肺炎からの回復期に役立つ運動と呼吸リハビリテーション
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
肺炎とは、肺に炎症が起こる病気です。細菌やウイルスなどが肺の中に入ると、体はそれと戦うために炎症が起こります。そのため、肺で酸素を取り込む働きが弱くなり、咳(せき)、たん、発熱、息苦しさなどの症状が出ます。きちんと治療を受けて休めば多くの方は回復しますが、体力が落ちていることもあります。回復したあと、医師の指導のもとで運動や呼吸リハビリテーションを行うと、体力や呼吸の働きを取り戻す助けになります。
重要な事実
- 肺炎のあとは、焦らず段階的に運動を再開します。いきなり強い運動をすると、回復が遅くなることがあります。
- 呼吸リハビリテーションという方法があり、呼吸が楽になるように丁寧に体を動かす練習を行うことで、息苦しさの改善が期待できます。
- 運動を始める前には、必ず担当の医師に「いつから、どのくらいの運動をしてよいか」を確認してください。
肺炎は日本では身近な病気です。特に高齢者や乳幼児、持病のある方はかかりやすいですが、健康な大人でもかかることがあります。厚生労働省の統計でも、日本人の死因の上位に入る、注意が必要な感染症です。
肺炎は誰でもかかる可能性がありますが、特に65歳以上の高齢者、免疫の働きが弱っている方、喫煙される方、慢性の肺や心臓の病気をお持ちの方、そのほか誤嚥(ごえん:食べ物や唾液が気管に入ること)のリスクがある方に多く見られます。
症状
- 息ができず、苦しそうで、何も話せない
- 唇や爪が紫色になっている(チアノーゼ)
- 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない
- 突然、強い胸の痛みが現れた
- 呼吸が止まりそうになる
- ⚠39度以上の発熱が続く
- ⚠咳がひどくなり、眠れないほどである
- ⚠たんの量が増え、色が濃くなった
- ⚠呼吸をするときに苦しそうで、肩で呼吸している
- ⚠水分が摂れない、食事がまったくできない
一般的な症状
- 咳(せき)
- たん(痰)が出る、たんの色が変わる
- 発熱(ねつ)
- 息切れや呼吸が速くなる
- 胸の痛み(特に呼吸や咳のときに感じることがある)
- 全身のだるさ、疲れやすさ
子供の症状
- 呼吸がいつもより速い、ゼーゼーする
- 顔色が悪い、元気がない
- ぐったりしている、泣き声が弱い
- ミルクや食事をあまり食べない、飲まない
- 高い熱が続く
高齢者の症状
- 熱があまり高くないこともあるが、元気がなくなる
- 食欲が落ちる、水分を取らなくなる
- ぼんやりする、反応が鈍い
- せきやたんが長引く
- 転びやすくなる、動きが遅くなる
原因
主な原因
- 細菌(肺炎球菌など)による感染
- ウイルス(インフルエンザウイルス、新型コロナウイルスなど)による感染
- マイコプラズマやクラミジアなどの特殊な病原体
- 食べ物や唾液などが誤って気管に入って起こる「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」
リスク要因
- 65歳以上の高齢
- 慢性の肺の病気(COPDなど)や心臓病、糖尿病などの持病
- 免疫力が低下している(がん治療中、ステロイド剤などの使用を含む)
- 飲み込み(嚥下)の機能が低下している
- 栄養状態が悪い、体力が落ちている
- インフルエンザや風邪を繰り返す
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 運動をするとすぐ息切れがして、会話も続けられない
- 肺炎の治療が終わったあとも、咳やたん、発熱がぶり返す
- 胸の痛みや動悸(どうき)が続く
- 足や顔がむくむ、体重が急に増えた
- 安静にしていても息苦しい
定期受診を予約すべき場合:
- 回復期に運動を始める前に、医師から許可をもらっていない
- 体力が戻ったかどうか不安がある
- 運動の強さや時間について相談したい
- リハビリテーションの専門外来や呼吸ケア外来を紹介してもらいたい
診断
肺炎の診断は、問診や聴診(ちょうしん:聴診器で胸の音を聞くこと)に加えて、必要に応じて画像や血液の検査を行います。回復期に運動を始めるときも、医師が肺の状態や体力を評価したうえで、運動メニューを提案します。
行われる可能性のある検査
- 胸部X線(レントゲン)検査:肺の影や炎症の範囲を確認します。
- 血液検査:炎症の程度や酸素の運搬状態を調べます。
- 血液ガス分析(けつえきガスぶんせき):採血して血液中の酸素と二酸化炭素の量を調べます。
- 呼吸機能検査:息を吸ったり吐いたりする力や肺の容量を測定します。
- 脈拍(じゃくはく)・血中酸素飽和度(けっちゅうさんそほうわど)の測定:指にクリップを付けて測定する簡単な検査です。
診察で予想されること
診察では、医師が症状の経過や持病、服薬中の薬について質問します。そのうえで、必要に応じて検査が行われます。肺炎の診断がつくと、治療方針とともに「運動をしてよいか」「どの程度の運動が安全か」についても評価されます。回復期には、体力や呼吸の状態に合わせて運動強度が提案され、無理のない範囲で進められます。
治療
肺炎の治療は、原因となる細菌やウイルスへの対応、安静、水分補給、酸素や呼吸のケアが中心です。入院が必要な場合もあれば、自宅で治療できる場合もあります。回復後は、体力を取り戻すために運動や呼吸リハビリテーションが重要な役割を果たします。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめに取り、部屋の湿度を適度に保ちます。
- 十分な睡眠と休息をとり、疲れが残っているときは無理をしません。
- 医師に相談したうえで、毎日の歩行や軽いストレッチから運動を始めます。
- 呼吸リハビリテーションとして、口をすぼめてゆっくり息を吐く「口すぼめ呼吸」や、腹式呼吸を練習します。
- せきやたんが強いときは、体を温め、たんを出しやすくするために姿勢を工夫します。
- 喫煙をしている場合は、禁煙に取り組みます。
医療治療
肺炎の治療には、原因となる菌やウイルスに応じて薬が使われます。医師が症状や検査結果に基づいて適切な薬を選びます。必要な場合には、酸素吸入や点滴による水分・栄養の補給も行われます。抗菌薬などを使用する場合は、医師の指示に従って決められた期間きちんと服用することが大切です。運動については、医師や理学療法士が心拍数や息切れの程度を確認しながら、安全な運動プログラムを指導します。
手術が検討される場合
肺炎そのものに対する手術は、一般的にはほとんど行われません。ただし、肺炎が重症化して膿が肺のまわりにたまる「膿胸(のうきょう)」などの合併症が起きた場合は、胸に管を入れて膿を出す処置や、手術が必要になることがあります。主治医とよく相談して、必要であれば専門の医師に紹介してもらえます。
この病気と共に生きる
肺炎からの回復期は、日によって体調の波があるものです。調子が良い日は少し歩く、悪い日は安静にするなど、自分の体の声を聞きながら過ごしましょう。運動は、体力が戻ることを焦らず、息切れが楽になることを目標にして、少しずつ継続することが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙する(加熱式たばこも含めてやめることが推奨されています)。
- うがい・手洗いを行い、感染を予防する。
- インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種について医師と相談する。
- 部屋の換気をして、空気をきれいに保つ。
- 寝るときは上半身を少し高くすると呼吸が楽になることがあります。
- ゆっくり入浴し、長湯や熱すぎる湯は避ける。
食事と運動
食事は、たんぱく質やビタミンをバランスよく取り入れ、体力回復を助けます。むせやすい場合は、とろみを付けたり、一口量を減らしたりする工夫も有効です。運動は、まず医師の許可を得て、ウォーミングアップをしてから始めます。ウォーキングやストレッチなどの有酸素運動を、息がはずむ程度の強さで、1回10分から始め、無理のない範囲で少しずつ時間を延ばすのが一般的です。呼吸リハビリテーションとして、鼻からゆっくり吸って口をすぼめて長く吐く練習を、毎日数回行うと呼吸の効率が上がりやすくなります。
精神的健康と心の健康
肺炎で入院したり、長く休んだりすると、体力だけでなく気持ちも落ち込みやすくなります。運動は気分転換になることもありますが、無理に頑張りすぎるとストレスになることもあります。回復のペースは人それぞれです。「できたこと」を少しずつ認めながら進めることが大切です。
予防
肺炎は完全に予防することは難しいですが、かかるリスクを大きく減らすことはできます。日ごろの手洗い、うがい、バランスのよい食事、十分な睡眠を心がけ、体力をつけることが予防につながります。特に、肺炎になったあとは再発予防が大切です。
ワクチン
日本では、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンが定期接種・任意接種として受けられます。高齢者や持病のある方は、接種について医師に相談してください。予防接種の種類や接種時期は、かかりつけ医やお住まいの自治体に問い合わせるとよいでしょう。
検診プログラム
健康診断や定期健診の胸部X線検査で、肺炎のサインが見つかることがあります。肺炎のあとは、体力が戻った後も定期的に受診して、呼吸の状態をチェックしてもらいましょう。
合併症
治療しない場合
- 肺炎を放置すると、呼吸が苦しくなり、酸素不足になる。
- 菌が血液中に入って「敗血症(はいけつしょう)」という重い感染症になることがある。
- 肺のまわりに膿がたまる「膿胸(のうきょう)」を起こすことがある。
- 肺の一部がつぶれる「無気肺(むきはい)」や、胸腔に空気がたまる「気胸(ききょう)」を合併することがある。
- 高齢の方では、誤嚥や体力低下により症状が長引くことがある。
長期的な見通し
肺炎は、診断が早く適切な治療が行われれば、多くの方は数週間から数か月のうちに回復します。高齢者や持病のある方でも、少しずつ体力を戻すことができれば、日常生活を再開したり、運動を楽しめるようになったりする方がたくさんいます。回復の速度は人それぞれですから、「昨日より少し楽になった」という小さな変化を大事に、焦らず前へ進んでください。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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