Nephrotic syndrome awareness
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
ネフローゼ症候群(ネフローゼしょうこうぐん)は、腎臓(じんぞう)のフィルターの働きが何らかの理由で傷つき、血液中のたんぱく質(特にアルブミン)が尿にたくさん漏れ出してしまう病気です。その結果、体がむくんだり、疲れやすくなったりします。
重要な事実
- 腎臓のフィルター(糸球体)が傷つくことで起こります。
- 尿に大量のたんぱく質が出るのが特徴です。
- 治療によってコントロールできることが多いですが、長く付き合うこともあります。
ネフローゼ症候群は、それほど珍しい病気ではありません。子どもでは10万人あたり年間2~7人、成人では10万人あたり年間3人程度が新たに診断されます。
どの年齢でも起こりますが、子ども(特に1~6歳)と高齢者にやや多く見られます。男性の方が女性よりやや多い傾向があります。
症状
- 急に息が苦しくなった
- 胸が痛い、または圧迫感がある
- 意識がぼんやりする、または反応が鈍い
- ⚠むくみが急に強くなり、歩くのもつらい
- ⚠尿が極端に出なくなった(半日以上ほとんど出ない)
- ⚠発熱がある(感染症の可能性)
- ⚠激しい腹痛がある
一般的な症状
- 体のむくみ(浮腫。特にまぶた、足、くるぶし、お腹)
- 尿の泡立ち(たんぱく尿のサイン)
- 疲れやすさ、だるさ
- 食欲不振
- 体重増加(むくみによる)
子供の症状
- 特にまぶたのむくみが朝に目立つことが多い
- お腹が張って痛がる(腹水)
- 陰のうや陰部がむくむ
- 感染症(風邪など)にかかりやすくなる
高齢者の症状
- 足や腰のむくみが強く出ることがある
- 息切れ(肺に水がたまる胸水)
- 血圧が高くなることがある
- 体力の低下が目立つ
原因
主な原因
- 原発性(原因がはっきりしないもの。多くは免疫の異常による糸球体の炎症)
- 二次性(他の病気が原因で起こるもの。例:糖尿病、ループス、アミロイドーシス、薬剤、感染症)
リスク要因
- 家族歴がある(一部のタイプでは遺伝も関係)
- 他の自己免疫疾患(例:全身性エリテマトーデス)
- 長期間の感染症(例:B型肝炎、C型肝炎、HIV)
- 特定の薬剤(例:非ステロイド性抗炎症薬や一部の抗がん剤)
- 高齢になる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状がある場合はすぐに119番で救急車を呼んでください
- むくみが急に悪化して日常生活に支障がある
定期受診を予約すべき場合:
- まぶたや足のむくみが2~3日続く
- 尿の泡立ちが気になる
- 疲れやすさが続く
- 体重が急に増えた(数日で2~3kg以上)
診断
医師が問診(お話を聞く)と診察を行い、尿検査と血液検査で診断します。尿のたんぱく質量や血液中のアルブミン値、コレステロール値などを調べます。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(たんぱく尿の量を調べる。24時間尿をためることもある)
- 血液検査(アルブミン値、総たんぱく、コレステロール、腎機能など)
- 腎生検(腎臓の組織を針で少し取って顕微鏡で調べる。原因を詳しく調べるために行うこともある)
診察で予想されること
診断には数日から1週間程度かかることがあります。腎生検が必要な場合は、入院して行うこともありますが、局所麻酔で行うため大きな痛みはありません。診断が確定すれば、治療方針を専門医(腎臓内科)と相談しながら決めていきます。
治療
ネフローゼ症候群の治療の主な目標は、たんぱく尿を減らしてむくみを取ることと、腎臓の機能を守ることです。原因によって治療法は異なりますが、多くの場合、薬物療法と生活習慣の改善を組み合わせて行います。
自宅でのセルフケア
- 塩分を控えた食事(むくみと高血圧を予防)
- たんぱく質は適切な量を医師と相談(不足しすぎないように注意)
- 水分の摂りすぎに注意(医師から指示がある場合)
- 体重と血圧を毎日測る
- 感染症予防のため手洗い・うがいをしっかりする
医療治療
治療の中心は、免疫の異常を抑える薬(ステロイドや免疫抑制薬)と、むくみを取るための利尿薬です。また、血圧を下げて腎臓を守る薬(特にACE阻害薬やARBという種類の薬)もよく使われます。これらの薬は医師の指示に従って使うことが大切です。治療期間は人によって異なり、数か月から数年かかることもあります。
手術が検討される場合
通常、手術が必要になることはありません。ただし、腎機能が極度に低下して透析が必要になった場合には、血管の手術(シャント造設)や腎移植が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
ネフローゼ症候群と診断されても、適切な治療と生活管理で日常生活を送ることが多くの場合可能です。定期的に通院し、指示された薬をきちんと飲み続けることが大切です。体調の変化(むくみの増加、体重増加、発熱など)があれば早めに医師に連絡しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活と十分な睡眠
- 感染症を防ぐための注意(予防接種の確認、人混みを避けるなど)
- 喫煙している場合は禁煙する
- アルコールは医師と相談(控えたほうがよい場合がある)
- ストレスをためないようにする
食事と運動
食事は、むくみや高血圧を防ぐために塩分を控えめにしましょう。たんぱく質は完全に制限する必要はなく、適量を医師や栄養士と相談します。カリウムやリンを制限することもあります。運動は、むくみがひどいときは安静が必要ですが、状態が安定していれば軽いウォーキングなどは問題ありません。ただし、激しい運動は避けたほうがよい場合もありますので、医師に相談してから行いましょう。
精神的健康と心の健康
長期間の治療が必要になることがあり、外見の変化(むくみやステロイドによる顔の変化など)に悩むこともあります。また、再発への不安や疲れが続くこともあります。そうした気持ちは自然なことです。一人で抱え込まず、家族や友人、医療スタッフに話すことが大切です。
予防
原発性のネフローゼ症候群は、はっきりした予防法はわかっていません。ただし、二次性の場合は、原因となる病気(糖尿病や感染症など)を適切に管理することでリスクを下げられる可能性があります。
ワクチン
予防接種(特にインフルエンザ、肺炎球菌ワクチン)は、感染症を予防するために推奨されることがあります。治療で免疫が弱まることがあるため、医師と相談して受けるようにしましょう。
検診プログラム
一般的な健康診断の尿検査でたんぱく尿が見つかることがあります。早期発見のためにも、年に一度は尿検査を含む健康診断を受けることをおすすめします。
合併症
治療しない場合
- 感染症(肺炎、腹膜炎など)にかかりやすくなる
- 血栓(血の塊)ができて血管を詰まらせる(脚の静脈血栓症や肺塞栓症)
- 急性腎障害(急に腎臓の働きが悪くなる)
- 慢性腎臓病から腎不全(透析が必要になることも)
- 高脂血症(コレステロールが高くなる)が長く続く
長期的な見通し
ネフローゼ症候群は、治療によく反応する人が多く、特に子どもの場合、約8割が完全に治る(寛解する)と言われています。大人でも適切な治療を続ければ、多くの場合症状をコントロールでき、正常に近い生活を送ることができます。再発することもありますが、そのたびに治療を行います。長く付き合う病気でも、希望を持って治療に取り組みましょう。
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最終更新: 2026年7月16日
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