妊娠中に使える安全な方法で治療を進めます。医師は赤ちゃんへの影響を考えて、一番負担の少ない治療を選びます。
自宅でのセルフケア
- 左側を下にして横になり、子宮が大きな血管を圧迫しないようにする。
- 枕を重ねて上の体を起こし気味にして休む。
- ゆっくり歩く、無理をしない。
- たばこの煙やアレルゲン、空気の汚れを避ける。
- 暑い場所を避け、涼しい部屋で過ごす。
- きつい服を避け、ゆったりとした服を着る。
医療治療
病状に合わせて、吸入薬(息を吸って使う薬)、抗生物質(感染症を抑える薬)、血液を固まりにくくする薬などが使われることがあります。いずれも妊娠中に安全とされている範囲で、医師が慎重に選択します。必ず医師の指示に従い、自己判断で薬をやめたり増やしたりしないでください。
手術が検討される場合
妊娠中の肺の病気で手術が必要になることはまれですが、肺の中に水や空気がたまる、肺自体がつぶれる、などの場合は、呼吸を助けるための処置や手術が検討されることがあります。その際は産科と呼吸器外科の医師が連携し、赤ちゃんへの影響を最小限にしながら行います。
この病気と共に生きる
自分の体の変化を毎日観察し、「いつもよりしんどい」と感じたときは、ためらわずに休むことが大切です。呼吸が落ち着く楽な姿勢を見つけ、ゆっくりと鼻から吸って口から吐く呼吸を心がけましょう。
生活習慣のアドバイス
- 妊娠中は完全に禁煙し、周りの人にも分煙や禁煙をお願いする。
- 適度な運動(妊娠中のウォーキングなど)を医師に相談しながら行う。
- 体重増加を適正に保つ。
- 規則正しい生活と十分な睡眠をとる。
食事と運動
バランスの良い食事は、肺の働きを支えるために基本です。特に貧血予防のために鉄分を含む食品(レバーやほうれん草など)を意識しましょう。運動は息がはずむ程度の軽いウォーキングがおすすめですが、必ず担当医の許可を得てからにしてください。
精神的健康と心の健康
息苦しさを感じると「このままで大丈夫だろうか」と不安になるのは自然なことです。妊娠中は感情が揺れやすい時期でもあります。つらい気持ちは一人で抱えず、パートナーや家族、助産師・保健師に話してください。必要なら、心のケアの専門機関を紹介してもらうこともできます。
予防
すべての妊娠中の肺トラブルを防ぐことはできませんが、妊娠前から喘息や生活習慣を整えておくとリスクを減らせます。妊娠中も、検診をきちんと受け、早期に気づくことが予防になります。
ワクチン
インフルエンザや新型コロナウイルスなどに関しては、妊娠中でも受けられる予防接種があります。感染症にかかると呼吸状態が悪化することがあるため、予防接種についても医師と相談しましょう。
検診プログラム
妊娠初期や中期の定期検診で、貧血や血圧、酸素濃度をチェックすることで、肺の合併症のリスクを早く見つけることができます。気になる症状があれば、次の検診を待たずに相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 喘息が悪化して呼吸が苦しくなり、赤ちゃんに十分な酸素がいきわたらなくなる。
- 肺炎などの感染症が重くなり、全身に影響が出る。
- 肺に血の塊(血栓)が詰まる肺塞栓症(はいそくせんしょう)を起こし、命に関わることがある。
- 早産や低出生体重のリスクが上がる。
長期的な見通し
多くの妊婦さんは、息切れを感じても大きな問題にはなりません。きちんと医師の診察を受け、指示された治療や生活の工夫を取り入れれば、妊娠や出産を安全に乗り越え、健康な赤ちゃんを迎えることができます。あなた自身の体を大切に、無理をせず周囲を頼りながら過ごしましょう。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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