妊娠中の膵臓(すいぞう)の健康
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
膵臓(すいぞう)は、胃の後ろ側にある臓器で、食べ物を消化するための消化液と、血糖(血液中の糖の量)を調整するためのインスリンというホルモンを分泌しています。妊娠中は、胎盤から出るホルモンの影響などで体が変化し、膵臓に負担がかかることがあります。妊娠中に問題になりやすいのは、急性膵炎(急に膵臓に炎症が起こり、強い腹痛が起きる病気)や妊娠糖尿病(妊娠中に血糖値が高くなってしまう状態)です。しかし、多くの妊婦さんは問題なく妊娠を過ごせます。
重要な事実
- 膵臓は、食べ物の消化と血糖の調整の両方に大切な役割をしています。
- 妊娠中は、ホルモンの影響で血糖値が上がりやすくなります。
- 妊娠中の急性膵炎はまれですが、発症した場合は母体と赤ちゃんの両方に影響が出ることがあります。
- 妊娠糖尿病は、適切な食事管理と医療ケアでコントロールできます。
妊娠中の膵臓の病気は、多くはありません。急性膵炎は非常にまれで、妊娠1万件あたり数件と報告されています。妊娠糖尿病はより多く、日本人の妊婦では約10人に1人とされています。
妊娠中の女性であれば誰にでも起こり得ますが、特に肥満の方、妊娠前から血糖値が高めの方、胆石がある方、血液中の脂肪(トリグリセリド)が高い方は注意が必要です。
症状
- 急に強いみぞおちの痛みが現れた
- おう吐が続いて水分が取れない
- 意識がぼんやりする
- 息苦しさがある
- ⚠みぞおちの痛みが数時間以上続く
- ⚠痛みとともに発熱がある
- ⚠皮膚や白目が黄色くなっている(黄だん)
- ⚠食事をまったく取れない
一般的な症状
- みぞおちの痛み(急に強くなることがあります)
- 背中や腰への痛みが広がる
- 吐き気やおう吐
- おなかの張り
- 発熱(体温が37.5度以上など)
原因
主な原因
- 胆石(たんせき): 胆汁の成分が固まってできる石が、すい管をふさぐと膵炎を起こすことがあります
- 高トリグリセリド血症: 血液中の脂肪が極端に高くなると、膵臓に負担をかけます
- 妊娠に伴うホルモンの変化: プロゲステロンなどの影響で、消化管や膵臓の働きが変化します
- その他: 感染症や外傷、特定の薬の影響(まれ)
リスク要因
- 妊娠前からの肥満
- 妊娠前に糖尿病や高脂血症と診断されている
- 胆石を持っている
- 家族に膵臓の病気の人がいる
- 妊娠中の飲酒(お酒は胎児に害があるため、妊娠中は完全に控えることが大切です)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい腹痛や背中の痛みがある
- おう吐がひどく、水分も取れない
- 発熱が続く
- 痛みで体を動かせない
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠中の定期健診で血糖値が高いと指摘された
- 食後に胃もたれやみぞおちの不快感が続く
- 体重が急に増えた、または減った
診断
妊娠中でも、問診と身体診察、血液検査、腹部超音波(エコー)などを行って診断します。必要があれば、放射線を使わないMRI検査を行うこともあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査: 膵臓の酵素(アミラーゼやリパーゼ)の値を調べます
- 腹部超音波(エコー): おなかの上から超音波を当てて、膵臓や胆のうを観察します
- MRI: 放射線を使用しないため、妊娠中でも安全に行えます
診察で予想されること
検査は妊娠中でも必要な場合には安全に行えます。おなかの赤ちゃんへの影響を心配する方も多いですが、医師は赤ちゃんの状態を確認しながら進めます。不安なことや疑問は、検査前に遠慮なく担当医に伝えましょう。
治療
妊娠中の膵臓の病気の治療は、お母さんの体を守りながら、赤ちゃんへの影響を最小限にすることを目指します。軽症の場合は、入院して食事を一時的に止め、点滴で栄養と水分を補給し、安静にして経過を見ることが基本です。重症の場合は、赤ちゃんの状態に合わせて出産のタイミングを考慮することもあります。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示に従って、食事を一定時間控える(絶食)
- 安静にして、体を休める
- 飲み物は少量ずつ、医師の許可のある範囲で取る
医療治療
点滴による水分・栄養補給や、痛み・吐き気を和らげる治療薬を使用するなど、対症療法(症状をやわらげる治療)が中心です。原因が胆石の場合は、内視鏡を使って乳頭部を切開し、石を取り除く処置が必要になることもありますが、妊娠の週数や状態に合わせて慎重に行われます。抗菌薬(細菌を退治する薬)が必要な場合もありますが、妊娠中は赤ちゃんに影響の少ないものが選ばれます。
手術が検討される場合
治療で改善しない重症の膵炎や、胆石が原因で膵炎を繰り返す場合には、手術が検討されることがあります。ただし、妊娠中は手術のリスクが高いため、赤ちゃんの成長状態を確認し、可能であれば出産後に手術を行う場合もあります。最終的な判断は、産科と消化器の専門医が相談して行います。
この病気と共に生きる
妊娠中に膵臓の病気を経験した後は、退院後も生活習慣の見直しが大切です。特に食事管理と体重管理が重要です。定期的に通院し、血液検査や超音波検査で経過を見守りましょう。
生活習慣のアドバイス
- 脂っこい食事を避け、消化の良い食品を選ぶ
- 一度にたくさん食べず、1日5~6回に分けて少量ずつ食べる
- 妊娠中はアルコールを完全に控える
- 適度な運動(ウォーキングなど)を心がけるが、医師に相談してから始める
- 十分な睡眠と休養を取る
食事と運動
膵臓への負担を減らすためには、高脂肪の食事を避け、野菜、果物、全粒穀物、赤身の肉や魚をバランスよく取り入れましょう。妊娠中の運動は、医師に相談の上で、無理のない範囲で行ってください。つわりの時期は特に無理をせず、体調と相談しながら生活しましょう。
精神的健康と心の健康
妊娠中に病気があると、お母さん自身の心も不安になりがちです。怒りや悲しみ、イライラを感じるのは自然なことです。無理に我慢せず、パートナーや家族、友人に話しましょう。また、医療者に不安を伝えることで、適切なサポートにつながります。
予防
すべての膵臓の病気を防げるわけではありませんが、妊娠前から健康的な体重を維持し、バランスの良い食事と適度な運動を心がけることで、リスクを減らせます。また、妊娠中の定期的な健診で、血糖値や血液中の脂質をチェックすることが大切です。
ワクチン
膵臓の病気を直接予防する特別なワクチンはありません。妊娠前に、風疹などの定期予防接種を済ませておくことは、お母さんと赤ちゃんの健康のために重要です。
検診プログラム
妊娠中の定期健診では、血液検査や尿検査で血糖値やたんぱく尿などを調べます。妊娠24週から28週にかけて行う血糖検査(ブドウ糖負荷試験)で、妊娠糖尿病の早期発見ができます。リスクの高い方は、妊娠初期から血糖値をチェックすることがあります。
合併症
治療しない場合
- 膵炎が重症化すると、母体の脱水や感染症を起こすことがあります
- 赤ちゃんの発育不全(おなかの中で十分に育たない)のリスクがあります
- 重症の場合、早産や流産の可能性があります
- 治療が遅れると、お母さんの命に関わることもあります(まれ)
長期的な見通し
妊娠中の膵臓の病気は、早期に発見して適切な治療を受ければ、多くの場合、母体と赤ちゃんの予後は良好です。妊娠中は医療チームのサポートを受けながら、無理せず治療に専念してください。希望を持って、赤ちゃんに会える日を楽しみに過ごしましょう。
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重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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