Mumps orchitis
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の合併症の一つで、片方または両方の精巣(テストクル)が炎症を起こして腫れたり痛んだりする状態です。おたふくかぜウイルスが原因で、思春期以降の男性に多く見られます。
重要な事実
- おたふくかぜの男性患者の約20~30%に起こることがあります。
- 片方の精巣だけ炎症を起こすことが多く、両方の場合は約15%です。
- 不妊(子供ができにくくなること)のリスクはありますが、多くの場合は自然に治ります。
- 予防のために、おたふくかぜのワクチン接種が効果的です(日本では麻しん・おたふくかぜ・風しん混合ワクチンとして定期接種があります)。
おたふくかぜ自体はワクチンで減っていますが、かかった場合、思春期以降の男性では比較的よく見られる合併症です。
主に思春期(12歳以上)から成人の男性で、おたふくかぜにかかったことがない、またはワクチンを受けていない人がかかると、発症するリスクが高まります。
症状
- 突然の激しい精巣の痛み(特に片方)
- 吐き気や嘔吐を伴う痛み
- 意識がもうろうとする
- 高熱(40度以上)でぐったりしている
- ⚠精巣の腫れや痛みが数時間以内に急に悪化した
- ⚠陰嚢が赤黒くなった
- ⚠発熱が続き、痛みが強い
- ⚠排尿(おしっこ)に異常がある(血が混じる、痛いなど)
一般的な症状
- 精巣の腫れ(片方または両方)
- 精巣の痛み(ズキズキする、または重だるい感じ)
- 陰嚢(いんのう:精巣を包む皮)の赤みや熱感
- 発熱(38度以上の熱が出ることが多い)
- 全身のだるさや頭痛
子供の症状
- おたふくかぜの症状(耳の下の腫れや熱)は出ることが多いですが、精巣の炎症はほとんど起こりません。
- 痛みをうまく伝えられない場合があるので、親が陰嚢の腫れや触られたがらない様子に気づくことがあります。
高齢者の症状
- 高齢者ではおたふくかぜ自体がまれですが、かかった場合、精巣炎の症状が強く出ることがあります。
- 痛みが長引いたり、回復が遅くなることがあります。
原因
主な原因
- おたふくかぜウイルス(ムンプスウイルス)に感染すると、ウイルスが精巣に広がって炎症を起こします。おたふくかぜにかかってから約4~8日後に精巣の症状が出ることが多いです。
リスク要因
- おたふくかぜの予防接種を受けていない
- 思春期以降の男性である(小児ではまれ)
- おたふくかぜの患者と濃厚接触した
- 免疫力が低下している(病気や薬の影響で)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 精巣の痛みや腫れが急に始まった場合(精巣捻転という緊急の病気と区別が必要)
- 高熱(38.5度以上)が続く場合
- 痛みで歩けない、または座っていられない場合
定期受診を予約すべき場合:
- 精巣の腫れや痛みが2~3日続くが、熱は下がっている場合
- おたふくかぜの症状が出てから数日後に精巣の違和感を感じた場合
診断
医師が問診と診察で診断します。典型的なおたふくかぜの経過と精巣の症状があれば、ほぼ診断がつきます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(ウイルスに対する抗体の有無を調べる)
- 尿検査(他の感染症がないか確認)
- 超音波検査(エコー:精巣の血流や腫れの状態を調べる)
- 咽頭ぬぐい液(のどの粘膜を拭う)検査(ウイルスを直接検出する)
診察で予想されること
診察では陰嚢や精巣の状態を優しく触って確認します。超音波検査は痛みを伴いません。診断がつけば、症状に合わせた治療方針を説明されます。
治療
おたふくかぜ精巣炎の治療は、症状を和らげるための対症療法(原因そのものではなく症状を軽くする治療)が中心です。安静にして、炎症を抑えることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 安静にし、ベッドやソファで横になって過ごす
- 陰嚢を冷やす(タオルで包んだ保冷剤などを当てる)
- 陰嚢を支える(下着にタオルを挟む、または専門のサポーターを使う)
- 痛みが強いときは市販の消炎鎮痛剤(医師や薬剤師に相談の上)を使う
- 水分を十分に取る
- 熱があるときは解熱剤を使う(ただし小児はアスピリン系を避ける)
医療治療
医師は炎症や痛みを抑えるため、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を処方することがあります。重症の場合、副腎皮質ステロイド薬が短期間使われることがありますが、医師の判断が必要です。抗ウイルス薬はおたふくかぜには効果が確認されていません。
手術が検討される場合
通常、手術の必要はありません。ただし、まれに膿瘍(うみの塊)ができたり、精巣が壊死(組織が死ぬ)した場合は、手術で取り除くことがあります。また、精巣捻転の疑いがある場合は緊急手術が必要です。
この病気と共に生きる
症状が落ち着くまでは安静が一番です。通常、腫れや痛みは1~2週間で徐々に治まります。その後数週間は無理をせず、体調をみながら日常生活に戻りましょう。
生活習慣のアドバイス
- 症状が続く間は入浴よりもシャワーで済ませる(熱い湯は炎症を悪化させる可能性)
- 激しい運動や重い荷物を持つのを避ける
- 自慰行為や性交は痛みがなくなるまで控える
- 十分な睡眠を取る
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、バランスの良い食事を心がけましょう。水分はこまめに取りましょう。運動は症状が完全に治まった後に、軽い散歩から始めてください。
精神的健康と心の健康
精巣のトラブルや不妊の可能性は、精神的に大きなストレスになります。不安や落ち込みが続く場合は、一人で抱えずに医師やカウンセラーに相談しましょう。パートナーや家族に気持ちを伝えることも大切です。
予防
おたふくかぜそのものを予防することが最も効果的です。おたふくかぜのワクチン(MRワクチンに含まれる)を定期接種で受けることで、かかるリスクを大幅に減らせます。
ワクチン
日本では、1歳児と就学前の1年に麻しん・風しん・おたふくかぜの混合ワクチン(MRワクチン)が定期接種として行われています。2回接種することで免疫が確実になります。なお、おたふくかぜにかかったことがある人やワクチン接種歴がある人は、精巣炎を起こすことはほとんどありません。
検診プログラム
特別なスクリーニング検査はありません。おたふくかぜが流行している地域では、ワクチン接種歴を確認しましょう。
合併症
治療しない場合
- 精巣の萎縮(腫れた後に小さくなることがある)
- 不妊(精子の数や運動が低下する)
- 慢性の精巣痛(長期間痛みが続く)
- 極めてまれに精巣の壊死(組織が死ぬ)
長期的な見通し
ほとんどの場合は、適切な安静と対症療法で完全に回復します。片方だけの炎症なら不妊のリスクは低く、両方でも約半数は自然に妊娠できる可能性があります。治療をしっかり行えば長期的な問題は少なく、多くの男性が健康な生活を送っています。心配なことは、早めに医師に相談してください。
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最終更新: 2026年7月9日
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