胸膜炎の治療と過ごし方:患者さんへ
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
胸膜炎は、肺の表面と胸壁の内側を覆う薄い膜(胸膜)に炎症が起こる病気です。炎症によって胸膜がこすれ合い、呼吸や咳のときに鋭い痛みが生じることがあります。原因となる病気を治療し、痛みを和らげることが大切です。
重要な事実
- 胸膜は肺と胸壁の間にある薄い膜で、肺の動きをなめらかにする役割があります。
- 胸膜炎の多くはウイルス感染や細菌感染が原因で起こります。
- 原因を適切に治療すれば、多くの人は数週間で回復しますが、経過は原因によって異なります。
胸膜炎は、それほど珍しい病気ではありません。ただし、日本で正確な患者数の統計があるわけではなく、かぜや肺炎の合併として起こることも多いため、実際にはもっと多くの人が経験している可能性があります。
どの年齢でも起こり得ますが、若い人や、肺の感染症、肺炎、自己免疫疾患を持っている人、胸部のけがをした人に多く見られます。喫煙する人もリスクが高くなります。
症状
- 突然の激しい胸の痛み
- 突然の強い息苦しさや呼吸困難
- 血が混じった痰や咳が出る
- 顔色が青白い、または唇が紫になる
- ⚠胸の痛みが1週間以上続く、またはどんどん悪くなる
- ⚠高熱(38度以上)が出ている
- ⚠息切れや呼吸しにくい感じが続く
- ⚠薬や安静でも痛みが治まらない
一般的な症状
- 呼吸や咳、くしゃみで悪化する鋭い胸の痛み
- 深呼吸をすると痛むため、浅く速い呼吸になる
- 発熱や悪寒
- 乾いた咳
- 息苦しさや呼吸の違和感
子供の症状
- 胸の痛みをうまく説明できないことがあり、ぐずったり、抱っこをせがんだりすることがある
- 食欲が落ちて、遊ばなくなることがある
- 熱が続く、または元気がない様子が見られる
高齢者の症状
- 痛みを強く感じず、だるさや息切れが目立つことがある
- 意識がぼんやりしたり、判断力がにぶったりすることがある
- 食欲不振や体重減少が見られることもある
原因
主な原因
- ウイルス感染(かぜやインフルエンザなど)
- 細菌感染(肺炎による胸膜炎など)
- 肺がんなどの腫瘍が胸膜に広がった
- 自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなど)
- 胸部のけがや手術による刺激
- 肺の血管に血のかたまりが詰まる病気(肺塞栓症)
リスク要因
- 免疫力が低下している(糖尿病などの持病がある、免疫抑制薬を使っている)
- 最近、呼吸器の感染症にかかった
- 肺炎や肺がんなどの肺の病気がある
- 長期間の安静や手術後で、胸の血流が悪い状態
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛みが突然強くなった、または息苦しさが急に悪化した
- 高熱とともに胸の痛みが出た
- 咳に血が混じる、または痰の量が急に増えた
定期受診を予約すべき場合:
- 胸の痛みが数日から1週間以上続いている
- 原因が分からない発熱や咳が続いている
- 胸の違和感や痛みが気になって受診したい
診断
医師は、まず症状や病歴を詳しく聞き、聴診器で胸の音を確認します。胸膜炎が疑われる場合は、画像検査や血液検査を行い、胸膜の炎症や胸水(胸膜の中にたまった液体)の有無を調べます。
行われる可能性のある検査
- 胸部X線(レントゲン)検査
- 血液検査(炎症の程度を調べる)
- 胸部CTスキャン
- 超音波検査(胸水を確認し、位置を調べる)
- 胸水検査(たまった液体を針で採取し、原因を調べる)
診察で予想されること
胸膜炎の診察は、通常外来で行われます。胸水がたまっている場合は、局所麻酔をして針や細い管で水を抜く処置をすることもあります。検査中に強い痛みや息苦しさを感じた場合は、すぐに医師や看護師に伝えてください。
治療
治療は胸膜炎の原因によって異なります。ウイルス感染が原因の場合は、安静と痛みの管理が中心になります。細菌感染が原因の場合は抗菌薬による治療が行われます。胸水が大量にたまって呼吸が苦しい場合は、胸水を抜く処置が優先されることもあります。
自宅でのセルフケア
- しっかり休んで、体力を回復させる
- 痛みが強いときは無理に動かず、楽な姿勢をとる
- 十分な水分をとり、体内の乾燥を防ぐ
- 禁煙する(タバコの煙は咳を悪化させます)
- 医療機関の指示に従って通院し、経過を観察する
医療治療
胸膜炎の治療には、炎症を抑える薬、痛みを和らげる薬、細菌感染がある場合は抗菌薬などが使われます。ただし、具体的な薬剤名や用量は医師があなたの状態に合わせて決めるため、ここでは記載しません。胸水が大量にたまっている場合は、針やチューブで液体を抜く処置を行います。自己免疫疾患が原因の場合は、免疫の働きを調整する治療が検討されます。必ず医師の説明を受け、指示に従って治療を続けてください。
手術が検討される場合
外科手術が必要になることはまれです。肺がんや膿胸(胸膜の中に膿がたまる病気)など、特定の原因が見つかった場合に、手術や胸腔ドレナージ(チューブを使って胸水や膿を体外に出す処置)が検討されます。
この病気と共に生きる
回復までの期間は原因によって異なりますが、数週間から数か月かかることがあります。焦らず、医師の指示に従って日常生活を送りましょう。痛みや息苦しさが続く間は、無理をせず、必要な休息をとることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける
- 十分な睡眠と休息をとる
- ゆっくり深呼吸をして、肺を少しずつ動かす
- 強い痛みを感じる動作や運動は避ける
- かぜや感染症にかからないよう、手洗い・うがいをこまめに行う
食事と運動
バランスのよい食事と十分な水分を心がけましょう。特に、抗炎症作用のある魚や野菜、果物を積極的にとるとよいといわれています。運動は、痛みや息苦しさがなくなってから、軽いウォーキングなどから始めて、体調に合わせて無理のない範囲で行いましょう。
精神的健康と心の健康
胸の痛みや息苦しさが続くと、不安や落ち込みを感じることがあります。それは自然な反応です。一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に気持ちを話しましょう。また、つらい気持ちが続いたり、自分を傷つけたいという強い感情が浮かんだりした場合は、すぐに信頼できる人に連絡し、地域の精神保健支援機関や救急(119)に助けを求めてください。
予防
胸膜炎そのものを完全に予防することはできませんが、肺炎やインフルエンザなどの感染症を予防することで、胸膜炎のリスクを減らせます。また、禁煙やバランスのよい生活習慣を心がけることも大切です。
ワクチン
インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種は、肺の感染症とそれに伴う胸膜炎の予防に役立つことがあります。日本では厚生労働省の指針に基づいて、高齢者や持病のある人に積極的に接種がすすめられています。詳しくは、かかりつけ医や自治体の予防接種窓口にご相談ください。
検診プログラム
定期的な健康診断や肺の検査を受けることで、肺炎や肺がんなどの胸膜炎の原因となる病気を早期に見つけることができます。特に喫煙者や持病がある人は、定期的に医師の診察を受けましょう。
合併症
治療しない場合
- 胸水が大量にたまり、呼吸が苦しくなる
- 膿胸(胸膜の中に膿がたまる)を起こす
- 胸膜が癒着し、肺の動きが制限される
- 原因となる感染症や腫瘍が進行する
長期的な見通し
胸膜炎の多くは、原因を治療すると数週間で改善します。ウイルス性の胸膜炎は自然に良くなることもありますが、細菌性の胸膜炎や原因が重い病気の場合は、治療が長引くこともあります。それでも、早期に診断して適切な治療を受ければ、多くの人が元の生活に戻ることができます。医学の進歩により治療の選択肢も広がっています。希望を持って治療に取り組みましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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